ナウマク・サマンダ・バザラ・ダン・カン!総本山の奥の手?
炎を纏いし現れた戦士の登場
彼はこの状況をひっくり返す事が出来るのか?
私は法子…
悔しい…
私は憎き歪禅の手でトドメを刺されようとしていた。
そこに、寸前で飛び込んで来た誰かに私は救われたの。
でも、誰? その彼は歪禅を睨みながら、
「俺はお前を消す者だ!」
突如現れた彼に邪魔をされた歪禅がキレるけれど、
「お前に用はない。俺が相手をするのは…」
彼は瞳を綴じると真言を唱え始めたの。
『ナウマク・サマンダ・バザラ・ダン・カン!』
そして見開き様に天井に向けて炎の剣を投げ付ける。
今の真言はまさか??
私に浮かぶのは過去に信長を相手にした時、私のピンチを幾度と助けてくれた玄さんだった。
けれど、彼は違った…
見るに私と同い年くらいで、学ランを着た強く鋭く熱い眼差しの特徴的な高校生だったの。
えっ!?
その時、私は見たの。
天井が炎の剣に焼かれて消えた空間に、白い化け蜘蛛の姿をした歪禅が私達を見下ろしていたのを!
しかも、その化け蜘蛛から新たな卵が飛び出して新たな歪禅が産み出された。
「あれが歪禅の本体なの?」
「そのようだ。奴を叩けば増殖する歪禅は止まる。奴は俺が倒す!だからお前は仲間達と合流しろ!」
「なぁ、何を私に命令してるのかな?君は?」
「早く行け!座主様にお前の事を頼まれた」
「座主様に?」
私は渋々、その場を去ろうとすると歪禅が道を塞ぐ。
「ここから逃げれると思うな?娘!」
しかし、雑魚の歪禅は彼の炎に焼かれて消滅したの。
「お前達の相手は俺だ!歪禅!」
私は振り向き彼に聞いた。
「あなた、名前は?一応覚えておいてあげるわ?」
彼は無言だったが、小さく呟く。
「俺は不動光明。不動明王の転生者だ!」
ふ、不動明王の転生者??
私は頷くと、学園に向けて脱出したの。
はぁ…はぁ…
私は歪禅を光明君に任せた後、身体を壁に引き摺らせながら再び屋上へと向かったの。屋上にはまだ葉子がいるはずだから…
私は屋上に辿り着くと、そこには坂上田村磨呂さんと鈴鹿さんの亡骸があった。
私は溢れる涙に顔を覆いながらも、葉子を探した。
「よ、葉子…」
そして私は横たわっている葉子の姿を見つけ駆け付ける。
そこで私は…
「いやぁああああ!」
私は既に息絶えていた葉子に悲鳴をあげたの。
そ、そんな嘘よ…
嘘よ!嘘よ!
信じないわ…
私は葉子の名を何度も叫び、揺さぶり、それでも動かない葉子に私は絶望を感じて、もう何もする事が出来ずに放心状態になった。
絶望が私を襲う。
私、もう駄目かも…
そんな時、私の視界を閉ざすように閃光が放たれ覆ったの?
何が起きたか解らないまま私は光の中に消えていった。
私が消えた事は誰にも知られる事なく、
戦いはまだ終わってはいなかった。
「小僧、お前何者だ?お前の事を私は知らないぞ?」
「別に知られていなくても構わない」
不動光明と名乗った不動明王の転生者の彼は本当に何者なのかしら??
彼の存在は座主様と安倍晴明師匠。更に一部の関係者しか知らない総本山の奥の手的存在だったの。
晴明師匠も頷かせる程の実力で、守護者にも匹敵する実力者なのらしいの。
影の秘密兵器ってヤツ?
その彼が戦場に現れた事で座主様もまた希望を持てたの。
「光明。後は頼むぞ?お前が最後の希望だ!」
再び戦場は不動光明君と化け蜘蛛の歪禅との戦いに代わるわね?
「プシャアーー!」
蜘蛛の糸を飛ばして来る歪禅の攻撃を光明君は炎の剣で跳ね返していた。糸には歪禅の血が染み付いているため簡単には斬れない。そんな状況で、
「うっ!」
光明君の周りを糸が囲んで罠にかかったかのように光明君を一気に縛り上げたの。身動き出来ないまま糸に絡まれ繭の中に閉じ込められたのを見て、
「その糸はお前の神の力を養分に奪う。決して脱出は不可能だよ!と、言っても既にミイラ化してしまったかな?ふふふ」
勝利を確信した歪禅だったけれど、その糸の繭から剣が突き出し、炎が繭を燃やしていく。
「何だと!?」
そして燃え盛る繭の中から光明君が姿を現したの。
「まさか、お前!」
「そう。俺も忌まわしい血を持ちながらお前達と相対する神の者だ」
光明君には魔だけでなく神をも殺す忌まわしき血を持っていると言うの。それは外で戦っている宮ちゃん含めた友人達八人と同じ?
「だが、所詮は人の身!神魔殺しの血を持つカミシニ達の血と、更に強靭な化け物の身体を手に入れた私に敵うと思うか?」
勝ち誇る歪禅を無言で睨み威圧する光明君は、
「あまり時間をかけたくはない。ならば見せてやろう?俺の力を!」
光明君は燃え盛る退魔の剣を眼前に構えると、真言を唱えたの。
「我が力と成りて立ち塞がる悪を滅せよ!ナウマク・サマンダ・バザラ・ダン・カン!」
『明王変化唯我独尊!』
その直後、光明君の背後から抜け出すように出現した燃え盛る魔神が光明君を抱き締めるように包み込むと、その光明君自身の姿が燃え盛る魔神・不動明王の姿へと変化したの!
その姿を見た歪禅の身体が震え上がる。
「ば、馬鹿な…そ、その姿は身間違うはずがない…」
歪禅に思い当たるその姿は、かつて自分が尊敬して疑わなかった三千院と共に明王の変化を会得した守護者四人と共に、その中心にて同じく炎を纏う明王変化を実現した守護者達の中心的存在だった。
「し、死んだはずだぞ?奴は?」
歪禅は目の前に現れた不動明王の姿に畏怖して叫んだの。
「座主ぅー!!」
その者とは先代の座主であり、敬愛していた三千院が歪禅に幾度となく話していた座主の偉業であった。
だが、再び冷静になる。目の前に現れた不動明王は明らかに過去に知る座主とは別人、どう見ても若すぎる。同一人物のはずないのだと。
「こけおどしか?ふふふ。似た神を召喚出来るからと言って、お前のような小僧に何が出来ると言うのだ?私とした事が気を乱してしまったようだ…」
化け蜘蛛の足が目の前の不動明王に攻撃を仕掛ける。その突きは大地を貫く巨大な槍の如く。しかし不動明王と変化した光明君はその攻撃を紙一重、冷静に躱していた。
「一撃でも当たればお前は終わりだ!それ!それ!それ!それ!それ!それ!」
「…………」
そして二本の足が光明君の左右から迫って来た時、光明君は飛び上がり足の上を駆け上がり本体へと接近したの!
「なぁ!?」
「俺の師曰く、油断が身を滅ぼすのだ!」
光明君の突き出した炎の剣は歪禅の左目を貫いた。
「ウギャアアアアア!」
振り払う二本の足を躱しつつ、更に頭上から降魔の剣を降り下ろす!
「これで最期だ!」
しかし降り下ろされた剣は歪んだ空間の壁によって逸れさせられる。
「ふぅ…まさか、こんな奴が総本山にいたなんて…」
総本山は座主様と安倍晴明師匠以外は問題外だと思っていたのに、まさかこんな強者がいた事に計算が狂い始めていたの。晴明師匠を戦場から遠くへと引き離し、後は座主様を数で消耗させてしまえば時間の問題だった。その間に私を殺して魔王が復活してしまえば世界は手中だったのに…
全てが狂い始める。
しかも、本体であるこの蜘蛛型の歪禅が倒されれば、新たに自分の複製を増やす事も出来なくなる。計算高い歪禅はこの状況を危険だと察知し、迷う事なく逃げる事を選んだの!
「ウギィイイイ!」
蜘蛛の身体から無数の血弾が飛ばされると、それは散弾銃のように辺り一帯を貫いていく。
「渇!」
光明君は気合い一閃、その散弾した血弾を斬り伏せると、そこに歪禅の姿が消えていたの。
「くっ、逃がさん!」
追い掛ける光明君だったけれど、この地下空間が閉じ始めて消えていく。この空間事、光明君を消し去るつもりのようね。
そして学園の外に現れ出でた蜘蛛型の歪禅は、
「力が足りない…」
すると糸を無数に飛ばすと何を思ったか、自分の複製達を絡ませて引き寄せ、共食いを始めたの。それは体力の回復と、傷付いた身体の修復だけでなく、更にその力を含ませ始めたの。気付けば歪禅の身体は学園を覆う程の白い化け蜘蛛へと化していた。
見上げる総本山の戦士達は太陽神の加護の籠った術札を貼り付けた金の錫杖を狙いを定めて投げつける。
『錫杖砲弾!』
無数の金の錫杖が歪禅の化け蜘蛛に命中したかに思えたが、空間が歪んで壁が出来て、更に自分達に向かって逆に降って来たの!
予想だにしなかった逆襲に総本山の戦士達は打撃をくらった。
「体制を整えよ!」
座主様の指示で陣を作り立て直し始める。
「あれが歪禅の本体なのか?突入した光明は?法子はどうなったのだ?」
心配する座主様に、歪禅の声が響き渡る。
「お前達は今から私が一匹一匹始末してやろう。虫けらを踏み潰すようにな?お前達を全滅させた後は、戻って来た晴明を片付けて私の復讐は終えるのだ!」
振り上げた足が大槍の如く地面に向かって突き刺さる。その一撃に総本山の仲間達は強烈な揺れに立っている事も出来ずに身動き出来ずにいたの。
「あの化け蜘蛛野郎!」
アータル神がジャスティス・ソードを構えていた。
「私のジャスティス・ソードで塵にしてやろう!」
飛び上がったアータル神はジャスティス・ソードで斬りかかるけれど、それもまた空間を歪ませられ、あさっての方に飛ばされる。
「あの能力を封じなければ突破口が見付からないな」
座主様は歪禅の能力は知っていたの。この能力は総本山でも特殊能力で重宝されていたのを思い出していた。攻撃防御を兼ね備えた最強の力だと、かつての守護者であった三千院様が今の座主様に仰有られていた。
「だったら彼こそ守護者に成りうる逸材では?」
守護者に成り立てだった頃に、若い頃の今の座主様は三千院様に問う。
「守護者としての実力はあるのは間違いなかろう。しかし歪禅は心に危うい弱さを持っている。今はまだ私の下で成長を待とうと思うのだ」
「………」
その言葉を聞いて自分自身が守護者になった事を重く感じたの。
「その心の弱さが今や総本山の敵となって、こうやって苦しめる事になろうとは…導き出来ぬかった事を三千院殿も悲しんでいるであろう」
座主様は三千院様に代わり自らが歪禅に決着を付けるべきだと拳を握る。
その時!
学園の運動場が揺れ始めて業火が火柱の如く立ち上がったの!
そして中から再び現れたの。
「お前の相手は俺だ。逃がしはしないぞ!」
不動光明君が地下空間の結界を破壊して、再び戦場に戻って来たのでした。
次回予告
歪禅との最終決戦!
その戦いの決着迫る!!




