44、ただの食レポ?
私達はクラリスちゃんの案内の元、お店にやってきた。
「何日ぶりですかな?!娘をまた、助けて頂きありがとうございました⋯!ニアさん!」
「いえいえ、私は何もしていませんよ。すこーしばかりお灸を据えただけです」
「かなり⋯えぐかったけど⋯な⋯」
ドルが何度も同じことを呟くが聞かなかったことにしておこう。ストーカーはダメ絶対!犯罪者だからね!!
「ニアさんはどうしますか?お肉とか⋯大丈夫ですか?」
「あぁ、好きだよ」
肉は前世からの大好物である!って誰も聞いてないわね。
『私が仕方なく聞いてあげてるわよ。まぁ、聞かされてるの間違いだけれど』
辛辣なツッコミありがとうね?!私!
『どういたしまして?』
悪意しか感じられないわ⋯。
「えっと⋯⋯」
「ドルはどうする?」
「えっと、俺は⋯⋯お前と同じやつで⋯」
「決まりだね、クラリスちゃんのオススメ料理を、お願いしてもいいかな」
「はいっ!!少々お待ち下さいね!」
ん?クラリスちゃんは、いきなり席を立つと厨房へと入って行った。あれ?一緒にいるんじゃ⋯
「ニア⋯お前すげぇのな」
は?
「こんなに、簡単に潜り込んでさ」
潜り込んで?人聞きの悪い⋯。いや、間違ってはいないか⋯⋯人間ってのを隠しているんだから⋯。でも、お前に言われたくない!
「簡単に潜り込めるわけが無い、それにすげぇと言われることでもない。リア⋯⋯ぐふん⋯ゴホン⋯。私のお嫁さんの国なのだから、夫が知ろうとしなくては何も始まらないだろう?」
なんか、かっこよく言えちゃった!キャッ!ってキャラ崩壊だわ!
『既にキャラ崩壊してるわよ、大丈夫』
全然嬉しくない慰めをされた。
「えっ?お前⋯⋯夫いたのか?」
「許嫁だけどな。いるよ愛する人が」
「⋯⋯⋯⋯⋯」
「なんだよ⋯」
急に黙り込むから、なんだと思うじゃない。
「そ、そ⋯うか。いた⋯⋯んだ⋯な」
な、なに⋯その歯切れの悪い言い方は───。
なにか恐ろしい事がおこってない?!気の所為かしら?!
「あ、あぁ⋯」
それから来るまで会話が浮上することは無かった。
───
──
─
「お待たせ致しました!」
クラリスちゃんが、大きなトレーを2つ抱えて持ってきてくれたのは⋯前世の言葉通り⋯!!ステーキにサラダと、ご飯!
まさに王道!しかもスープ付き!この世界での言葉の名称は少し違う。ほとんど、私が覚えられないから日本で使われてた名前を少しモジった程度。
1つ例で言うならステーキだと、ステーとか。大抵、上のところだけをとって覚えやすいようにした覚えがあるわ。幼いなりに考えていたのよ。
あぁ、でも原作と違いすぎて⋯どうすればいいのやらと思うけれど。今は、楽しまなきゃ損よね!
せっかく、私の書いた黒歴史に転生出来たのだから⋯責任もって、この世界を見るわ!そして満喫するわ!
「美味しそうだ!」
「ッ⋯⋯⋯うわぁ⋯!すげぇ、いい匂い⋯!」
今、来たのに気づいたのか、急に声を上げるドル。さっきから一体どうしたんだろう⋯まぁ気にしても仕方ない⋯か。今は目の前のご馳走を頂こう。
「じゃあ、頂きます」
「はい!召し上がって下さい!」
「頂きます!!」
まずは、ステーキから⋯1口目から⋯ほろり⋯。
口の中で溶けたァ!!!え、なんのランクの肉使ってるんですかね?!A5ランクですかね?!そんなものはこの世界に存在しないけどね!
次は、太らないために⋯サラダ。一番最初に食べとけよという意見は今日は聞きません。サラダも1口。
⋯⋯野菜が、みずみずしくて美味しい!!ドレッシングとの相性は最高で、濃すぎず薄すぎず。それに今まで食べた中でこのドレッシングが1番美味しかった。野菜そのものの味を生かしている。
これなら、野菜嫌いの私でも毎日食べるな。
「美味しい⋯」
次はスープ!
スープは、前世で言うとコンソメスープ。この世界ではコンスープ。具材はみじん切りの玉ねぎに似たものとベーコンみたいなやつに人参キャベツ⋯⋯。
たくさんの具材がゴロゴロと入っているけれど野菜同士の風味などは一切、損なわれていない。まさに調和している。最高のハーモニーだ。
「美味しいぃ⋯⋯」
ダメだわ。語彙力が足りない。
「ピィー?」
「なんでもないのよ」
ボソボソと会話をする。ピィリアスには、周囲から認識されない魔法を使っているので姿が見えない。ただ、会話をする時はどうしても声に出さなきゃならないので⋯気づかれないように小声で喋ってるの。
ソイやウィンとなら念話で話せるんだけどね。
それから全てを食した後、そろそろ帰るかとなった。流石に変装したまま帰るのはヤバいので、店に戻る事にはなったんだけれど。
「ご馳走様でした」
「お粗末様だ⋯!食いにきてくれてありがとうな!ニアさん!」
クラリスちゃんのお父さんが、わざわざ挨拶に来てくれた。
「いえ、美味しいものを食べさせて頂いて⋯ありがとうございました」
ここは奢りだと、無償で提供してくれたのだ。
「そう言って貰えて嬉しい限りだ!気をつけて帰ってな」
最初、会った時と印象は変わって気さくな旦那って感じだな。これが本来の姿なのかもしれないわね。
「ニアさん!本当に、ありがとうございました!また!」
「うん!またね」
そう言って、店を出た瞬間に私は肝を冷やした。
シュン──────────!
私の顔横スレスレを通って後ろにいるドルに直撃するところだったから。
毒針が。しかも、猛毒⋯。何が危険かって言うと付着するだけで、付着した所全てを溶かし、人間が触れると⋯数時間の激痛と共に必ず死に至る猛毒。
解毒剤は?と聞かれると、キュレンデルの森の断崖絶壁に行けばあるけれど⋯ここの人達にとってあの森は脅威だから。解毒剤は無いに等しい。
なんでそんなの分かるかって?だって、私の魔法で分析なんて、ちょちょいのちょいってのは半分嘘だけど半分本当。闇魔法を扱えるからってのと⋯私が主人公を殺そうとする時に使う猛毒だから。あと見た目も見た目だしね。
赤い液体で甘い匂いがする猛毒。知識があったから分かった。知らない毒の分析は、どうしても時間がかかってしまうの。なんせ、鑑定が唯一効かない物質だからね。
「大丈夫か?ドル」
「だ、大丈夫だけどさ⋯目の前でずっと止まってるんだけど⋯」
「あ、悪かったね」
飛んできた毒針の影から押さえつけていたので、それを解除したら重力がかかってそのまま地面に落ちた。
ジュワワワッ⋯
そう音を立てて、地面が溶けた。
「うわっ?!」
溶けきると液体も消えた。さて、何処から狙われたのかしら。しかも、私ではなくドルを狙っている⋯?
ドルに、此処では知り合いなんて居ないはず。それに、私に⋯恨みなんて買ってな⋯い⋯わよね?
だって、皆様お忘れじゃないかも知れませんけど私!悪役令嬢ですから。こんなハッキリ言いたくはないけれど⋯悪役令嬢なので物語の強制力が出ても、おかしくないと思うんです。
とそんなことを話してる間に気配を辿っているのだけど分からない⋯。
何故────???
「あの家の上だ!って、気配が消えた」
ドルが突然、声を上げたのでびっくりした。
「えっ?私には⋯なんにも感じられなかったのに⋯」
一体どういうこと⋯??
そうして、ドルと私は無事学園に帰宅したのだけれど勿論⋯嫁に怒られました。これは、また話すわね。
───
──
アハハハ⋯⋯コンナニチカラを
ツケテイルナンテ───────
アァ⋯ハヤク⋯タ──イナ──────
デモ、マダマダタリナイ──────
モットモット──────
ミガジュクスマデガマンガマン────
ダッテ───
シフクのデ───はサイゴノ
スペシャル──ナートシテサイコウ
デショウ⋯⋯⋯?????
カノ──ガオモイダスコロニハ─────
トーッテモトーッテモ─────
──ゴノミにナッテルンダロウ────
アァ──マチドオシイナマチドオシイナ──
キミノ───ゼツ──ニユガムスガタガ──
メニウカブヨ─────
アハハハハハハハハh─────────
コレハウンメイダカラ─────
ドウシタッテカワルコトナイ───
サダメ─────
ハナシスギタナ───
マァデモ──ノソンザイハバレテイナイ──
バレルハズモナイケレド───
マタカクニンシニコヨウ────
──ノ─ケ─エ───




