縛る愛!?
源頼光の反乱に若き坂上田村麻呂が戦う!
捕らわれた鈴鹿を取り戻すために!
私は鈴鹿舞…
かつて鈴鹿御前と呼ばれた鬼神の巫女の転生者。
私は総本山に身を起き、そこで源頼光の謀反に巻き込まれたのです。
私は捕らわれ洗脳され、意識を奪われ操られる。
元に戻っただけ?
私は鬼を使役するけれど、私自身もまた操られるだけの傀儡のようなもの。
頼光が五重塔を襲撃している時、外でも五重塔周辺の結界が全て破壊されており、私の召喚した鬼や亡者が暴れまわっていた。総本山の猛者達もまさかの内部からの襲撃に混乱を起こしていた。
「脆い!これが今の総本山の実状!脆くて拍子抜けだ!あははは!」
頼光の目の前には私によって掴まれ身動き出来ないタムラがいた。
「クッ、離せ!今はこんな場合じゃ…胸の感触は嬉しいが、後にしてくれ!」
と、危機的状況の中でもタムラはふざけた台詞を叫んでいたが、私は彼の首に噛み付き力を吸収する。
「うわぁああああ」
彼の力が私の中に入って来るのが解る。このまま力尽きるまで命を削る。
嫌、そんな事はしたくない!したくないの!私は!
けれど私の身体は頼光に操られるがまま、タムラの命を削っていく。
その時、
「お前を束縛する全てを俺が絶ち斬ってやるよ?」
えっ?
それはタムラの声だった。タムラは私に振り向き、そして抱き締めて…
キスをした!
その直後、私に彼の熱く強く激しい感情が流れ込み、そして彼の魂が私を包み込む!私はタムラの魂に抱かれ、呪縛の鎖が蒸発するかのように消滅していく。
「わ、私は…」
「取り戻したか?自分自身を?これからお前は誰にも縛られない!お前は自由だ!良いな?」
「私が自由?」
すると、洗脳が解けた私を背にしてタムラが再び頼光にサハヤの剣を向ける。
「女を道具扱いするようなゲス野郎は俺が許さねぇ!」
「眼中になかった雑魚が私の前に立ち塞がると言うのか?だが、二度は許さん!お前は私の手で消してやろう!」
互いに名刀を構え気を高め始める。同時に二人が動き剣が交差し、衝撃が走る。残像が幾つも残す斬撃がぶつかり合う!
「三体の鬼神を従えただけでなく、あの剣術の腕。本当に成長したな…」
蛇塚様はタムラの成長に驚きつつも喜んでいた。
そしてタムラもまた自分自身の集中力の高まりに驚きつつも、更なる強さへの可能性に胸が躍る。
「その力!その力だぁ!その力があって、何故に総本山で燻るつもりなのだ!」
「燻るつもりわねぇよ?俺は欲深いからな!」
「だったら私と共に世界を支配するために手を貸せ!」
「世界征服?そんなので満足するの?だったらそれがお前の限界なんだよ!俺の野望は更にデケェんだからな!」
「何?」
頼光もまた興味があった。この男の野望とは?世界征服よりもデカイ野望?それが何なのか?
「ならば言ってみよ?お前の野望とは何だ?」
「ふふふ。知りたいか?だったら教えてやる。俺の野望とは…」
「!!」
その答えはその場にいた者達全てを驚かせた。他の誰より私が一番驚いた。
「俺の野望は、そこにいる鈴鹿と夫婦となって、ガキを作り、幸せな家庭を作ることだぁ!」
「!?」
凍り付く全員の中で蛇塚様が一番に笑いだした。
「あははは!世界征服より家庭を作る事が野望とはお前らしい!あははは!」
「俺はマジっすよ?」
「けど、鈴鹿の気持ちはどうなんだ?」
と、私に注目が浴びる。
赤面する私は目を伏せると小さく呟いたのです。
「バカ…」
と、その中で頼光が怒り心頭で怒鳴りちらす。
「女だと?馬鹿かぁ?お前は!そんな女、欲しければ洗脳すればよいではないか!力付くで手に入れれば良いだろう!」
頼光に対してタムラは首を振り、答える。
「馬鹿はお前だよ?その女を欲するのに力付くじゃ意味がないんだ!縛り付けるだけじゃ駄目なんだ!その女は上物なんだ。その女を欲するなら、心の奥から心底惚れさせる事に意味があるんだよ!」
私はもうタムラを見ていられなかった。出来る事なら耳を塞ぎたかったけれど、何故かそれも出来なかったのです。
「愚かだ!愚かだ!愚かだ!愚かだ!愚かだ!愚かだ!愚かだ!」
頼光は俺に対して殺意の塊となっていた。直ぐにでもタムラを殺して、総本山を落とす計画を進めると。
「殺してやるぞぉおお!」
タムラは逆に冷静だった。頭に血が昇った頼光の剣を弾き飛ばし、胸を突き刺したのです。
「ぐはぁ!」
血を吐き、崩れ倒れる頼光は信じられない顔付きで、自分自身の状態に戸惑っていた。
「愚かなのはお前の方だよ?守るべき者があってこそ俺達は強くなれる。守るべき者があってこそ俺達は戦えるのだからな」
崩れ落ちる頼光にタムラは止めを刺そうとサハヤの剣を振り上げる。
「ソウハサセンゾ!」
初めて聞く声が響き、タムラ目掛けて覇気が放たれ弾き飛ばしたの。
何事が起きたかと見上げると、酒呑童子が頼光を抱えた状態で立ち塞がっていたのです。
「頼光よ?ヘマをこいたな?」
「無念だ…」
「この度はここで退き下がろう。大丈夫。計画はまだ始まったばかり!今宵は総本山を計り知る事が目的だからな?そうだろ?頼光」
「解った」
すると酒呑童子は腰にかけた瓢箪を手に取り、その中の酒を飲むと、凄まじい覇気が五重塔を揺らす。
「いずれ再び現れよう。その時は手加減せずに一匹足りとも生かしてはおかん?良いな?それまで短い人の生を怯え過ごすが良い!」
それだけ言い残すと、酒呑童子は頼光を連れて五重塔から飛び降りて消えたのでした。
「逃がしたか…いや?命拾いしたのは俺のようだな」
見るとタムラの三体の鬼神が傷付き倒れていた。酒呑童子は頼光の守護鬼神かと思っていたが、あれでは頼光の方が酒呑童子に操られているように見えた。
「もっと強くならないと…」
タムラは拳を握り締めると、その拳が他の手で包まれる?
「それは私のためですか?」
「えっ?」
タムラの拳を包みこんだ手は私の手。
「あ~まぁ、そういう事だ!ついでに言うが、お前は俺がいつか惚れさせてやるからな!」
そんな彼に私は言った。
「お前は私が自由だと言ったな?誰にも縛られないと言ったな?」
「あっ?言ったぜ?それが何だよ?」
「訂正してください。私は長く縛られ、生きて来ました。もう違う生き方は出来ません」
「だからな?そんな人生は俺が変えてやるっ…」
言い終える前に私は彼を見詰めて答える。
「だから…貴方が私を縛ってください?二度と手離さないように。それが私を繋ぎ止める唯一の手段です」
「それって、つまり?えっと…やっぱり?」
「貴方が私の主様になってくれますか?」
「あぁ…俺はお前を二度と手離さない。お前を守れる唯一の男だ!だからお前は俺の女だ!」
後から階段を駆け登って来た仁王さんは、この状況に理解不能でしたが、蛇塚さんが説明する。
「若さって良いなぁ~」
それが、私と主様との縁。
その後、総本山に戻って来た晴明様が全ての僧侶を収集して告げる。
新たな守護者が決まったと宣言されたのです。
しかし、その守護者は唯一裏の仕事を与えられる事から、名前も顔も仮面で伏せられたのであった。
「本当に良いのか?」
「気にしないでくださいよ?師匠。俺は構わないぜ?別に表に出ない守護者でなくとも俺は裏の仕事を断りもしないですからね」
男は自分の名刀のサハヤの刃が黒く光るのを見て、
「先代のバサラさんの跡を継ぐために、この刃を!戦う意志を受け取ったと考えています」
「頼むぞ?坂上田村磨呂!」
「上等ですよ!」
守護者となった主様に守って貰うだけが私の役目ではない。
私もまた主様を守るための力を手に入れます。
かつて先代の守護者バサラ様は二本の黒き短刀を手に戦っていた。
私は主様と共に戦う並び立つもう片方の刃となりたい!
私もまた力を持った転生者なのだから!
そして物語は現在
学園を襲う蚩尤鬼神達の襲来に、法子の前に現れた私は黒き刃の剣を手にしていた。
「鈴鹿御前、参ります!」
次回予告
過去の思い出より、鈴鹿御前は法子を守るために戦う!