二人の蛇神の末裔!
座主の救出に苦戦する丹生朱美だったが、新たな救援が現れた。
その者達は一体?
私は丹生朱美。
総本山を覆うヒュプノス神の結界を破壊するために侵入した所で、その中核になっていたのが捕らわれた人間達の生命エネルギーだった。そして唯一生き残っていたのが座主様。
私が救出しようとした時、追って来たヒュプノス神の兄弟に襲われてしまったの。
私一人で三人の神を相手にするのは手に余ると思っていた時、座主様を隠密で守護する者達が援護に現れたの。
空海様から聞いた話だと、座主様は蛇神島で生きる蛇神族の血を引くと言う。
先代の総本山座主である卑弥呼様と夫婦になり、その後に蛇神島から出た事で新たな座主として就任したとか。
座主様が総本山に永住する事で蛇神島からは座主様を陰ながら守護する一族の戦士が選抜されて身を守っているようなのです。
それがあの二人。
大河愚地と黒神夜斗なのですね。
「神をも喰らう蛇の力を味わってみるか」
大河愚地は全身の服が破けると、その肌に八匹の蛇の刺青が浮き出てくる。
「人の血を交えた忌まわしき蛇など、遅るに足らず」
苦悩の神、オイジュスが神圧を高めると空間が歪みながら大河愚地の身体を締め付け圧縮していく。
「ぬっ!?」
しかし大河愚地は身体を締め付ける圧に対して、その怪力だけで、
「うぉおりゃあ!!」
消し去ったの。
「座主様を拘束され、居場所が分からずにいた。俺達がついていてにもかかわらず、あのように座主様を傷つけ、消耗させた事は万死にあたいする。大蛇の八喰!」
大河愚地が覆う蛇神のオーラが振り上げた拳に集中していき、その凝縮した力を一気に解き放つ。まるで八匹の蛇が同時に獲物を取り合うようにオイジュスに向かって喰らいかかる。
「うぉおおおおお!」
「忌まわしき蛇ガァアアア!」
互いに戦いがヒートアップするなかで、もう一人の蛇の戦士も交戦していた。
「良い感じにここは暗いな。俺向きの決闘場で都合良くて良いのかって感じだ」
黒神夜斗の額に蛇気が集中していくと、眉間が割れて第三の眼が開く。すると第三の眼を中心に顔から首、胸から胴体、足下まで肌が黒く変色していく。
「闇に染まり漲ってきたぜぇー!」
その動きは影に潜み、その姿は消える。
非難の神、モモス神は警戒しながら、いつでも反撃出来る体勢でいた。
「何を偉そうな言葉を並べておいて逃げおったか?」
「い~や」
モモス神の背後から出現した黒神夜斗が間合いに入り、
「!!」
「逃げるのはお前の方だ。俺は逃げるお前を狩る者。捕食者だ」
黒神夜斗の接近した鋭い手刀を寸前で躱したモモス神は、その身体を消して、離れた場所から姿を現して黒神夜斗の位置を探り確認する。
「何処を見ている?俺はお前が何処に消えようが、居場所は把握済みだ。もうお前は力尽きるまで逃げて逃げて、最期に俺に狩られる獲物だよ!」
「どの口が言うか!殺されるのはお前の方だよ!」
蛇神の一族は蛇神の末裔。
その者達は神と人のハーフと言われてる。
長き時、その血を絶やさないために人と交わり繋げて来たけれど、その血は薄くなり、弱まっていく。しかし中には彼らのような変異種や、神の血を色濃く持った隔世遺伝を持った戦士が現れるようなのです。
「あの二人はそのどちらかの特殊な力を持つ戦士なのね。けれど私も神の転生者として足は引っ張りませんわ」
私は残る神、復讐の神、ネメシスを相手に警戒しながら手首の銀のブレスレットを外して握る。
銀は個体から液体化し、形を変えていく。
「銀の錬金構成。武装」
銀は私の身体を覆いながら鎧と化して、さらに銀の剣を造り上げる。
「座主様、貴方は私が守りますわ」
「すまぬ。しかし無理はするな」
「無理はしませんが、全力は尽くしますわ」
至る場所で戦いは拮抗していた。
しかし決着が終えている戦いもあった。
この戦場は五重の塔の反対側、結解入口
その場に倒れている者がいた。
その者を見下ろしているのは安倍晴明。
そして倒れて動かないのは、丹生朱美を先に結解のある中へと向かわせてくれた姜子牙。
「カミシニは異常な再生力がある。復活などさせないよう、確実に仕止めさせて貰う」
安倍晴明は剣を手に、姜子牙の首を跳ねようと振り上げる。
「因縁を断ち切る」
振り下ろされた剣は姜子牙の首に触れようとしたその時、
「!!」
きょうしがの身体がその場から消えた。
「消えただと。確かに、動けぬように手足の間接を破壊しておいたはずだが」
安倍晴明は印を結ぶと、この一帯に気配を探る。
しかし姜子牙の気配を完全に見失っていた。そこに、
「探しても無駄だぞ。カミシニを気で探っても、カミシニとは死人と同じく気は無に等しい。無機物同様と思うが良い」
「お前は、先ほどの者とは異なる存在だな。それでいて、この私が知る者で間違いないと確証したぞ」
安倍晴明の前には、倒れて動けなくなっていた姜子牙が立っていた。しかし破壊された間接が再生し、それどころか威厳を感じる力を発していた。
「カミシニは再生力が人智を超えておる。何せ神を殺すために存在する異端の化け物だからのぉ。それはお前もよく知っておろう?なぁ、妲己よ」
「!!」
その名を呼ばれた時、安倍晴明の魂が揺さぶられ胸を抑える。
「そ、そうか。私の魂が記憶を呼び起こす。この私はお前を知っている。よく知っているとも。そうだな?太公望!」
「久しいな」
それは魂の邂逅。
廻り会う事のない世界線での運命の邂逅。
そして今、その邂逅は世界を揺るがす。
次回予告
総本山の戦いは、世界の命運がかかっている。
しかし、この世界は滅びる道を辿っている。