陥落
やっと、終わりだねぇ。
はい、すみません。頑張ってペース戻すのでご勘弁を。
さて、今回で一応サイドストーリー的なものは終わります。なんか、見返してみて思うのが、私って小説書くの上手くなってるの?って事です。今ならこう書けるとかはあるんですけどねぇ。
では、どぞー
「行ける…」
見渡せる限りで見える魔物は10体程度。今も守護兵が魔物を蹴散らしている。今のところ、防御設備にまで魔物は到達していない。遠くでは、まだ騎龍の鳴き声が聞こえている。
私の所にやってくる魔物もせいぜい2、3体。この分で行けばかなりの時間を稼げる。魔力も十分に余ってる。
「斉射」
新たに現れた魔物を、自分の十八番で倒す。オリジナルとまではいかないが、自分の指定した魔力で、もっとも威力の出る組み合わせの魔法が放たれる魔法。
今回は風と火の組み合わせと水と土と火の組み合わせ。それぞれ2つ、計4つの魔法が放たれた。
火魔法が着弾し、そこに含まれていた風魔法により、火が大きくなった。
土魔法に水が含まれて、質量を増した土の砲弾が回転し、飛び散った土が周りに被害を与え、着弾した後は水が弾けた。そこに火魔法が作用して、爆発を起こす。
「原理は分からないが…いや、魔法とは元来そう言うものか」
「守護兵、被害はないか!?」
その問いに全員が頷く。初めは、その体躯の大きさと武装の強靭さに気味悪く感じていたが、今となっては頼れる仲間だ。
敵を片付けて、一息吐く。
…一息、吐く?
「…おかしい。守護兵、警戒を厳とせよ」
頷く守護兵。そして、次の瞬間、パンッと弾ける音がして、木片が飛んできた。咄嗟に魔力障壁を作って身を守る。
「ふぅん、なるほどね」
木片で視界がなくなっている中、そんな声が響いた。
「そりゃあ、いつまで経っても攻め落とせない訳だ。あんた、下等生物にしてはなかなかやるね」
背筋が凍る、という言葉はこういう事なのか、と初めて理解した。長く伸びた爪はほの暗く光り、その眼光は歴戦の猛者ですら裸足で逃げ出すレベルに鋭く尖っていた。
「国民を逃がし、国を捨てる覚悟でここにいるからな、そんじょそこらの連中とは覚悟が違うよ」
が、覚悟を決めて、全てを捨てた者というのは、なかなかどうして肝の据わるものだ。
「覚悟ね…人間ってのはバカばかりかと思っていたけど、見捨てたもんじゃないね」
そいつは、少し嬉しそうに微笑むと、その威圧感を少しだけ緩めた。
張り詰めていた空気が弛緩し、自分の鎧の下、インナーが冷や汗でぐちょぐちょになってるのに気づいた。
ここが正念場。ヤツが大将、もしくは部隊を率いる者。きっとヤツを倒せばこの戦いに勝てる。そこまでこれた。
「そんなん知ったこっちゃないね。私は貴方を倒して、少しでも時間を稼ぐ」
「守りたいもののために、かい?」
「もちろん」
その返答にそいつはまたも嬉しそうに、頷いた。
「そうか…少し話をしよう。時間を稼ぐ。その考え方、嫌いじゃないよ」
「話?」
そう問返すと、戦う意思はないと見せるためか、爪をしまった。
威圧感もほとんどなくなり、強ばっていた顔に表情が戻る程度には、体に自由が戻っていた。
「そう。人間ってのはさ、何かと多くのものを求める生物らしいね。実際そうだ。それが自分の守りたいものにも適応されている」
「ふむ。守りたいものって言ってもそれは人それぞれだ」
「確かにそうだね。じゃあ、例えば自分の生活を守りたいと思ったとしよう。あんたならそれに何を望む?」
「望む?そうだね、生活…衣食住はもちろん、家族を養えるだけの安定した収入と平和かな」
「だろうね。それでもなかなか少ない方だと思う。けどさ、実際にそれって守れてるの?」
私は、守れなかった。私の生活を。そして、私は全てを壊してしまった。先代から受け継いできたこの国を、国民の生活を、みんなの笑顔を。
「…私は守れなかったが、他の人なら守れている者もいるだろう」
世の中、上手くいく人もいれば上手くいかない人もいる。それで経済が回っている。
「それってさ、安定した収入だけでも難しいよね。俺ら魔族はさ、そんな難しいものを多く望む人間の事をバカって呼んでるんだ」
「…ならば、魔族は何を望むのだ?」
「力、それだけ」
そう答えたヤツの顔はどこか悲壮感を漂わせていた。まるで、何か大きなものを背負っているかのような思い詰めた表情で。
「それで何ができる?力だけでは生きていけないぞ?」
「そうだね、人は貴族社会の中にいる。俺達は貴族社会という看板は背負ってるが、実質力のあるものがトップになる。つまり、力があれば、自分の生活を守れる訳だ」
生活を守る、そこには何かに怯えずに暮らす、そういったものも入っているのではないか?ヤツはそう言いたいのだろう。
「…根本的に違うのではその差異は仕方がないのでは?」
「まぁ、そうだね。だからこそ、俺はあんたみたいに捨てるものは捨てる、そういう人間が気に入った訳さ」
「どういうことだ?」
「国民を守りたい。ならば、国を維持しなければ、これが大抵の王様の考えだ。でも、あんたは違う。国民を守りたい。ならば…」
「「国を捨ててでも生き残らせる」」
ここだけは分かった。なぜなら、私の考えそのものだから。私の選択そのものだから。
「やるじゃん」
ニヤッと口角を上げて目を細める。こういう所を見ていると、魔族と人間は共存出来るのではないか、そう思えるような気がしてくる。
「褒められた所で。どうせ私は死ぬ身だ」
「死に行くあんたへもう1つ教えてやろう」
尊大な態度でヤツはこっちを見てきた。
そこには、先程の緊迫とした空気はなく、ただ雑談を楽しむ2人の姿があった。
「なんだそれ」
「俺ら魔族ってのはさ、元々人間だったんだよね」
「……は?」
多分、今の私は、人様に見せれないような顔をしているだろう。そりゃあそうだろう。今まで敵だと教わってきた魔族が、まさか元は人間だったとは。
「驚いてんなぁ…まぁ、これは魔族では有名。けど、人間側だともう伝承すら残ってないぐらい古い話なんだ」
惚けている私の顔を見て声を上げて一頻り笑うと、話を続けた。
「ほぅ」
「魔物がこの世界に現れた時に、人は2つに分かれたんだ。魔法に長けた者とそうでないもの」
「それは人に限った話か?」
「そう、人に限った話。魔法に長けた者は、そうでない者を助ける為に力をつけた。そして、あんたなら分かると思うけど、持ちすぎた力、出過ぎたものは…」
「周りから敵視されたのか」
自分とは違う者達の扱いなんて、想像に容易い。人間なんてそんなものだ。
「そう。人外、化け物、そうやって貶され、迫害された」
「それが魔族の始まり…」
「そう。けどさ、迫害されて行く宛を失った俺らは1から国を作るには力や技術、時間がなかった」
「…それはどうして?」
「魔物。それにいつ襲われるか分からない。そんな中で国を作るなんて到底出来なかった」
「なるほど…」
「そこで、俺らは魔族になった」
「ん?どういう?」
「魔物の体の構造を調べ上げ、それらを元に魔物の肉を摂って体を魔物のソレに近づけた。それが魔族の始まり」
つまり、薬でいう反作用の打ち消しや、魔法でいう効力の増幅、倍加といったところだろうか。自分を敵と認識させなくさせる。そのためには人ではない生物にならなくてはいけない。どれだけの覚悟がいるのか、私には想像出来ない。
「敵対されなくなったのか…」
「まぁ、そんな感じ。そっからは、魔法に長けた種族になった俺らは結界を作って安全地帯を手に入れた。そこで国を作って生きている訳さ」
「生活のために尊厳を捨てる、そんな生き方をしていた訳か」
「そう捉えるのが、人間。まぁ、解釈なんて人それぞれだしね」
「そうか…」
「最後になるかな。俺もあんたを殺すのは忍びないけどさ、仕事の都合上仕方ないんだ。俺は負け犬だからね、成績を残さないと何も守れなくなる。ごめんね」
また、先程の表情だ。いや、少し違うか。何か大きなものを背負っている、そして、それの重みを理解し、大切にしている。そんな表情。そして、最後にこう言った。
「あんたの魔力、大切に使わせてもらう。来世で会う時は友になりたいと切に願うよ」
享年41歳。私の短くて長い、温かい記憶に囲まれた人生は幕を閉じた。
願うは、私の知り合った者にさちおおからんことを。
はい、話は戻りまして、伏線とかって私全然張れてないんですよ、多分、きっと、Maybe。
話数を重ねる毎に成長して(してるか分からない)投稿ペースが変わる(頑張って戻します)小説ですが、よろしくお願いします。
ってか、本日は成人式ですね笑




