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隔世異伝・転生記~神を導きし救世主~  作者: 河童王子
女子高生救世主編!
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金剛仁王の惚れた男??


坂上田村麻呂は見事に勝利した。


そして、この男もまた戦っていた。


うむ。


俺と対峙する化け物[蚩尤鬼王]は肉団子のような力押しの相手だった。


しかも懐より取り出した卵のようなのを食らった途端に、今までとは桁違いの力が高まっていくのがわかる。


「こんな化け物がいたとはな?しかし…」


俺は決して恐怖はしない。


俺が生涯、恐怖し憧れた相手はあの方だけなのだからな!


俺は金剛仁王


総本山を守護する四人の守護者である。


守護者には一人一人役目がある。安倍晴明殿は総本山を統括し、坂上田村磨呂は凶悪かつ悪しき力の討伐と暗殺。更に黄龍の巫女は調和を任されておる。


そして俺の任務は総本山の破られぬ防壁!


どのような敵を前にしても、例え神や魔物を相手にしても怯まずに戦う。


総本山守護の実質的象徴。


そのような大役を任された俺でも、かつて一度恐怖した相手がいた。


懐かしくも、俺の起源となった出会い。



俺はかつて破壊僧だった。金さえあれば呪術を使い邪魔者を始末する。しかも裏の者[呪術者]を暗殺する事を生業としているだけに、総本山の連中を相手にする事も度々あったのだ。


だが、問題ない!


俺はある組織を壊滅させた後に待ち伏せしていた総本山の兵士達に囲まれたが返り討ちにし、何事もなかったかのように出て行く。


「ん?」


そんな俺の前に奴が現れたのだ。ソイツは体格の良い僧侶だった。見るからにパワーファイターだと見て取れる。俺と似たタイプだと直ぐにわかった。


「はぁん?次はお前が相手か?力自慢のようだが俺に何かようか?」


ソイツは返答なく掌を向けて、俺にかかって来いと挑発して来た。


「なめてるな?」


俺はヤレヤレと目の前の男に近付いていくと、拳を握り締め、駆け出し殴りかかる。


「一発で御陀仏だぁー!」


だが、俺の拳は奴の胸板に直撃したにも関わらずビクともしなかったのだ。


「アレ?」


俺は続けて数発殴り、蹴り、全力で攻撃したがやはりビクともしなかったのだ。


「どうなってやがる?まるで大木?壁?山を殴っているようだ」


「もう終わりか?」


「何だと!?」


余裕かます男に対して俺は拳に気を集中させる。本来なら化け物相手に使う力だが関係ない!俺をナメてかかると只じゃすまねぇぜ?


「うぉおおおお!」


雄叫びをあげ、俺は目の前の男に対して渾身の力で殴りかかる。


「我流か?気を集中させて爆発的な力を拳にため、桁違いの破壊力を生み出す」


すると男も拳に気を集中させて眼前に構えると、


「だが、そのような無意味に奮う暴力は子供の駄々と同じ」


「あんだって?」


直後、俺の渾身の拳に合わせるかのように、奴は拳をぶつけて来たのだ。衝突する力は気を拡散させ、更に凄まじい衝撃が走る。


「エッ?」


衝撃が収まった後、拳が割れて肘から折れ曲がった自分の状態に気付き、俺は悲鳴をあげてしまった。


「うぎゃあああああ!」


生まれてから今の今まで、こんな痛みを感じた事は一度足りともなかった。頑丈が取り柄で、幼少時に両親と共に乗った飛行機事故で大きな怪我も無く唯一生き残った生還者。


そんな俺が拳の衝突ごときで折れ曲がるなんて?


しかも相手の男は何とも無い様子じゃんかよ?


どうなってんだ??



そこに別の男が姿を現して声をかけて来たのだ。


「おぃ?大徳?あんまり壊すなよ?」



…大徳?


この男の名前か?


後から現れた男は大徳と呼ばれた男の肩に腕を置いて俺を見下ろしながら言う。


「で、どうよ?」


「うむ。底々だな。何より魂に強さを感じん。恵まれた素質と肉体に甘んじた堕落者だ」


「キツイな~」


俺の評価を単なる堕落者だと?何処までも馬鹿にしやがって!


だが、こんな腕じゃマトモに戦えない。後から現れた男を人質にしてこの場から逃げ切ってやる!


俺は隙を見て飛び出すと弱そうな男の方の首を後ろから掴み…


「お前、誰を相手にしてんの?」


直後、俺は底無しの化け物に睨まれたような感覚に思わず手を引く。そこに俺は大徳に後頭部を拳で殴られて白目を向いたのだ。



「う~ん…ん?」


次に目覚めた場所は寺の中だった。折れた腕は治療されており、好都合良く拘束されてはいない。俺は脱走を試みた。


「何処に行くつもりだ?」


「!!」


気付かなかった…


俺と同じこの空間に奴がいたのだ。


しかも、ずっと?


気配が全くしなかった…


奴は座禅を組んだ状態で俺が目覚めるのを待っていたのだ。


マジに声をかけられるまで全然気付かなかった。


「て、てめぇ!」


俺は混み上がる怒りが先に出たが、奴との力量の差に怖じ気ついて黙り混んだ。


「ほぉ?大人しくなったもんだな?」


「うるせぇ!」


俺はこれから自分が何をされるのか不安で仕方なかった。もしかしたら拷問されるのか?だったら何故、わざわざ俺を治療した?


とにかく逃げなければ俺は殺されるに違いない…


「そう殺気立つな?別にお前を煮て焼くつもりはない」


「何だと?なら何故俺を連れて来た?まさか怪我させたらから治療した…って事か?あはは!用がないなら俺は消えさせて貰う!」


俺は早々と立ち去ろうとする。こんな場所にいたら息詰まって生きた心地がしねぇ…


何より、俺は奴が怖かったのだ。初めて勝てないと思える相手に俺は戸惑っていたのだと思う。


が、立ち去ろうとする俺に対して大徳が呼び止める。


「勝手に帰るな!」


ゾクッ!


鳥肌が全身に走り、ついに来たと構える。


俺は奴に殴り殺されるのか?治療しておいて油断させてから…


だが、どうせ殺されるならば俺は奴の腕一本…いや?指一本でも道連れにしてやるぞ!


「ん?少しは良い顔付きになったな?怖じ気た顔が消えたぞ?」


見抜かれていたのか?


「だったら話は早い!俺は只では殺られん!」


「そうか、なら!」


来るか?


「先ずは茶でも飲め?」


えっ?


俺は大徳に差し出された茶を拍子抜け状態で受け取ってしまい、怒り任せに床に叩き付けようとする。


「俺の茶が飲めんか?毒など入ってはおらんぞ?」


威圧的な大徳に俺は怯みながら茶を飲み干す。


「これで良いのか?」


「うむ。良かろう」


俺は今度こそ来るかと思って構えると、今度は饅頭を差し出された。


「こんなもん!」


「俺の饅頭が食えないと言うのか?」


「グッ!」


俺は仕方なく饅頭を平らげると、今度の今度こそはと大徳に向かって構える。


「さて、本題に入ろう」


「ついに来るのか?」


すると大徳は俺に予想だにしない言葉を告げた。


「お前は今より総本山で腕を磨け!」


「・・・・・・」


へっ???


「はぁ?何だと?つまりお前は俺を総本山にスカウトしているのか?俺のような才能ある者を?」


「馬鹿者が!お前など雑魚の雑魚だ!己の才に過信した愚か者に過ぎん。そのような馬鹿者を野放しにしているより俺の監視下に置いておく方が楽だからだ!」


「なぁ?なぁ?なぁ?」


「どうする?」


「どうするも何も…」


断るつもりだった。


「だが、総本山を一度降りて再び敵として目の前に現れたのならば、今度は容赦なく叩き潰す。良いな?」


それは脅しではなく本気以外なかった。そんなずるくも殺意ある言葉をかけられて俺の返答は一つしかなかった。


「ふん!ここで修行して力を磨き、いつかお前を超えてやる!良いか?俺はお前を超える男だぁー!」


「そうか?それは俺もうかうかしてはいられんな?」


と、何処まで本気か解らない大徳の言葉に俺はガチになったのだ。





それから数年が過ぎた。





大徳様は数人の兵を連れて鬼神退治に出向いた。


「大徳様、今宵はどのような鬼なのですか?大徳様が出向く程のモノなのですか?」


気付けば俺は大徳様の側近になっていた。


「仁王、抜かるなよ?今宵は今までの鬼とは比較にならん」


「そんな鬼が?」


「只の鬼ではない。鬼神だ!」


「鬼神!?」


鬼神とは鬼とは比較的にならない桁違いの力を持った化け物なのだ。つまり鬼が神通力を得て神格化した化け物。しかも鬼神は二体いると言うから厄介なのだ。俺以外にも同行する仲間も鬼専門の腕の立つ連中で俺も幾度と仕事が絡む事があったほどだ。


その夜、俺達は総本山から用意された寺に厄介になる。俺達は精の付く飯を平らげると一呼吸する。俺達にとって飯はいつでも最後の晩餐だと思っている。それだけ俺達の仕事は命懸けなのだ。


俺はその夜、一人寺の広間にて座禅を組んで見上げる程の仏像を前に集中力を高めていた。そこに大徳さんが顔を出して来たのだ?


「精進しているようだな?仁王」


「大徳様、何用で?」


「たまにはお前と組手をと思ってな?」


「組手ですか?」


大徳様に組手を頼まれる事は名誉ある事であった。何せ大徳様を相手に組手を交わせるのは同じ守護者の方々くらいなのだから。後は安倍晴明氏と三千院様の側近の歪禅殿。


そして俺くらいであった。


大徳様と俺は対峙すると共に気を高める。この時は初めてお会いした日を思い出す。あの頃の俺は本当に未熟だった。それは力量だけでなく内面的にもだ。


そんな俺は死に物狂いで己を磨き、大徳様に追い付くべく鍛え上げた。しかし己が強くなったと自覚出来る度に、大徳様との差が桁違いだと実感した。


それが打倒大徳から、憧れの大徳様に変わったのだ。


別に変な意味ではないぞ?


男が男に惚れるとはこういう事なのだ。



俺の前に大徳様が構えている。俺も気を高めつつこの瞬間を喜んでいた。


「行くぞ?仁王!」


「いつでも!」


同時に動くと中央で互いの打撃や蹴りが幾度と衝突し、衝撃が寺を揺らした。


気付くと他の者達もその対戦を観戦していた。


「ふぅ~」


大徳様は俺に言葉をかけてくれた。


「本当に強くなったな?俺もうかうか出来ん」


「そんな…俺なんてまだまだですよ」


だが、その言葉はかつての大徳様の言葉より優しく心に感じた。それはつまり俺を認めてくれたのだ。


嬉しくて仕方なかった。


だが、俺は自覚していた。大徳様はこれでも本気の半分…いや?


三割程度しか出していないのだと。


それを身を持って知る事になったのが、この鬼神退治であったのだ。


次回予告


金剛仁王と前任者の守護者であった大徳力也


その出会いは意志と魂を仁王へと繋げた。

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