接近
1ヶ月ぶり。ただいま。遅れてごめん。待っててくれてありがと。
平成さよなら。初めまして令和。
さて、何とか投稿出来ました。これからはまた少し落ち着くと思うので、投稿頻度戻ります。気長に待っててね!
「どうしようか…」
雷はやみ、辺りは静寂を取り戻していた。かなり離れた場所でも寸分の狂いもなく雷を当ててくるという精度の良さ。
「転移は可能なのかい?」
「可能ではありますが、魔力を探知されて転移した瞬間にあの世逝きになりますね」
「なら、飛んでみてはいかがでしょう?」
自分の背中に生えている羽…羽なんて生えてたっけ…?まぁ、いいか。羽を指さしてそう言うメアル。
「飛ぶにしても我々は魔法を使わなければならない…」
「…」
打つ手なし、か。いや、考えてみよう。まだ何か、何かあるはずだ。
相手の持っている魔力逆探知能力。いわば…人工衛星…レーダーのようなものだ。
人工衛星やレーダーに対する有効な手段は…電波妨害?
「…電波妨害、ジャミングをしよう」
「…それは一体何だい?」
「電波妨害。魔力を探知するのであれば、それが分からなくなるぐらいに多く場所で魔法を使えばいい。設置型の魔法を使って私達の場所を特定されないようにする。そんな作戦なんだけど…」
「しかし、もしそれでも捌ききれるような能力を持っていたら、どうするんですか?」
「確かに。ですがウラジーミルさん、私達に考えられる手段って他にありますか?」
「そう言われると…」
「分かった。よしみんなこれは賭けでもあるが、やってみよう」
最終的に決断したのはやっぱりヴェル。こういった局面で仲間を導いてくれるカリスマ性には少なからず嫉妬の念を抱く。
「他の場所にいるみんなにも伝えようか?」
ヴェルにそう言うと、今気付いたといった表情をした後大きく頷いた。
様々な人と連絡を取り合う。
『起きてる?』
『もちろんです!何かありましたか?』
僕が真っ先にかけるのは勿論フィア。あれから大分時間も経って辺りは暗くなってきている。もう寝ていてもおかしくないのだが。
『今から魔法を使ってもらえる?』
『魔法?分かりました』
『ありがと。詳細を説明するとだね、今から戦う相手は空中にいて、近づこうにも魔法を使って行かなきゃならない。だけど、そいつは魔力を逆探知して僕達の居場所を割ってくる』
『だから天に向かって魔法を放って拡散すれば、相手も混乱するって訳ですね。分かりました。知り合い全員にあたってみます』
フィアはそう言うと念話を切った。
「陽向くん。同時刻に一斉にやるとして、合図はどうするんだい?」
「…あ、いずは…」
考えてなかった…。どうしよう。
『陽向さん、私が神託を卸します。それに合わせて作戦を実行して下さい』
「おぉ、流石女神さん。陽向くん、それでいいかい?」
「はい。しかし、街に固まるとそこに向かって邪神の攻撃がくる可能性があります。散開させるにも神託を卸した後、同時にやることは出来ない気がします」
「なら、古典的な方法でいきましょう」
「メアル、何か案があるの?」
「はい、もう日が落ちているので、次の日の出、水平線が赤く染った時、という合図を出してはいかがでしょう」
「おぉ」
「いいですね」
「でも、日の出、日の入りは同じ惑星でも場所によって変わるよ?」
「「「「『……』」」」」
「…ねぇ、陽向くん。妨害目的なら、継続的に魔法を放っているだけでもいいんじゃないかな」
「「「『それだ!』」」」
何で思いつかなかったんだろう。継続的に魔法を放てば撹乱に成功することは容易い。
「それじゃあ、メアルの案と併せてそう伝えよう」
各自が連絡を取り合って、日の出を待つことにした。
…
……
………
「…まだ?」
「……」
何もする事がないと、決戦前なのにだんだんとだらけてくる。しかし、その言葉とは反対に手元は止まることなく忙しなく動いている。1人だけじゃない。全員がそうしている。
「どれぐらい練れました?」
「私は…目標の7割ですかね」
「僕はまだ6割」
「自分もまだ7割に達してません」
「陽向くん、君は?」
「…?えっと、目標値がこれだから…今8割と少し?」
「流石、はやいね」
この後撹乱に使う魔力を確保するために、魔力を練って増幅させ、魔石に溜め込んでいる。
決戦で魔力不足にならないように、魔石だけで足りる程度まで練るようにしている。
…
……
………
「もうすぐ日の出ですね」
「目標値まで練れました」
準備万端。臨戦態勢。今ならどんな敵とでも戦える気がする。それくらいには気分は昂っていた。
だんだんと辺りが明るくなってくる。それを合図にまず北側から何条かの光が見え始める。それを皮切りに魔法による光はどんどん増えていく。
「行きますよ」
全員で頷き、設置型の魔法陣に魔石に溜め込んだ魔力を全て注ぎ込み、次に自分達に飛行の魔法をかける。
地面を蹴って空中に舞い上がると、背後で設置型の魔法陣が起動し、熱や光、風が僕達を襲う。
「上がるぞっ!」
幸いにも風は上昇気流を起こし、一気に加速する。
周りを見渡すと、海面に反射して眩いほどの光。様々な色が混ざりあっているのが分かる。それだけ多くの人が力を貸してくれていることに驚き、同時にこれから起きることがつつがなく終わることを祈る。
そして、明るくなっていた空は突然真っ黒に染った。
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とある国にて。
「準備はいい?日の出はもうすぐよ!」
1人の女性が大勢の部下の前でそう叫んでいた。
東側諸国の最上位に君臨する魔術師団。一騎当千。無類の強さを持つその集団、総勢100名と少しが丘陵に集まっていた。
全員がある1点を見つめている。顔にはまるで死地に向かうかのような緊迫とした面持ちを浮かべ、絶えず魔力を練っている。
そして、辺りが徐々に明るくなる。
「ってぇー!」
掛け声に応じて全員が一斉に空に向かって各々の得意とする魔法を放った。何度も何度も絶やす事なく放つ。どれだけ撃てばいいなんていう指標はない。ただ自分達がうけた依頼は日の出と共に魔法を西の空に向かって放つ。ただそれだけ。普段なら怪しくて考えることもせずに断るのだが、頼んできた相手が同盟国の魔術師団の団長やその国の宰相だったため、仲間と熟慮した上でうけることにしたのだ。
その宰相曰く、自分の国を滅ぼした相手を倒してくれた人からの依頼だからどうかお願い出来ないかとの事だった。
他の場所でも魔法を放っているのか、普通なら薄暗いはずの空が様々な属性色に染まっている。
どれぐらい経っただろうか、太陽が3分の2程出てきた時、空が真っ黒に染った。
暗いんじゃない。ただ黒いんだ。
「総員、警戒を厳とせよ!」
放っていた魔法を止め、これから何が起きるのか、注視する。
そして、何かが蠢いた。
「なっ…『エナジーバリア』、『プロテクション』…!退避!退避っ!」
突然黒い空からやってきたナニカによる攻撃を十八番の結界魔法で防ごうとしたが、1度目の衝撃で自分に叶う相手では無いことを悟った。
号令を受けた部下だが、誰一人逃げようとせずにそれどころか全員が結界魔法を張り、何重にも重ねて攻撃をやり過ごそうとした。
「何をしている!退避!逃げろっ!私達に叶う相手では無い!」
何度も退避を促すが、誰もそれに従わない。
そして、何重にも張った結界の最後の1枚が破られた時、今度は視界を虹色の何かが覆った。
「…?」
「たす、かった…のか?」
いつまで経ってもこない衝撃に驚き、そう呟いた私に、部下の1人が頷きサムズアップをしてきた。
「バカ、バカバカバカ!あれだけ逃げろと言ったのに!」
そう罵倒しても部下はみんな笑って謝るだけ。反省の色が全くみられない。
ともあれ、依頼は達成ということだろうか。亡国の英雄。あとは頼んだぞ。私達には叶わない相手…私達を世界を救ってくれ。
特になし!みてくれてありがと!




