53、野望
本日、1時間ごとに1話。計3話分更新します。2話本編、3話目は50話記念突破ストーリーです。記念ストーリーは見なくても話に影響は出ません。気になる方はご覧下さいませ。
彼等は、決意した表情で空虚な廊下を歩いていた。
「何故、敵が出てこないんだ?」
そう呟いたのはレンだ。
「そ、そういえば⋯そうですね?」
オドオドしながら答えるのはアイラ。
「あー敵が出てこないように指示したからね」
「「は?!」」
そう声が重なったのは、リアムとスザクである。
「んー、僕がそうなるよう仕向けたんだよ」
「そ、うなのか?」
スクラに対して、疑問形で問いかけたのはグラウスだ。
「うん、まぁ⋯そこは知らなくても良いことだから気にしないで?」
そう有無を言わさない笑顔を浮かべるスクラに一同は、これ以上聞くのをやめた。
「けど、なんか物足りないな⋯⋯」
そう呟くのは、グラウス。
「体力を⋯温存できてるって思えばいい⋯⋯馬鹿なの?」
グラウスの呟きに、辛口コメントを述べるのはクリスだ。
「馬鹿じゃねーよ!!」
「あぁ、そう⋯⋯」
クリスは、聞くのは無駄というような顔で顔を背けた。
「お、お2人とも⋯⋯仲良くしましょう?ソフィ様も、そう仰られますわ」
そうアイラが呟けば、ソフィの嫁であるリアムが同意した。
「そうだな。ソフィなら、『ボスを倒しに行くんですのよ!!そして、皆様の勇士をこの目に焼き付け──』とか言ってると思う」
「ふふっ⋯⋯半分は何を言ってるか分かりませんがソフィ様は楽しそうに微笑まれてると思います。こんな状況であっても」
「そうだな⋯⋯さっさと片付けて連れ帰るぞ」
そのレンの言葉に皆は頷き、場は和んだかのように思えたが。
「ソフィは俺が連れ帰る。お前の出る幕はない」
レンに対し、敵対心剥き出しの⋯このリアムの一言が⋯⋯とんでもない事になるとは。2人以外の皆は思いもしなかった。
───
──
「遅い」
そう言い捨てたのはリアム。
「私だって負けてなどいない!!」
そう答えたのは、レン。
その後ろから、必死に2人を追いかける一同。スザク、グラウス、スクラ、クリス、アイラの順で遅れが出ていた。
「おい、スザク。あの二人⋯⋯大丈夫だと思うか?」
「大丈夫じゃないと思う」
2人は前のふたりを余裕で見物しながら追いかけていた。
「わー⋯⋯⋯あの2人ってバカなのかなぁ??此処ってカケッコする場所じゃないんだけど」
スクラは、呆れたように呟いていた。
「はぁ⋯⋯はぁ⋯⋯走るのが、こんなに辛い⋯⋯なんて⋯⋯体力⋯つけ⋯はぁ⋯はぁ⋯ないと⋯」
インドア派の研究一筋タイプのクリスには長距離は結構な運動量だったらしい。
「はぁ⋯はぁ⋯⋯皆さん⋯足が早すぎませんか⋯⋯?私これでも⋯体力ある方なのに、全然追いつけません⋯⋯はぁ⋯はぁ⋯⋯あ!ソフィ様が教えてくださった身体強化魔法⋯⋯自身にかけることが出来るのでは?」
そう新たに閃いたアイラは早速、自分に試してみることにしたのだった。
そうして───
レンとリアムは我が先というかのように、2人同時にボスの待つ部屋の扉を片足で突っ込んだ。
ガァァァァァアアン!!!
とものすごく大きな音を立てたと同時に扉を破壊、その上⋯吹っ飛ばしボス部屋へとたどり着いたのであった。後ろで見ていた2人は同じことを呟いた。
「「あれ⋯⋯結構、頑丈な扉だと思うんだけど⋯⋯」」
「うわぁ⋯⋯☆」
感嘆の声をあげるスクラ。
「敵が驚いてる」
と更に呟いたのは、グラウスだった。
────
エンペラーside
私は今日も、あの人間の娘の魔力を食べ⋯あの方の言われるとおりに過ごしていた。ただ、今日は今までと違い、ある程度は魔力を残しておく事と言付かって。
毎日、上質で旨味な魔力を食べその魔力の虜となっていた私は⋯⋯名残惜しいと思いながらも人間の娘がいる部屋を後にし私が使っている1番頑丈で安全な部屋へと戻った。
今日も平和だな。本当は血なまぐさい事を、とことんやってやりたいのだが⋯仕方ない。まだまだ力は蓄えられていないのだから。とはいえ、あの娘のお陰で⋯もうすぐという1歩手前のところまで来た。
「もうすぐだ⋯⋯」
そう呟いた時。
ガァァァァァアアン!!!
「⋯⋯!?」
「「敵は」」
「おいが倒す!!」
「俺が倒す!!」
扉を足で開け、同時に叫んだのはリアムとレンだ。
「ほぅ、貴様ら人間如きが侵入したか」
「レン、認めないなら⋯おいは容赦しない!」
「ふん!認めてもらうまでもない⋯!私は諦めてなどいない⋯⋯!!」
「こんのっ!!」
「おい、私の話を聞け」
「「誰が聞く」」
「か!」
「ものか!」
「コイツも邪魔ばい⋯⋯⋯」
「それには同意だ。リアム」
喧嘩をしていたと思いきや人の話も聞かず、勝手に結束しやがった⋯⋯⋯。よく分からんが、今の私に叶うはずもない⋯⋯!!!
「来るなら来い。相手をしてやろう」
そう告げた途端、目の前から2人が消えた。
────
──
ソフィside
皆さん⋯⋯ゲホゲホ⋯⋯血の味を噛み締めているソフィです。魔力切れをした私は、ベッドへダイブしたのですが意識は、まだ残っておりました。
そして、鼻血を吹きました。いえ、旦那にはバレてませんよ?リアムが振り返って部屋を出た瞬間───唇の感触を思い出し静かに吹きました。
なので、私⋯⋯今、自分の血で血だらけになっているところであります。人間こんなに血を出すことなんてあるんだなって初めて知ったよ。
「⋯⋯⋯⋯こんなところで寝てる暇は、私には無い──────!!」
とまぁ宣言した声は、かぼそかった訳だけど。なんせ、皆の勇姿を見れるのよ!!見ないわけにいかないじゃない!!
オタクとしての意地ってもんがあるのよ!!!這ってでも行くわ!!
ちょっと顔下半分が血だらけは、ちょっと恥ずかしいわね。あ、この布団でいいか。
「ふぅ⋯⋯!すっきり⋯!」
鉛のように重くなった足を何とか地べたへ持っていき、何とか着地。ただし、上半身は上げれていない。仕方ない。
「いてっ⋯⋯」
ベッドが背もたれになって座るような形で降りることが出来た。少し背中を打って痛かったけれど⋯⋯⋯うん。立てないから、これで行くしかない。いわゆる、体育座りというやつだ。
体育座りのまま前に進む。なんだか⋯⋯ヘンテコになった気分ね。そうして私は⋯⋯人がいないのをいい事に、それで歩みを進めたのだった。
「それって楽しいノ?」
「やってみたらイイだロ??」
そうして、ソイとウィンも加わって列を作り奇妙な座ったまま前進する集団が出来上がったのであった。
『バカね⋯⋯⋯』
そう呟いたのは彼女だった。




