迫る刃!頼れる人?
桜は両親を失い、天涯孤独となった。
そして引き取られた村は
何か奇妙な事が起きる危険な場所であった。
私は桜…
私は学校の校舎から何者かに突き落とされ、転落してしまった。叫んでも助からない。落下して自分が悲惨に潰れて死ぬイメージをした途端、私は恐怖のリミットが外れて意識を失った。
覚悟はした。
けれど、これが夢であって欲しいと願った。
「あまったれるな!」
「!!」
その時、私はまた声を聞いたの?それは森の中で迷った時に聞いた声?あの凛とした大人の女性の声だった。けれど、もう…
どれくらい経ったのか?私は自分の屋敷のベッドに眠っていた。夢?あの出来事は全部夢だったの?
「イタッ!」
その時、私は手のひらが擦り切れている事に気付く。
「これは?」
間違いなく屋上から転落する際に掴んだ際に折れた柵で付いた傷だった。
「夢じゃない…だったら私はどうやって助かったの?」
どう考えても解らない。屋上から落下して無事だったなんて?それに解らないと言えば私を突き落とした犯人。もう何もかもが恐くなって仕方なかった。
「学校に行きたくない…」
でも、そんな事は許されない。私は養子として預けられたけれど居候の身。
そんな事は許されない。
私は重い足取りで学校へと向かう。
「恐い…」
学校に着くと何もなかったかのように始まる。私に起きた事なんてなかったかのように。誰かに聞きたくても話す相手すらいない。
昼休みに私は屋上に向かう。また誰かに襲われないか警戒しながら。そこで私は驚く事になったのです。
「そんな!?」
私が転落した際に壊れたはずの柵が元通りになっていて、しかも新しい柵を交換したようにも思えなかった。どういう事なの?
私は自分自身に起きた出来事全てが理解出来なくなって、混乱する。
変…
変だわ?
何が変なの?状況?それとも私?解らないわ…
いつから?
その時、突然私は背後から何か袋を被せられたの。視界を奪われ暴れる私は持ち上げられ、移動される。もしかしてまた私は屋上から落とされるの?
真っ暗な視界で私は覚悟する。私は今度こそ死?
突然私は浮いた感じになり落とされたと思った。けど、直ぐに落下の衝撃が来たの?屋上からじゃなく抱えられた状態から落ちたのだと理解した。
どうなってるの?
「止めなさい!」
聞き覚えのある男性の声が聞こえた。誰かと揉み合う音がして、私は自由になって被らされた袋を取ると、視界に入ったのは担任の松本先生と…見知らぬ男子生徒だった。
「桜くん。早く逃げなさい!この生徒が君を屋上から落とそうとしていた!」
「彼が私を?」
その学生は赤髪の男子生徒。見た…事もない。この学校の制服を着ているからこの学校の生徒?でも何故私を殺そうなんて?
「成る程、簡単に思い通りにはならないようだ」
何を?
「やれやれ…タイムリミットだな?」
すると、その赤髪の生徒は浮くように飛び上がると、柵の上に乗り、そのまま背後に倒れるように飛び降りてしまったの!
「きゃああああ!」
私は駆け出して柵から見下ろしたけれど、飛び降りたはずの彼の姿はなかったの。
「嘘?消えた?」
私は松本先生に今までの出来事を全て話すと、先生は、
「そうか…とにかく屋上は危険だ!教室へ戻っていなさい?彼の事は私が調べる。だから君は安心して良いから」
「先生…」
初めて話せる相手が出来た。初めて心許せる人が出来たと思えた。
その後、私は何事もなかったかのように授業に出席したの。授業の内容は頭には何も入らなかったけど、私は自分自身に起きた出来事を思い出していた。
今までの出来事は彼の仕業だったの?
森で迷ったのも?
屋上から飛び降りたはずなのに姿が消えていた事も不可思議だわ?
全ての出来事が狐にでも化かされているような気分だった。
私は授業が終わると暗くなる前に急いで下校する。飛び乗るようにバスに乗って、そして安心したように座席に座り落ち着くと、ウトウトして眠ってしまう。
あれ?
目が覚めるとバスには私一人しか乗っていなかった。
嫌な予感がして、まだ降りるバス停じゃなかったけど降りたの。また以前のような迷宮に運ばれると逃げ場が無くなってしまうから。
私は距離はあっても徒歩で帰宅する事を選んだ。屋敷まで一本道だし、30分あれば帰れると…
しかし?
「どうしよう…」
一本道で私は道に迷ってしまったの。けど、これも変だった。距離が全然縮まらないの。同じ道をひたすら真っ直ぐ歩いているのに風景が全然変わらないし、あの森の中にいるような嫌な感覚を感じる。
「またなの?」
すると、後方からバスが向かって来るのが見えたの。私はバスに乗せて貰おうとバスを待つ。近付くバスは予想以上に早く私の方に向かって…
「!!」
バスは猛スピードで私に向かって来ていた。まるで轢き殺すかのように!
私は道から外れて逃げるけれど、通り過ぎたバスはUターンして再び私に向かって来たの。間違いなく私を轢くつもりだった。
「嫌ぁあああ!」
私は走るけれど、直ぐに追い付かれてしまう。そして勢いあまり私は転んでしまったの。
このままじゃ!
「きゃあああ!」
私に迫るバスにもう逃げられないと覚悟した直後、バスが私の寸前で止まったの!いえ?止まったのではなく、誰かに止められたの?
「ぐぅうう!」
私は起き上がり見上げると、学生服姿の知らない誰かが両手を突き出してバスを止めていたの。
う、嘘?
目を丸くして驚いている私に、その人は叫ぶ。
「俺に構わず逃げよ!」
「は、で、でも?」
「足手まといだ!」
「は、はい!」
私は怒られて無我夢中になって走ったのです。
どれくらい走ったのか?私は道を抜けて屋敷に辿り着けたのです。
「はぁ…はぁ…」
息を切らしながら、私は今日起きた出来事に完全に頭が付いて来れなかった。
赤髪の学生に、バスから私を助けてくれた男子学生。何もかもが解らない中、頼りになるのは私の事を知る松本先生だけだった。
「明日、先生に相談してみよう…」
次の朝、私はなるべく人が沢山乗る時間にバスに乗る。数々の体験から私が眠った後に、それも一人になった時に不可思議な事が起きているから。
無事に学校に着いた私は放課後、松本先生に下校時に起きた事も合わせて相談した。
「成る程。つまりバスに轢かれそうになった所を見知らぬ少年に助けられたと?」
「はい」
「昨日の屋上に現れた少年といい、君の前で何かが起きている事は間違いないようだ」
松本先生もまた、屋上から飛び降りたはずの少年が消えた事に何か自分達には理解出来ないような事が私の前で起きていると感じていた。
「やはり警察に頼むしかないか…」
松本先生は学校側として問題を警察に委ねる事はデメリットが生じる事は覚悟するしかなかった。その為には校長を説得し、私の竜宮寺家に話を通す必要がある。
「生徒を一人守るためには仕方ない事だよ?それにこの件は僕と君だけでは解決出来る内容じゃないからね?」
「先生!」
「それに…」
「それに?」
松本先生もまた赴任して来たばかりで、この村に起きている神隠しの事件や、異様な習慣に違和感を抱いていたと言うの。
「この件を火種にして今までの神隠し事件も解決出来ればと思っているんだ」
「ありがとうございます」
「だから、この一件は僕に任せてくれないか?下手に動いたら…もしかしたら何か大きな圧力で握り潰されてしまいかねないから」
「解りました」
松本先生には警察の重役に顔が利く知り合いがいるらしいの。村にどんな圧力があっても何とかしてくれるはずと私を安心させてくれた。
次の日
突然、松本先生が別の学校に赴任したと話があった。
「そんな…」
私には絶望しかなかった。
松本先生が何処の学校へ移ったのかも誰も知らず、松本先生から直接聞いたアドレスも電話も繋がらなかった。また神隠しの噂が広がった。
もう、誰も助けてはくれない。もう頼りになる人はいないのかもしれない…
私はその日は無事に帰宅出来た。けど、いつ私の身に何が起きたとしてもおかしくない。
私は眠りにつく。
「明日が恐い…」
深夜、何か胸騒ぎがして私は目が覚めると、突然口を押さえ込まれたの!?
な、何??
今まで屋敷では何も起きていなかったら安心していたけれど、此処も安心じゃないって事なの?
「声を出すな?桜くん!」
えっ?
その声は神隠しに合ったと思われていた松本先生だった。
「良いかい?今から君をこの村から助け出す。良いね?」
私は頷くと、松本先生に連れられて屋敷を出たの。
そして落ち着いた場所で松本先生は私に告げた。
「この村は変だ…」
「先生?」
松本先生が言うには、この村は日本の地図にすら記されていないらしいの。外には連絡も出来ず、警察すら全く動こうとしない。そして松本先生もまた命を狙われ、今の今まで隠れて私を助け出す機会を待っていたと言うの。
「とにかく村から出よう。それからだ!」
「はい」
私は松本先生に連れられて来た場所は学校。
「先生?村から出るなら夜更けに出た方が?」
「いや、そうしたいのだが無理なんだ。この村から出ようとすると再び村に戻って来てしまう。この村はどうなってるんだ!」
「じゃあ出られないのですか?」
「それが…手段が一つだけあったんだ。夜が明ける陽が出る早朝の一瞬だけ外に出られるみたいなんだ。俺も一度外に出てから戻って来たから間違いない!」
「そうなんですか?でも先生?どうして私なんかのために?」
「それは君が俺にとって大事な生徒だからだよ」
「先生…」
私にとって信頼出来る唯一の人がいる。私は松本先生を信じられる!
私は松本先生の胸に飛び込み村に来て初めて涙を流して泣いたの。
そんな私達の前に、
「その娘から離れろ?さもなくば、斬る!」
えっ?
私達の前に刀を持った学生服を着た見知らぬ男子生徒が近付いて来たの?
「桜くん!逃げるよ?」
「はい!先生!」
先生に腕を掴まれて逃げる私に、刀を持った男子生徒が追い掛けて来る。
恐い!
恐怖の中で私は祈りを籠めて叫んだの。
「あっちへ行ってぇえ!」
その時、私の身体が突然熱くなって、掌が発光して強烈な力の波動を放ったの!
「ウグゥ!」
刀を持った男子生徒は刀を盾に放たれた光の波動を受け止めながら、
「覚醒が近付いていると言うのか?まずい!」
すると、
「ウォリャア!」
気合い一閃で私の放った力を斬り裂いたの!そして刀を向けると、斬りかかる!
「あっ…」
私の目の前で先生が斬られて倒れていき、私はショックで意識が遠退いた。
私、死んだの?
どれくらい経ったか解らないけれど私は目覚める。
「嘘?」
そこは私の屋敷の布団の中だったの。
夢、だったの?
全て夢だったの?
そうあって欲しい…
先生…
生きていて…
次回予告
桜の身に新たな事件が起きる。
彼女は生き残れるのか?




