16、イケおじ
長かったのでキリのいいところで切りました。
次が少し短いかもしれない…すみません。
暴走するとか言っておきながら暴走してない気がするな…。
私は、夜の森に足を踏み入れていた。だけど暗いのは怖くない。暗闇は私の庭だから。
ほら!伊達に、闇魔法習得してないし?暗闇に慣れるのよ。逆に光には弱い。闇と光は対だから。
辺りは暗いわけでもなく、月明かりが微かに、あるぐらい。
だけど、不気味に思うことも無く。宛もなく、彷徨う。何故か⋯私の周りにポツポツと小さな光が浮いている。なんだろう?
『ねぇねぇ⋯ボクタチのこと見えないノ?』
『見えるよナ?』
「えっ!?」
そう、ポツポツと小さな光と思っていたものは──
小さな羽を背中に、たずさえた妖精だった。待って、妖精⋯??なぜ私に妖精が見えるの?おかしいわ⋯。とりあえず、見なかった事にしようとした。
『あっ⋯ちょっと無視すんなよナ!』
『ゲンジツトウヒしたかったのかナ??』
「ご、ごめんなさい。本来、私には見えるはずないのに⋯。見えてるものだから幻かと⋯」
『ふん!』
『見えるはずなイ?なんで、言いきれるノ?それに、キミは──素敵なココロを持っているのだから見えて当然だヨ』
茶髪の妖精さんに、緑の髪の妖精さん。茶髪の子は、所謂ちょっと⋯やんちゃツンデレみたいな。緑の髪の子は、ふんわり系、天然男子みたいな。第一印象は、こんな感じだ。
「そ、それは分からないでしょ?もしかしたら、私⋯貴方たちに危害を加えるかもしれないわよ?」
前の私なら、利用しようとして危害を加えていたと思うわ。そもそも、この森にすら来る予定はないから会う事も、なかっただろうけど。
『オレタチをナめるんじゃない。そこまでヒトを見抜けないオレタチじゃないゾ!』
『ウンウン。それに、何故⋯君の前に、この森の怪物が、デテキテナイカも分かってないよネ?』
「え、えぇ⋯。本当に怪物なんて存在するのかって思ってるわ」
『本当に、ニンゲンたちが呼ぶカイブツは、いるんだよ。でもね、テリトリーを荒らされたコトがあるから⋯無断で入ってきたモノにはコウゲキするんだヨ』
「え⋯?じゃあ、私も攻撃されて当然じゃないかしら⋯?知らないとはいえ、薬草も少し頂いたし⋯⋯」
『本当ならナ!コウゲキされても、おかしくないんだゾ!』
『でも、この森の精霊様は⋯キミを許した』
「え?なんで?」
『お前を気に入ったと言ってたヨ!』
顔を真っ赤にして、茶髪の子は言った。
『確かに⋯ボクにも分かるかも。キミは⋯種族の違う者をタスケタ』
「えっと⋯。獣人のアインちゃんの事かしら⋯」
『ナマエは知らないけど⋯小さな女の子だネ』
「アインちゃんね。でも、獣人を助けたからって⋯。当たり前のことを、しただけよ」
『ソノアタリマエを、人間はデキナイ。勿論、オレタチも』
「あーっと⋯あれよね?人間と獣人の間の差別による問題で非人道的行いを、お互いしてきた者と同じってことかしら?」
『ソウソウ!流石アタマいいネ。それは、このボクタチ妖精にも、適用される』
「ということは、妖精達の世界でも差別はあって⋯。更に、人間と獣人も差別の対象に入るわけかしら」
『ウンウン!正解だヨ。最初は、異種間で仲良くしていたんだヨ。でも、人間と獣人は裏切った。だからキミが、この森に侵入してきた時、ミハラレテいたんだヨ』
「あら?そうだったの。確かに、視線を感じるなとは思っていたけど⋯⋯」
『キヅイテイタノカ?!』
「えーっと⋯なんとなくよ?」
『おまえ、すごいナ!!』
キラキラとした目で私を見てくる茶髪くん。あら、可愛い。
『本当に許したのは、タスケタってことだけじゃなくて⋯森に生えてる草を取った時にイッタコトバが精霊様が考えるキッカケに、なったんだっテ』
「草を取った時⋯⋯??」
『そうダ』
『たくさん、いっぱい生えてる⋯!でも、全部取ってしまうと、この森の環境を破壊してしまうから⋯少しだけ頂戴します。って言ったヨネ?』
「あぁ!そう言えば、そんなこと言った気がする!ていうか独り言、聞かれてたの!?なんか恥ずかしいじゃない!!」
『その言葉ニ、精霊様は感銘を受けたんダ。ダカラ、あの獣人のオンナノコも逃がした。君がいたから』
「そ、そうだったの⋯⋯」
じゃあ私が、あの時──会っていなかったら⋯⋯。あの子は、もっと辛く死んでいたかもしれなかったという事?
『キミがあの場にいなければ、あの子は今頃⋯。骨も残っていなかっただろうネ』
ひいいいいいぃぃぃ⋯!!
ま、まじですか。そんなことあっていいんですか!!
骨すらないって⋯⋯⋯ぎゃぁぁぁぁあああ!!!
「私、来れて⋯良かったわ──」
メイドさん達⋯ありがとう。隠し通路に、落としてくれて!!
感謝しかないわ!!
『ふふ⋯キミは、ほんとに変わってるネ。ねぇ、ソイ?』
『そ、そうだナ!!』
茶髪の妖精さんは、ソイというらしい。
「そう言えば、自己紹介が出来てなかったわ。私はソフィ・カンタレラ⋯10歳よ!」
『ボクたちも忘れていたネ。こっちがソイ。土の精霊だよ。で、ボクが⋯ウィン。ボクは風の精霊』
「どうぞ宜しく」
『よろしくネ』
『よろしくナ!』
「それで2人に聞きたい事があって。精霊様が許して下さったのは、とても有難い事なんだけど⋯何故、出てきてくれたの?」
『それは、キミに会いたいと精霊様が──』
『仰ったからダ!』
「なるほど。じゃあ⋯今から、お会いすればいいのかしら?えっと、こんな格好だけど⋯大丈夫⋯?よね⋯?」
そうなの。ドレスは、あの時に破いたので悲惨なことになっている。かと言って村の服を借りることも出来ず、ドレスを破いて改造した。ちょっと素足は出てるけど、動きやすくは、なった。
『大丈夫だヨ。精霊様は寛大だかラ』
「ふふ⋯そうよね。ありがとう」
そうして、私は精霊様と会うことになった。歩きながら、ソイとウィンと話すことにした。
『そもそも、なんで唐突に、ココの森に現れたノ?』
「えっとね⋯。私、この国の王子に招待されて、客人として来てたんだけど⋯。使用人の方が、いないのをいい事に部屋のお掃除してたのよね。落ち着かなくて。だけど、いつの間にか侵入されていたのか⋯⋯気づいた時には肩を押されてて。倒れた先がなんと!!カラクリの回転ドアだったの!!そしたら、あら不思議!滑る滑る!久しぶりに、滑り台を滑って楽しかったわ!」
『スベリダイ?』
『何だそレ?』
「えーっと⋯上から下にかけて、細長い長方形の鉄の板が、あるとするでしょ?そこから座って滑るのよ」
ジェスチャー付きで伝えれば、理解してくれた。
『何だか面白そうだナ!オレ、それ滑ってみたい!』
「じゃあ、作ってあげるわ」
『ホントカ!?やったゼ!』
ふふ⋯ソイは素直で可愛いわ。
『ふむ。そのカイテントビラというものに繋がった先が、この森⋯だったノカ』
ウィンは何やら考えているわね。なんだか、ウィンらしい気がするわ。会って数分だけれど。
『あ!着いたゾ!!』
大きな大きな大木が1本。この森にいる間はずっと、そうだったけれど⋯ザァァァッ⋯──カサカサ⋯──と葉っぱが風によってあたり、音が鳴っていた。
他の人たちが聞いたら⋯怖いと思うかもしれないわね。ずっと、不安を煽る音がしているんだもの。
でも、私には心地よく聞こえた。葉っぱというか、木々達が会話してるみたいに聞こえたから。
『ほぅ⋯そこまで理解していたのか』
「へっ?!」
目の前にある大木に、顔が出来ていた。あら⋯!なかなか素敵な、オジ様じゃない⋯!!
『ふふ⋯どうもありがとう。人間の娘よ』
「えっ?!私、声に出してたかしらっ?!」
『いや、心の声を聞いただけだ』
な、なんと!!
私の思ってることが全て筒抜けっ?!は、恥ずかしいっ!!
『君は、そういう思考になるのか。恐れたりしないのだな。あとは、嫌悪感を抱いたり⋯な』
あぁ⋯!そう言われれば、そうかもしれないけど。別に聞かれて困るようなこと言わないし?あぁでも、叔父様素敵!!って言ってるのを聞かれるのは⋯恥ずかしいっ───!!!
『ふははははは⋯!可愛らしい人間の娘だ。名は、ソフィだったか? 』
「えぇ、そうですけど⋯」
『ソフィ⋯私は君を歓迎する。君に、そこにいる2人が、どうしても言いたいことがあるらしい』
「言いたいこと?」
『『うっ!!』』
2人してビクッとした。
一体、何?
「2人とも同じ反応して、どうしたの??」
『え、えっと⋯。お、オレは⋯』
『ぼ、ボクは⋯⋯』
『大丈夫さ。ソフィなら受け入れてくれるだろう。そして悪いようには、しないだろう』
なんの話をしているのかしら。
「えーっと、2人とも?」
『ボクタチ』
『オレタチ』
『『と、契約して欲しイ!』』
「契約⋯??とは?はて?」
『そうか、ソフィは知らなかったか。精霊は人間や獣人と契約を結ぶことが出来る。契約した人間や獣人は精霊の力を扱うことが出来る。そして、精霊も成長する。その2人は所謂⋯精霊の中で落ちこぼれと言われているのだ』
なんですって?!落ちこぼれ!?
『ふふ⋯ソフィなら、そうして怒ると思った。本来なら、ある程度の術を扱えるはずなのだが⋯。この2人は一向に基本の術を扱えないのだ』
ほぅ。そういうことね。友達が困ってるなら、助けるに決まってるわ!
「いいわよ!!私と契約しましょ!!あなた達を落ちこぼれなんて二度と言わせないんだから!!私の友人を傷つける奴は、誰であっても許さない!!」
『『ユウジン⋯』』
『良かったな2人とも。お前達の主⋯いや友人は、とても素敵な人だ』
『『は!はいっ!!』』
2人は歓喜の声をあげたように聞こえた。えへへ⋯さらに、お友達出来たァー!!!!!!前世では、友達と呼べる人が、ほとんどいなかった。
えぇ、それはもちろん⋯妄想に費やしていたから!!
隙あらば、常に妄想の世界へ飛び立っていたから。えぇ、疎遠になるわよね。というか⋯そもそも、近づこうともしないわよね!!
「えっと⋯契約?って、どうすればいいの?」
『簡単だ。そうだな⋯闇の力を使い、なにか作れるか?』
あら、闇の力を持っていることも知っているのね。
『あぁ⋯無闇に使わないように、するんだぞ』
えぇ、肝に銘じておくわ。
結末は私が、よく知っている───。
Q、ウィンくんとソイくんについて教えて下さい。
??:ウィンは風(wind)から。又、髪の色は緑。語尾は大抵、「ネ、ヨ」で終わる。勉強中はメガネをかけていたりする。
ソフィ:じゃあ…ソイは?
??:ソイは…土(Soil)から。又、髪の色は茶髪。語尾は大抵、「ナ、ゼ、ゾ」で終わる。
ソフィ:へぇ……これで覚えやすくなったらいいわね。
??:うん。そうだねぇ…。




