桜蔭サークル
IQテストの翌日の4月13日、朝からIQテストの結果が校舎のエントランスホールに張り出されていた。
公太と李一が登校すると、すでにエントランスホールは学生でいっぱいになっていた。結果は巻物のように長い紙に、60位から1位までの学年と氏名が記されている。特に桜蔭サークルのメンバーとなる上位の前には、人だかりができ、ざわついていた。
公太と李一が60位から順に自分の名前を探していた。下位の方は、ぽろぽろと2年生や3年生もいるが、やはり1年生が多い。中位になるにつれ、2年生が増えてきて、トップ20になるとほとんど3年生だった。まだ、公太と李一の名前は出てこない。そのまま、確認を進めていくと、まず、李一の名前を見つけた。
8位 1年 花巻李一 957点
「あった!やった!おれ、8位だ!」
李一から笑顔がこぼれた。9位と7位の3年生に挟まれて、李一が8位になっていた。まだ、公太の名前は出てこない。
公太と李一は、上位5位の前の人だかり割って入った。ここから先は、桜蔭サークルのメンバーになる。
5位 2年 相川ミサキ 978点
4位 2年 南春樹 981点
3位 3年 千葉倫太郎 993点
2位 1年 広瀬公太 997点
1位 1年 湯川アリス 999点
「公太すごいじゃん!2位だって!しかも997点!?さすがだな!」
李一が公太と抱き合って喜んだ。
「ありがとう。それにしても、アリスってすごいな!999点だってさ」
公太がそういうと、李一も頷いた。すると、長身の黒縁メガネをかけた学生が公太の肩をぽんと叩いた。
「広瀬くんだね。おめでとう。僕は3年の千葉倫太郎だ」
千葉が公太に手を差し出した。公太も手を差し出し、握手する。
「ありがとうございます。1年の広瀬公太です。よろしくお願いします」
「今年こそ、1位をとれると思ってたんだけどな。997点と999点をとる新入生が現れるのは想定外だったよ。聞いているかもしれないけど、君は今日から桜蔭サークルのメンバーになる。じゃあ、また放課後に会おう」
千葉はそう言って、3年生の教室へと歩いていった。
「あの人が千葉さんか!千葉さんも1年生の頃から上位5位で、ずっと桜蔭サークルのメンバーだったらしいぞ!かっこいいな〜」
李一は、憧れの眼差しで千葉の後ろ姿をみつめていた。
「さあ、おれたちも教室に行こうぜ」
公太は、千葉をみつめる李一を引っ張って教室へと向かった。
公太と李一が教室に入ると、ただなるぬ空気が流れていた。
公太の席に見知らぬ女子生徒が座り、アリスに絡んでいたのだ。
「なんだあいつ?」と李一が不審がったが、公太はとりあえず自分の席へ向かった。
「すみません。ここ、僕の席なんですど」
公太がそう言うと、女子生徒は公太をとって食わんがばかりに睨みつけた。
「あん?あんたが広瀬公太ね」
「そうですけど、あなたは上級生の方ですよね?何かご用ですか?」
「私は相川ミサキ。私よりいい点とった連中の顔を拝みに来たのよ。いい?広瀬に湯川、たまたまいい点取ったからって、自分たちが私より上だと思ったらただじゃおかないからね!」
ミサキがそう吠えていると、小柄で優しそうな雰囲気の男子生徒がやって来て、仲裁に入った。
「はいはい。ごめんねー。いきなり、怖い先輩がおしかけて来ちゃって。僕は、南春樹。公太くんとアリスちゃんだね。これからよろしくね」
南はそう言うと、公太とアリスににっこりと微笑み、「ほら、行くぞ」とミサキを連れて教室から出ていった。
「なんか、強烈な人たちだったね」と、公太が言うと、アリスは「だね」と、苦笑いを浮かべながら相槌を打った。
その日の放課後、学園長室に各学年の担任と千葉、南、ミサキ、公太、アリスの5人が集まり、円卓を囲んでいた。そして、少し遅れて桜木先生がやってきて、席に着いた。
「やぁ、遅れて悪かった。総理官邸に今年度の桜蔭サークルの名簿を提出しに行ったら、予想外に総理のおしゃべりに捕まってしまったよ。さあ、それでは、第1回のサークル・ミーティングを始めようか」
桜木先生がそう言うと、新しいメンバーの桜蔭サークルが動き出した。