27、危機一髪
うぅ⋯楽しかったけど目を開けなくちゃ⋯。
私は一生懸命、目を開けようとした。
そして目を開けて後悔した。
ぎゃあああああああああああぁぁぁ!!!
り、リアムさんのお顔が⋯おか、お顔が!!ど、ドアップ!!!まつげながーい!!瞳めちゃキレー!!お鼻高いっ!!そして唇っ⋯!!ちかちか近い!!!!いい匂いするぅぅぅううう。
「大丈夫と?!!ソフィっ!!!」
「⋯だ⋯ぶっ⋯」
私は大丈夫と言いたかったんだよ?大丈夫だって。でもね、声が掠れて出ない。何故だ、もう怖くないのに。
あの時はちょーっと⋯怖がってたけど、なんとか乗り越えた?気がするのよ!!ソフィのお陰でね!!
私だけじゃないって見守ってくれる存在がいるって、こんなに心強いんだって初めて知ったもの。
ねぇソフィ?
『なぁに?』
は?い?!
あれれ?幻聴かしら、ソフィの声が聞こえた気がするわ。あの夢の中で聞いた声ソックリ。やだやだ、なかなか話せないって聞いたばっかりよ?おーいソフィ。
『だから、何なのよ』
喋れるじゃん!?一体どこの誰よ!!話すのは難しそうって言った奴は!!!
『私だけど?』
開き直りやがったよ。ねぇ、ソフィさん?話が出来るならさ?最初から言っといてよ。悲し損したじゃないか。
『出来なくもないって言ったでしょ?勝手に勘違いしたのは貴女よ』
へいへい。屁理屈め。
ってさ。このまま家に帰れないし。あ、待って?私、身分無くなるじゃない??じゃあ、学園にも通えない?!という事は、一般庶民?!!!
え。
脱死亡フラグ?!!うっそん!!ヤダ!!やったわ!!今まで見てきた小説だったら、この後様々な困難が待ち受けて⋯みたいな展開だけど!!これで終わりじゃね?え、完結じゃん!!やったー!!!フラグ折れたー!!
『何、言ってるの?』
はい??貴女、公爵家じゃなくなったら⋯リアムと結婚できないわよ?身分違いすぎて。
「────────っ!!!」
ぬぉおおおおおおおおおおおぉぉぉぉっ!!!
そう叫んだつもりが出ていなかった。なんて悔しい。どうしよう。ダメじゃんフラグ折れても私の好きな旦那様といちゃラブできない!!やだ!!やだよ!?
『それと忘れてないかしら?貴女の所謂⋯推し?と主人公のいちゃラブも見たいんじゃなかったの?』
ぐはぁぁぁああああああぁぁぁっ!!!!
「──────────ぁっ!!!!」
またもや出なかった。かなり悔しい。ええどうしよう。でもフラグ折らなきゃ、死んじゃうし⋯リアムともいちゃラブ出来ないとか死んだ方がマシ。
それに推しと主人公の恋愛模様も盗み見したい!!!でも、学園入れないし⋯聖女であるお姉様が何とかしてくれるだろうし。
多分、私がいなければ平和に終わる。だがしかし───!!!
どうすれば私の平凡な願いは叶うのか⋯。どうやったって、無理ぃ⋯終わった。
死んでないけど終わった。
『とりあえず、分かったから早く答えてあげたらどう?かなり心配してるわよ??』
へ?どなたが?
『どなたがって⋯貴女の未来の旦那様よ』
!!!!!
そしてまた、意識が戻ってきて───。
今度は吹いた。え?何がって。
勿論、お約束である鼻血ですね。
ぎゃああああああああああああぁぁぁ!!!!
リアムの綺麗なお顔が真っ赤に!!!嫌ァァァァアアア!!!
リアムほんとに、ほんとにごめんなさい!!やだ私ったら!!好きな人を自分の鼻血で汚すとかありえない!
そして意識はまた飛んだ。
───
──
─
薄らと目を開けると、リアムが顔をふきふきしていた。顔を洗ってきたみたい。あ、可愛い⋯お顔ふきふきも可愛いです。
ご馳走様です。可愛いです。こんな思考でごめんなさい。というか、今回珍しく意識が戻るの早かったようです。
『生きてるよナ?』
『生きてるよネ⋯?』
目の前に、ソイとウィンが現れて問いかけてくれた。うん。2人のおかげで命拾いしてるよ。本当に助けてくれてありがとう。
『⋯その⋯ありがとう。聞こえてないでしょうけどね』
『あれ?ソフィの中から別の声が聞こえるネ?』
『そうだナ?悪いヤツか⋯?』
ソイの声のトーンが2段ランクぐらい下がった。やだ、怖い。大丈夫大丈夫!!違うの!この声はね7歳のソフィなの。
『『???』』
えっと⋯信じて貰えないかもしれないけど。私は、前世の記憶持ちであり⋯この世界は私が作り出した小説の世界であることを伝えた。
『へぇ⋯でも、ボクたち登場してないんだよネ』
『オレや、精霊様もだよナ?』
うん。それに私の嫁も嫁の国の人々もスザクも、私の小説に登場しなかった人物。
『貴女が起こした行動が未来を変えたからよ。きっとそう。本当の私だったら、こういう未来はなかった』
でも変えすぎだよ⋯物語補正がかかるかもしれない。だって現に⋯既に殺されかけたんだから───。
それを思い出した途端、涙が出た。
あの時⋯私の頭に浮かんだのはリアムの顔。最後に会いたい。いっぱい伝えたい事があった。大好きだって伝えたかったって⋯精神年齢おばさんが何言ってんだって思うかもしれない。
だけど、好きなものは好き。恋に理屈なんて通用しない。今まで3次元に興味はなかったけれど⋯リアムは初めてだった。一目惚れってホントにあるんだって。この世界に来て初めて知った。
『とりあえず落ち着きなさい。分かったから』
ちょっと今いい所なのに!
『リアムを待たせないで。お馬鹿』
うっ⋯⋯。
「リ⋯ム⋯ご⋯ん⋯なさ⋯」
リアムごめんなさいが出ない。
「⋯!!ソフィ⋯!!あ、声が⋯大きすぎた⋯ごめん」
ヨシヨシと私の頭を撫でてくれるリアム。え、何これ。なんのご褒美ですか。え、スチルくれスチルぅぅぅぅ!!なでなでスチルくれぇぇえええ!!!じゃなかった!!
「今、保健室にいるんだ。とりあえず何があったか後で聞かせて。今は喋るのが辛そうだから⋯」
コクっと頷く。あーリアムの方言聞きたかったのになぁ⋯でも、こっちのリアムも好きです!!
はぁ、私⋯癒しの魔法かけられてないけど癒されているわ!!!ていうか、掠れすぎじゃない?声。
「は⋯した⋯のに」
話したいのに、と言いたいんです。
声が出ねーくそぉー!!!!と嘆いていたら突如⋯
ガラッ!!パシンッ!!
なんの音ですかいな?!すっげぇ音がしたよ!!?今!!
「ハァハァ⋯カンタレラ様はッ⋯大丈夫ですかッ⋯ハァハァ⋯」
息切れした⋯アイラおねぇさまぁー!!!
ぐふっ⋯⋯!!!
「ソフィ!?!また鼻血が!!」
ダメね⋯主人公の威力には勝てないわ⋯。あ、因みに私が何故いつもお姉様って呼んでるか教えてあげるわ。アイラは、可愛いだけじゃなくて頼りがいもあるの。
それに私がただ単にお姉様と呼びたいだけ。これが一番の理由。なんていうの?こう⋯萌えー!!の代わりにお姉様ー!!みたいな。あ、ダメだなコレ。伝わらないやつだわ。とにかく私が好きな呼び方なのよ!!
「なんでこんなにたくさんの血がっ!!カンタレラ様っ!!!」
大丈夫よ⋯。あぁ、リアムとは違ったいい匂いがする⋯これが女子か。これが噂の女子なのか!!!
がおーっ!!!
そう、抱きつこうとしたのだ。
『はぁ⋯主、メッだヨ。凄く危ない人になってるヨ⋯』
ウィンが魔法で押さえつけてくれた。え、なんのあれですか??私を離せぇぇえええ!!!!M気質はないんじゃあぁあああ!!!!!
『そんな情報、誰も知りたくないわよ。黙ったら?』
ぐさっ。
「⋯⋯⋯⋯⋯⋯」
私がクリティカルヒットを受けて精神的ダメージを受け続けている間に、リアムが鼻血を拭いてくれていました。落ち着くと、アイラが近くに来てくれて、手を握ってくれたの。
温かいなぁ⋯人の温もりに感謝したい。
「大丈夫です⋯か⋯?」
コクと頷く。何だか泣きそうな顔をしている。なんでそんな顔をしているんだろう?だって、私たちは会って数時間も経ってないのに。私の為に⋯泣きそうって⋯。
いやこれがアイラなんだな。優しくて純粋な心を持った聖女様。流石だわ。私には勿体ない。もし男だったら即求婚するのになぁ〜。なんて言ったって!私の理想の女性だからね!!
「その首の⋯痣⋯痛いですよね⋯。うぅっ⋯」
我慢していた涙がポロッと零れ私の手に雫が落ちる。
そして私の体が突如光った────。
え⋯まさか⋯!???
「きゃっ?!」
「うわっ!眩しっ⋯!!ソフィ!」
光が収まると⋯。
「あれ??」
「ソフィ!声が⋯出てる!!」
「ほんとだ⋯」
「へ??何が起こったのかな⋯」
1人で考え始める、アイラ。考えるアイラもサマになるわぁ⋯。
「何かつっかえていたものが取れたみたいに、楽になったわ⋯。ありがとうございます。ユーフィリアさん」
「えっ!?!私は何もっ!!」
「いえこれは⋯貴女の力ですわ。癒しの力⋯、ユーフィリアさん⋯ではなく様ですわね。聖女様ですわ」
「ええっ!?私が聖女⋯ですか?!!あの伝説の?!有り得ません!!」
そう。聖女は伝説の存在。それに、聖女が誕生したということは⋯この世界に危機が迫っているという設定である。
あれ?結局、世界が救われなかったら私⋯死んじゃうじゃない!!すっごい今の今まで思い出せなかったわ!!
でもまさか⋯覚醒するのが私の怪我が原因だなんて⋯。確か、目覚めるのはもう少し先だったはず⋯。
入学当初から、虐められたアイラは孤立する。そんな時⋯レン王子と親しくなり学園に化け物が襲いに来る。
その際にレン王子が率先して挑んだ。けれど敗れ⋯その時にレン王子を癒す為にアイラの力は覚醒し⋯聖女だと分かる。これが正規のシナリオなんだけども。そもそも出会ってないわね。
「教会に審査してもらえれば、すぐに分かることよ。現に、私はこうやって喋れているのだから」
「でも!!そんな事より!!」
「へっ?」
「急に、スペラード様がぐったりした様子のカンタレラ様を慌ててお姫様抱っこで保健室へ連れていったと皆様が噂しているのを聞いてッ⋯いてもたっても、いられなくて!!」
ぇぇえええ⋯あー泣かないで!!泣いちゃダメぇぇぇぇ可愛いからぁああ!!!
女の涙に私は弱いのよ!!
って待って?みんな噂??ギギギと顔をリアムに向ける。というか待って?お姫様抱っこ??
はいぃぃぃぃいいいいいいい!???
なんでそんなめちゃくちゃキュンキュンするイベント逃してんの?!私!!いや起きててよ!!いや待て待て。それより重くなかった?!
前世の世界みたいに薄着だったらいいけど、今は制服とはいえドレスには違いない。重いに決まってる。なのに軽々と抱き上げたそうな!
惚れ直すじゃないか!!大事なことなので、もう一度。惚れ直すじゃないかぁぁああああああ!!!
ハァハァ⋯疲れたわ。叫びすぎた。
「ソフィの状態は、どう見ても異常だった。それに、その⋯痣⋯を見たから保健室に運んだんだ」
「リアム⋯ありがとうございます。惚れ直しました」
「バッ?!」
耳が赤いです、可愛い⋯むふふ⋯。あ、気持ち悪い笑いが。って⋯アイラお姉様も、顔が赤い⋯あれ?何故?って⋯きゃああああぁあ!!!
私ったら!!なんて!!はしたな───!!嫁がいるところでほかの嫁に告白していたわ!!!これは修羅場に──!!
「とりあえず⋯元気になったようで⋯良かったです⋯⋯」
「ス、すみません⋯」
穴があったら入りたい⋯ので、私は布団を頭から被ることに致しました。
「コホン⋯。ソフィ、もし大丈夫なら聞かせてくれないか⋯?」
恐る恐ると言う感じでリアムが尋ねてきた。
「えっ⋯」
布団から少しだけ顔を出す。
「うっ⋯⋯。話せるなら⋯でいい⋯」
「えっと⋯私は退出⋯しますね⋯」
別に主人公に聞かれて困ることでもないし⋯別にいっか。
「大丈夫です。聞いて下さいますか?」
そして、私は2人に話した。時は遡って小さい頃の話を。勿論、転生者とは伝えずに。




