プロローグ
初投稿です。
お手柔らかにお願いします。
これは勇者が歩む冒険譚。
私はそれに付き添う脇役でしかない。
この物語の主人公が誰なのかと問われれば間違いなく勇者だろう。
壊れた私がここまで歩けたのも彼がいてくれたから。
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ああ。
なんて残酷な世界だろう。
決して多くを望んだわけではない。
それどころか、この生すら私が望んだものではないというのに。
世界は、わたしから二度も愛する人を奪うのか。
私は狂うしかなかった。
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うすうす気がついてはいた。
私の力は「何か」違うと。
でも、彼の死でわかった。
「愛を紡いだ瞬間」に「相手」を殺害し、そのすべてを奪う。
それが私の運命。私の力だった。
私は、野を駆けた。
その道中で、いくつ「奪った」のだろう。
その時の記憶はない。
だが想像はできる。
ただ、本能で性を貪る。そこに生物としての誇りなど欠片もなく。
ただ「獣」になり果てる。
それこそが私の本性。本当の私。
そう思えて仕方がなかった。私は一人になりたかった。
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ある山に至った。
生物がいないと、昔同僚に聞いた魔の山。
この時すでに私は、人ではなかった。
無数の角に、数えきれない多種多様な羽や角。
1キロ先の壁の模様が見えるし、虫の声の意図が理解できる。
それでも、この山に入ってしまえば。
そんな私の小さな願いは最後までかなわない。
私は知らなかった。
魔の山とは、生物がいないから、「魔」なのではない。
「魔物」が大量にいるから、「魔」の山なのだ。
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目が覚めた。
気がついたら、そこは私の思い描いていた「魔」の山になっていた。
全ての生物たちは、私の体を貪り果て、そして私の体の一部となった。
私は、もはや人の姿をしていなかった。
それでも記憶はいつまでも冴えわたり、彼のことをいつでも思い出せる。
それが一番つらかった。
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ああ、だれか私を。
私を殺して。
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どれだけの間、願っていたことだろうか。
どうもこの体には老化という物がないらしい。
だが時は来た。
私の前に勇者が現れた。