新たな救援?炎を纏う者!
法子がさらわれた。
魔王の復活!?
総本山の仲間達は間に合うのか?
増殖する歪禅との戦いに総本山は苦戦を強いられていた。
その中で守護者である坂上田村磨呂が戦死し、その相方であった鈴鹿御前も歪禅の手で殺された。
しかもその手が法子の友人である葉子に迫った時、法子は戦う事を放棄し歪禅の魔の手にくだったのだ。
「直に我が王が復活なされる。そうすれば世界に新たな秩序が始まるのだ…ふふふ。ふははははは!」
歪禅は法子を担ぎながら新たに作った道から学園の地下に隠された空間へと降りて行った。
その最中も総本山の戦士達は座主を筆頭に苦戦しながらも戦っていた。
「何か嫌な感じがする…」
総本山の戦士達は座主を中心に安倍晴明とアータル神が先陣に出て、源義経と弁慶の転生者、若いカミシニの血を武器に戦う自称物語ヒーローの転生者を名乗る六人の男女が挑む。
戦局は有利だった。安倍晴明が全員のカバーをし、倒しては現れる歪禅の中から特に力を持つ者を相手にしていたからだ。その事に歪禅の一体が観察をしながら戦局を読んでいた。
「晴明が邪魔だ。早急に排除せねばな?」
その歪禅は両手を挙げると他の歪禅達が集まって来て融合し始めたのだ。
「今より私の真の力を見せてやろうぞ!」
歪禅の姿が巨大化し、その身体が変化しながら六本の腕が伸びていく。その障気に総本山の戦士達は気付き動きを止めた。
「あれは何だ!?歪禅なのか?」
歪禅は凶悪で白い巨大蜘蛛へと姿を変えたのだ。
「大地が震えている?凄まじい覇気だ」
「座主様。奴の相手は私がしましょう」
「やってくれるか?晴明よ!」
「はい」
安倍晴明は飛び上がると自らの姿が九尾の狐へと変化したのである。
「お前の相手は私だ!」
「ふふふ。誘き寄せられたと気付いていないのか?」
「何だと?」
すると上空が歪み始め、巨大な時空の穴が出現したのだ。
「お前は私と退場して貰うぞ?」
巨大蜘蛛の歪禅から赤い糸が伸びて来て、九尾の狐となった安倍晴明の身体を縛り上げると共に空間の穴へと消えて行ったのだ。
「晴明!!」
晴明を何処かへと連れ去られ、残された座主と総本山の仲間達は戸惑う。
「これで邪魔な晴明はいなくなった。後は雑魚ばかりだな」
確かに晴明を失った総本山の戦士達は一気に戦力を失いつつあった。
「くそぉー!倒しても倒してもキリがない!どうしたら良いんだよ?」
「口を動かしている暇があるなら手を動かせ!」
竜二に叱責される桃井剣太郎だったが、
「確かにこのままでは消耗するだけ…」
座主もまた現状の危機に焦りを感じていた。
再び場所は代わり、学園内では法子を連れた歪禅が魔王が封じ込められた水晶の前にいた。
「遂に念願叶う時が来たようだ」
見上げるのは人柱の光輝く水晶。中には美しい女性に抱かれた赤子が二人?その一体こそ魔王であった。
「忌まわしきは先代卑弥呼。長きに渡り我等が王を封じ込めるとは…だが、今より貴様の娘を生け贄にして、この結界封印を破壊し魔王様を甦らせてやろうぞ!ふははははは!」
歪禅は早速法子を水晶に押し付ける。
「お前の喉元を斬り裂き、その呪われた血で水晶を覆れば封印は解ける!」
「そんな事させないわ…」
法子はそこで意識を取り戻したのだ。
「目覚めたか?小娘!」
「歪禅、お前を絶対に許せないわ!」
「許すも許さないも今のお前に何が出来る?今や死を待つしかあるまい無力な小娘が?」
「うぐっ!」
すると、歪禅は迷いなく法子の心臓に向かって剣を突き付けた。法子の胸から血が噴き出し水晶を覆い、どれだけ砕こうが抵抗を試みても傷一つ付かなかった水晶に僅かな亀裂が入る。
「ふははははは!今こそ甦りください!我が王!」
だが、歪禅の計画が狂い始めたのだ。
「ば、馬鹿な…これは、どういう事なのだ?」
法子の血で水晶は砕けたが、中には魔王の魂だけでなく卑弥呼の魂すら気配すらなかったのである。
「まさか…既に魂は浄化され存在すら消滅してしまったと言うのか…」
絶望に膝をつく歪禅は無気力になった。
「そ、そんな…では?私は今まで何のために?何のためにこれまでして来たと言うのだ…私は一体…」
だが、絶望の中から新たな結論を得たのである。
「そうか…わ、私が王の跡を継ぎ…私こそが新たな世界の秩序を作り上げる真の王と!魔王となるのだ!」
立ち上がった歪禅に迷いはなかった。
「なら、先ずは総本山の連中の血を我が王となる祝杯として頂くとするか」
「そうはさせないわ!」
歪禅の逃がさないと法子が足元を掴み離さなかったのだ。
「小娘?まだ生きていたのか?しぶとい」
「諦めが悪いのが私の取り柄なのよ!」
「もう、お前は用済みだ!」
しかし既に握力も弱く歪禅に蹴られて血を吐いて地に伏す。
「わ、私は諦めない!諦めない!諦めない!」
「本当にしぶとい…やはり、あの男の娘だな?」
「あの男?」
法子は育ての親である今の座主、蛇塚軍斗しか知らない。しかし法子には別に本当の親がいる。だが、その親の事は何も知らされてはいなかった。
「そうだったな?お前は父親と母親の事を知らぬのであったな?」
「煩い!お前なんかに関係ないわ!私の親は今のお父さんだけ!」
法子は心に乱れがあった。自分の父親とは?母親とは?どんな人だったのか?興味はあったけれど、今の父親に心配かけぬと敢えて自分から尋ねなかった。
「まぁ、良い。今から死ぬお前には必要有るまい?」
「私は死なない!お前を倒して私は生きるわ!」
「そのような不様な姿で何を言ってる?先ずはお前を消して、その後は総本山の連中をいたぶり始末してやろう。その後は世界中の人間を一匹残らず消し去ってやるのだ!世界は私が支配してやろう」
法子は立ち上がろうとするが足に力が入らない。それでも戦おうとする法子の胸から流れる血は…
「馬鹿な!?」
流れる血は金色に光輝き、傷ついたはずの身体が再生していたのである。
「はぁ…はぁ…」
「お前、死なぬのか?不死身だと言うのか??そんな事は有り得ない!何なんだ?その力は!?」
歪禅は目の前の法子に恐怖すら感じたが、その感情を押し殺し、二度と再生出来ないように自らの手で八つ裂きにしようと動き出す。
そして総本山も同じく危機的状況であった。安倍晴明を失った総本山の指揮は崩れ、一人一人戦士達が散っていっていた。
「再び、総本山が壊滅してしまうのか…この俺の代で…。させぬ!」
座主は自ら先陣で戦い、再び仲間達の指揮が上がる。
「親父…俺も負けねぇよ!そして姉貴を必ず救ってみせる!」
そこに離れた総本山より念波が届いたのである。
「座主様。私、桜です!総本山本部は私達が死守致しました」
「よくやった。後はこの戦況を変えるすべだが…」
「はい。歪禅の増殖をしている場所を見付けました。そこに今、法子さんも近くにいます!」
黄竜の巫女である桜は離れた地より、地脈を通してこの学園全ての把握を任されていた。更に、地脈の竜道を使い新たな戦士を戦場へと送り届けていたのだ。
「今、彼が行きます!この戦況を全て引っくり返す力を持った彼が!」
「そうか!ならば持ちこたえねばならんな」
座主は念波を受けとると、
「法子、必ずお前を救ってみせるぞ!それがお前を託した奴との約束であり、俺の我だ!」
戦場が更に激しくなった時、突如大地が震撼した。それは地脈の揺れ?そして何処からともなく仲間達へと声が響いたのだ!
「どのような危機をも覆すに必要なのは諦めない意思!総本山の皆、待たせた!」
突如、戦士達に襲い掛かる歪禅達が発火し消滅する。その異変に気付いた歪禅達が一斉に新たに現れた戦士に気付き襲い掛かったのだ。
「退け!」
気合い一閃、襲い掛かる歪禅達は炎の剣に両断されて消滅した。
「奴は一体?」
軍茶利明王の転生者である蛇塚勇斗は、その戦士を見て身震いした。それは恐怖ではなく何か別の運命を感じる邂逅を感じたから。
再び総本山の桜より念波が送られる。
「学園地下に特別に作られた空間があります。そこに歪禅の本体と法子さんがいます!」
「分かった」
すると新たに現れた戦士は全身に炎を纏って、学園に向かって駆け出す。その戦士を追って勇斗も追い掛ける。
「待て!結界があって学園に入れない。どうするつもりなんだ?」
「無論。押し通るまで!」
「えっ?」
新たな戦士は掌に炎を集約させると、それは炎を纏う剣と化したのだ。
『降魔の剣よ!』
降魔の剣と呼ばれし燃え盛る炎の剣で学園の血塊[結界]を一刀両断にすると、見事に結界が亀裂が入り粉々に粉砕したのだ!
「俺の道を塞ぐ事は何であっても出来ん!」
そして学園の中で単身飛び込んだのだった。
「くっ!」
勇斗は足を止め、振り返ると拳を握り締め言った。
「俺は総本山の仲間達をこのまま放ってはいけない。悔しいが姉貴の事は頼むからな?」
勇斗は飛び込んだ戦士に姉を任せ、再び現れる歪禅達に向かって飛び込んだ。
この現れし戦士は何者?
そして、
「うおぉおおおお!」
大地を斬り裂き、学園の地下にある空間へと飛び込んだのである。
「なぁ、何者だ!?」
法子にトドメを刺す寸前で、謎の戦士が血塊[結界]を破壊し侵入して来た事に手を止めた直後、自らの手が突如発火し手にした刀を落としてしまった。
「邪魔をしやがって!お、お前何者だぁー!!」
すると、その戦士は静かに答えたのである。
「俺はお前を消す者だ!」
彼は一体、何者?
瀕死の法子を救う事が出来るのか?
次回予告
炎を纏いし救援者とは何者?
その者、まさに烈火の如し!!