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檻、血、髪の毛
ここは、檻だ。
少女は思った。親もいない、彼女以外いない、この家は、朽ちた彼女の檻だ。
お腹が空いて仕方がない。身の回りの食べれるものは全てなくなってしまった。もう自分の唇の皮や、爪ぐらいだ。それらも、じわりと血が滲むまで囓ってしまったから、これからどうするのだろう。彼女は生きていくことに疲れてしまった。
ぷちり。ぷちり。ぷちり。
部屋に、響く音。少女が自らの髪の毛を噛み切っては飲み下す音だ。無意識のうちに口に触れたものを食べようとしているのだった。
髪の毛はあんなにも細いのに噛み切ることは、難しいのだと少女は気付いた。それと同時に一本、一本、噛み切る度、苦しみが薄れていった。
少女は、ふと羅生門で老婆が死人の髪の毛を抜くのを見る度、恐怖が消えていき憎悪を抱く男を思い出した。そして自分が生きていくために正義を捨てた男を思い出した。
少女の、この苦しみが消えてなくなったとき、心には憎悪が宿るのだろうか。憎悪に身を任せて、生きていくのだろうか。
少女は、自分が羅生門の前に立っていることを知らない。