法子と邪神エリス!
黄龍の巫女である桜の身体を奪う邪神エリス。
その相手には法子が挑む。
私は法子よ。
まさか桜ちゃんの身体に蛇神エリスの魂が取り憑いているって事なの?
「うふふ。お前は人間か?このような場所に不釣り合いな。良いわ。どっちみち人間は全て滅ぼす運命。この場で死んでも早いか遅いかの話。死んで良いわよ」
蛇神エリスが掌を向けると、異様な邪気が私の身体に絡み付いて締め上げる。
「こんなもん!」
「何したの?おまえ」
私は完全に拘束されるよりも先に霊力を高めて邪気を打ち消してやったの。
「どうやら普通の人間ではないようね。人間達が組織した総本山の者か?人間の分際で分不相応な力を持つ厄介な俗物よ」
「言いたい放題ね!そんな事よりあんただって桜ちゃんに取り憑いた寄生虫じゃないの!早く出ていかないと、力ずくで追い出してやるんだから!」
「出来るものならやってみなさい」
するとエリスは瘴気を纏い、私に向けて先程よりも強く締め付けて来たの。
「私をただの女子高生と思ったら大間違いよ!私は正義の女子高生なんだからね」
私は掌から霊気を凝縮させ、杖のように伸ばして金の錫杖に構成すると、目の前で回転させてエリスの邪気を浄化させる。
「何処までも厄介ね。けど分かったわ。お兄ちゃん達が言っていた人間の娘。そいつが私達の創る世界の邪魔になるって言ってた。お前がその、救世の小娘ね!」
「なんか私の事を過剰評価してくれているみたいだけど、そうと分かったなら早く桜ちゃんから離れてくれないかな」
「良いわよ。お前がこの器の身体の代わりに、その若々しい肉体をくれるならね」
「ゲッ!それはごめん被るわ!だったら私も力ずくであんたを追い出すから」
私は瞼を綴じて意識を集中させると、今まで抑えていた霊力を解放させたの。
震えるほど全身に力が漲る。
身体に重さを感じないくらいに軽く、それでいて思い通りに動ける。
エリスも同じく禍々しい邪気を全身に覆うと、衣が変化して龍神の鎧が纏われる。
「この器の娘もまた使い道ある。この力は私に馴染むわ」
その力は桜ちゃんの力。
エリスは桜ちゃんの能力を引き出して己の力としてふるえるようなの。
「黄龍邪念刀」
出現した禍々しい剣は瘴気を帯びていて、一振りするごとに空気がよどむ。
「おっちになさい!」
「きゃっ!」
私は受け止めずに寸前で躱すと、触れた私の金の錫杖が瘴気を受けて熔けるように消えたの。まるで猛毒の剣よ、これ。
こんなのどうやって受ければ良いのよ!
「諦めなさい。オマエはもう私の手中にあるの。決して逃げられはしないのよ」
「そうですか?なら、逃げないわよ」
「!!」
私はエリスに向かって突進すると、そのまま手にした数珠を弾いて飛ばす。
「数珠魔弾」
「ウッ!」
エリスは剣を振りながら私の飛ばした数珠を受けると、塵となって消えていく。
「無駄よ。無駄無駄」
「本当にそうかな~」
「エッ?」
私はエリスの間合いに入ると同時に振り下ろされた剣を受け流し、そしてエリスの手首を掴んで姿勢を流れるように傾けると、
「!?」
その一瞬、エリスの視界が一回転して地面に叩きつけられたの。
「うぎゃ!」
「私の合気はどう?このまま気絶させて、その後はなんとかして桜さんを元に戻させて貰うからね!」
勝ちが見えたその時、私は背後に感じた気配に身震いしたの。
『我が妹の身体より退け。下等な人間よ』
振り向く前に私はエリスの身体から飛び退くようにして、背後の敵に警戒した。
「ついに現れたわね!ヒュプノス」
それはエリス神の後を追って来たヒュプノス神。
ヒュプノス神は倒れたエリスの腕を手に取り立ち上がらせる。
「油断しすぎだぞ?エリス」
「違うよ!油断したんじゃなくて、これから本気出して逆転一発を狙うところだったんだから!」
「だが、その娘は私にも無礼を働いた者。兄の手で始末する事は許してくれるか?」
「ん~もう!仕方ないわね」
「そうか、ならば跡形残さず消してやろう」
ヒュプノス神が私に向けて神圧を凝縮させると、私に向けて放ったの。
「うわっ!ちょっと待って~」
私に直撃するかと思われた神圧は私の目の前で別の神圧によって打ち消された。
「ミトラ。無事か?」
寸前で防御壁で防いでくれたのは、アータルだった。
しかも私の名前をミトラとか言ってるし、まだ私の名前を覚えてないの?
失礼しちゃうわ。
「アータル?あ、ありがとう。けど、私はミトラじゃなかて法子よ。の・り・こ!」
「名前の事は気にするな。それより目の前の連中が我がジャスティスの敵で間違いないな?」
「気にするわよ!うん。アイツ達が敵!」
「そうか、なら容赦する必要ないな。ジャスティース!」
アータルが飛び出すと、同時にその背後に迫って来た人影が大鎌を振り下ろしてアータルの首を刈る。その姿は、ヒュプノス神の兄神。
死の神タナトスだった。
「邪魔シタナ」
アータルはまた別方向から伸びて来た棒を腹部に受けて軌道を変えられて、そのお陰でタナトスの鎌の直撃を寸前で避けられたの。
「ゴホォ!くぅ~、お前は私の敵か?助ける気があるなら、もうずごじ丁寧にだずげろ」
「命の恩人になんて口だ!お前は」
その姿を見て、私は再び勝機を見出だす。
「孫悟空!ナイスタイミングよ」
そして私と孫悟空、アータル。
相手はヒュプノス神とタナトス神に、邪神エリス。
「相手にとって不足はないわ!」
でも、本当に大丈夫かしら?
そんなこんな。
次回予告
総本山で起きた世界の運命をかけた戦い。
そこにイレギュラーかつ、因縁の戦いが繰り広げられようとしていた。




