54、呆気ない終息
本日二度目の投稿です。
息切れしているソフィです。
まず一言言わせてください───
しんどいです。
あれから前進して⋯そんなに進んでいません。どうしましょう!!意地ってもんが!!と啖呵をきったのに!!全然進まない!!間に合わないかもしれない!!
そんなのイヤァァァァァァァ!!!
私の絶叫が心の中で響きました。
『分かったから煩いわよ』
ごめんなさい⋯⋯⋯
「ピィー」
ん??
「ピィリアス?」
「ピィピィ!!」
なんて言ってるの?
「ピィリアスが運んでくれるって言ってるヨ」
「え?ピィリアスが?私なんかを運ぶ⋯って大丈夫なの?」
「ピィピィピィ⋯ピィ!!」
「えーっとナ!私なんかって言わないでって、君なら軽いよって言ってるゾ!」
「ええっ!紳士!!」
「ピィピィ!!」
何とピィリアスが服の襟を口で掴んでくれた。そして地面から足が離れるのだけれど──
「うえっ⋯⋯ぐふっ⋯!」
「ピィ!?」
驚いたピィリアスは離してくれた。
「ゲホッ⋯⋯」
こ、こういうこともあるわよね、大丈夫。ちょっと首が締まっただけだから。
「ピィ⋯ピィ⋯⋯」
「あーごめんヨって言ってるヨ」
「いいのよ⋯⋯ピィリアス気にしないで」
「ホントは『ごめんよ僕のプリンセス!』だナ!」
「えっ⋯⋯⋯そんなギザなの???!」
「ピィ⋯ピィ⋯??」
「えっと『こんな僕はキライ?』って言ってるゾ!」
「いいえ!ピィリアスはピィリアスだもの!!好きよ!」
「ピィイイイイイイ─────!!!!」
「なんて言ってるの?」
「あー⋯⋯⋯黙秘するゾ!!」
「えっ?!ソイ?!」
「ピィピィ⋯♪」
ピィリアスはもの凄く上機嫌で、今度は私の服の腰の部分を掴んで運んでくれた。めちゃくちゃ力持ち!!まぁ、マヌケなのは仕方ないけれど。断然早い!!推し達の勇姿を見に行くわよおおお!!!
そうして、ボスがいるであろう部屋の手前⋯かなり手前まで来たところで気付く。何かがおかしいと。
「なんで扉が壊れてるの?」
えーっと⋯⋯⋯本当は閉まってるはずなんだけど⋯全開してるわね。そうして、皆が居るであろう部屋の中へと目を向けて──
驚いた。
「「黙っとけ!!」」
「ぐはっ!?」
ええええええええええええっ!???
私が作った結構強めのボスがボロボロおおぉ?!!って、しかも!!リアムも一緒に戦ってるの?!!と言っても⋯⋯一方的なリンチに、あわせている訳だけども。
えっと、何だか⋯⋯エンペラーが可哀想に見えてきた。
「皆さんにも、力が付与できたようです!」
アイラお姉様ちゃんと援護してるわ!!し、しかも身体強化の魔法で援護??!この間、教えたばかりなのにマスターしている!連れ去られた時よりも格段に性能がアップしている。
成長、早すぎよ?!!
「あー力を付与してもらえるのは、ありがてーんだけどさ」
「手出しは無用って事だよねぇ」
「⋯⋯⋯⋯⋯⋯」
「そういうこと」
グラウス、スクラの呟きにクリスは黙り、スザクが冷静に同意していた。
「何故⋯⋯⋯!!私がッ!貴様ら人間如き⋯⋯にっ!!!」
「お前は」
「貴様は」
「「黙って」」
「ろ!!」
「いろ!!」
リアムとレン様が意気投合して、エンペラーを倒そうとしている!!めちゃくちゃカッコイイ!!!はっ!!待った!!レン様の覚醒はっ?!!
「ソフィを好いとーのは俺だ!!」
「私だ!!!」
そう2人が言ったと同時に2人が光る。ん?なぜ私の話??と気にする暇もなかった。
「これはっ⋯⋯覚醒の合図だ⋯⋯!」
私は思わず歓喜の声を上げた。それと同時に聞こえた断末魔の声。
「ウァァ"ア"ァァア"ア"ァアア"ア"!!!」
こんな声⋯⋯になるのね⋯⋯。声優さ⋯じゃなかった!!エンペラーありがとう。あなた最高よ!!
「な⋯んて⋯⋯ひか⋯⋯り⋯なん⋯⋯だ⋯」
そうして、エンペラーはこの世から消えた。聖女の力とレン様とリアムの手によって。な、何だか思った展開というか私が描いた内容とかなり違うけれど、これはこれで良かったわ!!グッジョブ!!思わず、親指を立てちゃったわ。おほほ!
「ん?ソフィ?!!」
リアムが言ったと同時にグルン!!という効果音がつきそうな勢いで、皆が一斉に振り向く。今の私は、ピィリアスに降ろしてもらっていたからマヌケな格好ではなく。床にペタンと座り込んでいる形です。
「皆様、流石ですわね」
私の問いにグラウスが返事をしてくれ、スクラにクリス、スザクと順に答えてくれた。
「俺ら4人は傍観してただけだぞ。レンとリアムとユーフィリア嬢が頑張っただけだ」
「まぁ楽できたし、僕としては万々歳かなー?」
「俺も⋯見ていただけ⋯」
「そそ、何にもしてない」
「でも応援は必須ですわよ!!」
と声をあげれば
「ソフィ様!!なぜ、ここまで来たんですか!!倒せたから良かったものの何かあってでは遅いんですよ?!!」
わぁっ⋯⋯⋯アイラお姉様が⋯⋯アイラお姉様がっ!!激怒しているううう!!!貴重よ!写メショットよ!!しかも私の心配をして怒ってくれてるとか⋯⋯泣いていいですか。
「ごめんなさい⋯⋯⋯ど、どうしてもっ!!皆さんの活躍をこの目で見て拝みたかったのです!!」
その場の全員の頭の上にはクエスチョマークが浮かび上がっていた。どういうこと?と。
ハッ!!!
「イ、い、今のは忘れて下さいませ!!」
忘れるわけがないだろうと皆が心の中でツッコミをいれた。そこへ、エンペラーを難無く倒したリアムとレンがやってくる。
「ソフィ⋯⋯大丈夫か?」
「はい!大丈夫で──」
「その血は一体?」
「あ、あのこれは⋯⋯ポッ⋯⋯」
少し思い出して、頬が赤くなったと思う。リアムにキスされて心の準備が出来てなかった私は、キャパオーバーになり鼻血を盛大に吹いた跡だなんて恥ずかしくて言えません!!
何かを感じとったレン。
「ふぅん⋯⋯⋯⋯」
「寮に戻ったら着替えないと。それに休まないと駄目だからな」
リアムが、すかさず声をかけてくれる。
「はい⋯⋯」
そう返事を返せば、皆が私に手を差し出して。
「さぁ、ソフィ帰ろう」
優しい声でリアムが
「さぁ、共に帰ろう」
安心させるような声でレン様が
「災難だったな。早く帰ろうぜ」
やれやれという声でドルが
「君が生きてて良かった⋯⋯帰ろ⋯」
ほっとしたような声でクリスが
「さっさと帰るよ?僕に感謝してね?」
後で褒美を貰うよとでも言いたげな深みのある声でスクラが。
「何があったか後で聞かせろ。何か力になれるかもしれない」
頼りになる言葉と、よく頑張ったと言ってくれてそうな力強い声でスザクが
「ソフィ様⋯⋯!こんな暗いところではなく光がある私達の世界へ戻りましょう!」
凛とした声で、アイラお姉様が私に言った。なんなんだこの光景は。こんな悪役令嬢に皆が共に帰ろうと手を差し出してくれるシーンなんてない。
そもそも書いていない。
こんなに嬉しい事が更にあって良いのかな?うぅ⋯⋯写メ撮らさせて下さい!!と言っても、この美形に美少女に囲まれた私は勿論⋯⋯⋯。
ぐふぅぅううッ⋯⋯⋯⋯!!
「私、幸せです────」
本日二度目の鼻血を吹きながら、意識を手放しました。




