アジ・ダハーカとの因縁との決着!輝く黄竜の巫女!
アジ・ダハーカより脱出を試みた座主と桜
ついに決着の時!
魔蛇竜の王アジ・ダハーカの進行を三体の聖獣。青竜、朱雀、百虎が食い止めていた。
「くぅ…圧される」
「もう少しの辛抱だ!必ず戻って来るはずだ!」
「信じているのですね?あの人を?」
その時、闇を覆うアジ・ダハーカの中心から一筋の光が抜け出して来たのだ。
「あれは!?」
青竜蒼覇はその光の先にアジ・ダハーカのへ身体の中へ単身飛び込んだ座主と、飲み込まれ生存不明だった少女の姿を見て取れた。同時に座主は皆に向かって叫んだのだ!
「今よりアジ・ダハーカを討伐する!」
抜け出し落下する座主と少女を、百虎が背中に乗せて地上に降りる。
「驚いた…それがお前達の聖獣の姿か?」
「それより彼女は?」
「安心しろ?気を失っているだけだ」
安堵する白竜白虎に座主は優しく頷く。そして黒竜玄武と真坂正義のもとに着陸する。
「用意は良いか?」
「はい。座主様!」
すると真坂正義は右手の甲を向けると、その甲に埋め込まれた紅いクリスタルが光って炎が噴き出す。すると炎の中から再びアータル神が姿を現したのだ。
「時間稼ぎ、助かったぞ?これで全開に戦える!」
アータル神は腰を下げて構えると、その掌から炎に包まれた大剣が出現した。
「ジャスティス・ソード!」
大剣を構えたアータル神は剣先をアジ・ダハーカに向ける。
「私のジャスティス・ソードは神魔を滅ぼす滅殺の剣!お前の邪悪な障気など斬り伏せてやるぞ!」
大地を蹴り飛び上がったアータル神は大剣を一閃し振るった。
「!!」
闇が切り裂かれ、その本体である邪悪な魔蛇竜アジ・ダハーカが姿を見せる。
「何だ…その剣は?そのような剣を太古の昔、持ってはいなかったはず!?」
驚愕するアジ・ダハーカにアータル神が答える。
「私も現世に甦ってから多くの苦労を重ねて学んだ先に手に入れた力だ!」
アータル神は大剣ジャスティス・ソードを軽々と振り回しながら構えると、アジ・ダハーカ目掛けて一刀両断にした。
「!!」
巨大な魔蛇竜に深い傷が残り血が噴き出す。
「ウガャアアア!!」
予想以上の痛みで悲鳴をあげるアジ・ダハーカに、戦局を見ている座主の傍で元の姿に戻った三体の竜神族の戦士達は驚愕していた。
「信じられない強さだ…」
「アータル神の持つ剣は魔だけでなく神をも滅する力を持った魔性の剣。その剣を正義のために使うアータル神に敵はない」
「ならばもう勝利は確実ですか?」
「懸念する事は、あの大剣をフルに使うために時間をかけて溜めた力を最大限に開放させている。だから早急に片付けねばならぬ」
「もし力が切れたら、我々が再び戦います」
その会話を聞いているアータル神は背中越しに伝える。
「安心しろ!奴とは永きに渡る因縁がある。必ず私の手で決着をつけてやろう!」
飛び上がったアータル神は炎を全身に纏い傷を負ったアジ・ダハーカに向かって突進した。
「覚悟ォオオオ!」
が、その直後!突然左右から巨大な二匹の蛇竜が襲い掛かって来たのだ。それはアジ・ダハーカの双肩の蛇竜に間違いなかった。
「邪魔をするなら、こいつらを先に斬り伏せるまで!」
アータル神が突進の勢いを止めて左右の蛇竜の攻撃に構えた直後、正面のアジ・ダハーカの開いた口から黒い影が伸びて来てアータル神の身体に巻き付いたのだ。
「なぁ?なんだこれは?」
力任せに逃れようとするが影はよけいに絡み付きアータル神は拘束されていく。
「その剣にさえ触れなければ良いだけの話!アータルよ?己の身を焦がしてやろう!」
影に包まれたアータル神は闇の球体の中に閉じ込められた。
「救い出さねば!」
座主はアータル神に向かって駆け出すが、アジ・ダハーカの攻撃が座主へと向けられ双肩の蛇竜が襲い掛かる!
「!!」
その直後、再び四人の竜神族が叫んだのだ。
「聖獣変化唯我独尊!」
そこには青竜と朱雀、白虎が双肩の蛇竜の攻撃から庇うように守る。
残されたのは気を失っている桜と、彼女を結界で守る黒竜玄武だった。
「俺も皆と共に戦えれば…」
黒竜玄武は拳を握り締めて自分の責務。意識のない桜を守る事を全うするしかなかった。
桜…
目覚めぬ桜は深い意識の中で夢を見ていた。
「私は…誰なの?」
桜は自問自答していた。
その時、闇の中に光の玉が近付いて来る。
「あれは!?」
眩しくも優しく、それでいて神々しい光の中に人影があった。
「目覚めなさい。貴女もまた戦うのです」
「あ、貴女は?誰なの?私に戦う力なんて…そんな事出来ません!」
すると光の中の人影は桜に答える。
「お前には戦う力がある。私の力を全て譲り受けたのだからな?」
「えっ?」
戸惑う桜は光の主に向かって恐れながら問う。
「教えてください!貴女は誰なのですか?私とどんな関係なのですか?」
すると光の主は質問に対して少し間を開けて答えた。
「私は貴女の母であり、そして貴女自身なのです」
「えっ?」
その意味が理解出来なかった桜の脳に直接、記憶の映像が流れて来たのだ。
それは転生の儀式。
過去、聖獣の四戦士が竜神族として転生する事を了承し、眠りについた時…
自分自身もまた転生の術を使い、眠りについたのだ。
「だから私はお前の母であり、お前自身なのです」
「そんな事…」
信じられないような話であったが、現実で起きた不可思議な体験と自らの身体に起きている変化。身の危険が起きた際に発動する異常な力と、桜は額に膨れ上がる二つの瘤に触れる。
「私が…」
迷う桜に光の主は問う。
「…しかし新たな生はお前のものだ。宿命も義務も強制出来ぬ。お前はどうしたい?」
「私は…」
迫られた運命の選択に桜は迷う事なく答えた。
「無理です!」
「あら?」
思いがけない返答に言葉を無くした光の主に桜は言葉を続ける。
「私なんて料理も洗濯も掃除すら不器用です…」
嫁ぐわけじゃないでしょ?と、突っ込みたかった。
「それに、貧弱軟弱で臆病の三三七拍子…グズでノロマな亀…」
「………」
まさか、そこまで自虐的に育つなんて…
「だけど…」
「?」
「あの四人の兄さん達と一緒なら!足は引っ張るかもしれないけど私、頑張れると思うの!」
その瞳には先の見えぬ茨の未来に向けて、立ち向かおうと決意した意思があった。
「そうか。そうだな?なら彼等と共に戦う力をお前に全て与えよう」
「あっ!」
身体中が熱くなって強い力が入り込み記憶が流れ込んでくる。
「さぁ、行きなさい!お前が決めた未来へ!」
「はい」
すると頷き顔を伏せた桜を強い圧迫感が?
「えっ?」
光の主が桜を抱き締めたのだ。
「桜…貴女に全て委ねた私を許して…」
それは母親の一面であり、桜もまた強く抱き締め返して頷いた。
「母さんの意思は私が継ぎます!」
直後、目覚めぬ桜を見ていた黒竜玄武の目の前で、桜の身体が強い光を発して天へと飛び立ったのだ!
「ならば俺も!」
黒竜玄武も立ち上がると唱えたのだ。
「聖獣変化唯我独尊!」
そこに現れたのは亀の甲羅に蛇の尾を持つ聖獣 、
玄武!
そして青竜、朱雀、白虎のもとへ合流する。
今、アジ・ダハーカを前にして四聖獣が揃い踏みしたのだ!
「桜はどうした?」
青竜の問いに玄武は、
「覚醒したよ!」
その言葉の意味を理解した四聖獣達は突然自らの身体から溢れ出す力が漲ってくる。
「これは!?」
彼等の身体から閃光が放たれ、その姿が変化する。
『竜神変化唯我独尊!』
青竜の背に乗った竜神の鎧を纏った青竜蒼覇。
同じく竜神の鎧を身に纏い朱雀、白虎、玄武の背に乗った戦士達がいた。
「これが俺達の真の力なのか?」
聖獣にも人形にも等しく自分自身の意識があり、まさに一心同体であった。驚くの事はそれだけでなく溢れ出す力が止まらない?
「この力は一体?」
すると声が聞こえて来たのだ。その声は正しく?
「この地球の竜脈の力を借りているのです」
四人の戦士の背後から神々しい金色の光を発する桜が宙に浮かびながら答える。
しかも桜の背後に浮かぶ金色のオーラは、竜の姿へと?金色に光輝く黄竜の姿を見せたのだ!
「竜脈を支配する四聖獣の王・黄竜が目覚めたか?」
座主はこの覚醒を総本山の卑弥呼[現・クシナダ]によって予言されていた。
黄竜の覚醒に驚くのはアジ・ダハーカも同じであった。
「まさか…この星に見初められし蛇神竜神の末裔が残っていたとは…」
だが、アジ・ダハーカもまた蛇神竜の王としての誇りがあった。例え目の前に現れた者がなんであれ、その力を奪えば良いだけの話であり、その力を持っていると自負していたからだ。
「悪しき魔竜アジ・ダハーカよ!この地に踏み入れし太古の魔蛇竜の王よ!私がお前を滅ぼします!」
桜は手には白い紙のついた採り物、幣。別名、、紙垂を手に指揮をするように振ると、まるで手足かのように意識が四人の戦士に伝わり攻撃を仕掛けたのだ!
「伝わって来る。まるで一心同体のようだ」
「それだけじゃありません。私達への指揮が名軍師とばかりに優れている」
「これが我らが主の力なのか?」
朱雀、白虎、玄武は驚くと共にみなぎる力を黄竜の指揮に従い奮う!
「ウギャアアア!」
アジ・ダハーカは突如力を付けた四聖獣の力に圧され初め苦戦を強いていた。しかし!
「あの小娘さえ!」
口から放った毒針が一直線に桜に向かって行く。
「そうはさせるかぁ!」
桜を庇う青竜蒼覇の青龍刀が毒針を弾き返したのだ。
「ありがとう…」
「礼はいらない。当然の事だ!俺達はお前を守るためにいるのだからな?」
育ての両親がいなくなってから孤独だった桜の胸が熱くなった。
「私は…戦います!」
桜の手にした紙垂を左右に振るうと、その形が光の剣へと変わる。そして力一杯アジ・ダハーカに向けて投げつけたのだ。
「ウギャ!」
額に刺さった光の剣はアジ・ダハーカの纏う障気を浄化していく。力が急激に失われていくアジ・ダハーカはそれでも抗う。
「こうなったらお前の力を根こそぎ奪い、再び我が力を回復してやるぞ!」
向かって来る巨大な魔蛇竜アジ・ダハーカが接近して来る中で、桜は脅える事なく呟く。
「王手!」
王手!その真意は地上にいた座主の働きだった。
「お前達がアジ・ダハーカの注意を引き付けていたお陰だ!」
座主は己の蛇神族の血でアータル神を拘束していたアジ・ダハーカの影の呪縛を消し去っていたのだ。
そして!
「皆よ!お前達の助けは無駄にはしないぞ!我が正義の名の下に、アジ・ダハーカ!お前を消し去る!」
アジ・ダハーカは頭上に迫っていたアータル神に気付いた時、そのジャステイス・ソードが額から胴体にかけて一刀両断にしたのである。
「グギャアアアアア!」
アータル神の神炎によりアジ・ダハーカの身体はみるみると粉々になって消えていく。
「永き因縁に決着はついた。サラバだ!」
そして完全にアジ・ダハーカは消滅したのだった。
座主にアータル神、そして巻き込まれた桜の戦いは終止符をつけたのだった。
その後、桜と四聖獣の力を持つ竜神族の四人の戦士達は恩が出来た総本山に身を置く事になった。
そして、黄龍の巫女である桜は総本山の最高幹部である守護者に抜擢される。
「私、そんな大役…無理です!座主様!」
だが、青竜蒼覇が桜の肩に手を置き答えた。
「安心しろ?お前のサポートは俺達が賄う。だから安心して引き受けるが良い」
「蒼覇兄さん…」
そして、正式に守護者として認められし桜は、今!
総本山に迫る天地を埋め尽くす無数の魔物を前に四人の兄弟達と総本山を背にして待ち構えていた。
「兄さん達。私と一緒に戦ってください。この総本山に座主様達が戻って来れるように、魔物達は絶対にちかよせません!」
「おぅ!」
総本山の守護者として桜と兄弟達の戦いが始まる。
だが、桜達がいれば総本山は無事に違いない。
そう思えた。
次回予告
再び物語は学園襲撃へと戻る。
そこでは坂上田村麻呂が戦っていた。