夜明けの戦い
どうも、相笠です。
対コニー戦、案外書くことが多かったですね。
「いけっ!私の魔物達!」
男、コニーが声をかけると、辺り一面に魔物が出現した。種類は疎らでゴブリンからリッチ果てには腐龍までいる。
「…死霊魔法?」
思わず推測が口をついて出る。
「はっ、そんなチンケな魔法と一緒にしないで欲しいものですね。これは、私がとある御方から直々に授かった恩恵、その名も人形使い。その威力は…行け!」
所詮貰っただけに過ぎない紛い物の力を過信する輩が…。
心の内で愚痴を零しながら、向かってくる魔物に警戒し、気を引き締める。
「グギャァァァ!」
最初に攻めてきたのは、一番槍と言う名に相応しいゴブリンランサー。
「くっ!」
ある程度強化されているとは思っていたが、これは強化なんてものじゃない。改造または進化ぐらいが丁度いい。そんなレベルで強くなっている。
「っらぁ!」
その槍を下から上に跳ね上げると、そのまま手首を返してランサーの首を刎ねる。
「ごがァ!」
次に、間髪入れずにゾンビが群れをなして襲ってきた。…その数、20。
「ふっ!」
風魔法の応用で孤月刀に魔力を帯びさせると、そのまま振りぬき、魔力刃を飛ばす。しかし、それだけだとゾンビ相手に有効打とはなり得ない。
それ故に、俺はもう一工夫加えた。
魔力刃に当たったゾンビはその傷が修復する前に全て木っ端微塵に吹き飛んでいく。
これは、魔力刃の構造を、1枚の魔力ではなく、多数の薄い魔力で構成し、外側から1枚ずつ破裂し、ゾンビの体内を切り刻んでいくような構造にした為だ。制作には精密な魔力操作と魔力量、魔力の質を求められるが、俺からしたら造作もない事だった。
そして、その凄惨さは想像を絶するものであり、周りの魔物ですらその場に立ち入ることを躊躇った。
「うぐっ…うぇっぷ…おろろろろ…」
思ってもいなかったコラテラルダメージをコニーはもろに受けていた。
魔物達もある程度慣れたのか、再び俺に向かってきた。多分、そう何度も使えるものでないと思ったのだろう。
しかし…
「残念だったな。さっきのは試験運用だ」
先程の魔法をそのまま流用するだけだと、攻撃範囲が狭い。故に、魔力を宿す媒体を刀と言う限定されたもの出なく、大気とする事で、より自由に、広範囲に、予備動作なく発動出来るようにした。
「「「グガッ!?」」」
魔力刃…魔力のこもった榴弾の方が正しいか。まぁ、榴魔砲とでも呼ぶか。その榴魔砲をくらった魔物達は一瞬にして無惨な姿に変わった。辺りは返り血で赤く染まり、それでも尚多くの魔物が押し寄せてくる為、その景色もすぐに見えなくなる。本当にキリがない。
「うぇ…ぐふっ…ふぅ。無駄ですよ、無駄無駄っ!私の魔物達はまだまだいるのですから!」
そう言われて周りを見渡すと、オーク、オーガ、シュルケンサーベル、腐龍、フォアパンダ、ベンチュラに後は…あれはオーガジェネラルか?
見えるだけでまだ2000以上。これらを…ん?同時に倒すことできるじゃん。
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爆裂魔法・上位・範囲殲滅・桜花爛漫
効果・射出時、多弾頭に分裂し、着弾時に魔力に比例してレート0.2mの範囲で爆発を起こす。
追加効果・上方からの撃ち下ろし時火力20%アップ
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さっ、と上空に上がり、半径1500m程まで真っ平らになった広場に撃ち下ろしで発射する。使用魔力は約5000万。10億ちょっとある魔力でも撃てる数は20未満。つまりこれは、一種の賭けだ。
魔物達は一瞬にして消え去り、爆発の模様は桜の様に美しかった。そして、当然俺もその爆風を喰らう。結界を張って風邪をある程度流しているが、それでも徐々に爆心地から離される。周りを見ると、木々がなぎ倒され、クラスメイト達の近くまで爆風が行っているようだった。そして、視界の隅から光が瞬いた。
「ッ!」
仕留め損なったか…脊髄反射に近い反応速度で飛んできた光線を避ける。光線には負のオーラが纏わりついていた。
「厄介な奴が残った…」
「ふふふ、ここまで私の魔物達がやられるのは一周回って面白いですね。私もそろそろ本気を出すとしましょうか」
「なっ!?」
腐龍が上昇して来た。そして、その背中にはコニーが乗っていた。いや、正確にはコニーと見られる魔族が乗っていた。
両の腕には禍々しい赤色の線が迸り、それを覆うように負のオーラが可視化している。体は紫色に変色しており、長く鋭い角が左の額から出ていた。
「ふふふ、驚くのも無理はないですね。これが、私の、私がとある御方から授かった最終奥義、魔神化!」
そう言うやいなやコニーは暗黒魔法を無詠唱で行使した。
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種族 魔神(人間)
職業 人形師
Lv.???
名前 コニー・テンブルク
年齢 27
性別 男
HP ???
MP ???
物攻 16000
物防 9800
魔攻 17000
魔防 7900
速度 20000
幸運 -100
スキル
魔神化 禁忌Lv.10 魔導の導きLv.10(魔神化時) 理不尽 天災 外道
称号
理不尽に見舞われし者 外道 邪神の手駒 禁忌を犯し者
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ステータスが不明。こんな事は今までで1度もなかった。…が、負ける相手ではない。
神化の逆は魔神化か。まぁ、そりゃそうだよな。
「…神化」
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種族特殊スキル・ユニーク級・神化
効果・ステータス値を大幅に上げる。神ともう1つの両方の種族を持つ者のみが取得する事が出来る。現在では全世界で1人のみ。
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いっちょやりますか。
「ふふふ、女神の回し者か…私を見捨てた神を信仰する者は根絶やしにしてやる!」
「…格の違いを見せて上げますよ」
放たれた暗黒魔法を孤月刀の1振りで全て暴発させる。つまり、私に当たったという誤った認識を魔法に与える事で、その全てを迎撃する事が出来る。
「爆発物のお取り扱いには充分ご注意くださいませ」
お返しに全属性の上位魔法を放つ。それこそ、目の前が魔法で埋め尽くされるぐらいに。
「っく、やれっ!腐龍!」
腐龍を盾にしてコニーは攻撃を捌いた。
対して、こっちは直撃こそないもの、魔法を掠ったり、さっきの戦いで幾つかの擦り傷や切り傷がある。
「くっ…」
死角からの魔法に気付くのが遅れた。魔法は…まずい…呪いの矢。
必死に身体をよじって回避行動をとったが、完全に避けることが出来ず、太ももを5センチ程削った。体内に呪いが回る。……魔神クラスだと状態異常無効が効力を発しないのか…。
「…まずい」
接近戦は速度の差で互角かそこら。攻撃力は多分スキルの重複などで相手に分がある。魔力戦には残魔力量が心許ない。
「ふふふ…かはっ!」
…どうした?
「はぁ…はぁ…ふぅ。ケハッ!ゴホッ…副作用か…くそ!」
副作用…?……そうか、コニーの種族が人間のみで、魔神化というスキルが邪神から貰ったものだとすると、魔神化を発動する際だけ種族が魔神となる。そもそも、このスキルは自分のステータス値を一時的に上昇させるだけ。したがって、魔神としてのステータスを持たないコニーはその無理の代償を人間の身で受ける事となる。
どうであれ、これが、最初で最後のチャンスだ。
「はぁッ!」
自分の限界以上の速度で孤月刀を抜刀し、そのまま切り刻む。魔力を纏った孤月刀は切断面をズタズタにし、さらに、返す刃に火属性を纏わせコニーの身体を焼く。
「はぁ…はぁ…終わったか」
魔力反応はなし。クラスメイトの方にいた魔物も術者が死んだことによって自然消滅したようだ。
「ヤバっ、無理しすぎた…」
そのまま、よろよろと地上まで堕ちて行く。
「痛てっ…うぅ…受け身しくったぁ」
何も無くなった更地に寝転がり、言うことを聞かない脚を放り出して空を見上げる。
「夜明けか…英語でなんて言うんだっけ…」
「daybreak又は単純にdownだよ、陽向くん」
視界上方に東條が居た。
「…東條?何でここに?」
「いや、俺らも居るよ?」
「いきなり落ちてきてびっくりしたぜ!」
「いやぁ、見事に受け身失敗してましたねぇ」
首だけで周りを見るとクラスメイト達が居た。怪我してる奴もいれば武器を片手にしている奴もいる。
『相変わらず私を無視しますよね、ご主人様は』
「…痛い」
フェンリルが僕の額に前脚を乗せてきた。
『ご主人様はいい仲間に恵まれてますね』
「そこにはフェンリル、君も入ってるんだよ?」
『またそんな事を言って…でも、嬉しいです』
ぎゅっとフェンリルを抱きしめてからフェンリルの背中に乗せて貰う。
「ん?どこ行くんだ?陽向」
「ちょ、待て待て!」
ここに居るとまたクラスメイト達を怖がらせるかと思ったから帰ろうかと思ったんだけど…。
「陽向くんは怪我してるんだから…私が治してあげるよ」
「そうそう。それに、男子は私達か弱い女の子の事を守るという使命があるんだからね」
「…さっきは怖がったりして済まなかった」
「本当に申し訳ありマスタング…ぷぷぷ」
「…おい、そのネタは飽きたぞ。それに、か弱いなんてなんの冗談だ?単独でオークを相手に出来る女の子がこの世界にあと何人いるか…」
いつも通りの風景に僕はふと、笑みを零しながらそう言った。
短い時間だったけど、改めてクラスメイト達…仲間の大切さ、温かさを感じた。
次回はまぁ、来週でしょう。
登場人物の整理が未だに出来ていないっていうね。はぁ…頑張らないと。
あ、ちょくちょくミリネタ入れています。見つけたらその日はいい事があるでしょう笑。
では、また次回。相笠でした!




