邂逅
「貴様が、この山に巣食う魔王だな!」
可愛らしい体躯の青年が、私に剣を向けていた。
「この勇者レン様の初仕事の相手になることを光栄に思うがいいい!」
どこから、そんな自信が湧いてくるのか、不思議でたまらなかった。
「――――――――――――」
声が出ない。多くの生物の能力を獲得してしまったがゆえに、それを行使し分けるのは大変だった。
「あー、あー・・・よし。お前何をしに来た。」
「仕事だ!」
そんな、「きまったぜ」みたいな顔をされても。
「それは私を殺すことか?」
思い至った回答を口に出してみる。
「そうだ!なかなか頭がいいじゃないか!」
頭の良し悪し関係ないだろ・・・。
「ならば殺されてやる。かかってこい。」
うぉぉぉぉぉそんな雄たけびが聞こえた。
「・・・よわっ。よくここまで生きてこられたな・・・。」
つい、本音が漏れた。
「貴様・・・ただ者ではないな!」
「ただ者でないと、最初に言ったのは貴様だろう・・・ふふふっ」
聞き覚えのある笑い声がした気がした。
「気色の悪い笑みを浮かべやがって!」
え?私が笑っているのか?
「・・・・・・。」
そうか。
私は笑っているのか。
目の前に立つ勇者と名乗る少年が、怪訝な顔をする。
「何故泣いているんだ?笑いながら泣くなんて、ますます気持ちの悪いやつだな・・・。」
泣く?
ああ、私は泣いているのか。
何時からだろう。
私の中から、感情という物が姿を見せなくなったのは。
何時からだろう。
何を見ても心が動かなくなったのは。
「何だこの光!まさか・・・噂に聞く第二形態というやつか!こいつぁ、いい感じに胸アツな展開だぜ!オ俺様も本気を出すとしようか!」
うーん。
主人公の名前どうしよう・・・。