団結の仲間達に答えろ!牛角魔王の戦い!
牛角魔王は己の蛇神の血を活性化させた。
しかしそのまま血の暴走に自我を奪われてしまった。
その刃が、我が子に迫る。
牛角覇蛇の暴走再び。
その剣先は息子の紅孩児に迫り、剛力魔王が受け止めた。
しかし止まらぬ猛牛に、あの玉面乙女が現れたのだ。
「牛角様。妾が貴方を元に戻してさしあげます。そして共に我らの仇を討ち取りましよむうぞ」
我らの敵とは、西王母。
西王母の策略で、玉面乙女は義姉妹のサクヤ龍王を目の前で殺されたのだから。
宿敵西王母は始祖神。
それだけでも脅威である敵であるのに、西王母には甦りし玉皇大帝がいる。
さらに太白金星を側近にして、数多くのカミシニの大軍を抱えていた。
西王母の軍を玉面乙女だけでは復讐を果たせずに、返り討ちに合うのが火を見るよりも明らか。
「牛角様なら戦力としてだけでなく、妾が頑張れる気がするのじゃ」
「何、それ?私、拒否」
「黙りなさい。先ずは牛角様の目を覚まさせるわよ」
「それ、承知」
二人の女戦士だけでなく紅孩児も決死の目で挑む。
「拍子抜けだ。何をやっているのだか。共倒れ、結構!俺は高みの見物といこうか。お前達が勝手にくたばるのを、ここでじっくり見ていてやる」
四面王魔は巻き添えに合わぬように空中に飛び上がると、崖の上から見下ろして見物し始めた。
「グゥオオオオオ!」
牛角覇蛇の猛攻に紅孩児
「父上ぇええええ!」
その左右から剛力魔王と玉面乙女が牛角覇蛇に向かって拘束を試みる。
「水仙縛」
水が縄のように絡み付き縛りつけ、剛力魔王が突進して牛角覇蛇を押さえつける。
「あのよ。策があるってのは本当なのか?水の女ぁ?俺様はお前を信じる。だから何とかしてくれ!」
「当然だ。お前、牛角様の息子って言うと、あの羅刹女の息子か?」
「そうだが?それが何だ?母上と知り合いなのか?」
「この妾がお前の母親を殺したと知っても、妾を信頼して頼るか?」
「!!」
その真実に紅孩児は一瞬、言葉を失ったが、直ぐに言葉を返した。
「お前の事は鉄扇に聞いた。聞いたから本当なら許せない。けど、今のお前のことは信じられると思ったから、信じてやる!だから必ず父上を元に戻してくれ!絶対だぞ!」
「愚かなガキだ。羅刹女は好きではなかったが、お前の半分は牛角様と同じ。そして牛角様が大切にしているのも知っている。良かろう。妾が牛角様を元に戻してやるわ」
玉面乙女は牛角覇蛇を押さえ付けている剛力魔王に向かって叫ぶ。
「もうちょい、待っておれよ!今に妾が牛角様を元に戻してやるから食いしばれ」
「うむ、承知」
剛力魔王は全身全霊で牛角覇蛇を押さえ付けている。その凄まじい蛇気に全身の激痛に耐えながらも。そこに玉面乙女が大地を統べるように接近しながら間合いに入り込む。
「もう良い。剛力。それ以上牛角様に抱きつく必要はない。後は妾の仕事じゃ」
赤面する剛力魔王が力を抜くと同時に、玉面乙女が牛角覇蛇の胸に掌を置いた。
「血流転換」
玉面乙女は桁外れの水術師。
カミシニの猛毒すら全身の血と混ざり合わせ、猛毒に耐えきるレベルの血流操作を行って見せた。
「牛角様の血を良き流れに変えてみせよう」
再び、牛角覇蛇の鼓動が高鳴り、そして苦しむようにもがき始める。
「ぐぉおおおおおお!」
叫ぶ牛角覇蛇は全身から血を噴き出させ、その場に倒れて動かなくなったのだ。
「父上!」
倒れた牛角魔王に駆け寄る紅孩児は、玉面乙女に睨みつけて叫ぶ。
「父上はどうなった?何をやった?玉面!」
「オホホホ。どうなったかは、牛角様の姿を目に焼き付けてから問うが良い」
「えっ?」
すると紅孩児の前に倒れていたはずの牛角魔王が全身を血だらけにしながらも、瞳に闘志を燃え上がらせつつ、静かに立ち上がっていたのだ。
「お前達が俺を目覚めさせたのか?不甲斐ない姿を見せたようだ。だが、これから先は俺が終わらせる戦いのようだ」
「父上!」
牛角魔王は己の蛇神の血が全身を廻り、溢れんばかりの覇気がオーラとなって覆われていた。にもかかわらず心と魂が穏やかで、そして意識が失われる事もなかった。
そして牛角魔王の視線の先には、見下ろし見物していた四面王魔がいた。
「つまらん!期待していたのに仲間の一人も殺せずに、また俺に喧嘩を売るとは片腹痛いな。牛角魔王。しかしお前がどれだけ力を手に入れようと、この俺には勝てやしないと言うことを教えてやろうか」
飛び下りて来た四面王魔は、全身の鎧が膨れ上がり、五倍にも十倍にも巨大になっていた。それは牛角魔王が見上げる程の体格差になり、その拳で殴り付ける。
「!!」
その拳を牛角魔王は刀で受け止めると、斬激を繰り出して斬りつける。全て命中するが、傷一つ付ける事は出来なかった。
「この俺の身体に傷を付ける事はもちろん、逆らう事も出来ずに震えて死ぬだろう」
「あぁ、震えてるよ。武者震いがな!」
牛角魔王の攻撃を巨大な体格の四面王魔は今度は全て躱して見せた。そして全身の身体から突出して来たトゲが飛び出して攻撃する。
牛角魔王はそのトゲを刀一閃で全て斬り伏せると、その斬激をさらに強化させた。
「覇蛇斬刀」
その一閃は大地を切り裂いた。
それは同時に、
「ウゴォオオオ??」
四面王魔の肩から斜めに両断していた。
「馬鹿な!?奴の刀を見きれなかった?この俺の八つの目でもってもか??」
「倶利伽羅の力、その程度ではあるまい?」
「当然だぁー!」
四面王魔は両断された身体も己の血で繋ぎ合わせて再生しながら、流れる血を操る。
「血粧弾」
四面王魔の指先から流れる血が弾丸の如く牛角魔王を襲うが、向かって来る血弾を全て剣で弾き返す。そのまま斬激を繰り出して応戦すると、四面王魔もまた口から障気を発して身を隠す。
「隠れていないと勝負出来ないのか?」
「何とでも言うが良い。俺は勝てば良いのだ!お前は見えない攻撃に恐怖し、死ぬ。アハハハハハ!」
声はすれど、四面王魔は障気の中に溶け込むように消えて、気配すらなかった。
カミシニの血瘴気は牛角魔王の体力を奪い続けるだけでなく、視界を完全に奪う。
「クッ!」
すると長く伸びた四面王魔の血鞭が四方八方から牛角魔王の身体に傷を付けたのだ。
「ならば、姿を現すように力ずくで引っ張り出すまでよ!」
牛角魔王は血鞭を受け止め握ると、力任せに引っ張りあげる。
「うぉおおお!?」
完全に油断していた。
障気の中から抜け出た四面王魔を捉えた牛角魔王は、
「今度こそお前の最期だぁー!」
その刀で四面王魔の顔面から一刀両断にしたのだ。
「うぎゃあああ!」
この一撃が勝利だと思った。
四面王魔の四面の目から血の涙が溢れ出す。
「シンデタマルモノカ!!」
すると四面王魔の身体が突如空間の歪みの中に覆われていく。
次回予告
四面王魔が死に様に起きた歪みとは?
この戦闘は、まだ終わらない。




