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「魔王、勇者に会う?」

今回ちょっとシリアスな話?です。私は今後ギャグ調のストーリー路線でいこうと思ってます。

2回目の投稿です。楽しんでってね!

まずは情報を整理しよう。今俺はどこぞやも知れぬだだっ広い平原に立っていて無一文。


あるのは一般的な黒の上着(※プールポワンのようなもの)、黒のズボン、漆黒のマントのみ。


スキル、身体能力は封印されていて所持アイテムはゼロ。おまけにここが人間界の何処に当たるのか全くわからない。うん。


「⋯⋯やっぱり詰んでるじゃねーか!」


あのドラゴン、本気で俺を消しに来たな!?魔王のステータスを封印出来るといったら世界に5つしかない【対勇者最終決戦宝具】が1つ、【トゥア・ハーデの呪い】を使ったって事か!


1度しか使えないものを俺に使うとは。奴の殺意は計り知れん。


そしてこのままでは、餓死するか下手したらモンスターに襲われて死ぬ!蛮族に殺られれて死ぬかもしれない。


魔王としての最後がそれか?末代までの恥じゃないか。いや、子供どころか妻もいないが⋯。


辺りをもう一度見渡す。遠くに山が見えるが、街らしきものは見えない。


まぁ、冷静になれ、俺。今の俺は一般的な人族クラスのステータスしかない。取り敢えずはモンスターに出会わず、生き延びることが最優先。行き着く先に村か街があればそこで生計を立て直すんだ。


その間にこの封印を解く鍵、あの忌々(いまいま)しい宰相への報復をどうするか考えよう。


太陽を見上げてみる。しかし方角がわからない。

そうだな⋯ここにいても仕方ない。移動するか。


俺は今見えている山の方向に向けて歩くことにした。



何時間歩いただろうか?街は一向に見えない。山に近づいた感覚もない。運ぶ足が少し重くなってきたな。そう思っていた時、突然後ろからの殺気。急いで振り返る。


狼型の獣の群れだ。野生の群れが10匹程、500~600m程遠くから走ってきているのが見える。数秒の膠着(こうちゃく)の後、遅れて脳が危険信号を伝える。 1番恐れていたことが起きた。瞳孔(どうこう)が開く。全身が震える。


「っぁ⋯嘘だろ!?」


叫びながら走り出す。今の俺は何も持ってない⋯奴らに襲われたらそこで終わりだ!


「おい、おいおいおいおい!なんで俺なんだよ!」


怒りをぶつけるが虚しく響くだけ。全力で走る。走り続ける。止まったら殺される!

俺は今初めて、狩られる側の恐怖を痛感した。こんな所で死ぬ訳にはいかない。


走りつつ首だけ後ろを振り返る。先頭の狼は確実に俺に近づいている。右手に力を込め向ける。


「くそ!〈射抜け!〉マジックアロー!」


唱えるが何も起きない。


「あぁ!〈燃やせ!〉ファイア!」


結果は同じ。前方に向き直す。何でだ!俺は魔王だぞ!魔界を制した、魔王だぞ!


屈辱に近い怒りと何も出来ない無力さに涙が込み上げてくる。


数十秒しか経っていないのに、獣の足音が近づき、次第に息遣いも聞こえてきた。もうダメだ。限界だ!


これ以上逃げることは不可能だと悟る。俺は無謀にも賭けに出ることにした。立ち止まり振り返る。獣の距離は目と鼻の先。


「獣共!やってやる!来やがれ!」


戦うしか生き残る術はない。肩で息をし、敵の動きを見る。


先頭の1匹が飛びかかってくるのをサイドステップで右に避け拳を横腹に食らわす。 確かな手応えを感じるが威力が無い。


「っし!!」


すかさず2、3匹目が同時に足先に突進してくる。


「させるか!」


マントを1体の顔面に投げつけ、1体の鼻先に蹴りを入れる。俺は無我夢中だ。歴戦の勘のみが頼りだ。


他の数体が両端から回り込んでくる。見えないが最初の1体目が起き上がり飛びかかってくるのが気配で分かる。


左に(かわ)し、体制を立て直す。視界の端の狼共が食らいついてくるのが見える。


―数が多すぎる。 考える間もなかった。


走って避けようとした直後、左足に噛みつかれる。


「ガァぁぁぁぁぁああ!!」


歯が肉に食い込む痛みに、声が出る。直後、右足も噛まれ倒れる。


「ぐぁ!止めてくれ!」


両手にも食らいついてくる獣共。奴らは首を振り、その度に肉が裂ける感覚に叫声を上げた。ただ叫んだ。


俺は、死ぬのか?死んでしまうのか?


様々な記憶が蘇ってくる。


ー前代魔王を討ち、暴君の圧政から民を救った若き日を


ー種族間の格差を減らし、多種族からなる軍、幹部、四天王を結成した革命の日を


ー唯一魔王城まで到達した歴代最強勇者を葬った日を


ー 数十年、魔王城に篭もりただ寝ていた日々を


首元に鋭い犬歯が近づいてくる。


くそ、なんて無様な終わり方だろうか。死にたくない。 目を力強く(つむ)る。浮かんだのは神という言葉。


「(まさか、魔の王が神に祈る日が来るなんてな)」


ーその瞬間だった。


「サンダーランス!」


少女の声が、近くで響いた。




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また、感想やレビューもお待ち来てます。

読んでいただきありがとうございました。

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