43、安易な撃退法は真似しちゃダメです
着替えて出てきた私を見て彼が言った一言は恐る恐る問いかけるものだった。
「えっと、ソフィ⋯タルアニア⋯か?」
「あぁ、そうだよ。だけど、此処の国では私の事はニアって呼んでくれ。いいね?」
「お、おう⋯⋯。お、男にしか見えねぇ⋯」
彼にとって私の変身は衝撃的らしい。はぁ⋯なんでこんなにバレていってるのかしら⋯⋯。
もういいわよ。避けようとしたって、向こうが勝手に絡んでくるんですもの!巻き添え食らわしてやるわ!
「そうだ⋯君の名前も考えないと。そうだなぁ、グラウス・ドルニシアだから⋯ドルでいいかな!」
「あー分かった。それでいい」
「じゃあ決定だ。行くよ」
そうして彼を連れて、店へと出たら。
「あっ⋯⋯!!いらっしゃっていたんですね!」
「こんにちは。いつも、ありがとうね」
「いえっ!そのお方は⋯?」
「私の友人なんだ。うっかり着いてきてしまってね」
そうして、彼女に耳打ちをする。『放っておくと何をするか分からないからね』そう言えば、猫族のアーニャは耳を真っ赤にしていることなど知る由もなかった。
「うわ⋯⋯」
ドルが、私を引くような目で見てきた。
「王子と瓜二つじゃねーか」
と言っていたとは知らなかった。なんせ、ボソボソと呟いていたのだから。
「それじゃ、アーニャ。任せたよ」
「はい!お気をつけて!」
そうして、店を出る前にフードを被る。幸い、フロアに出た時は⋯お客様がいなかったから。
───
─
黙って歩いていたら、ドルから声をかけられた。
「なぁ、どこに行くんだ?」
「ん?クラリスちゃん家だよ」
「誰だよ」
「元彼に付きまとわれて困ってた兎人の女の子」
「なんでそんな事になってるんだよ」
「私が助けたから、男と勘違いされて何故か気に入られただけだよ」
「⋯⋯⋯凄いな⋯アンタ」
「ニアだよ、ドル」
「⋯⋯悪い⋯」
それから、会話もなくクラリスちゃん家にやって来た。そうして、飽きれた。
「おい!クラリス!!出てこい!!」
懲りないなコイツ。いっそ、脳天かち割ってやろうか。しつこい男は嫌われるぞ。
「あれ⋯」
「元彼だ。アイツ」
私はスタスタと、歩いて行き。
「邪魔 」
と言いながら回し蹴りを食らわせて、退かした。
とりあえず地面に叩きつけた。横に飛ばしたら二次被害が今度こそ出るからね。
「ぐはっ!?」
元彼は難なく、気絶した。なんて呆気ない。ただ、それだけではなかった。ドルは、コイツ怒らせたらヤベェ⋯と思っていたことを私が知る由もない。
コンコン⋯⋯!
「私です。ニアです、大丈夫ですよ」
ガチャッ⋯
「ニアさん!!」
クラリスちゃんの目は赤く腫れていた。この美少女を泣かせるなんて⋯いや、女の子を泣かすなんて⋯⋯!!全世界の女の敵だ!!でも、美少女の泣き顔は勿論、大好物でもある!!
───
──
─
「災難だったね⋯」
「しつこくて⋯」
「そうだな⋯。いっその事、全裸でそこら辺にほっとく?」
「お、おいっ⋯それは過激すぎるぞ⋯」
青ざめた表情で言うドル。
何を想像したのだろうか。自分のことではないのに。
「せめて⋯下着だけは⋯つけてあげてくれよな」
いいのかよ!!
「そうしたら、もう来ませんか⋯?」
うるうるした瞳でこちらを見るクラリスちゃん。
うぐっ⋯かわっ、かわっぃぃぃぃぃぃぃぃ⋯⋯はぁはぁ⋯hshsしたいいいぃぃい!!
「おい、ニア⋯犯罪者の顔してる。落ち着け!」
「はぁ?!この、私に向かってどういう事だ!」
的を得たツッコミだった。
くっそ。
「そのまんまの意味だけど」
くっ!言い返せない!まさに正論!少し、飛んでた自覚はあるわよ⋯はい。ごめんなさい。と、とにかく⋯⋯!
「そうだね⋯。試してみないと分からないけど⋯心は折るべき⋯だよな」
そうして─────
コテンパンにやる事にした。
───
──
─
さすがにパンツだけは履かせて、あとは縄でぐるぐる巻きにして張り紙を貼った。
「僕は変態です。どうか僕を見て下さい」
どういう意味か全く分からないけど、とにかく⋯この文章を見たら絶対に関わりたくはないと思うだろう。
「えぐい⋯おん───ぐふっ!」
絶対、女って言いかけただろ。なので、お腹に一撃お見舞いした。
「隙がありすぎだよ、ドル⋯」
ドルは私を怯えた目で見ていた。
まぁこれで私に関わろうとは思わないわよね。ふっ⋯⋯!!これこそ完全勝利よ!!
それから数時間も経たないうちに、元彼が目覚めた。外でギャアギャアと騒ぐ声がする。ん?なんて言ってるのかしら。
「こっちを見るな!!そんな⋯そんなっ!蔑んだ目で俺を見るなぁぁあああっ!!!」
ブチブチっ!!
一部始終を言うと⋯元彼は目覚めた、そして──
通る人達に蔑んだ目で見られ、更には服がない。あまりの恥ずかしさに、縄をぶち破り逃走したそうな。
「うわ⋯⋯これは敵に回せねーわ」
「ん?何か言ったかな?ドル?」
「俺は何も言ってない⋯!!」
手が震えていることは内緒にしといてあげるわ。推しキャラの為だもの!
「はぁ⋯スッキリしました!ニアさんありがとうございます!これで、もう二度と来なくなるといいんですが⋯⋯」
「そうだね、来なくなるといいんだけど⋯」
次こそはもう来るな。安易な撃退法をしてしまいましたが!みんなは真似しないでね!
「今日は食堂に是非来て下さい!私の父が『次に来られた時は!!』と言って聞かなくて⋯大丈夫ですか?」
「勿論!喜んで!」
美少女とデート!かわい子ちゃんとデート!わーい!!
「ニア⋯俺を忘れてないか?」
「あっ⋯⋯」
いたのか⋯。ドルよ




