4、服は自分で調達するべきよね!
今日は、もの凄く楽しかった。前世では経験できない事が経験できたから。保護された後、スザクが狙われていた事などの経緯を話した。
それから王宮で誘拐事件が発生した件は、大騒ぎにはならなかった。なんせ、自力で帰ってきたからだ。ただ私の両親やネルは、かなり心配してくれていた。
会えた時には抱きついて泣いてくれさえした。うぅん⋯どこでこの子の育て方を間違えたのかしら?愛がなかった訳では無さそうだし。
うーん⋯まぁ、いいわ。とりあえず、やることは決まった。明日からは、スザクの家に、お邪魔して教えて貰える事になったのは家族には秘密。表向きは遊びに行くというだけだ。
そう言えば、ネルは護身術とか⋯かなり得意らしく。実は、その道のプロらしい。お父様に今回の事があったからという理由で稽古をつけて貰えるようになった。
あとついでに、乗馬も!と言ったら嬉しそにいいだろうと言ってくれた。とても素敵な両親である。何故、悪役令嬢に⋯。もう悩むのは、やめよう。
明日から、することが決まった。モタモタしてられない。明日に備えて早く寝なくては!そうして、フカフカのベットに潜り込んだ。
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チュンチュン⋯
パチッと目が覚めた。さぁ、起きて支度よ!かと言ってドレスだと動きにくいし、コルセットが嫌。服は由々しき問題ね⋯。
そうよ!買い物に行けばいいんだわ!!私ってば頭がキレてる!!そうと決まれば、支度よ!!
幼い頃から贔屓にしているお店があるのだ。ネルに、そこへ連れて行ってもらおうと思う。あぁ、そういえば⋯ネルに関して紹介してなかったわね。幼少期から、お世話になってるメイドさんなの。
彼女には、いろいろ面倒をかけてきた訳なんだけれど。今後は、そんな事はないので精神的に疲れることは無いと思うわ。さてと、ネルを呼びつけてスザクの元へ向かう前に、買い出しに出ると呼びつけたのだった。
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ネルside
皆様、おはようございます。
ソフィ様のメイドをしております。ネル・ケルディオと申します。ある日突然、お嬢様が感謝の言葉を放った日から私は今までで1番疲労が絶えません。
異変を感じた日から、数日後⋯。お城に呼ばれたソフィ様は嫌だと言い放ったものの、そういう訳にもいかず何とかしてドレスを着てもらい身支度も整え送り出したまでは良かったのですが⋯⋯。いつの間にか、お茶会にソフィ様のお姿がなく、ソフィ様以外に、もう1人の男児も行方不明。
これは、誘拐されたのでは!?と慌ただしくなり──
夜になった頃⋯。行方不明になっていた、お2人が馬車に乗って発見されました。見つかっていない間は心臓が常に止まりかけそうになりました。
ただ、ソフィ様が帰還された時⋯綺麗に着飾っていたはずの髪型も解けていてドレスも少し汚れており、何があったのかと問い詰めたかったのですが!ソフィ様は、さぞ誇らしげに胸を張って帰って来られました。
あまりの変貌ぶりに私は目を疑いました。でも、彼女が良い方向へ変わっていってるのではないかと少し期待もしたのですが⋯⋯事件の翌日、朝から呼び出され何事かと思えば『服を買いに出かける準備をして』と言われ、言われるがままに支度し店に来てみれば⋯。
「これとこれとこれと⋯スイスさん!頼み事があるの!」
スイス様とは、ここのオーナーの方で、デザイナーも務めていらっしゃるお方なのです。
「どうされましたかな?」
「オーダメイドを作って欲しいのよ。紙と筆あるかしら?」
「かしこまりました、少々お待ち下さいませ」
そして、スラスラと紙に何やら書き始められたソフィ様。その書かれた何かを見られたスイス様は⋯
「素晴らしい⋯!!ソフィ様!!私は感無量で御座います。このようなデザイン、初めて見ました」
「ふふ⋯とりあえず。これを用意してもらっても?」
「えぇ⋯!!ソフィ様。私が、こんなことをお願いするのは、はばかられるのですが⋯!このデザイン⋯売って頂けないでしょうか」
「へ?⋯そうね。おいくらで?」
「この服の利益6割をソフィ様に」
「6割も?!コホン⋯いいわ。それで手を打ちましょう」
「あとは、こちらのアクセサリーも⋯」
そうして、おふたりは勝手に話を進められたのです。そこでお嬢様は『着替える』と仰られ着替えられたまでは良かったのですが⋯。
まさか、男の娘になるとは思いもしませんでした。いえ、確かに⋯!!買い物されている洋服が何故か全て男物だということに気づいていましたけれども。
まさか⋯まさかっ!?あの、お嬢様がこんなお姿になられてしまう日があるなんて⋯!!ショックで泡を吹きそうになりました。
「ネル?これどうだい?似合ってるだろう?」
声の音色を変えて⋯まさに男の娘。女性だと誰もが思わないでしょう。髪が長いにも関わらず、男の子にしか見えません!!私達⋯せっかく着飾っていたのに!!
でもっ⋯!!
「え、えぇ⋯ソフィ様⋯」
「えっと⋯。今にも倒れそうだけれど⋯大丈夫かい?」
あぁ⋯!!何故か眩しく見えて仕方ありません!素敵に見えてしまうのはどうか、お許しください⋯。ソフィ様⋯!!
「だ、大丈夫で⋯ございます⋯わっ⋯」
「ちょっと待って?鼻血が出ているよ。早く、止めないとね」
あぁ⋯!そんな普段から微笑まない方が!!優しげに微笑んでいらっしゃる⋯!!青白いせいで少し、儚げに見えるのがまたイイっ!!
「ネル?!」
私は、うっかり気を失いました。あぁ⋯ソフィ様のお声が⋯遠くなってい⋯く⋯。ぐ⋯⋯⋯ふっ⋯⋯
私は、ゆっくりと暗闇の中へ⋯誘われるのでした。