激突!坂上田村麻呂と脅威の歪禅の歪手!!
再び物語は法子の学園での戦いへと戻る。
そこでは今、坂上田村麻呂が戦っていた。
俺は坂上田村磨呂!
俺は今、かつての総本山の守護者側近だった歪禅を前にしていた。
「噂に聞く新世代の守護者の坂上田村磨呂とはお前の事か?」
「そうだ!」
歪禅は俺を見るなり溜め息をついた。
「嘆かわしい。お前程度の実力で総本山の守護者を名乗るとは、総本山も人材不足のようだな?」
「なんだとぉ?コラァ!」
俺は頭にくると同時に歪禅は両掌を合わせて何やら唱え始める?何か仕掛けて来るつもりか?
「まさか!?」
俺は軽快すると、歪禅の変化に驚く。みるみると歪禅の身体から蚩尤鬼神の血が引き始め、奴の身体から霊気が高まり始める。
どういう事だ?蚩尤鬼人には人間の持つ『気』が失われた化け物のはず?
だが、確かに歪禅から気を感じるのだ?
「驚いたようだな?少々遊んでみたくなってな?蚩尤鬼人の力を使えばお前程度簡単に決着はつく。だからだから人間としてお前の相手をしたくなった」
「どういう意味だ?」
「ふふふ。お前みたいな小物が守護者気取りである事が許せないのだよ。だから人間としての力量でお前に格の違いを見せつけた上で、なぶり殺してやろうと言うのだ!」
「どうやら俺を見くびっているようだな?だったら、たんまり後悔させてやるぜ!」
俺はサヤハの剣を構える。
「!!」
歪禅には全く隙がなかった。噂に聞くにかつての守護者の側近であり、先代の守護者に最も近い男だったとか…
だが、信望していた先代の守護者が化け物の襲撃に散った事で絶望を感じ、自らも化け物に成り下がった。
「良いだろう。新世代の守護者の実力を見せてやるよ!」
俺は瞬間的に歪禅に間合いを詰めて接近すると、サヤハの剣で歪禅の首をはねる。
が??
俺の剣は空を切り、意表を付かれた俺の背後に歪禅のに掌が迫る?
危険!?
そう本能的に感じた俺は寸前で距離を取りつつ体制を整える。
「嫌な感じがした?何だか解らねぇが…とにかく接近戦はマズイ。様子を見るか?」
俺はサヤハの剣に気を集中させると斬撃を放つ。無数に放たれた刃が歪禅を襲う。
「!!」
俺はそこで、自らの刃が全て歪禅に当たる寸前で軌道を変えられてねじ曲げられている事に気付く。
「く、空間を歪ませていると言うのか?」
「その通りだよ。これが私の能力だ」
歪禅は圧縮した特別な気を使って空間を歪ませ、接近する全ての攻撃を弾いていた。
「我が能力は絶対無比の防御。そして!」
歪禅が地面に掌を向けると大地が歪んでいき、立っていた俺はバランスを崩す。
「ぐわぁ!」
その直後、歪禅は空間を歪ませて中に飛び込むと姿が消えて、次に現れたのは俺の頭上だった。
「討ち取った!」
予測も出来ずに無防備な状態だった俺を確実に討ち取ったかに思えた歪禅の掌は空を切った。そして俺は寸前で自らの足を引っ掛けて転びながら回避すると、再び距離を取る。
「私の動きを読んでいたと言うのか?否、違う。奴は私の攻撃を計算でもなく本能的に感じて反射のみで躱したのだな?」
「フゥウウー!」
俺は神経を極限にまで躱した研ぎ澄ませて意識を全身にまで広げていく。万が一数ミリ単位で接近されても躱せるような集中力。
「驚いた。潜在能力が極限状態の中で開花したのか?」
正直、俺自身も驚いているくらいだった。互いに攻撃が回避される状態の緊迫する中で、
「それでもやはり守護者には相応しくない」
「何だとぉ?」
再び歪禅が自ら歪ませた空間の中へと姿を消した。俺は再び意識を全身に集中させる。全身の神経で意識が感知したと同時に考えるよりも先に反射する。
「喝!!」
歪禅は意を狙ってか正面から襲って来た。俺の身体は反応と同時にサヤハの剣を振るうと歪禅の手首を落としていた。そして最小限の動きで一歩踏み込み、反射的に二激目の太刀を振るった。
「覚悟!」
俺は勝利を確信した。が、歪禅は斬られる直前に呟いたのだ。
「未熟者が!」
何を!?
が、突如寒気が全身を襲ったと同時に俺は体制を崩して地面に倒れたのだ。
そして理解した。
俺の踏み出した右足首がネジ曲がっている事に!その理由も分かった。俺の一太刀で斬ったはずの歪禅の右手首が地面に落下し、その切断された掌が俺の足首を歪ませる能力で逆方向に曲げたのだ。
まさか斬り落とした手首を使うなんて?まさか歪禅は最初から狙っていてわざと斬り落とされたと言うのか?完全に目の前の歪禅にしか意識がなかった俺はまんまと罠にかかったと?
「覚悟の差だよ。真の守護者は己の身を犠牲にしてでも課せられた任務を果たし敵を討つ!お前のような才能に溺れた者には到底辿り着けぬのだ!」
「!!」
だが、俺も言い返す。
「それが総本山を裏切った男の台詞か?逃げ出して化け物に成り下がった野郎がほざくな!」
「逃げただと?違う。見限ったのだよ」
「なにぃ?」
「私は真の守護者として新たな総本山の王を守り、そして蚩尤鬼人が支配する新たな世界を造り上げるのだ!だが、その前に私はお前達のような偽物を消し去らねばならない。真の総本山は私から始まるのだ!」
「何を世迷い言を?お前みたいな夢見がちな妄想野郎は俺が現実教えてやるよ」
「現実を見るべきはお前の方だろ?守護者の名を語る偽物よ!」
俺の足首は曲げられて立つ事も出来ずにサヤハの剣を杖に立ち上がる。
「そのような状態で何が出来ると言うのだ?愚か者が!」
「ふん。俺は諦めが悪いんだ。お前がさっき言った通り、お前を倒すまでは何度でもお前の喉元に刃が襲い掛かるぜ?それが守護者としての俺の意地だ!」
俺は右足を引きずった状態で片足立ちをし、剣を正面足下に突き刺す。
「どうした?諦めが早かったようだな?」
「別に諦めた訳じゃないぜ?俺は剣だけじゃないんだって事を教えてやる!」
すると俺は霊気を指先に集中させる。そして気合いと共に霊気の弓を構成させたのだ。俺は弓を構えて意識を更に高める。
「ウォオオオ!」
俺の身体から三体の鬼神が出現した後、俺の額へと吸い込まれていく。すると第三の瞳が開いたのだ!
「天地眼」
俺の指から光輝く矢が出現する。その矢は天地眼の力を一点に籠めた一撃必殺の矢であった。
天地眼の力を発動させ弓を構えた俺の姿を見た歪禅はその姿に目を奪われていたのだ。
「三世院様…」
三世院とはかつての守護者であり、歪禅が慕い、崇拝していた上がる総本山歴史上最強の守護者の名であった。神の力を集約し一撃必殺の攻撃を放つ天地眼の奥義もその者の編み出したと言われている。その伝説の守護者の姿を俺に被らせていたのだ。
「躱せられるなら躱して見ろよ?俺はこの矢に全てをかける。躱せたらお前の勝ち。命中すれば俺の勝ち。解りやすい勝負だぜ?」
「小賢しい」
俺は矢先に見える歪禅を的に意識を集中させる。
絶対に外さねぇ!
歪禅には勝機があった。自らの空間を歪ます能力に自信があったのだ。命中すれば確かに身が塵と化して滅びる事は先代の守護者の奥義を目にしていたから解ってはいた。しかし、当たればの話。俺の矢の向かって来る軌道さえ見極めさえすれば方向を変えれば良いのだから。更に剣と違い矢は一度射られたら軌道は一直線。
「この勝負は見えた」
俺も歪禅の考えは理解していた。だが、俺の作戦は他にはなかった。
「この一矢にかける!」
俺の射る矢は放たれた。歪禅は俺の矢の軌道を見切り軌道を変えようと腕を伸ばした時?
「なぁ!?」
矢は軌道を変えて歪禅の後方へと飛んで行き壁に突き刺さると、木端微塵に壁が吹き飛んだ。だが、歪禅はその矢に対して違和感を抱く。
「馬鹿な!?天地眼の奥義で射られた矢がこの程度のはずはない!!」
気付いた時には遅かった!
「!!」
矢が射られたと同時に俺は片足のみで飛び出し、その手にはサヤハの剣が握られていた。しかもサヤハの剣には天地眼の全ての力が籠められていたのだ。
「この男!謀ったか!?」
俺の矢はこの一刀への布石。完全に矢にのみ意識を奪われていた歪禅は完全に俺の動きを見失っていた。そして振り払われたサヤハの剣は歪禅の首もとに迫った直後、
「ナメるなぁー!俺はお前みたいに時代と運で守護者になった者とは違う!真に三千院様の後を継ぐ守護者になれたのだぁー!」
歪禅は極限の状況で戦いの本能で動かした手がサヤハの剣の軌道を変え空を斬った。
「最後に勝つのは私だぁー!お前の首をもぎ取ってやろう」
歪禅の『歪手』が完全に無防備の俺の眼前に向けられていた。
「偽物よ、消えよ!」
俺は睨みながら強い想いをもって歪禅に叫ぶ。
「それだけの力量と覚悟があって、どうして最後まで人として戦えなかった?どうして総本山の戦士として踏みとどめられなかったのだぁ!」
「何を…」
俺の空ぶった勢いで身体を捻り一回転した逆の腕には別のサヤハの剣が握られていたのだ。サヤハの剣は二刀の剣!射られた矢と初段の剣、そこまでが組まれた布石。直後、身を回転させた俺の抜刀が歪禅の手首を斬り、そして怯んだ歪禅の首をも跳ね飛ばした。
俺もまた勢いあまり地面に直撃するかのように落下した。もう全ての力を出し切り、着地する力も残ってはいなかったのだ。
「うっ、うぅぅ…」
俺は起き上がる力もなく首を向けて歪禅を見る。胴体から血が噴き出し頭部は転がり完全に息絶えていた。そして俺は呼吸を吐き出して気合いで身を起こす。
「完全にガス欠だぜ…歪禅。本当に強敵だったぜ…」
だが、これでこの戦いに決着がついた。親玉であった歪禅を倒し、残る残党を倒していくだけ。まぁ、俺はもう休ませてもらうがな?
あ、忘れる所だったぜ!
俺は見回すと倒れている法子を発見する。俺達総本山の今回の目的は蚩尤鬼人達を根絶やしにする事。よりも最優先的目的があった。この法子を必ず救う事!
現在座主の蛇塚さんの義娘であり、この総本山が全勢力をかけて死守するべき意味がある娘か…
救世主の宿命を持つ娘!
俺はサヤハの剣を杖にして起き上がると、倒れている法子に向かって行こうとした時。
「!!」
俺は冷や汗を流して身動き出来なくなった。鋭い殺気の身体を硬直させていたのだ。
馬鹿な!
俺は殺気の相手が、倒したはずの歪禅だと直ぐにわかった。
しかし?
そこには確かに歪禅の動かなくなった胴体と、転がった頭部が残っていた。
まさか偽物?俺が倒した歪禅は偽物だったと?
「驚いているようだな?お前が誰と戦っていたかかな?」
俺は振り向くと、確かにそこには傷ひとつない歪禅が立っていた。
「お前が倒したのは間違いなく私だよ?お前は私を倒した事は誇って良いぞ?守護者としては及第点と認めてやろう」
「フン!有り難く受け取ってやるよ?だが教えろ!てめぇは、何者だ?」
「私は歪禅。そして…」
「!!」
馬鹿な!ないだろ?そんな馬鹿げた事があってたまるか!
俺の前には歪禅の後ろに別の三人の歪禅が俺を見て立っていたのだ。
そして…
この学園の外に侵入出来た座主率いる総本山の戦士達の前にもまた、数十人の歪禅が行く手を塞いでいた。
そして歪禅達は同時に呟いたのだ。
「私は増殖する!」
次回予告
甦り、増殖する歪禅に総本山の戦士達は?




