打倒!金剛魔王!共闘の紅孩児と金剛魔王!
西王母により復活したのは、過去に倒した最強の大魔王だった。
金剛魔王の前に、紅孩児が挑む!
俺様は紅孩児。
どうやら他でも喧嘩が始まりそうだな。
けど、父上を温存するためにも、このキラキラ(金剛魔王)って奴は俺様がぶっ倒すぜ!
見上げるほどの巨体に、キラキラした姿。
過去に孫悟空が父上達と一緒に倒した魔王らしいな。
なら、この俺様は負けられん。
「牛角帝・赤」
俺様の鎧が武装系の牛角帝の鎧に変わる。
父上の牛角帝黒が攻撃系に特化し、蚩尤の牛角帝白は防御特化。
そして俺様の牛角帝赤は、俺様の潜在能力の引き上げ特化。
当然、攻撃力も防御力も倍増されている。
「火ァアアアアア!」
俺様の身体から噴き出す業火が、鎧を覆うように纏われる。
その爆発力は加速と、馬力を俺様に与えた。
「爆勝遊炎」
俺様の炎の打撃がキラキラ(金剛魔王)の身体を攻撃しまくる。キラキラ(金剛魔王)は虫を払うように俺様をはね除けようとするが、俺様は瞬時に移動しながら次々と攻撃を繰り出しては、コイツの弱点を探る。
俺様も闇雲に攻撃しているわけじゃない。
必ず、脆い部位があるはずだ。
それに、キラキラ(金剛魔王)の唯一の弱点が熱だと聞いた。
なら、倒せない事はない。
「ウゴォオオオオ!」
キラキラ(金剛魔王)の身体は俺様の攻撃を全て受けたにもかかわらず、傷一つ無かった。
それどころか、動きが速くなっている。
「!!」
まるで壁のように、目の前にキラキラ(金剛魔王)の蹴りが迫った。
直撃を受けた俺様は、蹴り飛ばされてしまう。
そこに振り下ろした拳が俺様を地面に叩きつける。
「ウガァアアアア!」
全身の骨が一撃でひび割れた感じがした。
何て威力。何てパワー。何て出鱈目。
牛角帝の鎧が俺様の身体から消える。
「今だぁあああ!」
すると、俺様の身体を燃え上がる炎が覆いながら、空中へと移動する。
そして止まった先に、俺様は真紅の炎翼を持つ、聖衣を纏っていた。
「四霊変化唯我独尊・鳳凰」
俺様は鳳凰の聖衣を纏い、空中からキラキラ(金剛魔王)を見下ろしていた。
鳳凰の聖衣は再生力を持つ。
俺様の傷が治癒されて、まだ戦える。
しかしそれも牛角帝の鎧の防御力があったからこそ、即死を免れ、間に合ったのだ。
「まだ終わらねぇよ!」
俺様は掌に集中させると、光輝く。
「火尖槍」
俺様は翼を広げ、閉じると同時に槍を向けてキラキラ(金剛魔王)へと突進する。
「貫く!!」
が、俺様の炎がピカピカ(金剛魔王)に近付くにつれて消えかける。
そのまま落下の威力が消えたのだ。
そんな俺様を標的に、キラキラ(金剛魔王)が拳を向けて打ち込んだのだ。
「ヤバい、ヤられる!」
その時だった。
キラキラ(金剛魔王)の膝が崩れて倒れこみ、キラキラ(金剛魔王)の拳が俺様の真横を通り過ぎていく。微かに肩に当たるも、落下しながら俺様は地面に着地した。
「何が、どうなって?」
「忘れた。か?」
「えっ?」
それは剛力魔王の姉ちゃんだった。
俺様にキラキラ(金剛魔王)の拳が直撃する寸前、剛力魔王の姉ちゃんがピカピカ(金剛魔王)に膝カックンをさせて助けてくれたのだ。
「忘れた、か?。お前、戦ってる、のは、カミシニ、だって、こと」
「あっ」
キラキラ(金剛魔王)もまた、西王母が過去の死者を甦らせたカミシニの戦士なのだ。
カミシニの能力を持っていて当たり前。
俺様の炎は、カミシニの能力で神力を消失させられたのだ。
「冷静、必要」
「そ、そうだな。うむ。ありがとな!剛力の姉ちゃん」
「・・・・・・」
剛力魔王は、複雑な心境だった。
紅孩児は、自分が愛する牛角魔王と、自分の知らない女との間に出来た子供。
自分が死んでいる間に出来た子供なのだ。
嫉妬はあった。
が、この短い間に牛角魔王と紅孩児の二人と、カミシニとの追っ手との中で共に戦い、共に旅している事で変な絆が出来ていた。紅孩児の半分は牛角魔王で出来ているのだから、嫌いになれない。しかも純粋で、少し可愛い。
このまま牛角魔王と再婚して、義息子として一緒に生きる事も、アリなんじゃないかと。
剛力魔王は妄想で一人赤面していた。
「気持ち、きりかえる」
剛力魔王は大剣を片手で構える。
「目の前の敵、倒す。未来ない」
先ずはこの戦いに生き残らねば意味がない。
剛力魔王の闘気が伝染するかのように、大剣へと纏われていく。
嘗ては仲間達と共に戦い、美猴王の力で何とか勝てた相手。
脅威ではある。
しかもカミシニ化して以前よりも力を増していることは剛力魔王も同じだった。
なら、その力の差は?
金剛魔王が死んでから、剛力魔王は地上界での戦いを終えて、天界での戦いを経験した。
その差の成長期間はある。
しかしその差は埋められたとは思えない。
それでも負ける気はなかった。
「昔、金剛魔王、だったら、勝利。無理。けど、意思、無し。心、無し、西王母の、操り道具。あの金剛魔王、負ける、思う、ない!」
金剛魔王は大剣を軽々片手で持ちながら、振り回して金剛魔王に斬り付ける。
手首に振動が走る。
痺れる腕に怯む事なく、大剣を斬りつけた。
幾度と弾かれながらも止めない攻撃。
流石に最高硬度の金剛魔王。
簡単には傷一つ付かなかった。
「冷静になれ!お前が言ったんだろ!剛力の姉ちゃん!」
紅孩児は剛力魔王がただ無差別に、特技の馬鹿力だけで戦っているように思えた。
が、徐々にキラキラ(金剛魔王)の手数が減ってきていた。
何故?どうしてどうやって?
「そ、そうか」
剛力魔王の攻撃は、攻撃しているようで防御に徹していながら、確実にキラキラ(金剛魔王)にダメージを与えていた。
振り下ろされたキラキラ(金剛魔王)の拳に衝突させながら大剣を繰り出し、引いては再び拳に二連、三連激を手数で繰り出す。流石の巨体のキラキラ(金剛魔王)も、攻撃は止められ、更に同じ箇所に数度と受ければ、それはもう攻撃を与えられているのと同じ。
すると、キラキラ(金剛魔王)の身体から光の粉が舞っていた。
「あれは、キラキラ(金剛魔王)の身体が削られているのか??」
そもそも金剛石を砕く事事態不可能じゃない。が、金剛魔王は金剛石と同等の硬度を持つ無機物生命体。金剛石が簡単に砕けないように生命体としての粘液が繋げているのだ。
つまり、硬くて傷付けにくい奴って事。
更にカミシニの血を吸って、神的な攻撃を無力化すらしている。
硬度を誇る防御力で言えば、これ程厄介な敵はいないのだ。
「紅、孩児、お前、炎を、私、与えろ」
「えっ?そ、そうか!分かったぞ!」
剛力魔王の姉ちゃんが攻撃の手を止めて、俺様の方に飛び退く。
そして構えながら大剣を背後の俺様に向けた。
俺様は向けられた大剣に両掌を合わせた。
「熱火羅の集神光」
俺様の挟む掌から涌き出る熱が金剛魔王の姉ちゃんの大剣に高熱を与える。
神炎は無力化させられるが、純粋な熱は大剣に籠められて光熱を発する。
「良い。勝ち、出る」
剛力魔王の姉ちゃんがキラキラ(金剛魔王)に向かって一気に飛び出すと、その大剣を横一線に一気に振り払った。
「ウゴォ!?」
するとキラキラ(金剛魔王)の身体に横一線っと、赤い線が走った。
そのまま滑り落ちるように、キラキラ(金剛魔王)の身体が両断されたのだ。
崩れ落ちるキラキラ(金剛魔王)。
「やったぞぉー!剛力の姉ちゃん」
が、剛力魔王の顔は険しいままだった。
そして呟いた。
「考え、違い、してた。気配、ない。だから、気付かなかった。まだ、終わり、違う」
「えっ?どういう事だ?それって?」
確かにキラキラ(金剛魔王)はもう動かずに、砕け散ったままだった。
まさか再生して復活するのか?
俺様が警戒すると、剛力の姉ちゃんの視線は左右の方を見ていた。
「えっ?う、嘘だろ?」
俺様はそこで初めて気付いたのだ。
俺様と剛力の姉ちゃんを覆う影、その先に見える山のような大きさの人影。
それは新たなキラキラ(金剛魔王)だった。
「複製、か」
複製?それって?
キラキラ(金剛魔王)は、無機物生命体。
その身体を分解して、新たに西王母の思いのままに動く傀儡にしたのだ。
魂と生命ある者に、そのような真似をすれば自我を失い、既にその者でなくなる。
西王母は、金剛魔王を完全な傀儡として、道具として扱っていた。
「金剛、魔王。少し、同情」
「そうだな。何か終わらせてやりたい。キラキラの事はよくは知らないけど、死者を道具にする事は、何かムカつくよ」
俺様と剛力魔王の姉ちゃんは山のような大きさの金剛魔王、しかも二体、三体の姿を見て、恐怖よりも闘志が沸き上がったのだ。
次回予告
サクヤ龍王の仇である西王母に、玉面乙女が復讐に燃えていた。




