とにかく走れ!
恭介達の前に現れたアータル。
神を名乗る彼は敵か味方か?
信じられない事が目の前に起きた。
これは夢なのか?
それも悪夢?
何処からが夢だった?
化け物が現れたところから?
それとも東京ビッグ・バン・サイトに向かう前から?
今、俺の前には化け物と対峙する炎を纏う神様が現れた。
俺は恭介。
普段は工事現場で働き、仲間達と推し活動するごく普通の男。
そんな俺の前に起きた数々の現実離れした日常。
いくらアニメや漫画で見た危機的状況の知識はあったとしても、
リアルの前では腰がひけて、恐怖が身体を竦ませる。
それは、街中で拾ったコスプレの少年。
姜子牙を招き入れたところから始まった。
楽しみにしていた東京ビッグ・バン・サイトの祭典。
そこで起きたのは、化け物の出現。
目の当たりにした死。
しかも大量虐殺だ。
そして、その化け物に追われる事になるなんて。
それからは逃走。
何かに導かれるかのように長野にまで来た時、再び化け物が目の前に現れたのだ。
もう助からないと思った。
覚悟した時、俺達の前に現れたのは神様だった。
神様がリアルに現れるなんて、それこそ夢に違いない。
けれど、その者は少なくとも俺達を守ってくれると言ってくれた。
もしこの状況で願うなら、助けて欲しいと思える相手は神様以外ない。
この馬鹿げた状況から救ってくれるなら、目の前に現れた存在は神様のほかない。
そう信じたいから。
「異界から現れた化け物はお前で間違いなさそうだな。この私もまた異界よりこの世界に辿り着いた異端ではあるが、この私は世を救うジャスティスの下僕。輝かし神炎なのだ。我が名はアータル!」
するとアータルは両掌に籠めた神炎を合わせて凝縮し、目の前に立ちはだかるタミネタに向けて放出した。それは高熱の光となって、タミネタの身体に浴びせると、沸騰したように内部から炎が噴き出しながら形が崩れていく。
「お前達、私の後ろから離れるなよ。離れれば一瞬にして黒焦げになって跡形もなく消えるだろう。あの化け物は今、そのような高熱に焼かれているのだ」
「ウッウゴォオオオオオ!」
雄叫びをあげ崩れていくタミネタに、恭介達は自分達が助かるのかと、恐怖と緊張から気が抜けたかのように、その場から動けずにただ、茫然とタミネタの最期を見届けた。
そして、一帯の景色が元通りに変わった時、アータルは恭介達を己の結界から出るように伝えた。あの化け物は消滅したのか?俺達は助かったのか?
「助けてくれて、ありがとうございます。あ、あんたは神様なのか?本当に?」
恐る恐る信じられないモノを見る恭介達にアータルは平然と答えた。
「いかにも。私は神様だ」
「!!」
目を丸くする恭介達にアータルは続ける。
「今、お前達が見た化け物はこの世界とは異なる場所から、お前達が守ったその少年を追って来たことは間違いない」
恭介は、姜子牙を見て「やはり姜子牙を追って来たのか」と、呟いた。そして、何故、姜子牙を?姜子牙は何者なのか?そもそも人間なのか?タミネタや、目の前の神様と同じく人間とは異なる何かなのか?疑問が疑問を呼び、そして答えなんか出なかった。
「人よ。その者を私に引き渡してくれまいか?」
「えっ?」
このまま姜子牙を連れ帰っても、またとんでもない事に巻き込まれる恐怖が過ぎる。
そもそも今日、知り合っただけ・・・
これ以上関わっても仕方ない。
自分達はよくやった。
「ところで姜子牙をどうするつもりですか?まさか危険な目にはならないですよね?」
「それはまだ分からぬ。あの化け物の標的がその者であるなら意味がある。保護はする。だが、その者がこの世界にとって災いになるなら私の手で滅ぼす」
「それって、つまり安全を約束は出来ないってことですよね?」
恭介の問いにアータルは無言だった。
それで決心がついた。
「姜子牙は任せられません!」
すると恭介は倒れている姜子牙を背負い、仲間達と頷きあいアータルから離れようとする。背を向けた時、アータルの言葉に恭介達は凍りついた。
「これはお前達が関われる話ではない。痛い目に遭うのが嫌なら、その者を差し出せ」
「それは命令ですか?貴方は度々正義を語っていましたが、無理に拉致する事が正義だなんて俺は理解出来ないのでね」
「そうか。怪我をさせるつもりではなかったが仕方ない。急を要するのでな。その者は頂くぞ!」
と、アータルが掌を向けた時、恭介達は恐怖を感じたが、その場から駆け出した。
「やれやれ」
その瞬間、熱風が起こって恭介達は身体が浮いたかのようになって、そのまま転がるように転倒した。
「何だよ!助けておいて、今度は襲うつもりかよ!化け物もお前も同じだ!俺達を放っておけよ!」
「世界を守るジャスティスのため、多少強引にいかせてもら・・・ヌッ!?」
「!!」
その時だった。
いつの間にか恭介達の目の前に、アータルの正面に姜子牙が立っていた。
そしてゆっくりと手を差し出した。
「素直に私と行く気になったのか?それが懸命というもの」
が、次の瞬間にアータルは膝をついて、そのまま倒れ込んでしまった。
何が起きたと言うのか?
それは姜子牙の持つ神の力を無効化させる忌まわしい能力のせいだった。
そんな事、この世界の誰も知らない。
よってアータルは無防備にその能力を受けてしまい、力を無効化されて足腰立たなくなってしまったのだ。
その隙を、恭介は見逃さなかった。
「皆!逃げるぞ!」
恭介ほ姜子牙の手を取り、逃げた。
乗ってきた車は壊れ、足は無かった。
けれど、じっとはしてられない。
「とにかく走れ!」
神々や異端の化け物が現れる事態にら力無き普通の人間の恭介達の運命は?
次回予告
再び逃走中の恭介達の向かう先は?




