新世界の神!ヲタ!?
迫るヲタを相手に、単身挑むは勇斗だった。
彼は食い止める事が出来るのか?
俺は佐伯勇斗。
異なる世界から現れた化け物。
ヲタ(タミネタ)
親父である空海から聞いた話では、この世界に存在する事は極めて危険。
それは俺達の首領である役小角様より授かりし予言であり、必ず見つけたら倒す事を命じられている。
それでなくとも東京ビッグバンサイトでの惨劇の張本人であり、絶対に許せねぇ。
「この俺がぶっ倒す!」
俺は片腕を挙げて拳を握ると、オーラが紅い蛇となってヲタに向かって襲いかかる。
「この新世界の神であるヲタ様の前では全ての攻撃が無力・・・あれ?」
すると顔面が蛇に飲み込まれるように消失して、その胴体がユラユラと崩れ落ちる。
(やったのか?あっけなさすぎる)
「だろうな!!」
俺は足下から突き出した岩に飲み込まれて埋もれてしまった。
地面から盛り上がるように出現して来たのはオタだった。
「はっはははは!俺は早急に仕事を終えて、溜め込んだアニメを消化せねばならない。こんな場所でお前如きに時間を取られるわけにはいかんのだ。一分一秒。いや、90秒が大事。その意味がわかるか?そうだ!アニメのオープニングの時間がちょうど90秒なのだ!オープニングを飛ばして観るヲタクは俗物。毎週毎回オープニングまで網羅してテンション上げてこそ真のヲタなのだ!わかったか!」
「分かるかぁー!全く意味がわからん!」
俺は全身のチャクラを練り、気を濃縮させて爆発させると、全身を覆った岩を粉砕させて脱出したのだ。
「これからが本番だ!お前の理解出来ない能書きを聞かされて頭がおかしくなりそうだ。俺こそお前を早急にぶっ倒してやる」
「出来るのか?お前に!この新世界の王を超える事が出来るのか?出来ぬな。何故なら、俺には帰れる場所があるから・・・そう。あのアパートに一室に残して来たマイ推しである彼女のために」
「ちょっと待てよ。彼女いるのか?」
「当然だろ!最近のヲタは時代から迫害されることなく世の中に受け入れられた勝ち組。君の女神に花束を〜のヒロイン。三崎サツキ様を攻略途中で残して待たせているのだからな!彼女が俺を待っている!」
「???」
少し間を置き、それがゲームのヒロインであると理解した時、頭が痛くなった。
俺は何と戦っているのだ?
「妄言はもう良い。終わらせようぜ」
俺は一気に最高の打撃を叩き込むために奥義を構えた。
俺の蛇神の血を込めた最大の奥義。
自分の指先を噛むと、血が垂れる。
その血は魔障の蛇神の血。
そして俺の軍荼利明王の力を合わせてブチかます。
「喰らえ!ヘビメタル・インパクト!」
「そんなもの。俺のエーテーフィー・・・どわぁあああ!」
蛇神のオーラが波動となりオタを飲み込み、その全身を粉々にしていく。
そして跡形もなくなった化け物の残骸が姿形残さずに消失していた。
「とんでもなく戦い辛い奴だった・・・」
が、俺は気付く。
(奴の気配が残っている?まさか俺の攻撃を受けて生き残ったと言うのか?)
警戒しながら周りを見回す。
(何処だ?何処に・・・!!)
その時だった。
俺の背後の神社が結界の中から凄まじい爆発が起き、振り返ると結界が消えていた。
(まさか俺が戦っていたのは身代わり?本体は中に侵入していたと言うのか!や、やられた)
が、直ぐに戻ろうとすると内部から異なる結界が張り巡り、俺の侵入を塞いだ。
完全にしてやられた。
朱美に任せるしかないのか?
私は丹生朱美ですわ。
勇斗が化け物と交戦していたはずなのに。
私の結界が足下から破壊されて、突如化け物が現れたの。
自己主張の強い化け物オタが・・・
「勇斗くん。してやられたわね。こうなれば私が守るしかないわね」
「ホッホホ。何の策なく近付くと思っていたのか?頭を使うよ。普通。頭は使ってこそ成長するもんだからな。こうやって!」
肥大化した頭で頭突きをしてきたオタの攻撃を躱して飛び上がる私は、背後にある結界の中で震えて見守る恭介さん達にさがっているように伝える。
「大丈夫ですわ。私が守ってみせます」
「ふふふ。乙女よ。お前がこの俺の相手をしてくれるのか?さっきの小僧より楽しめそうだな。ジュルリ」
「キモっ!ですわ」
私は銀のネックレスを掌で握ると、その銀が増殖して剣と盾と変化したの。
「私は銀使い。お前を貫く銀の閃光よ」
私が突き出した剣をヲタは片腕で防ごうとするけど、銀の剣は液化して防御を避けるようにヲタの身体を貫きましたの。
「銀に形はないのですわ。お前の身体は既に私の銀に侵されたのです」
「ヌヌヌッ?」
ヲタの身体に液状化した銀が広がっていき、全身を縛りつけるように拘束する。
「これが噂の亀甲縛りか。ふふふっ。初めての経験だ。これはこれで素晴らしい体験だ。食い込み方が半端ないぞ」
「ゾワッ!へ、変態だわ!」
「縛って置いてよく言うぜ。けどな?俺の身体もまた決まった形は持たぬ。無生物の鉱物が基礎体なのだ。よって、無駄ぽよ!」
「!!」
ヲタの身体が自ら粉砕して、再び形成して姿を作り直す。
「俺を倒す事は誰にも叶わぬ。何せ、新世界の神なのだからな!あははははは!」
「そんな!」
「小娘よ。俺の女になるか死ぬか決めよ。俺の女になれば生か・・・」
「御免被りますわ!死んでも嫌よ」
「最後まで言わせろ!あ〜ムカつく。所詮、俺には二次元が最高さ。ハハハ。だから三次元の女など、いらん!」
ヲタはその太い腕を振り払い、私は叩きつけられるように壁に衝突した。
全身に激痛が走り、骨が折れたと分かる。
「に、逃げて!必ず助けが来るから!」
私は見守っていた恭介さん達に叫ぶと、
「俺達だけで逃げられねぇよ!」
と、結界から飛び出して来て倒れている私を抱き上げる恭介さんだったけど、結界に戻る前にヲタが道を塞がれたの。
「お前が鍵をあちこちに移動させて俺の邪魔をしていた虫だな?面倒かけさせやがって。今、ここで捻り潰してやろう」
「!!」
その瞬間、再び太い腕を振り回して来たの。
「真壁!頼む!」
「えっ?」
恭介さんは私を放り投げると、私は受け止めたのは真壁さんだった。
その瞬間、最後にニコッと笑った恭介さんの姿が視界から消えていた。
直後、恭介さんは壁に衝突して全身から血を流して動かなくなっていた。
「逃げよう」
「で、でも!」
真壁さんは私を抱きかかえたまま結界の中に飛び込むと、ヲタの伸びて来た岩石が結界に弾かれて消滅した。私と真壁さんは寸前で助かったの。
けど、私を助けた恭介さんは・・・
助けるべき人達に助けられてしまった。
私は、悔しさに涙を流す。
そしてヲタは標的を私ではなく、守るべき恭介さん達に向かって動き出したの。
(私が助けないと!!)
私は手首の水銀のブレスレットに神力を込めると、液状に熔解して広がっていき、ヲタの身体に巻き付かせて拘束する。
「これ以上は行かせないですわ!」
全身の痛みに耐えながらも、私は水銀の指輪に力を込める。
水銀は液状しながら形を変えて固形化し武器と化す。
「水銀弓」
武器は銀の弓と矢となり、私はヲタに向けて狙いをつける。
「射貫かせて貰うわ!」
射貫かれた水銀の矢はヲタの身体を貫く。
「ムフフッ。痛くも痒くもないぞ。ん?おぉお?」
射貫かれた水銀の矢はヲタを貫いた後方から再び液状化してヲタの全身を覆いなら、水銀の塊の中に封じ込めたの。
「はぁはぁ。やりましたですわ」
と、安心した時だったの。
私の足下が揺れ出すと、地面が盛り上がって来て飛び出して来た腕が私の左足首を掴み持ち上げたの。
「きゃあああ!」
それは間違いなくヲタ。
「残念だったな。我輩を閉じ込めたつもりだが、そうは問屋が卸さないのですぞ。何せ、閉じ籠り、引きこもるエキスパートである我輩は、目的のためには、そう推し活をするために自由に外出して娯楽を満悦するプロなのだ。お前のような他人に我輩の自由を奪えると思うのはよしこさん!」
「意味が分からないですわ!」
私は蹴りをヲタの顔面に食らわすが、微動だにしない。
「ぐふふっ。スカートの中が見え見えですぞ」
「なぁ!?」
と、私が捲れたスカートを隠そうとするタイミングで、ヲタは私を放り投げたの。天井に叩きつけられ、落下した私は激痛で動けなくなった。
そして惨劇は私の目の前で起きた。
ヲタは逃げる真君を庇う真壁さんを目の前で殴り潰し、泣き叫ぶ真君を叩きつけた。
そして姜子牙君を庇いながら悲鳴をあげるカスミさんを容赦なく全身を貫き殺したの。
その背後に立ち止まり動かなくなった姜子牙君を見下ろすヲタは、一言言った。
「任務完了」
そして姜子牙君に向けて腕を振り上げたの。
次回予告
惨劇は無常に起きた。
一瞬の出来事だった。
そしてヲタの魔の手が姜子牙に迫る。




