第一段階
どうもー。
どうせなら一気に出そうかなぁって思ったので一気に出すことにしました。ごめんね、待っててくれた人いるかな?
天気は快晴とまでは行かないものの、晴空。これが願わくば嵐の前の静けさ出ない事を。現状、私が集めた情報によれば、展開しているこちら側の地上部隊は、被害の拡大を最小限に抑えているらしい。最初の攻勢で前線を押し上げ、地上界の生物が居ないことを確認してからの篭城戦。こちらの被害は、数こそ多いものの、程度は軽微。少しぐらいなら持つとの事だった。
私の提案する…いや、考案した英雄殿の進行ルートは、第一段階として、魔王を倒す為に勢力を削ること。そのため、地上部隊の援護に行き、そこで戦線を安定させた後、元凶をおびき出す。さすがに、魔王とて手下を無視できない量倒されたら出てくるだろう。仮に出てこなかったとしても、場所は割れている。邪神の弱体化を狙って負の源泉を浄化する際に少し迂回する程度の遅れだ。どうってことない。
状況は、焦る程に悪くもないが、言える程に良くもない。
話を戻すが、第二段階として、魔王討伐及び、英雄殿の知人の送還。正直、ここまでに掛けていいのは、せいぜい2日だろう。それ以上掛けてしまうと、何かしらのアクシデントに対応するだけの余裕を持てなくなる。
そして、第三段階というか、ほとんど付属の段階だが、負の源泉の浄化。これによって、勝率が約5%程上がると見込まれる。小さいが、かなり大きい。たったの5%、しかし、その5%は、1人の犠牲を出して倒すのが、誰も死ぬこと無く倒す事が出来るようになるというレベルの違いを起こす。
つまり、私は英雄殿の為に盾になって散っていった名もなき戦士から、英雄殿の隣で共に戦った戦士へ格上げされるのだ。
そして、第四段階。邪神の討伐。
私は元の時の神、ゼラミス様を知らないが、ただ彼について聞くと、誰もが心優しい神だったと口にしていた。
「どんな御方なのでしょう…」
「ん?何か、言いました?」
「あぁ、いえ、なんでもないです」
只今第一段階、魔物の間引きの最中。
隣で目にも留まらぬ速さで魔物を薙ぎ倒して行くヴェル殿に驚きつつ、視界に映る魔物を斬っていく。
地上部隊の篭っていた一帯を覆っていた魔物を英雄殿が大規模魔法である程度屠ると、休憩することなくそのまま魔物を倒して行った。
それに続くように私達も続き、今では最初の半分程度になっているだろう。最初は、視界が全て魔物で埋め尽くされていたが、今では、血に塗れた地面が所々見えるようになっている。死体はその場で後方支援の地上部隊の方々が瞬時に焼き尽くしている。
足の踏み場が出来ないかと思っていたら、魔物を倒した瞬間にどこかへとばされ、こちらに全くの影響を出さずに処理をしてくれている。
「…来ます…!」
突然、嫌な予感がした。抗う事の出来ないような圧倒的強者の気配。思わず身を竦ませ1歩下がると、魔物がその隙を埋め、私は見事に孤立した。
先程まで見えていた地面は魔物によって埋め尽くされ、周囲を完全に囲まれた。
後ろは壁、他3方位は魔物の群れ。どれもが私を狙い、首を噛み切ろうとしたり、引き裂こうとしているのが伝わってくる。
さて、どうしたものか…。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
順調に魔物を倒して行く事に成功した僕達だが、ここで思わぬ刺客が現れた。
嫌な予感がして、魔物の首筋を切ろうとしていた孤月刀を引き戻し、直感に従って刀を構える。
ーガンッ
「…おぉ…」
刀が何かを弾き、目の前から仲間ではない誰かの声がした。
「誰?」
「誰でしょう?」
誰何すると、そいつはくすくすと笑ってそう返した。
「んん、ヒントを上げましょう。ヒント、マシスタの上の者です」
目の前に年老いた執事が姿を現した。
「マシスタ?…誰?」
「…え?」
「…」
そこで二人の時が止まる。こっちは誰?という疑問符を、目の前の奴はえ?知らないの?という疑問符。
「…」
「…」
「序列3位」
「あぁ…?もう一つぐらい欲しい」
あぁ、居た。確かにいた。顔は思い出せないけど。
「上から目線」
「全員そうでしょ?」
「うぐっ…」
曖昧なヒントについ突っ込みを入れると、目の前の奴にダメージが入った。
「王城に潜入…」
「はいはい。思い出した」
「やっとですか…」
ようやく思い出すと、目の前の奴は疲れきっていた。大丈夫か?
「ふぅ…では改めまして、序列2位エイブラムスと申します。短い間ではありますが、よろしくお願いします」
彼は礼儀正しく名乗り出た。今までの経験則上、こういう人はとてつもない力を持っていて且つ人格者である事が多い。それ以外であれば、ただ礼儀正しい世間知らずとか、貴族とかね。
「序列2位…あのマシスタの上か」
「序列と言っても、魔王を含めての序列ですので、魔王傘下においては無類の強さを持っていると自負しております」
「へぇ…で?その傘下のトップがどうしてここに?」
「魔王様に序列2位以下3名による前線の膠着の打開を命じられまして、今到着した次第です」
「他2人は?」
「貴方のお仲間2人と交戦中です」
「そうか。その為の分断ね」
「えぇ…私は貴方に勝てそうもありませんが、少しでも疲弊させることが出来ればという思惑を抱えております。どうか、お手合わせ願えないでしょうか?」
「生憎と親しい友人から魔族はなるべく殺すなと言われているので」
「そこをなんとか…この老いぼれ、今此処に死地を見つけたのです。せめて、武人らしく戦場でこの命を散らさせてください」
『ヴェル?』
『あぁ、其方にも魔族が来たのか…名前はなんて言うんだい?』
『エイブラムスって言ってる。知り合い?』
『あぁ、僕の右腕だった執事だよ。待ってて、そっちに行くから』
「ヴェルって知ってますか?」
「アウスデス=スラスト=ヴェルゲート様の事か!?」
「う、うん。多分ね」
凄いな。ってかそんな長い名前だったっけ?
「おっと…陽向くん、お待たせ」
「な、な、な、な、魔王様!」
「やっぱり君か、エイブラムス。久しぶりだね」
「あぁ、魔王様…ご存命でいらっしゃったなんて…!」
周りの魔物がぎゃあぎゃあ五月蝿いので、範囲魔法で消滅させる。
既にヴェルもウラジーミルさんの所も戦闘は終わっている。視界が開けた事によって、ウラジーミルさんが寄ってくる。
「ご無事でしたか」
「えぇ、なんとか」
そう会話を交わしつつも、僕ら2人の視線の先にあるのは、ヴェルとエイブラムスさんの2人が抱き合っている所だった。
「羨ましいなぁ…」
「仲間が、ですか?」
「え?えぇ、まぁ」
つい、という感じでウラジーミルさんが小さく零した声に反応すると、恥ずかしそうに頷いた。
「まぁ、そうですよね。頼れる仲間がいると肉体的にも、精神的にもだいぶ楽になりますからね」
「えぇ、私が英雄殿の負担を軽減することが出来ているのであれば幸いです」
「何言ってるんですか、互いに互いを補うから負担が減るんです。片方だけが楽になるのは違いますよ。それに、ウラジーミルさんはもう既に僕達の仲間じゃないですか」
我ながら中々恥ずかしい事を言っている自覚はあるが、時にはこうして気持ちを伝え合う事も大事だと思う。
「さて、僕の為に時間を割いてくれてありがとう。それじゃあ魔王城に行って魔王倒そうか。色々話を聞いたけど、予想以上な奴だね」
「それは…?」
「悪い方に。これじゃあ世界から魔族が忌み嫌われるのも分かる気がする。
僕ならこんな事はしないのに…」
憎々しげに呟くヴェルを宥める僕とエイブラムスさん。しかし、予想以上に悪王らしい。これはヴェルに一任しようかな?どうせ瞬殺出来るんだろうし。
「そんじゃあ、先を急ぎますか」
そういう訳で魔王城まで僕ら3人プラスエイブラムスさんの4人は転移をした。
2本目いっちゃおー
多分すぐに出てるはず。
間違えずにね~!




