女子高生が学ぶ聖徳太子伝説!
法子を襲う聖 太子と、助けた聖 太子?
二人の太子の正体は?
私は法子…
これは太子君の夢?
そして、貴方の前世で何が起きたと言うの?
太子君の記憶が私の中へと流れ込んで来る…
歴史上聖徳太子さんが亡くなった時世、世の中は奇妙な病が民を苦しめていた。
眠りについたまま衰弱し死に至る病。
それは噂噂で呪いと広まる。
だが、その現況である噂が広がるより前に、その呪いは始まっていた。
それは蘇我一族の儀式?
時の権力者蘇我馬子は霊能力を使い、一族がかりで儀式を行っていた。
それは人間の精神を意のままに操る呪われし闇の術法であった。この術法は人の夢に入り込み、情報を吸収するといった政治的な使い道から、洗脳に至る。
だが、夢に入り込むなんて事が人に出来るものだろうか?その為に蘇我一族は偶然瀕死の状態だった魔物を捕らえ、使ったのだ。
魔物の名は獏!
夢に入り込み、悪夢を食らう化け物であった。蘇我一族は獏を研究し、人間の身でありながら夢世界に入る術を手に入れたのだ。
やがて蘇我一族は権力を手中に納めていく。だが、そこに現れたのが厩戸皇子こと、後の聖徳太子さんだった。
少年時代の太子は好奇心で、この蘇我一族の儀式に入り込んでしまった。
そこで目にしたのが獏だったの。
捕らえられ瀕死の獏と目を合わしてしまった太子さんの中に声が?
「お前が私を解放させるのだ…その為の力をお前に与える」
それは獏の声であり、恐怖に怯えて逃げた太子さんは後に、その力を手に入れてしまった事に気付く。
だが、太子さんはその後に蘇我一族と手を組んだの。理由は当時の権力者であった物部氏を倒すため。蘇我一族は太子さんの一族と密接な関係であったために、太子さんが夢術師である事を知った後も互いの権力を害しない限り手を組んだのよ。
だけど、やがて互いの政治の考え方で亀裂が入る。蘇我馬子は考える。自らの血族の女を政治的に太子さんと結ばせ血縁関係を作ったの。
よくある政略結婚ね?
だけど、この政略結婚には別の暗躍があったなんて。
その奥さんに選ばれた女性の名は刀自古郎娘さんでした。
彼女に対し太子さんも最初は疑念もあったけど、彼女は蘇我一族のスパイではなく、何も聞かされてはいなかったの。当然夢術師である太子さんの前では嘘はバレてしまうから蘇我氏も下手な事はしないだろうし、ただの政略結婚だったのかも?
しかし事件が起きた。
この時、聖徳太子さんには四人の妻がいたの。
道貝蛸皇女さん
刀自古郎娘さん
橘大郎女さん
最も信頼されていた膳大郎女さん
そこでスパイであった刀自古郎娘さんは他の奥さんに呪いをかけていく。
子供が出来なくしたり、聖徳太子さんへの愛情を消したり、
そしてスパイである疑われた自分よりも、深愛のあった膳大郎女さんの身体に憑依し肉体を奪ったの!
そして聖徳太子さんと新たな関係を深める。
これで疑われる事も無くなり、全てが上手く行くと思われた。
後は、聖徳太子さんの心を意のままにするだけ・・・
しかし事件は起きたの。
あの歴史的な622年に!
その年、病が流行した。それは寝たまま衰弱死する恐ろしい病だった。しかし奇妙な事に、太子さんが住んでいた宮殿を中心に??
その病に太子さんの妻である膳大郎女さんが発症したの。
慌てた太子さんは彼女の容体を見て膝を付いて涙を流す。
「これが蘇我氏のやり方かぁ!!」
妻の身体には紋様があった。それは呪いだったの。
しかも時間をかけた仕組まれた計画の呪い!
蘇我一族は獏を使い夢術師が沢山いたけど、太子さんの夢術師としての才能はずば抜けていたの。蘇我一族を束にしても敵わないくらいの神憑りな才能!!
その才能に直接手を出せないなら、絡めてから更に弱味を作り、自滅を謀る。
蘇我氏が聖徳太子さんを陥れるために取った策とは?
それは蘇我一族の闇儀式
「お前の身体に魔物を住まわせる。それも、あの政敵である厩戸皇子を始末するためだ!悪く思うなよ?」
儀式は数人の蘇我一族により行われた。儀式の呪いに数人の夢術師が精気を化け物に吸いとられて衰弱する。だけど、次第に獏は煙となって眠っている刀自古郎娘さんの身体に吸い込まれていく。
「今より数年先に、お前の中の化け物は再び甦り、この地に災いを撒き散らそう。あの厩戸皇子を道連れにしてな?あはははは!」
その儀式は今、始まった!刀自古郎娘さんの身体から噴き出す障気が近辺にいる人間達を眠らせて精気を吸出し始めたの。
この状況を何とか出来るのは、一人しかいなかった。
それが太子さん!
蘇我一族は太子さんがこの状況を放置は出来ないと見越していた。否?彼女を見捨て逃げるまねはしないと解っていたから…
情を使った暗殺計画!
「このまま妻を見捨てれば助かるだろう。しかし私は…お前を見捨てはしないぞ?」
太子さんは妻の手を取ると、獏が暴れる夢の中へと入って行った。
「獏よー!お前は私が止めてみせるぞー!!」
太子さんは全ての力を使い果たしながらも、獏を奥さんの身体から解放させた。
しかし悲しき事に奥さんは助からなかったの…
嘆く太子さんだったけれど、笑みを見せ奥さんに向かって言った。
「直ぐに後を追うよ…」
その後、力尽きた太子さんも奥さんを追うように命を落としたのでした。
それが聖徳太子伝説の悲しき最期でした。
しかし蘇我入鹿もまた政治の中で暗殺された。
あの歴史的に有名な中大兄皇子さんと中臣鎌足さんの起こした乙巳の変。だけど、それは聖徳太子さんが死ぬ間際に二人を夢の世界で洗脳し、この暗殺を企てた策だったの。
でもね?互いの策に嵌まり終わったと思われた因縁に、蘇我入鹿もまた死ぬ間際に恐ろしき計画を立てていたのよ!
それは死んだ聖徳太子さんの亡骸を秘かに手に入れ、ある儀式を行っていた。太子さんの亡骸に解放されたはずの獏を再び閉じ込めたの!これは夢術師最強の聖徳太子さんの肉体でしか行えない儀式。
時間をかけて獏と太子さんの肉体を馴染ませた後、その身体を奪うため!
だけど蘇我入鹿は暗殺された。その為、自らの魂を儀式が完成する前に聖徳太子さんの亡骸へと転移させ、再び甦ったのよ!
新たな聖徳王として!
だけど、直ぐに聖徳王となった蘇我入鹿は世に出て来なかった。理由はまさかの暗殺に準備が整っていなかったから。魂の癒着に時間がかかり過ぎたの…
直ぐに目覚める予定が再び隔世したのが私のいる時代だった。聖徳王はあまりにも時が過ぎていた事に驚いたが、この力があれば問題ないと思う。
しかし自分がこの時代に目覚めた理由が他にあった事を知ると、再び怒りが混み上がる。この現世に聖徳太子さんの魂が転生し、その魂が奪った肉体を刺激させたのだと…
それが現世にて転生した太子さんの前に現れた、そっくりな男の正体?
前世の聖徳太子さんを罠に嵌めたのは蘇我一族の中でも最も夢術師の才能に恵まれていた歴史上でも有名な蘇我入鹿であったの。
そして再び、因縁の戦いが始まる…
けど、今回は私がその中に巻き込まれているわけね?
「そんなわけだよ…法子さん?」
太子君は弱りきった身体で私に言った。
太子君は一人で聖徳王となった蘇我入鹿と戦っていたんだね?しかも、アイツの術で眠らされた人達を見過ごさずに助けながら…
「私も手を貸すわ!どうしたら良い?」
「無理だ!君は逃げるんだよ!アイツは化け物だ!」
「けど、太子君は逃げるつもりないんでしょ?」
「それは…。奴の肉体は私の肉体だったもの。それを使って悪行は許せない!私の命と引き換え…ウガッ!」
言い終える前に私が頭上にチョップして止めたの。
「却下!私の許可なく死ぬのはマジに却下です!一人でダメでも、私がいれば百人力よ?」
「何処からそんな自信が?」
「だって私の辞書には不可能なんて文字は書かないから!」
キョトンとする太子君だったが、直ぐに笑い始めて私の手を掴む。
「解ったよ?力を借りるよ?法子さん?……ん?どうしたの?」
私は手を握られて嫌そうな顔をしていた…
「別に下心で掴んだわけじゃないからさ~」
とにかく共同戦線といきますか~!
私は太子君の傷付いた身体に術札を貼りつけていく。これは治癒札と言って、傷付いた身体を癒すのだけど夢の中でも使えるのかしら?
そして私は一人、蘇我入鹿こと聖徳王の前に現れたの。えっ?太子君?太子君は治癒が終わるまで、霊気の縄で身動きを縛って来ましたよ?だって、怪我人戦わせられないでしょ?
悪いけど過去の因縁とか関係ないのよね?
私は私の敵である聖徳王をぶん殴る!
それだけよ!
逃げもしないで自分の前に現れた私に聖徳王は最初驚いた顔をしていた。
本当に瓜二つね?
だけど、だからこそ殴りやすいわ!
「ふふふ…どうやら私が何者か知っていての振る舞いのようだな?娘よ?」
「当然よ?イルカさん!否?ドルフィンさんと呼ぶべきかしら?いくら可愛い名前だからって、あんたの悪行は絶対に私が許さないわよ!」
しかし沈黙が?
あれ?
そこに聖徳王は笑いながら言ったのよ?
「そのような幼い挑発を真面目な顔で抜かすとは怒りよりも拍子抜けしたぞ?娘よ?」
私は彼の言ってる意味が理解出来ずに真面目な顔で答える。
「えっ?」
新たな沈黙が夢世界を包み込んだ。
「まさか?私の名を知らぬと言うのではあるまいな?」
「イルカさんでしょ?」
「………」
再び沈黙の後に彼は私に質問して来たの。
「娘よ?漢字で書けるか?」
今度は私が沈黙する。
そして返した言葉は…
「いや、歴史のテストで最初の方だし…ちょっと触り程度で見たかもしれないけど、テストには聖徳太子さんしか漢字で記入する事はないし?後は憲法なんたらとか冠位なんたらとか?」
つまり?
「あんたの名前なんて、どうでも良いわよ!」
逆ギレして返したの。
その直後、夢世界が突然揺れ始める?それは聖徳王の怒り震える身体と連動しているみたいだった。
よし!挑発成功のようね?
えっ?本当に挑発?漢字は書けるかって?
うん。
そんな事は今はどうでも良いわ!
大切なのは目の前にいるアイツを倒す事なんだから?
私は印を結んで術札に念を籠めると、札から霊気の縄が飛び出して聖徳王に向かって行く!
私も夢世界の理をかじったお陰で、その使い方をマスターしたのよ?信じる思いが力になる。私にとって術札は魔法のアイテム。だから術札を通して信じれば願った事が容易く具現化出来るの!もしかして私って天才かしら?
術札から飛び出した霊気の縄は聖徳王の身体に絡み付き縛り付ける。
「!!」
だけど、私が一瞬目を離した瞬間、縛り付けたはずの聖徳王の姿が消えていた?
そして背後の空間が歪み出して私の背後から現れた聖徳王が、剣をゆっくりと振り上げる。
「はっ!」
私は殺気に気付いて振り向くと、そこには何人もの聖徳王が歪む空間から抜け出して来て、剣を持って襲い掛かって来たのよ!
「ちょっちょ?」
私は慌てながら後退りした瞬間、襲い掛かって来た聖徳王が私の視界から突然全員消えたの…私の真下に。
「よし!成功ー!落とし穴作戦が上手く言ったわ!」
落下した聖徳王は油断して穴の中で頭を擦っていた。どうやらタンコブが出来たみたいね?でも、まだまだこれからよ!
「あんたの時代にはこんな策はなかったんじゃない?そしてあの秘密兵器も!」
私が見上げると、巨大化した術札が浮いていて、そこから瞬間接着剤が出現する。更にマジックハンドが現れて、接着剤を左右から押し潰したの。垂れ流れる接着剤は上空から穴の中にいる聖徳王に降り注がれたの。
「やったわ!大成功!」
聖徳王は固まった状態で動かなくなった。
私は警戒しながら近付こうとした時、
「油断するな!聖徳王は夢世界の王だ!そんな罠は全て無駄なんだ!」
それは太子君の声だった。
私は硬直した聖徳王を見ると、それは私の姿になっていたの?
えっ?
気付くと私は自分の瞬間接着剤によって足下を硬直させられていたの?
「嘘?動けない?」
私は接着剤を消そうとイメージするのに、消えない?何で?何で?何で?
迫る聖徳王!
流石に私も困る。
この状況はどうしたら良いの??
そんなこんな。
次回予告
ついに聖徳王と化した蘇我入鹿と真っ向対決!
傷付いた太子と法子は勝てるのか?