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33、極悪令嬢はやはり極悪令嬢だった

※残酷的描写があります






「ふぁっ⋯⋯」


よく寝たわ⋯⋯。アイラは、まだ寝ているみたいね。


『あら?お姉様はどうしたの?』


えーっと。何だか近くにいると⋯⋯お姉様ァァァ!!って叫びにくいって言うか??気分よ気分。


『ふぅん⋯』


「髪⋯整えて支度しなきゃ⋯⋯」


起こさないようにしよう。ソローっと移動して⋯と言っても。私にとったら移動を静かになんて、お手のもの。


まず、闇魔法のエキスパートだし。訓練を詰んだからね。難無く、目的の場所にたどり着いた。そうね、髪も乱れてないし⋯⋯というか。


私はストレートヘアなのよね。癖がつかない。そして、金色の瞳。って自分の容姿なんてどうでもいいわ。早く⋯支度しよう。


今日はやることがいっぱいなんだから!まずは、行きつけの服屋に。その後は、日用品を揃えて⋯⋯。


後はグレン先生の所に行かなきゃね。もう、あの家に戻る事は二度と無いわ。顔を合わせる事もね。


そんな思いは、簡単にあっさり裏切られることは知らずに───。




───



アイラには、置き手紙を残してきた。ていうか寝顔がめちゃくそ可愛かったぞ!!!なんなんだ!!


これ確実、男が居たら襲われもんだわ。罪な女性を作ってしまったわね⋯。って、感傷に浸ってる場合じゃない!


部屋から裏通りへ転移(テレポート)して、まず洋服店へと思って転移(テレポート)したら────



「捕まえた」



ガシッと、腕を掴まれ──




挙句には、催眠作用のある布を被せられ──




私の意識は、そこで途絶えた。




───


──



「またか⋯⋯」


目を開ければ⋯見慣れない天井。

此処は⋯地下牢か?と思ったが普通の部屋だった。


手にはジャラリとなる金属音。これは⋯鎖ですか。


『ごめんなさい⋯貴女が気を失うと私も気を失うの⋯』


仕方ないって!だって、一心同体なんだから。それに⋯ソイやウィンはいる?


『いるヨ!』


『いるゾ!』


良かった⋯⋯此処は何処か分かる?


『うんーとだナ⋯⋯』


『洋服の裏通りかラ、そんなに離れてないヨ』


分かったわ。ありがとう。それから⋯この鎖、外れそう?


『ボクに任せてヨ。楽勝だネ!』


ありがとう。合図を出すまでダメよ。


心の中で会話をしていたら──


カツカツと靴の音が聞こえた。




扉を開けた先に現れたのは──





貴女ね⋯。会うことは無いと思ってたのに。何を今更、誘拐まがいな事をするのかしら。


「お母様⋯⋯いえ、カンタレラ家の奥様が一体、どうして私を誘拐なさったのですか?」


「貴女─────分からないの?!!」


分かりたくもない。


「貴女のせいでっ!!家はもう、壊滅状態よ!!!」



昨日出てきた今日で知るわけが無い。



知らないから、グレン先生に聞きに行こうとしてたのに。いつまで、私にまとわりつくのだろう。


「私は──ソフィ・タルアニア。関係の無い話ですわ。それに、これは立派な犯罪ですわよ?」


「貴女が⋯⋯居たから!!使用人も全員が辞めていって────あの人は、何もしない!!!」


私の声に耳を傾けることなく、1歩1歩私に近付いてくる。


「貴女が居なければ⋯存在しなければ⋯!私達は⋯!苦しむ事も⋯!辛く生きることも⋯!名誉もない底辺のままではなかったのに⋯!!貴女は⋯貴女は⋯!!全てを奪っていったァァァァァああああああああぁぁぁ!!!!!!!!」


そういうが早く、金切り声をあげて私に向かって襲ってきた。







切って。







キンッ───


ガシャリ────


まずは座ったまま素早く斜め上に回し蹴り。顔を見事に命中させて左へ吹っ飛ばす。アベリーナ・カンタレラは呆気なく吹っ飛ぶ。


「⋯⋯うっ⋯⋯!?」


ムクっと私は立ち上がる。


あらあら、まだ気絶しちゃ困るのよ?


「ねぇ、アベリーナさん?貴女が散々、私にしてきた事⋯覚えてる?今のも私にやった事よ?部位は違うけど。貴女がやる事って陰湿なの。見えなければしていい?そんな訳ないわよね?」


彼女は私を憎悪の目で見つめていた。


「ふふッ⋯⋯⋯そんな目を出来るのも⋯今のうちよ?」





その目を恐怖で、殺して欲しいと願うほどに切望するほど絶望でいっぱいにしてあげる。





今の私は正しく(まさしく)、極悪令嬢のソフィに違いない。


「あぁ⋯⋯貴女の⋯⋯綺麗な自慢の髪⋯⋯抜けたらどうなるかしら?」


ガシッと、彼女の髪を掴む。


「いたいいたいたいたいいたいたいたい痛いっ!!!」


「えぇ、私も痛かったわよ。こうやって貴女に見下ろされる日々を過ごすのも。こうやって、髪を毟られるのも⋯。でも、これくらい何ともないわよね?ふふっ⋯」



本当は精神的苦痛だけじゃなかった。




見えないところで⋯肉体的暴力を受けていた時期がある。使用人が、私の身の回りの世話⋯お風呂とかそういうのは一切しなかったの。嫌がらせでタオルとか置いて出ていったわ。現代人の私には、逆に良かったから助かったけどね。


人に見られながらなんて、無理。


まぁネルだけは例外だったけれど。よく世話を焼いてくれた。ネルが担当の時は傷がバレないように⋯⋯


魔法を使って隠したり──


グレン先生に、たまーに見てもらったりしてたの。私は癒せないからね。それから、実はと言うと⋯髪の毛に関しては、生やすことが出来たの!


なんせ設定で髪の毛伸びて巻き殺しとかあったからね!!結局失敗するけど。


とりあえず⋯その出来事(両親がしてきた事)は、私が転生して10歳になるまでの3年間の話と今現在の数年含めた話である。





正直、辛かった。





辛かったっていう気持ちだけじゃない。





何度も実は死にたかった────






この世界が私を必然的に殺すより先に、私自身が命を絶つ方が早いんじゃないかと思った時もあった。







でも、負けたくなかったし⋯⋯私は大人だから大丈夫と思って耐えに耐えまくった。




大人だから大丈夫なんて、そんなことは無い。子供でも大人でも関係ない。逃げたかった。だけど、逃げることは許されなかった。




だから当時、私の7歳の頃の3年間───




唯一の癒しはスザクとの貴重な授業の時間だった。その時だけは、私が何の為に耐えているのか再確認が出来たから。


3年間耐えきった努力は無駄じゃなかった。


10歳を迎えた頃には逃げることが出来るようになった。だけど、肉体的暴力を回避することはもちろん出来る実力はあったけれど⋯闇魔法を使用すればバレてしまうから使えなかった。


痛みに耐えたよ。





あははははッ!!!!!






「こうやってね?上に引き上げるでしょ?」






ブチブチブチ──





「いやぁああああああああぁぁぁ⋯⋯⋯!!!あぁああああああああああああぁぁぁっ!!!」


いとも簡単に抜けちゃうのよねぇ⋯⋯だって、お歳だから。


「あらあら?自慢の髪の毛がこんな簡単に抜けたわ。私の時は、こんなんじゃなかったわよ!ふふふ!」


『ソフィ⋯⋯それくらいにしときなさい』


そうね。これぐらいにしとかなきゃダメよね。日本だったら、警察に捕まってるかもしれないけど、正当防衛だし。でもね?


「やっていい事と、やったらいけない事ってあるのよ。それにね?子供は親を選べないから───」


「ハァハァハァハァハァ⋯⋯⋯!!」


過呼吸になる彼女。


「本来だったら⋯⋯⋯もっと怖い子に育ってたわよ?あなた達のお陰でね(十分怖いのである)??ふふふふふふッ⋯⋯⋯!!!」








そして、次に私を見た時の彼女の瞳には──







恐怖と絶望を───瞳に映していた。









私の口は弧を描いて笑った──。





───



──



って、気絶した人を此処に置いたままじゃ駄目ね。髪の毛は証拠隠滅⋯と増やしておいてあげよう⋯。


再生(レナトゥス)


綺麗に何事も無かったかのように──髪の毛を闇魔法で増やしてあげた。少し増量しておいてあげたわよ。


私ってば優しい!


それと回復薬だけ飲ませて無傷にしておこう。せっせと、飲ませて傷を直した。




え?これぐらいの報復で良いの?って?いい訳ないじゃない。だけど、生きてる方が辛いって思わせてやるわ。死なんて、痛みも何も感じないでしょ?苦痛は味わってもらわなきゃ。





『怖かったヨ⋯⋯』


『だナ⋯⋯』


あら何か言った?


『『何も言ってなイ!!!』』



そう?



なら、いいわ。大人って理不尽よね。子供相手にあんな事が出来るんだから。体力も力もない弱い子供に⋯⋯しかも⋯







お腹を痛めたはずの子を──







いとも簡単に壊すんだから。








まぁ、私は母親になったことがないから想像しか出来ないけど。でも⋯いつかはリアムと───って、きゃあああっ!!私ったら恥ずかしい!!!


『はぁ⋯⋯能天気ね⋯⋯』


「大丈夫よ。私、演技だけは得意だからっ!!大根役者じゃないわよ!!見てなさい⋯!!」


そうして、地下を上がった直後──




バァン!!





思いっきり扉を開け──

無我夢中で、明るい通りに出る。

そして、わざとコケた。




そうして注目を引く───。




「誰か⋯っ⋯⋯⋯助けてっ⋯⋯」






涙をいっぱい瞳にためて───






あ、因みに服装もボロボロにしたわよ。そこへ、騎士様達が来てくれた。


「君っ!どうしたんだ!?」


「わたッ⋯しっ⋯⋯」


「ゆっくりでいい⋯⋯大丈夫だから。ゆっくり話してくれるか?」


何故、騎士が来てくれたのか、素人の人から見ても上等な貴族の服装を着てるし、それがズサンな格好になって、しかも助けて!なんて言ってたら、何事か!ってなるわよね。


「⋯ゆうか⋯いっ⋯され⋯てっ⋯⋯⋯」


「誰に⋯⋯?」


「カン⋯タレラ⋯⋯⋯そこ⋯から逃げてきた⋯のッ⋯⋯⋯頭ぶ⋯⋯つけてッ⋯⋯気絶した⋯のっ⋯⋯」


「何だって!?おいお前ら!確保だ!!」


「「「「「ハッ!!!」」」」」


そうして、あっという間にお母様は捕らえられた。昨日の時点で、カンタレラ家は目をつけられていたようだ。


それから、既に父親が娘を手にかけたという裁判が行われていたが、更に母親は監禁の上、娘の殺害を試みたと加わり──




カンタレラ家が破滅を辿るのは確定事項となった。




そうして、演技を続けている所へ⋯。聞きなれた声がした。





いつも、そばに居てくれた人──。






「ソフィ様っ!!!」


「ネ⋯ル⋯??」


「ソフィ様っ!!!!!」


「貴女は保護者(・・・)ですか?」


「はい。そうです。ソフィ様のお世話をさせて頂いている者です」


「そうですか。彼女も、貴女を見て落ち着いたようですし──こちらで、あとは処理いたします。しかし、この件について聞きたいことがあるので後日迎えを⋯⋯」


「分かりました。ソフィ様はクラモロンス学園に通っておられますので、そちらに通達を」


「分かった」


そうして、野次馬の中に──行き付けの洋服の店主⋯スイスさんが来てくれたのだ。


「ソフィ様⋯!お着替えを!」


「スイスさん!」


そうして、服屋へと連れて行ってもらい⋯綺麗な洋服に身を包んだ。


「スイスさんが来てくれて良かったわ⋯」


あのまま誰も来てくれなかったら、騎士団に捕まってた。あとは治療とか。私は無傷だけどね、それより相手の方に一杯食わせてやったから。


実際、何もされてないし。オタク女子なめんなよな!!と言ってあげたいところ。


『まさに、悪役令嬢だったわ。でも、あの時の痛みが分かるから⋯弱者の気持ちも分かるし、今の貴女を作った訳だしね』


言わないで⋯ほんのちょっと反省してるんだから。だけど、そう言ってくれてありがとう。あの時があって今の私がいる。


「ソフィ様⋯⋯」


「スイスさん、沢山聞きたいことはあると思うのだけど──手短に失礼するわ。私がデザインしたドレスを数着と寝間着と⋯今まで貯めていたお金を学園の費用に当てたいの」


「畏まりました。お任せ下さい」


「えっ?任せていいの?」


「はい。ソフィ様の為ですからね」


「スイスさん⋯⋯本当にありがとう」


そうして、重要な手続きは行ってくれるようで安心した。


「ソフィ様⋯⋯」


「ネル⋯⋯」


「申し訳ございませんッ⋯⋯⋯!!」


ネルが土下座をしたので驚いた。え?!なになに?!!何があったのよ?!


「ど、どうしたの?」


「ソフィ様が⋯⋯⋯大変なことを察知できないなど───一生の不覚⋯⋯!!死んで詫びます!!」


「死なないで?!私にはネルが必要なの!!」


「───!?わ、私が⋯必要なのですか⋯⋯?」


「えぇ⋯⋯ネルは私にとっての命の恩人であり、信頼出来る数少ない⋯大切な人だもの」


『そうよ。貴女がいたから⋯今の私がいるのよ。貴女がいなかったら、私は今頃この世に居ないわ』


そうは言うけど、既に死んでるわよ?


『だって今、貴女の中に私は少なくとも存在しているし⋯別に魂を入れるなんて魔法使わなくたって良かったのよ?』


た、確かに⋯⋯。


『私は、少なくとも助けてもらった命を⋯⋯まだ繋ぎ止めたかっただけなのかもしれないわ』


ヒソヒソと心の中でソフィと話をしていたら。


「ソフィ様───私⋯ネルは⋯お嬢様に一生ついて行きますっ⋯⋯!!」


それは困るわね⋯。結婚適年齢ってのがあるし⋯⋯ネルなら良い旦那様が見つかりそうだし。


「ありがとうネル。でもね?貴女も、ちゃんと素敵な人を見つけてね?」


「嫌です!!」


と返事された事は聞かなかった事にしよう。



それから、服は私の寮の部屋へ運んでくれるとのこと。


休日にお出かけする時に服は必須だからね。普段は、制服でも良いけれど⋯。流石に外へ出る時は──人の目があるからね。特に女子学生の。


そうだ、スイスさんがね?私が新しくデザインした新作を数着、運んでくれるらしくて⋯⋯。


まぁ、デザイナーは私だしね?少しぐらいは⋯なめられないと思いたいわ(既に遅しである)












この時、既に──私の評判がガタ落ちなのは知る由もなかった。







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