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壊された日常

1週間の放置

申し訳ありません。

「王様…」

「…分かっておる。皆の者、良く聞け。本日までの従事、大儀であった。私は皆の事を誇りに思う。だから、私からの最後の命令だ。そなたらは国民を連れてこの国を出ろ。ここで死ぬのには惜しい人材だ。もう言わなくともわかるであろうが、この国はあと数日とも知れない。ここで死ぬのは私のような老いぼれだけで十分だ」

 妙齢の女性はそう言った。その姿は正しく武人そのものであり、彼女が何たるかを表していた。

「ですが、王様。私は貴方様と最後まで共に過ごしたく思います。ここにいる全てのものは皆同じ思いを抱えています」

「すまないな…私の…我儘で、最後の頼みなんだ。どうか叶えてはくれないだろうか」

 文官の1人がそう申し出たが、女性はそれに頷かなかった。逆に、女性の…王様の頼みとされては断れるはずもなかった。

 普段、この王様が何かを命令する事などまずなく、誰かの意見に自分の意見を加えて大多数が納得してからそれをする。独断での行動はほとんどなかった。しかし、悪事にはどんな王よりも迅速に、且つ一切の甘えを許さずに刑罰を与えた。

「王様…王様はどうなさるのですか?」

「そうか、そなたらのような若い者は私の若い頃を知らないのか…聞いて驚け?私はな、若い頃周りから魔導師と呼ばれていたのだよ。しかしなぁ、私は魔法よりも武術の方が好きでな、結局『最終的によく分からないスタイルで戦う貴族』なんて言われてたっけ」

 1人の侍女がそう言うと、自分も歳をとったものだ、としみじみと思いながら昔の事を語った。そして、最後にはハッハッハ、と愉快に笑う王様。それにはこんな老いぼれがそう呼ばれてたなんて笑えるだろう?という意味が言外に含まれていた。

「王様…私は貴方様の騎士です。最後まで共に居させてください」

「騎士団長。騎士は国民を守る者ではなかったのかい?こんな老いぼれよりも、輝かしい未来を持つ多くの命を守りなさい」

 謁見の間に居た人々が王様を止める事が出来ないと悟ったそんな時、1人の兵士が駆け込んできた。

「伝令…!魔物が出現しました。ここから南東に2キロの場所です。数はまだ把握してれておらず、最低で万は下らないかと」

 その伝達にざわめく側近、配下、騎士、魔術師等々。しかし、王様だけは憮然とした態度を貫いていた。

「万だと…」

「そうか…ご苦労。君には最後の仕事を言い渡そう。昼の鐘がなるまでに最低限の旅路の準備をしろ、と。これは貴族、平民、騎士、商人、冒険者。全てに伝えなさい更に食料などはこちらが提供すると伝えなさい。いいね?」

「……」

「…返事は?」

「…ははっ」

 一介の兵士でも分かった。この国に未来はない、と。

「そう、それでいい…さて、宰相殿。飛行船の整備は?」

「はい。全て終わっています」

 この国は大陸の西端に位置しており、その東は魔界との結界がある。更に、周りを山々に囲まれているため、長距離の移動は大抵飛行船を使っていた。

 現在保有する飛行船の数は約200。その内、武装を詰んだ兵士用のものが3分の2、客船が残りの3分の1。今回は兵士用の飛行船を50。それ以外は武装を外して客船とした。これで国民全員を乗せてもまだ余りある状態となった。

「食料の詰め込みをした後、国民全員を乗せて西へ逃げなさい。あそこには王国がある」

 動力は魔力。そして、その装填は王様が直々に済ませてある。予備用の魔石を宰相に渡すと、王様は玉座から立ち上がった。

「…王様」

「頑固だねぇ。いいかい?そなたらの仕事は、魔族の進行を王国に伝えること。絶対に生き延びなさい。直ぐにこっち側に来たら怒るわよ」

「…分かり、ました」

「さぁ、出発だ、早くしなさい。昼の鐘まであと1時間もないわ。教会に伝達されているんでしょうね?」

「えぇ、鐘を鳴らしたら直ぐに王城に集まるように言ってあります」

「そうかい」

「王様。王様も国民のうちの1人です。どうか、一緒に逃げましょう」

「どうしてこの国を捨てて逃げることが出来ようか。私は、ここを捨てるぐらいなら一緒に死ぬと王になった時に誓ったのさ」

 そう言い残すと、王様は自身の身に装備を付けていく。その一つ一つがこの国の国産品で特産品だった。魔石、魔法剣、鎧、弓、矢、魔道具。全てを付けた。

「さて、私にはこれからやらねばならぬ事がある。まぁ、仕込みがあるから後はよろしくって奴だ。この手の我儘はもう慣れただろう?」

「…まったく。最後まで変わりませんね。いいでしょう。私が貴方様の願い、見届けます。必ずや国民全員を王国へ連れていきましょう。ですので、心配はなさらないでください」

 深々と礼をする宰相に王様は大きく頷くと、1枚の紙を渡した。

「金庫の暗号だ。持ってくといい。ただ、国民に平等に分けなさい」

 ほらほら、と押し付けてくる王様に仕方なしに受け取ると、安心したかのように安らかな表情になった。

「では、行ってくる」

「最後に…せめて国民の前に顔を見せてください」

「………あぁ、約束しよう」

「約束ですよ?」

 念を押すように言うと王様は諭すように優しい声色でこういった。

「安心しろ。私が約束を破った事などあったか?」

「そうですね。分かりました。私、宰相のスフィールド。最後まで職を全うしましょう」

 その返事に満足したのか、部屋を出ていった。

「さて、仕事だ…」

 まず、王の執務室に行く。そこで金庫の暗号を入力し、中身を受け取る。

「な…!」

 中にあったのは、金貨の入った袋だけでなく、様々な魔道具があった。

 それらが魔法鞄の横に並べられている所を見ると、前々から準備をしていた事がわかる。

「ほんとに用意のいい人だ」

 自然と笑みと涙が浮かんだ。この国の歴史の詰まった数々の書類。中には歴代の王の手紙や内情を綴った紙などもあった。そして…

「王様…」

 今代の王様の手紙もあった。それを大事に鞄に入れる。

「よし…」

 肩がけに出来る大きさの鞄に金庫内の全てのものが納まった。

「今まで…お世話になりました…ッ!」

 ダメだ。まだ、泣いてはダメだ。

 私の尊敬する人からの願いをまだ叶えてない。泣くのは…願いを叶えてから。

 次に、私は飛行船の貨物室へ行った。そこには大量の物資が運ばれてきていた。城で働く人がチームに別れて食糧や燃料となる魔石、更には生活必需品を運び入れていた。

「あ、宰相様。ご苦労さまです。」

 彼は…確か監査部の。

「間に合いそうですか?」

「えぇ、はい。なんとか間に合うと思います」

「そうですか…」

 さて、この王城を見るのももう最後かもしれない。だから、なるべく多くの場所を目に焼き付けよう。

「あ、そうだ。積み込み作業はあとどれぐらいで終わりますか?」

「そうですね…この歩で行けば、そうですね…あと半刻ぐらいでしょうか」

「分かりました。ありがとうございます」

 私の受けた最後の命令は国民全員を生きて王国へ行かす事。その為には襲撃に対応する船がないと行けない。誰がそれをするのか。私と…そうですね。有志を集いますか。

 そう思い、次に兵士用の飛行船のドッグに移動し、その内の1隻をもらい受けた。

「あ、師団長殿。実は…」

 ついでに近くにいた第3歩兵師団の師団長を誘ってみる。第3歩兵師団は優秀な砲兵が集まっており、中でも師団長は1番の腕を誇る。

「そうですね。王様の最後の頼みとあらば、このミハエル、その提案に乗らせてもらいます。我が師団の優秀な砲兵も何名か連れていきましょう」

 彼は、意外にもあっさりと快諾してくれました。さて、次は料理長に操縦手でしょうか。私の人脈がここで役に立つとは。世の中どうなるか分からないものですね。

「あ、ベルトン殿。実は…」

 操縦手を探して王城を歩いていると、料理長のベルトン殿とばったり出会った。

「ほうほう。えぇ、どうせ老い先短いこの身です。やってやりましょう」

 説明をすると、彼は快活な笑顔を浮かべて大きく頷いてくれました。更に、その話を聞いていた料理人の何人かも申し出てくれました。

「さて、最後ですね」

 ちなみに、ベルトン殿や師団長殿にはドッグに集まるように言ってあります。

「あ、グラミス殿。実は…」

「私に何か出来ることはありませんか!?」

 説明をしようとすると、彼女は自分から何かやれることは無いかと申し出てくれました。

「あの、嫌だったら断ってもらっても構いません。私は王様から…」

 改めて説明を始めると、話し終わる前に彼女は自分のチームを集めてその話に乗ってくれました。

 更に他にも何名か誘うとその全員が了承してくれました。魔術師団長、錬金術師、建築士に軍師まで。

 皆、王様からの願いを話すと、直ぐに了承してくれました。改めて王様は国民から慕われていたのだと気付かされました。

書き方がなんか定まらない。

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