56、残念女子はショックで愛を泣き叫ぶ
あれから鼻血を吹いて倒れた私⋯⋯ソフィは、何故かまたあの部屋に逆戻りしており、皆様に寝顔を見られながら寝ていたようです。
起きた瞬間、また鼻血を吹くかと思いました。えぇ、今回は留まりましたとも!えっへん!!という訳で、なぜ皆がこの部屋で待機していたかと言うと⋯⋯帰れないからであります。
というか帰り方が分からないが正しいかもしれない?私の魔力が回復すれば、すぐ向こうに帰れるので皆、待機していた模様です。
「ソフィ!気分はどうだ?」
「リアム⋯気分はいいですよ?」
「ほんとに?」
「ほんとです。心配して下さってありがとうございます。あ、そういえば⋯布団が綺麗に⋯」
「あ、それは私が浄化しました!」
「えっ!?アイラさんが?」
「はい!何故か⋯⋯血だらけになってましたし⋯。そんな布団を被せれる訳ないじゃないですか」
すみません⋯⋯⋯血だらけにした犯人は私です!!布団で、フキフキしました!!ごめんなさい!!と心の中で謝っておく。
何故なら、女子としてありえない事をした訳であるし⋯⋯聞いたら引くわ。自分でも、よくよく考えたら引くわ。
敵の私物なんかどーでもいいや!!えいっ!!フキフキしてた自分が恥ずかしいです。申し訳ございませんでした!!!
『謝るのなら、しないことよ』
はい、ご最もです⋯。ソフィにグサッと言われました。
「き、気にしなくても良いのに⋯⋯でも、ありがとう」
聖女の力を⋯そんな事の為に使わせてしまって、すみません!!!と土下座をしたくなった。
「ソフィ様、魔力はどうですか?」
「そうね⋯⋯そこそこ回復してきたけれども⋯まだ足りないわ」
「そう⋯⋯ですか⋯⋯」
「なら、これを試してみてほしい⋯⋯」
そう、スっと混ざってきたのはクリスだ。なんとも⋯⋯緑色のドロドロした液体が綺麗なひし形の便に入っていた。えっと、これは⋯⋯⋯
「一瞬で魔法が回復する」
言いたいことは⋯わかる。分かるのだけれど⋯⋯⋯これは⋯⋯これはっ!!私が黒歴史で書いてしまった⋯⋯⋯例のブツ!!!
「こ、これ飲まなきゃダメかしら?もう少し⋯寝たら回復すると思うの。ねぇ?」
「飲んで⋯⋯?」
ニッコリと笑うクリスが怖い。あれ、こんなキャラでしたか?え?何なの?!
「へぇ〜!!すっごいドロドロした液体だねぇ〜」
そう言って、スクラがやってきた。や、ヤバい!!この子はヤバい!!私の頭の中で警報がなる。
「あ、あの⋯⋯グレッチア様⋯⋯?」
「僕さ〜こんなとこに長くいたくないんだよねぇ⋯⋯⋯。もう既に、此処で1週間も過ごしてるんだよ?しかもさ、わざわざこの僕が力を使ってあげた訳だし〜助けてあげた訳だから〜どうするか分かるよねぇ⋯??」
あ、うっ⋯⋯⋯可愛い子の威圧はダメです。スクラとクリスは私にブツを飲ませる気だ!!!!私が死んじゃう!!誰か助けて!!
「え、それ飲ませるのか?」
そう助け舟を出してくれたのは、なんと。グラウスだった。
「タルアニア嬢も、衰弱してるし⋯それは、やばくないか?なぁ?リアム」
「そうだ。飲ませるな」
ありがとう!!ありがとう!!旦那と推しっ!!
「やめといた方がいい」
さらに助け舟を出してくれたのはスザク。ありがとう!!師匠!!そうして、歓喜に震えていたら⋯⋯。強引にスクラに口を開けられた。え、何事?!って戸惑っている間に、クリスが瓶の蓋を取ってブツを私の口の中に流し込んだ。
それは、一瞬の出来事だった─────
「「「あっ?!」」」
「えっ?!」
「ゴクン⋯⋯」
みるみるうちに魔力が回復する。そして、私の顔は今⋯⋯真っ青だと思う。我慢したい我慢したい我慢したいけど⋯⋯無理じゃああああっ!!!
「うぇええええ⋯⋯⋯」
─綺麗な映像をお送り致します─
─暫くお待ちくださいませ─
この世の味とは思えない壮絶な味だった。ゲボ不味〜!!どころではなかった。
「死ぬか⋯と思った」
「大丈夫⋯⋯と?」
「⋯⋯!!!り、リアムっ!??!」
なんと、リアムが汚れていた。なんということだ!!なんという事だ!!!まさかっ!!まさか⋯⋯!!旦那に?!!
えっ⋯嘘でしょう。私は鼻血だけではなくブツまでかけてしまったのか!!!もう無理!!ブワッと涙が出てきた。こんなの、こんなのなってない!!
リアムは私を心配して顔をわざわざ覗き込んでくれたのだ。そして、我慢できなかった私。
もう頭が真っ白になった。慌てて、アイラお姉様が浄化魔法をかけて綺麗にしてくれるが、無かったことになどならない。
もう、涙腺が崩壊した。
「そ、ソフィ⋯⋯泣くなって!俺は気にしてないし、大丈夫だから⋯な?」
私は、この時初めて思った。
「クリスもグレッチア様も⋯⋯⋯推しだったけど⋯⋯大っ嫌いいぃいい!!!!」
「え⋯⋯」
「⋯⋯⋯⋯⋯」
クリスは呆然とし、スクラは⋯⋯押し黙った。
「リアムに、あんな事しちゃった⋯⋯!最低だ私!生きていけない!!好きな人にあんな事するなんてありえない⋯⋯!!私が悪役令嬢だからってあんまりじゃない!!私ぃぃぃぃ!!うわぁぁん⋯⋯」
もう、言ってしまったが最後。子供のように、わんわん泣いた。レン様や、アイラお姉様やスザクやグラウスが居たけれども気にする余裕などなかった。
「よしよし⋯⋯大丈夫と。おいは、ソフィの事好いとーよ。そげんな事くらいで、気にする必要なか。それに、おいも覗き込んだけん。おいも悪か⋯⋯ごめん」
「リ⋯アム⋯⋯ひくっ⋯悪くな⋯ヒクッ⋯。私が⋯⋯悪⋯いっ⋯⋯ひくっ⋯⋯」
涙が止まらなくて、どうしようもなかった時。リアムにペロッと涙を舐められた。びっくりして涙が止まった。
「しょっぱい⋯⋯ふふ、涙止まったと。ソフィは、笑って笑顔でおる時が1番可愛か。おいのそばに、ずっとおってくれると?」
こんな⋯⋯こんな私に、ずっと一緒におってくれる?って言ってくれるの?なんて素敵な人なの?!これ普通なら引くわよ!!
何してくれとんじゃあ!!ってなるやつよ?!なのに、なのにっ⋯私の旦那様⋯リアムはどこまでも優しかった。
残念すぎる私をこんなにも、好いてくれると言ってくれるなんて⋯もう好き⋯!大好き!!愛してます!!世界一大好きです!
「は⋯⋯い⋯⋯⋯こんな⋯⋯私で⋯良けれ、ばっ⋯⋯⋯」
また涙が目じりに溜まってくる。
「ん!!」
そう嬉しそうに返事をするリアムは私のおでこにキスをしてくれた。必然的に、ボボボボッと赤くなるのは不可抗力である。そして感極まって叫んだ。
「好きですっ!大好きです⋯⋯!!世界一⋯宇宙一大好きです!!!愛していますっ!!」
リアムは驚いた顔をして、蕩けるような笑みで
「おいも銀河一、愛しとーよ」
と言ってくれた。ものすごく心がホワホワする。心が暖かくなって、あれだけ泣き叫んでいたのが嘘のように静まった。しかも心臓止まるかと思ったわ。
忘れはしないけれど、リアムの気持ちを再確認出来て嬉しかった。ホワホワした気持ちでいたら気付いた。
み、皆⋯いましたぁああ──!!
それぞれの反応と言うと⋯⋯レン様は悔しそうな顔をしており、グラウスに関しては⋯目元を手で隠していた。
なんで?アイラお姉様は、顔が真っ赤だった。スザクは、寂しそうな悲しそうな顔していて⋯⋯でもその表情は一瞬だけで、すぐいつもの顔に戻った。
クリスは普段から青白いのにさらに青白くなっていた。スクラは未だに放心状態だった。
「取り乱して⋯⋯申し訳ございませんでした⋯」
よくよく考えると素で話していたし、叫んではいけないことも叫んだ気がする。
「だ、大丈夫ですっ!!」
1番に返事をしてくれたのはアイラお姉様。
「えっとその⋯⋯お2人が相思相愛でっ!!素敵なものを見させて頂きましたっ⋯⋯!!でも、クリスネンス様⋯グレッチア様?」
でも、と言った瞬間にアイラお姉様の声色がワントーンいやツートン下がった。あれ、冷気が⋯
「ソフィ様に、なんて事をしてくださるんですか??ね?後で、じっくりと⋯お話致しましょうか?」
あ、あれ⋯⋯?アイラお姉様⋯?何故そんな、にっこりと冷たい笑みを浮かべておられるのですか⋯⋯?私はそんなアイラお姉様を書いた覚えもない。その言葉に、2人は何故か肩をふるわせた。
「ソフィ様⋯⋯すみません。私がちゃんと言いつけておきますからね。それと、私が早く治療出来ればよかったのですが⋯⋯⋯実は、あの時以来治癒魔法だけは何故か使えていないのです⋯⋯。ソフィ様が寝ている時に何度も試したのですが⋯治癒魔法だけは出来なくて⋯」
まだまだ聖女の力は不安定なのだ。浄化の力を使いこなせるようになるのは後半⋯⋯3年の春になってからだ。無理もない。
「大丈夫です。お気遣い⋯ありがとうございます⋯⋯。アイラさんは確実に力をつけていますわ。ゆっくりでいいんですからね?」
「はいっ⋯⋯!!ありがとうございます⋯!」
そしてアイラお姉様が
「ソフィ様が、偉大すぎて辛いです⋯⋯」
と呟いていたのは誰も知ることがなかった。それから、転移魔法で帰ってきた一同は、学園で大騒ぎになり⋯。
ソフィは、かなり衰弱していたようで1週間の療養が決定した。本当はもっと療養すべきなのだが、ソフィの意見により医者からの制限付きの元⋯1週間となったのであった。




