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52、皆様、頼みました





うつらうつらと目を何とか開けてみたら、見知らぬ天井で。私は、ふかふかのベッドに寝かされていた。体が重くて、目線だけしか動かせない。ソイやウィン⋯それにピィリアスは、いるのだろうか。



『い⋯⋯るヨ⋯⋯』


『オレ⋯⋯モ』


「ピィ⋯⋯⋯⋯⋯」


3人の声は弱々しいものだった。おまけにソフィまで。


『⋯⋯⋯⋯大⋯丈夫⋯じゃ⋯ない⋯わね』


私は言わずもがな、最大のピンチに陥っていた事に今、気付いた。あれ⋯⋯私ここから抜け出して、すぐ帰れると踏んでいたのだけれど。


私の中にあったはずの膨大な魔力がない。おかしい。その事実に気付いたけれど、瞼は重くなってまた⋯⋯目の前が暗くなった。



────


──


また目が覚めた。これで何回目だろうか?意識も、ぼんやりとしてて少し目を開けることが出来るくらい。


どれくらいの時間が経ったのか全く分からない。スクラは大丈夫なのかな?とか、みんな元気にしてるかな?とか、よく分からない事を考えていたら、扉の開く音がした。


「今日も、君の魔力を頂こう」


いやいや、頂こうって私の中に魔力残ってませんけど?ない所から更に絞り出そうって?そんな事ある?頭悪いのかな?


「君の魔力は実に美味い。だがしかし、何故⋯⋯あの方は君の魔力を吸い取るように仰るのか全く分からない。まぁ⋯私にとっては、どうでもいい事なのだが⋯⋯」


そんな声だけが聞こえた。あの方って誰よ。私が書いた⋯⋯小説(黒歴史)の中の重要人物⋯⋯?私以外いないはずなのに⋯何でこんなに胸騒ぎがするんだろう。ダメだ⋯⋯眠い⋯⋯。また意識が⋯⋯この私が⋯⋯何で⋯⋯



そうして、また意識を手放した。



────


──



次に目が覚めたとには、あの身体の気だるさはなく⋯⋯至って健康になっていた。


「あれ⋯?体も⋯⋯動く⋯⋯?」


そうして、すぐ左の視界に入り込んだのはスクラ・グレッチアのふわふわの髪の毛だった。あれ?この子がどうして、ここに?


「ふわぁ⋯⋯⋯あ?起きた?」


そうして、寝起きからのニッコリと微笑んで挨拶をしてくれた。


「おはよう、タルアニアさん」


「お、おはようございます?」


「今の状況理解してる?」


「えっと、拉致られましたよね?」


「そうだね」


「えっと⋯⋯⋯」


ぼんやりした頭をフル活動させているのだが、全く頭が動いてくれなかった。


「僕達は3日ほど拉致られてる。向こうの世界からするとね。だけど、実際は一週間以上⋯経ってる」


ん??この設定は⋯⋯。これを聞いてピンと来た。原作ではアイラお姉様は拉致られて、魔界と呼ばれる別世界に来ていたのだ。


魔界はそのまんまの意味で、この世界での時間は一日が8時間。そして向こうの世界、私たちの住む世界は一日が24時間。そして、みんなが助けに来るのは4日かかる。


「理解が出来ましたわ」


「え?もう?」


「はい、グレッチア様。ありがとうございます。しかし、何故⋯貴方が此処に?」


「助けるために来たんだよ」


助けるためにと言われても、貴方に?貴方も拉致られてきたじゃない。なんか格好がつかないわね⋯⋯。


「その顔は、自分も捕まったくせにって思ってるでしょ?僕がわざわざ(・・・・)⋯⋯捕まってあげたんだよ」


なかなか、深みのある言い方をするじゃない。さすが私の推し。私が設定した通りだ。え?今なんて思った⋯?私が設定した通り?









今、思い出した。










彼の設定は、見た目は可愛い顔した小悪魔。所謂、策士というものにも当てはめられるし腹黒という言葉も似合うキャラにしていた。


なぜ今、思い出したのだろう?他にも、次々と設定が思い浮かんできた。これは記憶が戻ってる?こんな急激に?おかしい。


「とにかく⋯⋯ありがとうございます。私を助けるために、わざわざ御足労頂きまして」


「ふふ⋯⋯君は、やっぱり面白いなぁ。僕の瞳を見続けても何ともないなんて。まぁいいや、ここからさっさと抜け出したいんだけど」


「いえ、放ったらかしたまま帰ることは出来ません」


そうしてしまったら話が変わってしまう。それは、それでまずい。そして私の中に残っている魔力が何故か⋯⋯1度だけ転移できる魔力量と少し探知できる量のみ。




計算されたみたいに魔力がない────




「えっ⋯⋯僕、普通に誘惑してきちゃったんだけどなぁ⋯⋯」


「皆様を此処へ呼びます、任せて下さい」


「⋯⋯分かった」


渋々と言った感じで頷いてくれた。私は目を閉じて転移できる分だけは、しっかり残し遠く離れている知っている人の気配を感知し人の影に繋ぐ。幸い、みんなが一緒にいるようだ。


「呼びます」


本当はスクラに能力を見せたくないけれど、仕方ない。ねじ曲げる訳にはいかない。


「⋯⋯⋯⋯⋯⋯」


ドサッ!!


「痛っ⋯⋯」


「うっ!」


「⋯ッ⋯てぇ⋯⋯」


「い⋯たい⋯⋯です⋯」


「⋯⋯⋯⋯ッ⋯⋯⋯」


「何が⋯起こったと⋯?ん?この匂いはソフィ?!」


流石、私の旦那様です。


「皆様、ごきげんよう⋯⋯」


うぅ⋯⋯魔力を使い切った為に、また意識が⋯⋯。


「「「「「「⋯⋯⋯!!!」」」」」」


あ、ダメだ⋯。


「あとは⋯⋯頼み⋯⋯ました」


またベッド後ろへダイブした。


───

──


彼女が、また意識を失った直後。


「ソフィ!!」


「大丈夫だよ、彼女は眠ってるだけだよ⋯」


「ソフィ様⋯⋯こんなにもやつれて⋯⋯」


「「「「「「⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯」」」」」」


その場にいた全員が抱える気持ちは1つだった。


「行くぞ」


そう先陣を切ったのは、他でもないレンだった。皆は頷きあった。そして部屋から、みんなが出ていく。最後、部屋に残った彼は彼女の近くで囁いた。


「ソフィ⋯。本当は⋯本当は⋯!俺がソフィをこんな風にした奴を殺したい⋯けんど、君は許さないだろ⋯⋯。これも聖女とレンの成長のストーリーなんだよな。俺は手助けするだけ。だよな?間違ってないよな?戻ってきたら、沢山聞かせてもらうからな、覚えとけよソフィ。今は、ゆっくり休むたい⋯⋯」


そう呟いて、彼女の口元に口付けを落とした彼は決心したように⋯その場を後にしたのであった。


彼の決意は、いとも簡単に忘れてしまうことを彼が知る由もなかった。




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