苦しみもがくタミネタの進化!
アータルからの保護を払い、恭介達は再び逃走することに。
恭介達は、乗り捨てたれた車に乗り込むと、運良く鍵が入っていたお陰で逃げられた。
恐らく、化け物に途中で襲われたのだろう。
何台か車が放置されていた。
人の姿がないところ、あの化け物に吸収されたに違いない。
「盗難車とか言うなよ?あのまま走って逃げられないのは分かっているよな」
「当たり前だ。俺達はもう運命共同体だ」
恭介と真壁は運転を変わり代わりしながら運転した。自分達の乗って来た車とは違い、ガソリンが直ぐに切れて、スタンドに入った。
あの時、導かれるように走った車両には、恐らく何らかの力が作用して走っていた事は彼らには思いつく事はない。
彼らが向かったのは真壁の住むアパートだった。
そこには真壁と、その弟が一緒に住んでいた。
「お兄ちゃんお帰り!あれ?お客さん?」
恭介達は疲れ切って、部屋に入るなり倒れ込んでしまった。
そしてカスミはこっそりシャワーを浴びに行くと、残った男達はムラムラしていた。
「それより、もう追って来ないよな?」
「分からない。もしかしたら姜子牙を追ってまた来るかもしれない」
二人は眠っている姜子牙を見る。
「姜子牙って、何者なんだろうな」
アータルが迫った時、姜子牙が立ち上がって触れた途端、アータルは力が抜けて動けなくなった。それが何かしら姜子牙がやった事は恭介達にもなんとなく気付いた。
「恭介、姜子牙は人間じゃないのか?あの化け物や神って奴と同じ俺達とは違う生き物なのか?」
「漫画の読み過ぎだと言いたいけど、あながち間違ってはないかもな。俺達は踏み込んではいけない世界にいるのかもな」
「あぁ・・・」
場所は変わる。
その頃、アータルは復活してタミネタの残骸を見て懸念していた。
残骸の中心に穴があり、地中奥底まで続いていたから。恐らくタミネタは生きていて、あの状況で地中を掘り進み、潜って逃げたのだと気付いた時、アータルもまた宙に飛び上がって空から探索した。
目的は姜子牙を連れて行った恭介達だった。
「あの異分子の存在のせいか?あの者の中心にいるはずの人間達の気すら痕跡が追えないとはな。とりあえず仲間達と合流が先か。それがジャスティス思考と言うものだ」
と、飛び立った。
時間は過ぎる。
既に時間は真夜中になっていた。
アパートの一室がけたましく騒がしく物音がして、静かになる。
その感、悲鳴らしき声が聞こえたが、恐らくTVか映画だったのだろうと誰も気にすることはなかった。
そして、再び騒音が聞こえる。
「勿論だ。この世界を支配するのは我が主君であり、宇宙皇帝ナーヴァス様のみ!」
「地球の平和を守るのは俺達、スーパー・マーケティングレンジャーだ!とぉ!」
音が代わり、
「皆、もっと盛り上がって!聞こえないぞ〜?はい!はい!はい!はい!」
そして女のコの歌声が聞こえる。
これはテレビ?You Tubi?
テレビのボリュームはかなり、大音響で近所迷惑である事は間違いない。
そして、部屋の住人の声が聞こえる。
「ハイ!ハイ!ハイ!ハイ!」
ヲタクの掛け声なのだろうか?
ドタバタ聞こえ、やがて騒ぎ始める。
この部屋には大学生の若者が一人で住み込んでいたはず。
友達もおらず、そして近所との付き合いもない若者。
誰も近寄らない彼の部屋に、流石に近所の住人が四人か五人集まって部屋の扉を叩いた。
「ちょっと!煩いのだけど!もっとボリューム下げてくれないか?おい!」
すると音が静まり、扉がゆっくり開いた。
「えっ?」
集まって来た住人達は怒っていたはず。
扉が開いた瞬間、その顔は青褪めた。
暫くすると、再び騒音がアパートに響いた。
そして扉の前に、首が五つ転がっていた。
「ハイ!ハイ!ハイ!迷宮の闇よりこの左手に宿る真紅の龍が覚醒める。疼く。疼く。今にも俺の桃色ハーレムが、て、オイ!それBLじゃないか〜い!」
謎の声が騒音に混じり聞こえたのだ。
その正体はタミネタであった。
タミネタは病にかかっていた。
アニメを見ないと、深夜枠は見逃せん。
東京ビックバンサイトで接種した人間達の思念が体内で渦を巻きながら廻り、そしてタミネタの行動を制限するほどに強い思念。
リアルタイムでアニメ!
撮り溜めたアニメの消化は効率よく。
そして働いたら負けだ!
それは途轍もない強制力だった。
「神回!新作は3話で選定、アニメは声優で決まる。最近タレント化してない?昔からだろ!やはり大御所使えば間違いない。待て待て今週は何か予定があったはず。声優はるみんのLIVE行かねば日曜日。それにハシゴしてファンイベあったわ!くっ、違うだろ!待て、某の目的は確か他にあったはずだ?西王母様より与えられた使命。そうだ!映画の試写会!チケットの予約せねば!!」
タミネタはヲタと呼ばれる人間達の歪んだ精神を接種した事により、その意識が混ざり別物へと進化していたのだ。
早朝、恭介達は先ず24時間スーパーで買い物をしに行った。
とにかくお腹が空き、どうしようもなかったから。
さり気なく盗んだ車は駐車場に置いて帰り、それから食事した。
全員、無言だった。
これからどうするか?
テレビをつけると、昨日のニュースがどの番組でも取り扱っていた。
思い出すだけで嗚咽しそうになり、直ぐに消した。
「俺達、あの場にいて生き残れたんだよな?マジに奇跡だよな」
「けど、高尾の奴は帰って来なかった。いや、諦めてはいない。連絡がつかないだけで、もしかしたらって思っている」
「そうだよね。高尾君もきっと無事よ」
そして、話は姜子牙をどうするかとなる。
「やっぱり警察に保護してもらうしかないよ。俺達には荷が重すぎる」
「けど、信じてくれるか?警察になんて話すんだよ?化け物に追われてるから保護してくれって信じるか?普通?」
「でも、こんなにニュースで話題になっているから、信じてくれるわよ」
「もし信じられたとして、姜子牙は無事なのか?それに、もしかしたらあの神様ってのに任せていた方が良かったんじゃないか?」
誰にも答えは出ない。
このまま普通の日常に戻れるのか?
下を向いて沈んでいた。
そこに真壁の弟の真が起きて来た。
真はまだ10歳の、真壁の歳の離れた弟だった。
二人の母親は夜の仕事をしていて、二人は父親の違う兄弟。
母親は家出同然に帰らなくなり、真壁は学校を辞めて働き真の世話をしていた。
「ねぇ〜?皆してどうしたの?僕も入れて」
その時、消防車のサイレンが聞こえた。
「!!」
無意識にビクつく恭介達は顔を見合わせ、「まさか」と過ぎる。
慌てて窓から外を見ると、遠く離れた方に火事の黒煙が見えた。
ただの火事?それとも、まさか?
「リア充燃えろリア充燃えろリア充燃えろリア充燃えろリア充燃えろリア充燃えろ」
何かを呟く者が一直線に向かって来ていた。
それは壁を粉々にして建物をお構いなく真っ直ぐに直進していた。
その後に火事が起きて、騒動になっていたのだ。
「き、来た!!」
同時に、恭介の携帯に電話がかかる。
「!!」
恐る恐る手にして見ると、非通知だった。
そして、聞こえた声は?
「恭介!無事か?皆、いるのか?」
それは消息不明の高尾の声だった。
「高尾!お前も無事だったのか?良かった!」
「携帯が壊れて拾った携帯からかけている」
「今、何処だ?迎えに行く」
「構わない。今、そっちに向かっている。だから姜子牙を何処にも行かせないようにしておけ」
「高尾?お前、何を言って?」
恭介に冷や汗が垂れた。
「お、お前、本当に高尾だよな?なぁ?聞くけどよ?お前が好きな魔法少女ミナリオだと、ミナ派か?それともリオ派か?」
「何を当たり前の事を俺はロリ巨乳のミナ派だと言ったはずだ」
「そ、そうか。間違いなく高尾だ。なら、待っているから」
そして携帯が切れた。
恭介は背中越しに言った。
「あいつはロリ巨乳だった。けど、あいつは東京ビッグ・バン・サイトで俺に打ち明けた。本当はボーイッシュ貧乳少女のリオに心が揺れていると。今更、俺にミナ派なんて言わないはず。皆ぁ!直ぐに出るぞ!此処に化け物が来る!」
「!!」
そしてもぬけの殻になったアパートに、タミネタは現れた。
タミネタは接種した人間の知識を吸収し、その声も真似れた。
そして姜子牙を連れ去った人間達の関係から、この場所を突き止めたのだ。
「我を謀りし儚き者、その命賭して我を無限の迷宮に誘うか!許さぬ。我がストーキングは一流企業の美人秘書とて、はたまた今を煌めくアイドルのセンターとて我が手中なり。国家権力の何者も某を裁く事叶わぬ。ふふふっ。ニヤニヤ」
そしてテレビにしがみつき、ニヤニヤしながら食い入るように観ていた。
何?どういうこと?
タミネタの思考は今、闇の中を無数の思念が廻り、己の自我を構成しつつあった。
しかし、その思念の殆どが東京ビッグ・バン・サイトで得た思念の集合体。
「さて、推しに参る!」
新たな驚異?
脅威が迫りつつあった。
次回予告
進化したタミネタが迫る。
恭介達に救済はあるのか?




