10、猫耳の王子様は悪役令嬢と恋に落ちました。(1)
リアムside
俺は、この国にお忍びで視察と言う名目で訪問していた。
なんせ、獣人というだけで差別されるこの世界。生きていくにも辛いものがある。俺は更に不運だったと言えるだろう。
王子なのは百歩譲っていいが、瞳の色だ。青と紫のチグハグな瞳。獣人の中からも、俺は迫害された。
まぁ⋯王族だったお陰で何とか命までは、とられることは無かったが、常に死と隣り合わせというのは⋯あながち、間違いじゃなかった。
そんな俺が⋯この国にある学園に無理矢理、押し込められる事になった。邪魔者だからだ。
とにかく俺が15歳を迎える辺りで学園という檻に入れられる。そんな学園がある街は、どんなところだろうと気になったのだ。
俺がどうなろうと、親はなんとも思わないだろうし。ただ、たくさんの護衛があちこちにいる事を俺は知る由もない。
俺は街をのんびりと見て回っていた。
それが良くなかったのか、何者かに、捕らえられた。普段の俺なら、こんな不手際は起こさないはずだが⋯この時ばかりは俺の不運に感謝した。
なんせ、運命の人と出会えたけん。
ちょっと感情のブレがあると、すぐこの口調になってしまう。いけない、いけない。
攫われて目覚めれば⋯薄暗い部屋の中。
辛うじて、相手の顔が見えるぐらいだ。
まぁハッキリとはいかないだろうが、色も確認出来る。目が覚めてから、新たに2人の少年が連れてこられた。
それから、長髪の少年は先に意識を取り戻した。その後、青い短髪の少年が目を覚ます。
「うっ⋯」
「目が覚めたか?」
「えぇ⋯⋯」
青い短髪の少年は辺りを見回し、状況を確認していた。そんな少年が突然、俺の髪を見て大きな声をだした。
「あの男の子⋯は⋯。あ!いた!!金髪の少年!」
「⋯⋯!!」
呼ばれたので、おいは振り向いた。
そして、おいを見た瞬間───。
「ぬぁぁぁぁぁぁぁっ!!!私の、お嫁に是非来て下さいませ!!」
「は?」
えっと⋯聞き間違い⋯ではなかと??よ、嫁?
「はっ!!し、失礼致しました」
彼は、うっとりした瞳で⋯おいを見た。
今まで、こんな目を向けられたのは初めてだ。好意的な目を向けられたのは。
「おいは、男たい。分かとっと?」
彼は、口元を抑え⋯冷たい床に崩れ落ち床を叩き出したけん。おいは、びっくりした。
「だ、大丈夫です⋯わ⋯。僕は、男ではなく⋯女ですから!」
は?女⋯??ほんとに女と?
「ソフィ⋯君⋯俺の事忘れてない?」
「!?」
「今から作戦を、お話しますわ」
「君⋯スルーしたね」
「それでですわね」
彼は彼の友人らしき男と喋り始めた。
「分かった。どういう作戦?」
「えぇ、今からレン⋯⋯には、私の家に⋯現在ここに居る皆様と戻って頂きます。そして、私のメイド⋯ネルに、これを渡して下さいませ」
見た目は男ばい⋯けんど、声は女たい。
「何これ?」
「私の、場所を特定出来る魔道具ですわ。これをメイドのネルに、渡して下されば大丈夫です。レン⋯には、此処に居る方々をお任せ致しますわ」
「分かったよ。それより、君は?」
「私は大丈夫ですわ。此処に残りますから」
「何ば言いよっと!!」
彼の発言にビックリした。1人で残るなんて馬鹿のすることだ。おいはつい、声を荒らげた。
「大丈夫ですって。貴方も此処に居る皆様同様、安全な場所へ、ご案内致しますから」
「そがん事言わんと!!女ん子1人で残せるわけなかたい!おいも残る!!」
大丈夫と言い切るところが、庇護欲をそそった。この子は、1人にしちゃいかんたい!
「で⋯でも⋯」
「おいが守る。ただ、連れ去れたんは、事実やけん信用できんやろうけど────」
それでも信用して欲しいなんて言おうとしていた。俺達を、甚振ってきた人間に。
「そのお気持ちだけで、私は嬉しいです⋯!!ありがとうございます!!えーっと──」
「おいは⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯リム⋯。宜しくたい」
「リム様!宜しくお願い致します!私はソフィですわ」
ソフィ⋯可愛い名前たい。ソフィに返事をしようと、おいが口を開きかけた時──。
「それなら俺も残るよ」
「レン⋯⋯⋯⋯はダメです!やり遂げればならないことがありますでしょう?犯人逮捕のためにも、成し遂げなければならないのです。貴方にしか出来ない」
「⋯⋯⋯⋯分かった⋯不本意ではあるけど⋯やるよ。俺にしか出来ないんだよね」
レンという男から睨まれた気がしたのは気の所為では無い気がするたい。
「えぇ」
ソフィは、子供達に言った。
「皆、よく頑張ってきたね。もう頑張るのは今日でおしまいです。僕が君達を安全な場所へ移動させる」
「ほ、ほんとうに⋯?私達⋯助かるの?」
「あぁ、勿論だとも。この僕がいるからね!さてと時間はない。皆、隣にいる人と手を繋いでから目を瞑って」
「レン⋯⋯⋯も、リム様も目を閉じて」
言われた通り、目を閉じた。
「もう、開けていいですわよ。リム様」
そう言われ、目を開けたとね。
その直後、気になったことを聞く。
「あん⋯なんで、おいのこと⋯様付けするとね⋯?」
「それは⋯尊い方ですから!!」
「いーっちょん分からん⋯。良かけん、様付けはやめるたい。むず痒く感じるばい」
「⋯⋯えぇ⋯⋯まぁでもリム様がそう仰るなら仕方ありませんわね。リムと呼ばせて頂きますわ」
「ん。それがよか」
彼が何を考えているのか知らんけんど、思ったことをひとつ口にしたとね。そういえばと思い辺り、辺りを見回す。
「皆⋯消えとるたい⋯」
「えぇ、今頃⋯レンが何とかして下さっていますわ」
「ん。で、おい達は、これからどうすると?」
「ふふふ⋯良くぞ聞いて下さいました。とりあえず犯人は捕まえます」
満面の笑顔で答えられたばい。
可愛い笑顔しとるたい。
「そいで?」
「えぇ、ここには扉がありますよね。私達が真正面から見ると左手にドアノブがあるので、開けたとします。そうすると、右側は扉があるので覗き込むまで、人が居るかなんて分かりませんよね?」
「あぁ、死角になるたいね」
「そうです!その死角を利用して奇襲をかけます」
「理解したばい」
「奇襲をかけるのはいいんですが⋯どちらが──」
どちらがと言うまでもないとね。
「おいに決まっとるたい。女にそがん役、任せられる訳なかたい」
彼は頬をポッと赤らめ、大きな声で言ったけん。
「ありがとうございます⋯⋯!かっこいいですわ!!」
「かっ⋯かっこいい⋯!?」
かっこいいなんて初めて言われたばい⋯。
あぁ⋯むず痒い⋯一体これはなんね?!
1人でアワアワしているうちに彼は、息を荒らげていた。
「だ、大丈夫⋯ね?」
「えぇ⋯だ、大丈夫ですわ⋯」
そして部屋に音が響く──。




