30、私の救世主は女性でした
アイラside
今日は入学式───。
私は一応田舎の貴族ではあるけれども⋯ほぼ平民と変わらない。名前だけの貴族だった。なんせ、男爵家ですし。
でも、それを不自由に思ったこともないし、両親はとても私を愛して下さっている。とても優しい家族の元に産まれて良かったと思う。
そして、両親を助けたいと、いえ。お手伝いしたいと思ったから勉強にも勤しんだ結果。学園での特待生枠に入る事が出来、学費免除⋯両親に負担をかけることなく学ぶ権利を手に入れたのまでは良かった⋯。
男爵令嬢と言えど最低限のマナーは身に付けていると思っていたけれど──今、現在。疎外感が私を支配しています。
どこを見ても、完璧な令嬢達。立ち振る舞いだけで全然違う。幼い頃から積み上げられてきた気品というものを私は、私なりに感じ取っていました。
そして、サイラという花を見て⋯⋯私は学校への憧れと不安を胸に門をくぐりました。
────
──
あれっ?入学式が始まる講堂へ行こうと思ったのに、此処は一体⋯⋯。えっとこれは、まさか───私、この歳で迷子になりました⋯?
と言っても、本当にこの学園かなりの広さがありまして⋯。迷わないという方がおかしいと言いますか⋯⋯。
迷ってキョロキョロしていると、ここの男子生徒さんでしょうか?私に話しかけて来られました。
「ねぇ、君。迷ってるんじゃない?どこに行きたいの?」
「えっ⋯⋯あの私⋯入学式がありまして講堂へ行きたいのです───」
『が』まで、言おうとして急に手首を掴まれた。
「講堂ね。俺、知ってるから連れて行ってあげる」
「えっ?!えっと!その申し出は有難いのですが──」
手首を離して欲しいと言おうと思ったところで、話す隙は与えないとでも言うかのように話を遮ってきました。
「大丈夫大丈夫。俺2年。まさか、君みたいな可愛い子が入学してくるなんて、ホント1年遅く産まれてたら良かったわ」
えっと何を言いたいのか⋯よく分かりません。でもこの人⋯貴族?と言う割には⋯言葉遣いがなっていませんし⋯気品というものを感じられません。
この人は、本当に大丈夫なのか───などと考えている間に、人気もない辛気臭い場所へと移動していました。
「あの⋯!!こちらに講堂はないように思うのですが!!お手を離して頂けませんか!!」
私は、思い切って彼に言ってみました。すると⋯⋯グイッと。そして、背中に軽い衝撃が。
痛いと思った時には既に遅く、手首を頭上で固定され────
「うっ⋯⋯!!」
「煩いなぁ⋯。ちょっと可愛いからってさ、調子乗んなよ」
もの凄く低い声に私は固まりました。その様子を見た彼は──ニヤリという言葉が正しいと思います⋯。
気持ち悪い笑顔をしたと思ったら私の服をあろう事か、脱がせてきました。流石に私は悲鳴をあげました。
「きゃぁ?!」
嫌だっ!!気持ち悪い!!なんでこんなこんなっ!!入学初日から⋯見知らぬ男性にこんな事をされる為に私は入ってきたのではありませんッ!!
抵抗しようとして、手に力を入れてみますが、ビクともしない。涙で視界が歪みました──嫌だっ⋯誰かっ⋯助けてっ───────。誰も助けに来ないって思っていました。
でも────
「とりやぁー!!」
とても威勢のいい声が突然聞こえました。
「ぐふっ?!!」
男のみっともない声が聞こえた途端に、拘束は解かれ私は自由になりました。
「な、何すんだテメェ⋯!!」
「あら⋯?失礼。何だかデカい虫が女性にまとわりついていたから思わず蹴り飛ばしてしまったの!おーっほっほっほ!!」
そうして彼に近づいて耳元で囁く彼女。
「貴方、このことを誰かに喋ったりしたら──貴方のフレイシア家も⋯*★○♭♯をひねり潰してあげる。されたくなかったら⋯⋯余計なことは言わないで下さいましね?」
「ふぅ⋯」
嘘っ⋯私を助けてくれる人が、居るなんて⋯⋯。本当に奇跡としか⋯思えない⋯。私はちゃんと言えているか分からなかったけれど⋯。
「あっあの⋯!助けて⋯下さって、あ、ありがとう⋯ございました⋯」
「いえっ⋯もう大丈夫ですから。えっと、とりあえずこれを着て下さいませ。それから保健室に行きましょう。と⋯失礼しますね?」
何だか⋯とても安心する声です⋯。もう危機は去ったというのに──震えは止まらない。足もガクガクして立てそうにもないです⋯⋯。
そんな私の肩にかけられたのは、人肌に温まった上着。その直後、浮遊感が私を襲いました。
「へっ?」
私はなんと⋯!!助けてくださった方に──お姫様抱っこされていました⋯!!は、恥ずかしいですし!!顔が近いです!!!
「あ、暴れないで下さいましね?それより抱きついて頂ける方が助かりますわ」
抱きつく──?!でも、そうしないと助けてくださった命の恩人と言っても過言ではない方に負担がかかるのは嫌です。
私は彼女の言う通り、抱きつきました。グッと私を抱き上げる力が少し強まったのは私をさらに安心させてくれました。
この腕の中にいれば⋯⋯大丈夫───って私ったら一体何を考えてるのでしょうかっ!!そんな変なことを考えていれば、ふわっと柔らかいベッドに降ろして下さいました。いつの間にか保健室という所へ連れてこられていたようです。
「痛むところはありますか?」
彼女は、しゃがんで私より目線が下になるようにして⋯心配そうに問いかけてくれました。安心して大丈夫ですよと顔が言っていました。
「手首くらいで⋯」
私は素直に答えました。すると⋯すぐ様、立ち上がり私の手首に氷をあてて冷やしてくださいました。この方には感謝しかないです。
婚約もしていない女子がお手付きと広まった場合、男爵家である私に縁談も来なくなりますし、学校など即退学になるところでした。
両親に入学初日から迷惑どころか──
破滅の1歩手前で救って頂きました───。
女性でも私のヒーローでした。私はこの方の虜になりました。えぇ、憧れ。助けに来てくださったのが偶然でも何でも構いません。
あの場に乱入することが出来る勇気をお持ちな所も尊敬すべき点ですし⋯この方のように私も強い心を持ちたい。
もし私が彼女だったら──
あの現場に乱入する事を拒んでしょうから──。
それでも人を呼びにいくとか⋯しているかもしれませんが⋯それでは間に合っていません。
「あの本当にありがとうございま⋯す⋯。なんとお礼を言えばいいか⋯」
か細い声しか出ない。ちゃんと喋らなきゃ⋯ならないのにっ⋯。
「そんなの気にしなくて大丈夫ですわ。あ、少し公爵令嬢らしからぬ事をしてしまいましたが御内密にお願い致しますわ」
あまりにスラッと出てきた内容に、掠れていたはず声は、ハッキリした声が出ていた。
「も、勿論ですっ⋯!えっ⋯公爵令嬢⋯?」
公爵様というと──貴族の中で1番地位が高い方⋯⋯!!
「ご挨拶が遅れました。私、ソフィ・カンタレラと申します。どうぞ宜しくお願い致しますわ」
カンタレラ様と仰るのですね。ってどこかで⋯聞いたような⋯。それより、黒い髪がとても綺麗で、黄金の瞳でしょうか⋯。とても綺麗です⋯⋯私は思わず見惚れていましたが──すぐ様。
「私もご挨拶が遅れました⋯申し訳ございません。私はアイラ・ユーフィリアと申します。どうぞ宜しくお願い致します」
「そろそろ落ち着きまして?」
そう言われて気付きました。
「えっ⋯あっ⋯。本当だ⋯。いつの間にか⋯震えが⋯。⋯⋯落ち着きました⋯」
怖かった思いは消えていないけれど、震えは止まっていました。カンタレラ様のお陰です。そう思うと自然と笑顔になりました。
その直後───カンタレラ様がグラッと崩れるようにして座り込みそうにっ!!
「カンタレラ様っ?!」
「だ、大丈夫ですわ⋯⋯」
そう言ったカンタレラ様は、何とか立ち上がられました。あぁ⋯カンタレラ様を巻き込んでしまいましたし⋯入学式が⋯。
「あの⋯入学式どうしましょう⋯」
思わず、呟いていたら──。
「ユーフィリアさんが大丈夫なのであれば行きましょう?」
まだ怖い⋯⋯1人になりたくない⋯。でも、この方が隣にいれば私は───。
「あ、あの⋯おこがましいのですが⋯。カンタレラ様が居てくだされば⋯私は⋯⋯」
「わ、私もついておりますから⋯⋯行きましょう⋯か」
カンタレラ様が、私と一緒に居てくださる!!それだけで私は簡単に幸福に包まれました。両親から幼い頃から聞かされていた、憧れの人ができた時、幸福に包まれるのだとか。
勿論、恋愛的な意味は一切ありません。私は、おもいっきり返事をしました。
「はいっ!!」
私は、この時1番いい笑顔をしていたと思います。
───
──
遅れて講堂へ来ましたが、事情⋯⋯。カンタレラ様が上手いこと言ってくださいました。それで、怒られることも無く難無く着席出来ました。
この学園の校長やら理事長のお話を聞き、最後に新入生代表としてレン・クラトゥニィウス様⋯この国の王子様です⋯。
彼はこちらの方を見ていたようですが──
一体何を見て──?
カンタレラ様⋯顔色が悪い??
「カンタレラ様、大丈夫ですか⋯?」
「だ、大丈夫ですわ⋯お気遣いありがとうございます⋯」
そうして、私の入学式は無事⋯⋯終えました。
カンタレラ様は家から通うようで、女子寮まで送り届けてくださいました。
あぁ⋯お優しいです⋯⋯!!そうして、お別れをして夜。寮の外が騒がしく何があったのかと耳をすましてみれば──。
「ねぇ、スペラードってとこの獣人がカンタレラ様をお姫様抱っこで颯爽と連れ去ったってホント?」
「ほんとよ!私、見たんだから!男子寮から出てくる所を──!」
「カンタレラ様、男子寮に入ったの?!ただのアバズレ女じゃない!」
「それだけじゃないわよ⋯!!あの獣人とも仲良さげだったらしいわ!!」
「獣人と仲がいいなんて、ただの気持ち悪い女じゃない。レン様と婚約だって──」
「今日発表されたわよ?!レン様の婚約白紙に戻ったらしいわ!」
「えっ⋯!?嘘っ!?じゃあ──!!」
「そうよ」
「ふん!あんな女が、レン様と釣り合うわけがないわよね!!公爵家だってだけで⋯!」
「しーっ!!大きな声出しすぎよ⋯!」
「ご、ごめんなさい⋯」
「あの、そのお話⋯詳しく聞かせて頂けますか?」
私がそう背後から、尋ねてみれば⋯ひいっ!と怯えられました。そんなに怖そうな顔をして──
一体どうしたんですか?
───
──
カタカタと震える彼女達を放って、カンタレラ様がいるであろう保健室へ急ぎました。おもわず、力任せに扉を開ければ大きな音が!私にこんな力ありましたでしょうか⋯。
「ハァハァ⋯⋯カンタレラ様はッ⋯大丈夫ですかッ⋯ハァハァ⋯」
息が苦しい⋯顔を上げた途端に見た光景はカンタレラ様が鼻血を吹いているところでした。
「ソフィ!?!また鼻血が!!」
私はびっくりしました。何故こんなことにっ!!
「なんでこんなにたくさんの血がっ!!カンタレラ様っ!!!」
何だか⋯⋯カンタレラ様の目が虚ろになった直後、カンタレラ様は硬直し表情もピシッと分かりやすく固まりました。
そして、眉が八の字に⋯⋯なんだかショックを受けているような⋯⋯。一体どうしたんでしょう⋯。
「⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯」
私はそっと近づき手を握り、なんて冷たい手⋯⋯まるで⋯死に──いえ、勘違いですね。私は心配で問い掛けました。
「大丈夫です⋯か⋯?」
喋る事が出来ないのか、頷いて下さいます。首には⋯⋯手の跡⋯⋯これは殺されかけた──私より酷いことをされて───声も出なくなって⋯⋯⋯。
私の憧れの人が─なんでこんな目に──。泣くべきは私じゃないのに、視界が歪み⋯⋯⋯⋯⋯。
「その首の⋯痣⋯痛いですよね⋯。うぅっ⋯⋯」
カンタレラ様は、私を助けてくださったのに私は何で何も出来ないんだろう。こうやって手を握ることしか出来ない。
私は無力です。憧れの人を守ってあげれないなんて───守れる力が欲しい⋯⋯。我慢していた涙が、カンタレラ様の手の甲に落ちた途端───!
「きゃっ?!」
「うわっ!眩しっ⋯!!ソフィ!」
突如、カンタレラ様の体が輝き⋯光が収まると⋯。
「あれ??」
「ソフィ!声が⋯出てる!!」
「ほんとだ⋯」
「へ??何が起こったのかな⋯」
私が流した涙が⋯カンタレラ様の手に触れた瞬間眩く光って──カンタレラ様は喋れるように⋯⋯。でも、首の跡が消えた訳では無いし⋯どうして?
「何かつっかえていたものが取れたみたいに、楽になったわ⋯。ありがとうございます。ユーフィリアさん」
カンタレラ様は、にっこりと微笑んで御礼を言ってくださった。私は貴女に助けられました。少しでも恩が返せたなら!嬉しいことは無いです⋯とも思いつつ⋯突然の御礼に私はアタフタとしてしまって⋯。
「えっ!?!私は何もっ!!」
「いえこれは⋯貴女の力ですわ。癒しの力⋯、ユーフィリアさん⋯ではなく様ですわね。聖女様ですわ」
「ええっ!?私が聖女⋯ですか?!!あの伝説の?!有り得ません!!」
伝説の聖女だとカンタレラ様は言う。私がそんな存在だなんて信じられないけれど──カンタレラ様を守れる力があるならそれに越したことはないですし。
もし本当に私にその力があるなら───こうやってカンタレラ様が怪我した時など治療が出来る。
この世界には魔物も沢山いるので何かあった時に助ける事が出来る───ありがとうございます。ってまだ決まった訳じゃありませんが!!
「教会に審査してもらえれば、すぐに分かることよ。現に、私はこうやって喋れているのだから」
「でも!!そんな事より!!」
「へっ?」
「急に、スペラード様がぐったりした様子のカンタレラ様を慌ててお姫様抱っこで保健室へ連れていったと皆様が噂しているのを聞いてッ⋯⋯いてもたっても、いられなくて!!」
思い出したら──あの彼女達のカンタレラ様の悪口を聞いて腹の底から煮えくり返る怒りとかを思い出すと──
また、涙が⋯泣いちゃダメなのにっ⋯⋯そう思えば思うほど涙が止まらなくなる。そんな私に、カンタレラ様はヨシヨシと頭を撫でて下さって───。
「ソフィの状態は、どう見ても異常だった。それに⋯⋯その⋯痣⋯を見たから保健室に運んだんだ」
「リアム⋯⋯ありがとうございます。惚れ直しました」
「バッ?!」
へっ⋯⋯⋯⋯惚れ直しっ⋯⋯カンタレラ様の愛の告白を聞いてしまいましたっ!!!顔がブワッと赤くなったと思います。
人様の愛の告白を聞いてしまうなどっ!しかも!カンタレラ様の!!何故か恥ずかしいです!!
チラッとカンタレラ様の顔を覗き見ると頬が少し赤いです⋯⋯⋯う、麗しいです⋯⋯!!とりあえず、気を取り直しまして────。涙も引っ込みました。
「とりあえず⋯元気になったようで、良かったです⋯⋯」
「す、すみません⋯」
撫でて下さっていた手はいつの間にかなくなっていて、カンタレラ様はお布団の中へ入っていきました。可愛い⋯。
「コホン⋯⋯。ソフィ、もし大丈夫なら聞かせてくれないか⋯?」
わざとらしく、咳払いをした彼。
「えっ⋯⋯」
布団から少しだけ顔を覗かせるカンタレラ様⋯可愛いです⋯!!
「うっ⋯⋯。話せるなら⋯でいい⋯」
「えっと⋯私は退出⋯しますね⋯」
これは聞かれていいことでは無さそうですし。と思って出ますねと言うと引き止められました。
「大丈夫です。聞いてくださいますか?」
そして、カンタレラ様は幼い時の話をして下さいました。
────
──
過酷な家庭環境で過ごしていたようです⋯。私とは大違い。地位が高いからと言って、お金があるからと言って必ずしも幸福な家庭とは限らない事を初めて知りました。
「今日は帰った直後、お父様に呼び出されたの。そうしたら、レン様との婚約が破棄されたと言われてね⋯私、浮かれていたの。で、気づかなかった。気づいた時には、首を絞められていた。怖くって何も出来てなくて。私これでも強いのよ?だけどなーんにも出来なかった。これだけ無力だと思わなかったわ。だけど、お友達が助けてくれてね。最後はまぁ⋯リアムの元に行ってたみたいね」
確かに⋯カンタレラ様が私を助けて下さった時──本当に強かったですし⋯⋯。
そんなカンタレラ様でも───この言葉の続きは呑み込んだ。
「だから、その痣⋯」
私は、意識を別のものに向けました。
「えーっと、痣って何かしら?」
「見てみてください⋯」
手鏡で、首元を見せます。カンタレラ様は驚いた様子もなく⋯たんたんと見ておられました。そしてふと思い出しました。
カンタレラ様は公爵家のご令嬢でありながら、レン・クラトゥニィウス様の婚約者であったことを。正確に思い出したのは⋯悪口を言っていたご令嬢の話を聞いた時ですが。
「あの⋯私、気になったのですが⋯何故⋯クラトゥニゥス様のお嫁は嫌だったのですか?」
「私、好きな人がいるので」
「そうだったんですね⋯」
7歳の時には既に好きな方が居たのでしょうか──。いえ、カンタレラ様が好きな方は今、目の前にいらっしゃる方ですしね。
何歳の頃なんて関係ないですね。私は祝福したい気持ちでいっぱいでした。なので⋯。
「上手くいって良かったですね⋯。その代わりにとは言いたくありませんが⋯⋯お父様に殺されそうになったという訳ですね」
少し残酷な事を言いましたが、カンタレラ様は動揺なされたりしませんでした。流石です。
「えっと⋯まぁ⋯そうね⋯」
と、こうしちゃ居られない!早く、準備をしなくては──!
「とにかく⋯!家に帰ったら危ないじゃないですか。寮に留まる許可を」
「でも⋯私もう⋯一般庶民になりますし⋯。もうこの学園に通えない⋯⋯」
確かに公爵家に戻ることが出来ないとなれば──
「大丈夫⋯と!!」
「へっ?!」
えっと⋯お名前はスペラード様でしたでしょうか⋯この方に考えがあるようですし、私は私に出来ることを。
「ソフィ⋯病み上がりで悪いが国へ戻れるか?」
「え、はい。ユーフィリア様のお陰でピンピンしております」
「私もできることをしたいと思います!では!また後程!」
カンタレラ様の為に、出来ることをしなくては⋯⋯!!私は、先生の元へ駆け込みました。




