11、猫耳の王子様は悪役令嬢と恋に落ちました。(2)
続けてリアム視点となっております。
《続けて、リアム視点です》
コンコン⋯
「みんないい子にしてた、だろうな?」
そんな誘拐犯の間抜けな声と言ったら笑えるたい。すかさず、腹に1発。
「い、いねぇ!!?待て待て!!どこに行っ─────がはっ⋯!?」
「フン!弱かたい。なして、こげん奴に捕まったとか⋯いっちょん分からん」
獣人なめちょったら、いかんばい!!
「うーん。なんか、この顔に見覚えが⋯⋯。あ!!この人!!私とスザクを誘拐した人だわ!!」
「何だって!?」
まさかの発言に、声を荒らげてしまった。
「こい達がワイと⋯スザクちゅう友人ば誘拐したとや?」
「えぇ、3年前に。その時に逃げられちゃいまして。まさか、まだ人攫いをしてるとは⋯。ということは、今度は私の出番ですわ」
「⋯?」
「この方の相棒、大の幽霊嫌いなのです。さぁ。閉めておきますわよ」
ドアをパタンと閉めてから、気絶した犯人は扉が開けば⋯すぐ目につく真正面へ移動。そうして、待ち構えたとね───。
バンッ!!
扉が開いた。
「おい!!大丈夫⋯か!!あの3年前から散々だったが──」
「アナタァ⋯まだ⋯ワタシというものがありながらこんなシゴトをツヅケテイルノネ??」
「!?」
真正面に駆け寄った犯人の後ろに、ひっそりと立つ彼。あからさまに、男は肩を震わせてた。歯がカチカチとなっているのは間違いではなか。
「ワタシ⋯サンネンマエ⋯アナタに⋯トリツイタノ⋯。ソォ⋯アァイトシ⋯」
そうして、彼は何かをした。
「ひいいいいい!!!」
そう叫び声を上げた犯人は
バタリ⋯!!
一瞬で気絶って⋯どういうことだと思ったけんど、知らん振りをしたばい。
「あら、3年前と相変わらずね。リム!やってやったわ!!」
「す、凄かぁ⋯」
髪を後ろにオールバックした彼⋯いや彼女を見て
やっと女ん子だったと気づいた。
いや信じれたばい。
「ソフィ⋯ワイは、女ん子やったとたいね」
おいは、びっくりした顔をしてたと思う⋯。
「えぇ⋯先程も申し上げたでしょう?」
「ん。やっと信じれた」
「それは良かったですわ⋯」
「そげん事より、おいんこと怖くなかと?」
そう。とても気になっていた。
彼女が獣人を、怖がらないはずはないのだ。連れてこられた時は既に捕らえられてる子達は憔悴していたのもあって気にも止めていなかった。
だから、理由は分かる。でも彼女は違う。おいが⋯獣人だと知っているので怖がるのは当たり前の反応だ。なのに、恐怖などないように見える。一体、何故?
獣人は人間を傷つける。
戦闘能力も高い為⋯そして過去にあった事件のせいでそういう風に思われているのだ。獣人は人間に害を成すと。
だから、避難罵倒などが当たり前で⋯それは逆に獣人達にとっても人間は悪でしかなかった。
「???」
そんな彼女の反応は、何を言ってると?って顔をしていたとね。
「全く怖くありませんわ。金髪は見事に綺麗ですし、瞳の色だってサファイアとラピスラズリのように素敵な色合いですし、頭についてるお耳としっぽだって素敵すぎて可愛すぎますわ。後は大の大人を1発KOしてしまうほどの腕力をお持ちなところもカッコイイですし。どこに怖がる要素がありまして?」
あぁぁぁぁぁっ!!
何だかこの無性に叫びたくなる気持ちはいっちょん、わからん!
「え、えっと⋯変なこと言ってませんわよね?」
「うーん、言ってなかね。ただ⋯おいが言われなれてない───だけばい⋯。ド直球すぎると⋯」
こう、心の中が、ポカポカと温かく感じて⋯。どうしようもない、謎の感情が込み上げる。
「本当のことを申し上げただけですわ!」
「わ、分かったけん⋯もう言わんで⋯」
「し、仕方ありません⋯。分かりましたわ」
そんで、数分も経たたんうちに⋯。
「ソフィ様!!」
「ネル!!」
「レン様から聞いた時は、どうしようかと⋯!心臓が止まるかと思いましたっ!!」
泣きそうになりながら、彼女はソフィに言ったばい。
「私の強さ知っているでしょ?それより、この方⋯リムが助けてくださったのよ。カッコイイのよ?」
「お嬢様を助けて下さったんですね!ありがとうございます!!」
俺は思わずビクッとしてしまった。そして、助けた覚えはないと顔を横に振った。
「あら?獣人のかた?」
ビクゥ!と全身を震わせてしまった。おいは知っている。獣人に対する人間の酷い扱いザマを。
「ソフィ様⋯?」
「えっと。とりあえず、リムを見ちゃダメよ!見ていいのは⋯私だけなんだから!」
おいの、目の前に立つのは人間の女の子。だけど、凄く安心した。心の底からホッと息をつけたのだ。
「な、なんの独占欲です?とりあえず、分かりましたから⋯ここから出ましょう?」
「そ、それもそうね」
「リム、行きましょう?」
おいは黙って頷き⋯ソフィの手を握った。
つ、冷たい⋯!!
こげんな、死人みたいに冷たい手⋯ありえるのか?!けんど、逆に人間の体温より獣人の方が、もっと高いけん。おいが温めてあげれば、よかだけたい。
だから、更にキツく握りしめた。
ソフィが痛いとは思わない程度に。そうして、犯人は逮捕され子供達も親元へ。
ただ残るはおい1人⋯。
おいは⋯ただの獣人ではない。
「ねぇ、リム⋯?」
「何⋯」
「貴方を帰さなきゃ行けないの。教えてちょうだい」
「教えれない⋯」
俺は王家の人間だ。そんな事、言えるはずがなかった。
「なんで??」
「分かったわ、街に行けばその保護者にあたる方達に会えるかしら」
バッと顔を上げた。俺の思考を読み取ったと?!
「ふふ⋯正解なようね。じゃあ決まったわ。行きましょう。手⋯繋いでもいいかしら?」
「よか⋯」
彼女の手は冷たくとも、心は温かさで溢れているとね。おいは、それを知っている。
手を繋ぐ理由なんて、それだけで十分だったばい。
「ふふ⋯変わり者ね、私の手なんか死人のように冷たいのに」
「そんなことなかよ!!アンタは、あったかい。この世界の誰よりもあったかい⋯」
思ったことを告げれば、ソフィは⋯
温かい笑顔と共に──────
「ありがとう。リム⋯」
そう言った。
おい⋯この子に嘘つけん。
「それと、俺⋯。アンタに黙ってることがある⋯。俺の名前リムじゃなくて⋯リアム」
「まぁ!素敵な名前!!」
獣人をここまで褒めてくれる人間は、このソフィしかいないと思ったばい。
「そんなこと言う奴、ワイしかおらんとね」
おいは照れくさくなって、つっけんどんに言う。
「ふふ!素敵なんだもの!それじゃあ⋯リアム⋯行きましょうか?」
「どうやって⋯?」
「それは⋯また目を閉じてくださる?」
「ん」
「さぁ⋯着いたわ!」
「一瞬で───凄かね⋯」
「そんな事ないわ。スザクにだって出来るもの」
「そういえば⋯スザクちゅう⋯友人ばと仲良さげたいね」
「えぇ。私の師匠ですから」
「ふぅん⋯⋯ソイツは男たい?」
「えぇ⋯そうですけど?」
「ふぅん⋯」
「⋯⋯???」
ソフィの口から他の男であろう名前が出てくるのは⋯気に食わない。ん?何故?
「いた!!」
この声は⋯⋯イグニス⋯⋯。
フードを被っている護衛に囲まれた。
「ご無事で何よりです」
見え透いた嘘を───。
「無事なんて思っていないだろう。知っている」
「リアム王子⋯」
「へ?!王子様!?」
もうバレてしまったものは仕方がない。
「黙っていて悪かった。ソフィ⋯」
「ぜ、全然!大丈夫ですわよ」
「リアム様⋯この方は」
「俺の命の恩人だ」
「それは逆⋯⋯」
「恩人となれば⋯彼女がいかに人間だとは言え⋯感謝せざる負えませんね」
「おい、失礼な言い方するな。ソフィは典型的な奴じゃない」
「では、我が国に招待致します」
俺の話を無視したことに腹を立てたのか、ソフィは猫のように威嚇した。
「そう威嚇するな。俺は大丈夫だから」
「リアム⋯様が言うなら⋯」
「様付けは要らんと言ったばい」
「で、でも⋯」
「いいから」
「分かりましたわ。招待という前に⋯私、両親に伝えてからでないと」
「それもそうだ」
「えぇ⋯」
そう呟いたソフィの、表情は悲しげだった。
それから、ソフィのご両親から難なく許可を取れ彼女を俺の国に⋯。招待という名の⋯連れて帰ることになった。
不安ではあったけれど。
でもこの時、どうして気づけなかったのか─
ただ君と居れる時間が、今の俺の心を支配していのだ。
許可を取れた時のリアムの様子。
リアム:……許可取れたとね?
ソフィ:難なく許可が出ましたわ。
リアム:そう…。ピンッ!(しっぽを真上に立てていた)←嬉しい




