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49、塔の上のプリンス




〜デート後〜



けれども運命というのは残酷で────



───





あれから(デートの日から)数日たった頃。授業の課題で2人1組になって取り組むというものが宿題として出されたのだけれど⋯。





その相手が問題だった。アクア・クリスネンス、彼だったのだ。





「この水魔法に関してだけど、この魔法を応用する事によって更に完成度の高い魔法に仕上がるんだよ。その上で更にどうするべきかに対してなんだけど────」


ペラペラと喋っているのは彼だ。一方、私はと言うと。


「確かにそうする事で完成度の高い魔法に仕上がるという理屈は出来上がるけれど、そうすると途中で伝達が上手くいかなくて結局、失敗するわ。何でも基本が大事。応用に持っていく前に、間を入れてあげなきゃ」


専門的な話をペラペラと喋っていた。分かりやすく説明すると、魔法の強さを大中小とするわね。

彼が言ってるのは、魔法の強さを小から大にすると言ってるの。


中をすっ飛ばずって事ね。私は、小中大とあげていくと言っているわけ。え、分かんない?これ以上説明出来ないわ。聞かないで感じて!(無理があります)


「やってみれば分かる⋯どっちが正しいか⋯」


「そうね、試してみたら?」


「そうする」



そうして結果は───


「私の言った通りでしょ?10の力をいきなり100にしても無理なのよ。10、20、30とあげていくべきなのよ」


「⋯⋯⋯今回()負けを認めよう⋯」


認めようじゃなくて、私に勝とうなんて何億万年早いのよ。私が創造主なんだから!エッヘン!


なんて言わないけど、心の中で言っておきます。その課題実習からというのも、私に何度も挑戦をしかけてきた。


「次こそは⋯⋯」


が彼の捨て台詞となるのは、もう近い未来だった。私も変な奴に(推しキャラに)好かれたわ。(対して酷い)


それともう1つ不運な事と言えば、生徒会に抜擢されてしまった事。会長はレン様、副会長はリアム。会計はグラウス・ドルニシア(ドル)、会計補佐はアクア・クリスネンス。


書記は、アイラお姉様。議長が私。庶務がスクラ・グレッチア(謎の子)。他の数名の中にスザクが居た。皆、勢揃いである。なんなのよ!この展開は!?望んでないわよ!


───


──


「タルアニア、ここ⋯⋯」


「それは、こうしないと」


今はクリスネンスと課題中である。課題は1回で終わらず、ずっと続いていた。いらない!そんなのいらない!


私そんな設定、書いてないわよ!!と嘆いたところで何も変わらない。嫌々、関わってて分かった事は⋯やっぱり、攻略対象なだけあって飲み込みが早い早い。


私の知識を⋯あっという間に吸収していくの。そして、それを応用へと活かす。失敗も、かなり少くなった。クリスネンス⋯クリスと呼ぶわ。クリスに、最近はこう呼ばれている。










「師匠⋯⋯⋯」











いやいやいや!私、貴方の師匠になった覚えはありませんっ!!


「あの、その呼び方やめて下さらない?」


「良いだろう⋯⋯?」


なにか悪いことでもしたか?って顔をしてるわ。






えっ───ううううっ⋯!!








その顔があまりにも綺麗すぎて!!


「ぐっ⋯⋯」


言葉に詰まったじゃないの!!だって、だってええ!!私の推し様が目の前でね?!首傾げてんのよ?!


発狂するわ!!えぇ?浮気?違うわよ。推しを観察しているだけ。そこに恋愛的な愛などない。愛があるのはリアムただ1人です。


推すという愛ならあるけどね。隠れオタク(結局オタクに)やってます!(なっていた)キリッ!もうね、我慢ってするもんじゃないなって気付いたのよ。


やっぱり、私が描いたキャラクター達だから愛着が湧かないはずはないし。私の好みで作り上げた攻略対象者たちだから。素直に感動する事にしたの。心の中だけで。


「師匠⋯⋯大丈夫⋯?」


「だ、大丈夫です!」


親指を立ててグッジョブを作った。そう言えば、クリスって魔法のことに関する時はペラペラいい声を発して喋るけど、普段の会話では必要最低限の言葉か⋯はたまた、一言も話さない。


無口なキャラになりつつあるわね。いやレン様と被るわよ!!ん?待って?レン様って最近⋯無口でもないし⋯普通に王子様やってるわよね。アレ?性格変わってない?


「この課題だけど、どう?」


「えぇ、完璧ですわね」


「やった」


「ふふ⋯⋯」


私が笑ったことに気付いて彼は、キョトンとした顔をしていました。


「なんで、笑ってるの?」


「いえ、可愛いなと思いまして」


「??」


「だって私が完璧と言ったことに対して素直に喜んでらっしゃいますし、貴方は人に褒められて喜ぶタイプではないと思っていたので」


「確かに⋯⋯⋯」


「でしょう?」


って、喜ばれても困るんですけどね?!リアム!!皆様ァ(読者の)!!助けてくださぁーい(助けれません)!!!


「とりあえず、課題は終わりましたわね。これにて失礼致しますわ」


そう踵を返した途端。







パシッ───────








「えっ?」


「あ⋯の⋯⋯どうしても見てもらいたいものが⋯⋯ある⋯⋯」


ダメか?って、目が訴えてる!!うさぎみたいで可愛い⋯⋯!!オタクは負ける!宣言しよう。オタクで推し様が頼んできたらどうする?答えは否─────Yesしかない!!!!そうでしょう?!!


「行きますわ」


きっと今の私は、笑顔で血を吹いていることでしょう。


『吹いてないわよ安心して』


どうも冷静なツッコミをありがとう。ソフィ(・・・)。心の目で見た時の話よ。というのは置いといて。クリスに言われ連れて来られたのは空き教室。でも、ここで何を?


「師匠は、ここに座ってて」


「分かりましたわ」


言われた席に座る。クリスはテクテクと部屋の中心へ向かい何かを行う。


「真っ暗になる」


そうして宣言した通り真っ暗だったけれど、部屋の中は綺麗な光に満ちていた。これは星?


「綺麗⋯⋯⋯」


「でしょ、これはねスターを見れる魔道具を作った」


スターとは、前世で言う星のこと。星座もあるが名前は全く別物。形も違う。ただ夢物語(前世での)の生物が名前の由来である。ユニコーンとかそういう生き物。


「綺麗だわ⋯⋯」


パキンッ!


割れた音がしたと思ったら、辺りに結晶がユラユラと落ちてきた。綺麗で幻想的。触れても冷たくなく、むしろ暖かいと感じるのは気の所為なのかもしれないけれど、雪が降っていた。降り積もることの無い雪が。


「わぁっ⋯⋯!!幻想的!!」


凄い!こんな素敵なものを作れるだなんて。私にはできっこない。クリスだから作れた品物だ。この幻想的な雪も。


特に私は雪だとか幻想的なものは大好物なのだ。危険人物からの贈り物とはいえ、これは感動した。


「どうかな⋯」


「クリス!!あなた凄いわ!!こんな素敵なものが作れるなんて!!私には、できっこないわ!!」


思わず、手を握ってブンブンと上下に振ってしまった。さすが、技術者ね!!!


「実力もそうだけど⋯⋯魔道具を作るにはかなりの繊細さが必要なのに。貴方の魔法と技術は人を幸せにするのね」


「⋯⋯⋯⋯⋯!?」


そ、そう言えば私ってば⋯私しか喋ってないじゃない。一言くらいは返してくれるわよね。そうして、彼を見たら驚いたことに静かに涙を流していた。


「えっ?!!ど、どうしたの?!私、変な事言った?!」


「違う⋯⋯!!違う⋯⋯んだ⋯⋯⋯」


そうして彼はポロポロと涙を止めることは無かった。



✵✵✵✵



アクア・クリスネンスside



涙が止まらない。どうしたら、この涙は止まるんだ。そういえば自己紹介をしてなかった。僕はアクア・クリスネンス。


今では秀才天才と言われる魔道士だ。剣は全然ダメで魔法しか特技がない。そんな僕は小さい頃から拒絶されてきた。


小さい頃は、わけも分からず楽しいという理由で魔法を無闇に使っていた。それが引き金になった。


ある日、いつも通り魔法で遊んでいた日。突然、いつもなら制御出来ていた力が暴走した。力が溢れて溢れて止まらない。


怖いと気付いた頃には⋯⋯⋯全てが遅かった。辺りは凍って人も半分ほど凍らせてしまった。凍りついた屋敷の皆の顔は、恐怖で顔が醜く歪んでいた。


そうして僕はバケモノ(・・・・)と呼ばれるようになった。


それからは実の両親からも、怯えられ避けられ僕は塔に監禁された。ただ、毎日を部屋で過ごすだけ人に会うこともなかった。


いや、会えるはずもなかった。そんな僕の目の前に突然、現れた師匠は会ってすぐ⋯こう言ってきた。


「やっほ!少年!ささくれてるね!」


お前誰だよ、しかも高い塔だし、そもそも警備兵がいるはずなのに何で⋯この部屋にいるんだ。


「うんうん!君の考えてる事は分かるよ!どうして僕がここに来たのかって事だよね!」


「微妙に違う」


「あれぇ〜?あーわかった。どうして侵入したかって事だよね。勿論、魔法だよ」


すぐに回答が来た。


「あーそれでそれで何でかって言うとねー。君の魔力に惚れたからさ!」


僕は一瞬にして身の危険を感じた。


「わぁ⋯大丈夫大丈夫!危ない人じゃない!そういう趣味とかないからね!!」


「それを言った時点で不審者」


「あわわわわ!違うんだって!!キミに教えてあげようと思ってね。その力の制御(コントロール)を」


「え?」


「君は、魔法の扱い方を間違えた。でもその扱い方を覚えないといけなかったのに、素知らぬ振りをしたのは大人だ。君のせいじゃない。気付いていたのに、覚えさせなかった愛故の結末だね」


何が言いたいんだ。


「大量の魔力持ちって国に使役されるんだよね、そう飼い殺しになるわけだ。永遠に、外に出れないんだよ。そして、国に良いように使われて使えなくなったら捨てられる。それを知っている君の両親は隠した。それが、今の結果」


「え⋯⋯?」


「せめて、信頼のおけるものに魔力の制御を習わせるべきだったんだよねー。そこをしくじっちゃったから、君は今こんな目にあっている訳だ」


何も言えなかった。


「あぁでもね、君があの暴走した事件を起こしたことは世間にも国にも知られていないんだよ」


「なんで⋯⋯」


「何で⋯ってそれは、君の両親が隠蔽したからさ。君を守る為に」


「う、嘘だ⋯⋯母様や父様は僕をっ────!!」



バケモノだと言った────!!!



「あれ、君を守るための嘘だよ」


「そんなっ?!」


「この高い塔に閉じ込めたのも君を守る為。愛故なんだよと言っても信じられないだろうから映像を見せてあげるよ」


目の前にいる男はパチンと指で、音を鳴らした。目の前に映像が浮かび上がる。


『あぁ⋯⋯⋯あの子が、私達を冷たい目で見ていたわ』


『あぁ⋯そうだな、無理もない。私達は心無い言葉をあの子に浴びせてしまったから⋯』


『でも、そうしなければ⋯⋯あの子は守れない⋯!!』


『そうだな⋯⋯私達は選択を間違えた⋯だが、もう戻れない。どうにかして、アクアの秘密は守らなければ。国には渡せない』


『そうね⋯⋯私達が守らなきゃ』


2人が泣き崩れる様子が映し出されたのだ。


「そんなの⋯⋯うっ、嘘だぁ⋯⋯⋯だってこんな⋯!!僕にとって都合のいい夢なんじゃ──」


「夢じゃない、君の事を君の両親は紛れもなく愛している。権力を盛大に酷使してね」


「うわぁぁぁああぁああぁっ!!!!!」


僕はその日、わんわん泣いた。泣いたにも関わらず誰も来なかったことが不思議だったけれど、師匠が言うには防音の魔法をはったからだよと言っていた。


───



「落ち着いたかいー?」


「うん」


「うんうん!泣きたい時にたくさん泣く方がいい。そうして、だ!君だって、このままじゃいられないだろう?この塔にずっと閉じ込められるプリンスになるつもりかな?」


「僕は──」


なりたくない。


「私はね、君に選択肢を与えられる人になれる。つまりは、魔法の師だね。そして君は、どちらかの道を選べる」


コクンと頷く。


「1つは、楽な道で⋯このまま塔の上で何もせず何も知りもせず無害な生活を送る一生。2つ目は、ここで力の制御(コントロール)を学んで、この檻から飛び出して国に飼われない程の実力を身につけるかのどちらかだよ」


僕には、ふたつの選択肢が与えられた。僕は迷いなく後者を選んだ。


「僕は塔の上で守られるプリンスにはなりたくない。僕は母様と父様が誇らしいと言われる息子に変わる。その誇らしいには、王家⋯⋯国に仕えて名声を上げなければとなるのかもしれないけど。そうじゃなくて、僕は僕と僕が守りたい⋯幸せにしたい人の為に力をつけたい。師匠、僕に魔法の制御(コントロール)を教えて」


「任せてよ!」


師匠は、快く頷いてくれた。それから塔の上で、秘密の授業が静かに毎日のように行われた。



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