37、波乱の予感?
皆様、ごきげんよう。ソフィです。
只今、朝食を⋯食べに来たのですが────。
「おはようございます。お待たせ致しましたわ」
「おはよう、ソフィ。全然待ってなか」
「ありがとうございます」
「あ、あの⋯私もお邪魔してしまって⋯⋯」
「俺もだよ」
ピシャアァアアアン!!!!!
どこかで雷が落ちた。
待って下さいませ⋯⋯!まさか⋯まさか⋯⋯!!レン様ぁああっ?!!何故ここに?!!
「さぁ、仲良く4人で朝食を頂こうか」
そう、レン様は有無を言わさないお顔と、お声で私達を席へと連れていった。
「凄く暗い顔をして、どうしたんだい?ソフィ」
「えっと⋯その⋯なんでもないですわ」
私は黙々と食べ続ける。全然、味がしません。せっかくの⋯!!せっかくのお料理が!!
「タルアニア様⋯⋯美味し⋯いですね?」
「え、えぇ⋯⋯そうね」
朝からいろんな目に終始、晒された。
妬みを含んだ目、好奇心の目、蔑みの目。殆どが蔑みの目で私を見ていた。そして、ボソボソと言われるのだ。
「ねぇ⋯あの女⋯⋯男子寮から出てきたのよ⋯」
「規則違反よ⋯しかも⋯⋯最低ね」
「公爵だからって、忍び込むなんて⋯」
「でもどうやって忍び込んだんだ?」
うわぉ⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯!!これはとんでもなく悪評がついているわ!!やっばい。ミスった、初っ端からミスった!!
私のバカ!!仕方ないとはいえ⋯⋯バカ!!そうやって、落ち込んでいると私より落ち込んでいる人がいた。
リアムである。
「り、リアム?大丈夫⋯⋯?」
「⋯⋯⋯⋯くっ⋯⋯⋯⋯」
そう。リアムが私を保健室に連れて行ってくれた時に、男子寮から出てきたものだからそこの一部始終を見られていたのよね。皆に。
でも、あれは一大事だったし⋯アイラお姉様に助けて貰ってなかったら、どうなった事やら。
全然、大丈夫なのに──。
申し訳ないわ⋯と思っていると。隣に座る、アイラお姉様と。斜め前を座っているレン様から黒い何かがでてきた。
そして二人揃って、にこやかに笑っている。え?なんか、いや怖い。怖いわよ?!!2人とも!!そうして、その怖い笑みを噂している人達に向けていき───
朝から気絶者が続出した。
因みに2人がどんな顔していたのかは見えなかった。はぁ⋯怖かった。そうして、味も全くしない美味しいかさえも分からない朝食を食べて⋯⋯今は教室にいた。
どうやっても離れられないのは分かっていたけど⋯⋯まさか、席まで密集するなんて───。
教室の中は真正面の壁一面に黒板があり、教卓が黒板の前に設置されている。左右に三人ずつ座れる長机と長椅子が設置されており、左右真ん中が通路となっている。
私は1番前の右側真ん中の席で左右に、リアムとレン様。その後ろに、アイラお姉様とグラウスとアクア。そして⋯その更に後ろにはスザク先生とスクラがいた。
うわー⋯何だこの密集───。
リアムと、お姉様は良いとして⋯なんでお隣がレン様なんですか。私、殺されますよね?!
どう考えても殺されますよね?!!!公爵という爵位が今の私の盾だけども!!爵位変わんないけど!!
それだけじゃなくて、リアムも私の盾に入る⋯?私は次期、王女としてなる予定だし⋯それに婚約してるからね!!それも盾のうちに入るわね。
初っ端からキツイです⋯ホントにやめてええぇ────と嘆いても仕方がなかった。
それから先生がやってきて。
「皆さん、おはようございます〜」
そう軽やかに入ってきた先生は女性だった。それがまた⋯どストライクをついてて───
目は終始笑ったままで、喋り方もおっとり口調。
そうして、ブロンドヘアがクルンっと軽く巻かれており⋯⋯⋯⋯⋯Excellent!!素晴らしいわ!!!
終始笑顔のせいで不意に見せる瞳がまた───いいの!!!と、妄想を膨らませていた。
「ソフィ・タルアニアさん〜、私を熱烈に見てくれるのは良いんだけど。ちゃんとお返事して下さいね?」
「は、はいっ!!申し訳ございませんわ!!」
名前を呼ばれていたらしい。あら、いつの間に───。
部屋中からクスクスと笑いが起こる。
「皆さん?静かにして下さいね?」
先生の声のトーンが明らかに数段下がって⋯更には部屋が一瞬にして寒くなった。え、魔法?
「ソフィさん正解ですよ〜」
えっ?!!心の声を読んだ?!!
先生は笑うだけだった。
終始笑顔も素敵です!!!!
「ふふ⋯⋯ありがとう」
ぇぇええええ!!?絶対⋯私の心の声を聞いているわ!!どういうことか分からないけれど!!
こ、これは試してみようかしら⋯⋯。
先生⋯⋯素敵です!容姿も勿論どストライクに好みですが!憧れますが!それに⋯お声も!!高音ボイスから低音ボイスまで完璧に素敵!!
それと、クスクスと笑ったクラスメイトをたったの一言で恐怖に陥れたお姿も麗しいです!!!かっこいいです!!
「あらあら〜そんな事まで褒めてもらえるとは思っていなかったわ」
先生の頬はほんのり赤い。それと同時に寒かった部屋も、通常の温度へと戻る。それより、私にとってはどうでも良かった。
初っ端から、先生の⋯⋯!!照れを!!照れを拝見させて頂けるなんて!!!可愛いいいぃぃ!!私、前世ではイケメンだけでなく美少女も好きだったのだ。いやもう皆さんご存知ね。
『毎回、誰に向けて言ってるのよ』
それは気にしないの!
「皆さん、ソフィさんに感謝して下さいね〜?お陰で、命拾いしたんですから〜」
はぁ⋯⋯可愛い⋯。断然、授業やる気が出たわ!前世だと、2次元のキャラに、この教科を教えてもらいたい!!とかって妄想を繰り広げていたわね⋯。
結局、勉強しなかったけど。今世では真面目にやります!!
「あ、そうでした〜。私の名前⋯言うの忘れてました。私の名前は⋯⋯フロウ・ウィンディーネと申します。このクラスを3年間、見ていきます〜。皆さん仲良くして下さいね〜?」
はいっ!!!仲良くして下さい!!!名前まで全部素敵ぃいいい!!
「元気な、お返事ありがとう〜。褒めてくれてありがとうね〜」
教室は静かである。誰一人、声を発していない。誰に対して言ったか。否!!絶対、私に向けてである。なぜなら!見られているから!!
このことに気づいているのは──私だけ⋯??
リアムも不思議そうな顔してるし⋯レン様も⋯⋯。あれぇ?優秀なはずなんだけど??
まぁいいわ!!だって、先生の秘密?か、分からないけど知れちゃうとか!!なんだか!ファンだけの秘密みたいで良いじゃない!!
「さぁて、この学園には〜。部活動というものがあります。強制的に全員が入れという訳ではありませんが〜入っている方が進路にも有利に働きますので。是非、皆さん入りましょうね〜」
ぐっ!!はいっ!と速攻に頷きたいところだけど⋯。先生が言った通り帰宅部とは言わないが、その部類も勿論ある。
まぁ、主人公のアイラお姉様とその他の攻略者全員──生徒会と呼ばれる部活動⋯に参加する羽目になるんだけどね。勿論⋯私は、生徒会かと思いきや闇魔法部。
生徒会くらい主人公とイケメンがいちゃラブして欲しかったから生徒会の誘いは強制不参加。蹴らせたのよね。
とにかく、闇魔法部にも入らないけど。帰宅部が1番いいしね。とりあえず学園の人間とは極力、関わらないようにして無事に卒業出来ればオッケーなんだから!!
何だかんだ、上手いこと行き過ぎているのだ。婚約破棄だってそう。普通の小説とかアニメとかなら、婚約破棄するまでに至ってかなりの苦労とかありそうなものの私、何にもしてないもの。
リアムが頑張ってくれてたから婚約破棄も見事に成立。しかも恋まで成熟。おかしいでしょ?学校に入ってから試練が一向にない。いや、入学したてで3日目だけど⋯。
「優秀な人のみ〜生徒会に推薦されますので〜もし断ろうものなら⋯⋯」
カッと先生の目が開く。
「どうなるか分かりませんよ〜」
なっ!なっなっ!!?これは⋯!!正しく脅しだ!!いやでも⋯⋯来るはずがない─────!!なぜなら!!影が薄いから!!
───
──
─
あちゃー⋯⋯私⋯影が濃かったみたい。
何故だろう⋯。まず入学式は遅れて別に咎められることも無く無事参加。その後、生徒の間で噂になるはずもなかったハズ⋯なのに。
先生が部活動の話をしてから、自由時間となった今⋯ヒソヒソと話されるのは私の事だった。あーそうだった。
私やらかしてたんだった。朝食で噂されてたじゃない⋯。先生に出会ったイベントですっかり飛んでたわ。
「あの女よ、男子寮に潜入して獣人と仲いいクソ女は」
あらやだ、貴族様がなんて汚い言葉を仰るのかしら。
「あぁ、あの女か。どんだけ男好きなんだよ。しかもあの顔で?相手してもらえると思ってんのか?」
何よ。リアムがうんと愛してくれてるわよ!!こんな顔だけど!!ていうか、お前誰!!モブがしゃしゃり出てくんじゃねー!!
「あ〜でも、あの子が破棄されたみたいで良かったわ。あんなのが、王子の婚約者だったなんてとんだ恥知らずよ」
はいはいー分かってますー。リアムが頑張ってくれたんですよ〜凄いでしょーアンタも恥知らずだけどね、堂々と陰口叩きやがって。
そんな陰口叩く人達に向かって、何故か共に行動にする事になったアイラお姉様がその人達に顔を向けた途端、ガタガタと怯え出すのだ。
そして仕舞いには───腰から崩れ落ちる令嬢もいた。恐怖で震えていたのだ。あら?アイラお姉様どんなお顔してるのかしら⋯⋯何故か上手いこと顔が隠れて見えないのだ。
朝食の時も少し怖かったけれど⋯⋯。
いやそう言えば⋯⋯気絶してた人が居たな。とりあえず、部活動を見て回ることになったのでした。




