絶対絶命!恐怖の最恐鬼神の復活?
坂上タムラは鬼女を討つために
屋敷の中を探しまくる。
そこで、彼は見たのだ。
俺は坂上 タムラ!
俺は幻を使って部屋に閉じ込めていた鬼を倒し、抜け出していた。
俺はこの化け物がウヨウヨといる浮世離れした状況にも関わらず既に適応していた。
まるで過去に何度も遭遇した事があるような慣れ?みたいな感覚。
俺は本能に任せるかの如く敵の居場所を探した。嫌な感覚のする場所に向かえばいる!その考えは的中した。俺はそこで地獄を見る。地獄など実際見た事はないが、そこは地獄と見間違う程の状況。
祭壇を囲むように数えきれない程の鬼が群がり集まっていたからだ!
その中心にはあの鬼女がいた。
「何とかして鬼女に接近しなきゃいけないが、あの鬼の中をどうやって?俺の唯一の武器は…」
俺の所持している武器は弓と一本残った矢だった。
「弓と矢か…なら、この場から狙い打つしかないな?」
俺は別に弓に心得なんかなかったが、不思議と身体が本能的に扱い方を覚えているようだった。
俺は一呼吸すると、弓を構え鬼女を狙う。
「チャンスは一発限りだ!失敗したら俺は気付かれた鬼達に八つ裂きにされちまうな?」
だが、不思議と冷静でもあり、的が外れると思えなかった。
俺は再び集中力を高めると身体から光が矢に集中していく?よくわからない現象だったが、この矢で射抜けば片付けられる予感がしていた。
「さぁ?覚悟しろよ?鬼女!!」
俺の構えた矢先が鬼女に的を定めたその時、鬼女の父親の声が聞こえて来たのだ。
それは…
「今より念願だった伝説の鬼神を召喚する!なに、心配はいらない!お前は鬼を使役する事が出来る力がある。その力で伝説の鬼神をも我が物とし、これまでと同様に儂の指示に従うが良い!」
…何を言ってるんだ?あの親父は?伝説の鬼神が何だって?
その直後、俺は全身に寒気を感じた!それは凍てつく極寒の地で全裸で正座待機させられている感覚だった。いや?そんな感覚は過去に味わった事はないけどな?気分の問題だぞ?
その証拠に弓にかけた指が動かなかった。その原因が鬼女の前方に見える『穴』が原因だと気付く。
宙に開いた穴?何処に通じているかもわからない穴?しかも新たに現れる鬼が穴から抜け出て来て、まるで地獄にでも続いているように感じられた。
更に、その穴の奥から感じられる怨念が近付いて来ていて俺の全身を凍てつかせているのだ。
恐怖?
俺はそこで逃げ出したくなる感情に押し潰されそうになる。だが、ここで逃げたらどちみち俺だけでなく親父も呪い殺される…
「そうはさせん!」
俺は気力を奮い弓を構え直し矢に力を籠める。
あの鬼女を殺せば全てが終わる!
だが、手遅れだった。
突如、闇の穴の中からとんでもない何かが抜け出て来たのだ!それは呪いと怨念の権化たる鬼?鬼神が抜け出して来たのだ!
「何なんだ?あれは!?」
そいつは着物を羽織り醜くも醜悪な鬼だった!
『私を呼びしは己か?』
その問いに鬼女もまた、
「私の呼び掛けにお出でくださり感謝致します。崇徳天皇」
崇徳天皇?それがあの化け物の名前か?
崇徳天皇とは呪いの権化として有名な三大鬼神である。
『私を呼びつけたなら現世の器が必要と知っておろうな?私は再び現世に蘇りこの地を支配しようぞ!』
「器なら用意しているぞ!」
それは鬼女の父親だった。父親は何処から用意したのか人間の死体を何体も運んで来たのだ!
「まだ新鮮だ!ここにある器を使って復活を果たすが良い!」
鬼女の父親は崇徳天皇が蘇ると同時に娘を使って使役するのが目的であった。
だが、
『的さぬ!この器では私は復活出来はしない!』
「何?なら直ぐに用意する。待っていろ?どんな器が希望だ?男か?女か?若い方が良いか?」
『何を言っておる?もうあるではないか?』
「何だと?あるとは?」
崇徳天皇の視線の先は鬼女に向けられていた。
『ふふふ…私に相応しい器があるではないか?そこに?』
「なぁ!?」
父親は娘を見て、理解した。この化け物は娘の身体を使い復活しようとしている事に…
「待て待て?他の器を直ぐに用意してやるから待つが良い!その者は儂の娘だ!それにお前を呼び出した功績があるではないか?」
『愚かな?その功績を持って私の器にしてやろうと言うのじゃ?これ程の褒美はなかろう?それに私の力を支えられる程の器をお前が探せられると思うのか?』
「それは…」
父親は娘を見て近付くと娘に向かってヒソヒソと話し掛ける。
「崇徳天皇!儂の娘は了承したぞ?儂の娘を器に今こそ復活するのだ!」
何だと?娘を生け贄にしようと言うのか?あの親父は?何処まで外道なんだ!
だが、この状況は俺にとってどうなのだ?鬼女が死ねば俺の親父にかけられている呪いが解けるのではないか? それに化け物が化け物を飲み込むだけの話だ…
「好都合だ!」
崇徳天皇は煙状となって鬼女の口の中に吸い込まれるように入っていく。鬼女はもがきながら苦しみ、そしてうずくまった。
「ふふふ…」
父親は笑い出す?自分の娘を化け物に差し出しておいて笑っていやがる!
「どうだ?崇徳天皇の力を手に入れたか?我が娘よ?最初はヒヤッとしたが崇徳天皇の力をお前が吸収し使役すれば、儂の世界制覇の野望が現実となるのだ!」
鬼女は父親に顔を見せると笑みを見せる。
「どうやら上手くいったようだな?これで儂の宿願が叶うわけだ!あははは!」
「全く、いつの時代も愚かな欲持つ輩はいるもんじゃの?」
「お前、何を?」
すると鬼女の指先が父親の首に差し出され、
「あっ…」
父親の首を掴み締め上げたのだ。青ざめた顔でジタバタする父親は、
「離せ!離…うぐっ…父親に何をするのだ?」
「父親だと?まだ解らぬか?この娘の身体は私が頂いた。心地よく適した器じゃ!礼を言うぞ?褒美として私の手で冥土へ送ってやろうぞ?」
首を締める指先が力むと父親の顔が青くなり、目や口から涙や唾液が垂れ落ちる。その姿を面白おかしく見ている崇徳天皇。
「愚かなり!愚かなり!愚かなり!」
次第に力無く弱まり死にかける瀬戸際で、その手に矢が放たれた。
「何者だ?」
その矢を射ったのは俺だった。何故、助けたのか?助けたわけではない。ただ、娘の手で父親を殺す事に対して許せなかったから…
「何かいおるな?」
すると咄嗟に隠れたはずの俺の身体が身動き出来なくなり、背中に冷たい息を感じたのだ。頬に冷や汗が流れ落ちると、その汗を氷のように冷たい感触が舐めたのだ。
「小僧が見物しておったか?ふふ、私への供物がまた増えおったわ」
いつの間に俺の背後に?
危険!危険!危険!危険
俺の本能が危険信号を告げる。全身が麻痺した感覚の中で、俺は叫んだ!
「うわぁああああ!」
崇徳天皇を払いのけ、俺はその場から駆け出した。
だが、前方には数えきれない程の鬼達が群がり道を塞いでいる。
絶体絶命!
既に最後の矢を使いきり手持ちの武器はなかった。それでも俺は唯一の拳を握り締め振り返った。
だが足がすくみ、握る拳に力が入らない。完全に圧倒され畏縮していた。
立っているだけで精一杯だった。
「ホォ?私の前に立っているとは見上げた小僧よのう?何故逃げずに歯向かった?」
「関係ねぇ!ムカつくから矢を射っただけだ!」
軽口を叩く俺を崇徳天皇は触れば壊れる玩具のように見ていただろう。
「うふふ…」
崇徳天皇から発する言葉一つ一つが凍てつく氷のように俺の身を切らせた。
「どれ?私も暇ではない。今より現世に出て私を陥れた子孫を根絶やしにした後、この国を過ごしやすい地獄のような魔都へと変えるのだからな?」
「何だと?」
こんな奴を野に出したら世界がどうなっちまうんだ?
「その前にお前で遊ばせて貰うぞ?」
何をするつもりだ?
崇徳天皇の口から発する黒い息が立ち込め、俺を覆った時!俺は幻覚を見せられた。いや?これは呪いか?
『呪幻宣操』
※ジュゲンセンソウ
俺は崇徳天皇の声聞き力が抜けていき、そして見えない何かに恐怖し始める。自分が幼い無力なガキにでもなったかのように、抗えない恐怖に脅え、涙を流し、声にならない悲鳴をあげてうずくまる。
「どれだけ強がっていようが、己の恐怖には勝てやしまい?お前はもう精神的に死を迎え、その後は私の傀儡として扱ってやろう?」
俺はもう崇徳天皇の声は届いてはいなかった。
が?
「逃げて…」
別の声が俺の頭の中に聞こえて来たのだ?この声は誰だ?女か?
「!!」
その声は崇徳天皇に身体を奪われた鬼女の声に間違いなかった。
「今より、崇徳天皇の動きを止めます。その間に少しでも早く逃げてください」
「何を言ってるんだ?鬼女!お前、また俺を助けるつもりなのか?お前を殺そうとしている俺を!」
すると崇徳天皇の声が消えて俺は身体が動けるようになる。崇徳天皇は自らの腕で口を塞ぎ、もがいているのだ。
「この器?まだ意識が残っておるのか?しぶとい!じゃが、時間の問題…直ぐに精神を崩壊させて、この器を返して貰うぞ!」
崇徳天皇の邪悪な意識が漆黒の霧と化して鬼女の精神をも闇に引きずりこもうとしていた。
「待て?止めろ!」
止める俺に対して、崇徳天皇は俺にも呪いをかける。
「小僧、お前も逃がしはせんぞ!」
俺の魂もまた崇徳天皇を覆う闇に飲みこまれ、俺達の魂は一つに繋がったような感覚になった。
「これは?」
その時、俺は鬼女の魂を通して見てしまったのだ…
鬼女の過去を?
俺の戦いは続く。
次回予告
崇徳天皇の復活に坂上タムラ少年は闇に飲み込まれ、
鬼女の心とも繋がったのだ。