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合同任務

どうも、相笠です。

6月も終わりに近付いてきました。

私は夏が好きじゃないです。

元々寒い地域にいた事もあり、

暑いのが苦手です。

では、どうぞ。

 僕らはこの一ヶ月と少しで生活サイクルを確立した。午前中は各々の専門分野の授業、つまりある程度の知識は修めたので、それぞれの職業に必要な、もしくはその職業の応用編の知識は技術を学ぶ授業だ。そして、午後は自由に活動している。とは言え、魔法の開発や冒険者としての活動、全員集まって成果を報告する集会など、買い物や街の探索なんて滅多にできないし、必要な物はメイドさんが買ってくれる。

 今日は、冒険者として4人で魔物討伐に向かうことになっている。説明していなかったが、冒険者に登録したのは、他国などに遠征に行く際に、一々勇者一行だと知らせる必要を無くす為。この王国は他国との関係が上手くいってない為、王国お抱えの勇者一行が他国に入ることが難しい。それに、日本と違い、有名人の誘拐など日常茶飯事…とまでは行かないがそういった事はよく起こるので、態々身を危険に晒す事はせずに、勇者ではなく、冒険者として入国する。また、迷宮やダンジョンなんかは冒険者登録していないと入れないので、僕らは冒険者登録をした。

「さて、陽向。…今回は何狩るんだっけ?」

 気合いの入った顔で僕の肩を叩いてきた裕治はそう尋ねてきた。

「…今回はコボルト及び最近森での魔物増加が見られるのでその調査」

 魔王復活による何らかの影響だろうか。森、とは王都を囲う外壁から南東に5km程の場所に広がる約620k㎡つまり、あの白神山地の約3〜4倍の面積を持つ森の事だ。未だに、森の深部は未探索であり、最も探索が進んでいる場所ではAランク冒険者ですら敵わない魔物が出てくるらしい。

 Aランク冒険者とは、冒険者ギルドには下はG、上はSまでのランクがある。それぞれに、+と-があるので、計16の段階があり、G~Eまでが初級、D~Cまでが中級、BとAは上級、Sは居ないのでまぁ、言わなくていいだろう。と言うよりは言いたくない。だって、Sランクの基準が初代勇者なんて言われて、「あぁ、なるほど。それでSランク冒険者は居ないのですね」なんて納得できる初代勇者が居るだろうか。いや、居ないだろう。しかも、Sランクだけ聖級、とか言う神々しい名前だし。その基準が僕なんてシンジラレナイネ。

 話を戻すが、コボルトというのは、単体では特別害をもたらすものではない。コボルトは農作物を荒らす寄生虫や田んぼや畑の中の虫を主食としている。もちろん、それだけだと生きていけないので、木の実や草なども食べる。そのため、農家には虫除けとしてコボルトを使役する所もあるらしい。そんなコボルトだが、集団になれば討伐依頼を出される程には厄介な存在になる。なぜなら、コボルトは虫を食べる為に田んぼや畑にくるため、集団で行けば、踏み荒らされお腹を満足に満たせなかったコボルトは農作物を食べてしまう。そのため、農民や政府はコボルトの討伐依頼を出した。今回の討伐依頼だが、規模が大きいため、いくつかのパーティとの合同任務となる。依頼者からは、コボルトが何かに追い立てられているように感じたので、森の調査もして欲しいとのことだった。例年、コボルトが農村に下りてくるのは1ヶ月も後らしい。

「よぅ、ヒナタ。お前らのパーティもコボルト討伐に参加するのか」

「久しぶりチャド。前回みたいに無理して怪我はしてくれるなよ?」

「安心しろ、俺らはコボルト相手に手間取るようなヤワな奴じゃねぇよ」

 チャドとガーランドとは僕ら4人も面識があったが、後ろの女性だけは会ったことがない。

「なぁ、チャド。後ろの女性はアンタの奥さんか?」

 好奇心旺盛というか、何事にも首を突っ込む体質なのか、裕治がそう尋ねると、チャドは「そうだ!別嬪さんだろ!」と豪快に笑い、僕ら4人は呆気にとられ、

「「「「…ありえない」」」」

 期せずして4人の声が揃った。

「ガハハ!やっぱりチャドんとこの奥さんを見ると皆同じ顔すんのな!」

 チャドの肩を叩きながら登場してきたのは、今回参加する3つ目のパーティ、ギルティのリーダー、ラーガス。リーダー同士の顔合わせは済んでいるので、互いの顔ぐらい分かるようになっている。

「よっ、坊主」

 気のいいおっさんだが、突然現れるのはやめて欲しい。

「今回は日帰りだから酒は持ってきてないよね?」

 基本受けるクエストや依頼は日帰りのもの。それも、次の日の訓練にひびかないもの。まぁ、調査系は日をまたぐ事が多いからやるつもりはなかったんだけど、受付嬢の押しに耐えられずに受ける形になってしまった。

「何言ってんだか、今回は野営必須だぞ。お前らその装備で大丈夫なのか?」

「…え?チャド、それホント?」

 衝撃の事実に思わず聞き返すと、チャドは呆れながら頷いた。

 急いで装備を整え、騎士団長に明日までに帰れない可能性があること、野営することを伝え、それぞれのメイドに事情を伝えて討伐に向かったのは夕暮れの少し前だった。

「しっ!コボルトだ。まだ、こっちに気づいてないらしい。奇襲掛けるぞ」

 ひたすらに続く平原を歩いていると、森の入口付近にコボルトが少数…4、5体いた。それを連係して倒し、森を見て回ると、そのどれもが森の入口付近に居り、どれもが群れというには少なく、全体数としては軽く3桁をこえた。

「うぉりゃ!」

 今戦ってるのは、僕ら4人。僕がコボルトの攻撃を受け止め、剣豪の裕治が一閃。結界師の東條と鍛冶師の武原が補助魔法を。後衛職は補助魔法と回復魔法は使えるように練習したため、どの職でも後衛としての役目を果たせる。一番安定しているパーティは勇者パーティなんだが。ちなみに勇者パーティの構成は、勇者、賢者、剣聖、拳闘士、弓師、魔女、聖女、補助術師の7人だ。この7人を軸として魔王討伐をするらしい。僕は、いつでもこのパーティのアシストに行けるように僕が居なくても回るようなパーティ作りしている途中だ。

「うぉりゃ!…ふぅ…お疲れさん、陽向。助かる。東條さんと美琴もありがとな」

「不甲斐ない男子を支えるのは大変だぜぇ」

「ちょ、ちょっと、美琴ちゃん!ダメだよ、そんなこと言っちゃ!…あ、陽向くん、お疲れ様」

「おぉ、やるなぁ。流石ヒナタのパーティだな」

「いや、チャド。このパーティのリーダーは裕治だから」

「さて、坊主。これで粗方終わったな。森の内部に入るぞ。なるべく早く回って深部は明日の朝一に調査しよう」

 コボルトの反応はこの森じゃほとんどない。更に、コボルトおろか他の魔物の反応も少ない。あるのは深部にいくつかの大きな反応。1つはそのまま、もう1つは隠蔽のスキルがあるようだ、それも高位の。

「よし、調査始めますか」

 夕暮れ時に始まった調査はたんたんと進み、その日出した結論は、森の深部にとてつもなく強力な魔物がいるため、既存の魔物が浅い所に住処を追われ、コボルトなどの魔物が平原や村の近くに出てきている、ということ。そして、スタンピードが起きる可能性がある、ということ。

「手に負えるものではないな。1度帰ってギルドに伝えて戦力を固める方が建設的だ。今から帰るぞ」

 今回の依頼において、全パーティのリーダーは、ラーガスなので、従うほかない。そして、結局僕らはコボルトの掃討をしただけだった。

 スタンピードの影がすぐそこまで来ているのは火を見るより明らかだった。

 僕が深部の魔物を倒さない、否倒せない理由は、スタンピードにある。僕1人で深部の魔物を倒すことは出来るがその戦いに慄いた魔物はすぐに街へと逃げ出すだろう。まだスタンピードの用意ができてない街はすぐに陥落。クラスメイト達も駆り出されての戦闘。それにより、何名かのクラスメイトが命を落とすだろう。だから、僕は深部の魔物を倒せない。

 クラスメイトを危険に晒さないため、とは言え目の前の脅威を見逃すのはとても悔しかった。


小説投稿も大分慣れてきました

これからも私らしく書けるように

頑張りますので、応援して下さると嬉しいです

さて、次回は来週です

では、また次回、相笠でした!

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