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フェンリルの名前

どうも、相笠です。

投稿もすっかり慣習化したこの頃。私は少しずつ文字数を増やす試みをすることにしました。

まぁ、ほんとに少しずつですから、期待しないでくださいね。

「カントリーロード、この道ずっと行けばあの街に続いてる気がする…」

「どうした?」

 いきなり、隣に座って外を見ていたいた東條が歌い出した。

「え?あぁ、なんかこの一本道がカントリーロードを彷彿とさせてさ。旅に出る人、帰ってくる人、みんながここを通るんだ、って思ったらつい自然とこの曲が浮かんでた」

 そう言う東條の横顔は、どこか懐かしむ様な、それでいて寂しそうな顔をしていた。多分、日本での思い出でも思い返しているんだろう。

「…明日はいつもの僕さ、帰りたい帰れないさよなら、カントリーロード…」

 まるで僕の様だと思い、いやそうでも無いと心の中で訂正した。

「だって、日本に未練はないからね」

 さて、少し湿っぽくなっちゃったし、気分転換がてら御者台のおじさんに話しかけるか。

「御者さん、魔物は大丈夫でした?」

「うん?あぁ、あんたらのお仲間の鎧をきたガタイのええ兄ちゃんらが守ってくれてたよ」

「そうでしたか…にしても盗賊は何処へ行ったんでしょうかね」

「あぁ…全員、魔物に喰われたんだとな」

「…え?」

「心配せんでもええぞ、遺品は…誰だっけな…別嬪な嬢ちゃんが持っとるからなぁ」

 いや、報酬の心配じゃないんだけどなぁ…。

 ん?あれは…

「おぉ、見えてきた、見えてきた。あれがラノバ渓谷だよ」

 うん、知ってます…まぁ、知らない体で行くんだけどね。

「すごく大きいですね」

「あぁ、本当ならあそこで1泊する予定だったんだけどなぁ…日もまだ高いし、そのまま突っ切りますわ」

 そう言うと、鼻歌交じりに馬車を進める御者のおじさん。

「…にしても、昨日の出来事が嘘かのように平和だよなぁ」

「そうですね…」

 ふと前に視線をやると、もう城壁が見えていた。

 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

「よしっ、到着」

「でも、少し待ちそうですね」

 クライアンの城壁の近くまで来たが、商業都市とだけあって、たくさんの馬車が往来し、渋滞が起きている。

「ところで、君らはこれからどうするんだい?」

「僕らはこの街にあるダンジョン攻略をしに来たんですよ」

「ほぇー、俺には魔物と戦う力なんてないからねぇ、羨ましい限りだよ。あっ、でもね、君らは身体が資本なんだから、無理しちゃ駄目だよ」

 そんな気遣いをされながらも、僕らの雑談は続き、いつの間にか入場門まで来ていた。

「次の団体……え」

 団体の列に並んでいたが、それでも多くて20人程度だった。しかし、僕らは軽く40人を超え、しかもその大半が武器を所持している。その姿に圧倒されたのか、衛兵さんは僕らを見つめて固まっていた。

「…どうしたんだ?全然進んでないじゃないか…って、敵襲!」

「ちょっ、待て待て違う敵襲じゃない!どっかの商団だよ、多分」

「待て待て、そんなにでかい商談なら領主様との取引か?よし、呼んでくる」

 もう1人衛兵が来たと思ったら、嵐の様に過ぎ去って行った。

「…なんだあれ」

 全員同じ事を思ったのか、うんうんと頷いていた。

「俺らじゃなくて君らの案件の方が領主様宛に近いだろうね」

 動揺することなく、ケラケラと笑う商人のおじさんに領主に会うという緊張感が抜け、みんなが自然体になった。

 そのまま、併設している詰所に移され、少しの時間が経つと、領主と思われる男性とその秘書、護衛がやってきた。

「……ん?お前らは…王国の騎士か?」

「あぁ、そうだ。だが、俺らは騎士としてではなく、1個人としてここに来ている」

 入ってきた護衛の1人が騎士の正体に気づき、周りの衛兵に緊張が走ったのが感じ取れた。

「しかし、こちらとしてはお前達王国の騎士と面識のある冒険者が群れを成して来ている時点でこのクライアンで暴動を起こすのではないかと勘ぐらざるを得ない」

 もっともな事であり、自分達もそうするであろう対応に騎士達が黙り込む。

「まぁまぁ…そこは君達が監視につくとか、そんな折衷案を出そうじゃないか。ここは来るものを拒まないことで有名なクライアンだぞ?」

 領主のその鶴の一声に今度は商業都市の衛兵が唸る。

「…分かった。その代わりに、お前達が申請をしない限り、武器の携帯は認めない。更に、怪しい事をしていないか常に2人組で監視させてもらう」

「その条件、呑もう。しかし、そこの冒険者達とはつい先程会ったばかりなんだ。だから、せめて、彼らの動きは制限しないでやってくれ。彼らの未来が俺らのせいで潰れてしまっては申し訳が立たん」

 流石にそれは彼らも思ったのか、ギルドの職員から情報を受け取る事を条件に、先程の条件は撤回してくれた。

 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

「よし、部屋分けをしてくれって団長から手紙渡されたから部屋分けしていくぞ。基本的にはいつも通りのグループ2つでふたつの部屋。つまり、男女別って事だな。バランスの悪い所は各自調整するから、俺に言ってくれ。あと、これからのことは全て手紙に書かれていたから、俺の指示に従ってくれ」

 山崎がそう言うと、みんなが頷き、速やかにペアを作った…が、このクラスのパーティー数は9。従って…

「なぁ、陽向。俺らカップルだし、一緒の部屋にしてくれないか?」

「お願い!柚の許可は取ってるから」

 何故か、裕二達は男女でペアを組みたいと言ってきた。…はぁ。地球だと高校生なんだからあまり盛るんじゃねぇぞ。

「分かったよ。その代わり、僕らは別々の部屋を取るから、その経費はパーティーの収益から落としてくれよ」

「あの…その…お金、勿体ないし、知らないところで1人で眠るの怖いから一緒に寝てくれないかな?」

 お前はそれでいいのか、東條…。

「あっ、江本くん、そっちのパーティーも決まった?」

「もちのろん!」

 …おいこら、ちょと待てこら。

「えへへぇ、今夜は寝かせないよ?」

 やばい…東條がイカれた。いきなり抱きつくなんて年頃の女の子のしていい事じゃないぞ…いや待て、フェンリルならよく僕に抱きついてくるからいいのか?いや、あの娘はまたちょっと特殊。他、他は…いない…。マジでこれは正常なんですかね!?

 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

「…むぅ」

 ーもふもふ

 隣から東條の鋭い視線を感じるが気にしない。

「って、あ…」

「…む?」

『フェンリル、君の名前をもうそろそろ決めないとね』

『えっ、いいんですか!?』

『ごめんね、先延ばしにしちゃって』

『大丈夫です!全然っ、気にしてませんからッ!』

 とはいえ、候補があり過ぎて決まりそうにない。

『うーん、じゃあ好きな番号を3つ言ってくれないか?』

 どうせなら、フェンリルと一緒に名前を決めたい。…ただ単純に僕のネーミングセンスがズレてたら怖いだけなんだけど。

『416でお願いします』

 4と1と6か。4は…凛、1は…メアリー、6はフェイ。バラバラだなぁ…。繋ぎ合わせる事も出来ないや。

『えっと…凛とメアリーとフェイ。どれがいい?』

 そうたずねると、パタパタしていた尻尾が止まり、小首を傾げて真剣に考え始めた。

『…フィメイリア』

「え?」

「…どうかした?陽向くん」

「あ、いやなんでもない」

『名前を組み合わせたの?』

『はい。でもリンがはいりきらなかです…すみません』

 真剣な表情をしていると思ったら名前を組み合わせていたのか。

『…でも、それが気に入ったならそれで行こう』

『はい!ご主人様の考えてくださった名前が素敵だったので、ついどれも使いたくなっちゃいました!これからは私はフィメイリアです』

「愛称はメイ、フィアのどっちか、かな」

「どしたの?陽向くん」

「いや、なんでもない」

「そう…」

『出来ればフィアでお願いします。ご主人様が考えてくださった名前に似ているので』

『もぅ、嬉しい事言ってくれるなぁ!』

 耐えきれなくてつい、ぎゅっとフィアを抱きしめてしまった。

「きゃっ!うふふ…ご主人様ぁ」

 …え?

「えっ?…えぇぇえ!?な、何?だだだ、誰ですか、これはぁ!」

「…フィア?」

「はい?」

「正座」

 こてん。と小首を傾げながらこっちをみるフィアを正座させる。

「…フィア、人前での人化は?」

「うぅ…厳禁、です…」

 尻尾を体に巻き付けて怯えるフィア。…いかんいかん、少し厳しすぎたか。

「分かったら次から気をつけること…よし、フィア、おいで!」

「…え?…は、はい!」

 嬉しそうに飛び込んでくるフィア。

 僕らは東條がいることを忘れてフィアと満足するまでいちゃついた。

最近、自然災害が多いので、皆さんもいざという時の対策をしておきましょう。私もラジオと懐中電灯はベッドの近くに置いてあります(全然対策になってないような…)。

では、また次回。相笠でした!

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