逃走劇!力無き正義の先!
放心状態の姜子牙をかくまう恭介達。
しかし彼らに迫るタミネタなる化け物。
彼等の運命は?
迫るタミネタから逃げる恭介達。
走行車は既に200キロを出していた。
「恐いよ!速すぎる」
「カスミ。我慢してくれ!あの化け物が追って来てるんだ!どうにかして逃げてやる」
するとスピードを出す恭介の車にパトカーが追って来たのだ。
「こんな時に冗談じゃない。今止まったら、俺達が化け物に殺されちまうよ!」
「止まりなさい!そこのキャンピングカー!止まりなさい」
サイレンがけたましく鳴ると、パトカーが前に出た時、
「!!」
後方から迫って来ていたタミネタの攻撃がパトカーのボンネットに直撃し、そのスピードのままガードレールに衝突し爆炎が起こった。その隙を恭介はアクセルを踏み、スピードを上げて逃げ切ったのだ。
「逃げ切れたの?私達、家に帰れるの?」
カスミの言葉に恭介は頷いた。
「安心しろよ。もう大丈夫だ」
すると恭介は駅前で三人を車から降ろした。
「どうして?車で帰ろうよ?」
「恭介、お前何を考えてる?」
「まさか、お前!どうして今日知りあった奴に、そこまでするんだよ?恭介!」
その問いに、恭介は笑顔で答えた。
「俺はただな。俺がお前達にして貰ったように、姜子牙の奴を放って置けないだけだよ」
「!!」
昔の恭介は学生の時の喧嘩で相手を傷付けた事で少年院に入れられた。
それもイジメをされていた友人を庇うための行動だった。
そして少年院から出た後、恭介には何も無かった。
学校にも戻れず、帰る家も無かった。
少年院に入っている間に、両親が事故死。
何もかも失った恭介だった。
しかし、彼らはそんな恭介と友人となった。
最初はネット交流だった。
そしてオフ会。
知りあった後、恭介は自分の生い立ちを話した。
もしかすると、話を聞いて自分から離れてしまうではないかと疑念はあった。
しかし彼らは受け入れたのだ。
過去は関係ない。
彼らは出会って、知って、自分の目でみた恭介を友達だと言ってくれたのだ。
「い、今まで有り難う」
すると恭介は手を振り、三人に向けて笑顔を見せると車を動かした。
その車の後方には、まだ姜子牙が黙って座っていた。
残された三人も察していた。
あの化け物は、もしかすると姜子牙を追って来ているのではないかと。
そして恭介は自分達を安全な場所に逃がして、姜子牙を連れて囮になるつもりだと。
「じゃあな」
恭介が車を動かそうとした時、三人が車に乗り込んだ。
「お前ら!何を考えてるんだよ!」
「お互い様だろ?」
「確かに恐いけどよ。お前だけ見捨てられるかよ!」
「恭介。動かして!大丈夫。私達は一緒よ」
正直、その場で涙を流しそうになったが、同時に勇気が恭介に漲った。
「絶対に逃げ切るからな!」
再びエンジンがかかり、恭介達を乗せた車は動き出した。
目的はない。
ただ、この場から離れる事。
逃げることのみ。
それからはとにかく車を止めなかった。
なるべく混んでない道を選び、人混みを避けて、そして彼らは長野を走っていた。
理由は不思議だった。
彼らの車のナビが、いくら設定しても同じ場所を設定して変更出来なかったから。
これは罠?
それとも誰かが導いているのか?
四人は車を走らせながら、その場所に向かう事に決めたのだ。
そして不思議な事に、幾ら車を走らせてもガソリンが減らずにいた。
このキャンピングカーは電気充電だったから?
それにしても減らないのは不思議だった。
「とにかく行ける場所まで行こう」
車は代わり
運良く、食べ物は積んでいた事が幸いした。
トイレは緊張があった。
車を止めている間、生きた気持ちではなかった。
運転を代わり、仮眠する。
それでもあの惨劇の後にゆっくり休める者はいなかった。
そして今も、まだ化け物が迫っている恐怖。
「なぁ?もう追って来てないのではないか?全然、トラブル無いし、後ろ見てもそんな様子無いし・・・助かったんじゃ?」
全員、疑心暗鬼だったが、それならそれで助かった事に胸が休まる。
本当に助かった?
「前を見ろ!前!」
「えっ!!」
突然、前方の道が盛り上がって塞ぐと、恭介達の乗るワゴンはスリップして横転してしまった。
「み、皆・・・」
恭介は倒れているカスミと、姜子牙を抱きかかえて外に出ると、真壁と浜田が手伝うように二人を引っ張り出してくれた。
しかしそれは本当の意味で助かったとは言えない。
何故なら、彼らの前には?
「ウゴォオオオオオ!」
もう誰も動けなかった。
疲労と恐怖。
足が震えて、立ち上がれない。
逃げるだけ逃げた。
もう、やれることはやった。
姜子牙を見捨てたら助かったのか?
頭を過ぎるが、彼らは人として出来なかった。
彼らは臆病だけど、強かった。
それは正義感と言える。
「よくやった。そのモノを連れてきた事だけでない。お前たちのジャスティスの証明!この俺が認めよう。だから、この命をかけてでもお前達を死なせん!」
えっ?
何処ともなく声が響き渡った。
そして、前方の膨れ上がるアスファルトから出現したタミネタが突然燃えだしたのだ。
そして、そのタミネタを前に恭介達を守るように立つ者がいた。
成人した男の美しい筋肉。
髪が燃え盛る炎のように逆立ち、まるで神聖なモノを見るようであった。
「このアータルが、お前達のジャスティスを力に、あの化け物を退治してやろう」
その者は、アータル。
この地に存在する神聖な神であった。
次回予告
炎に覆われし若者は救済の神か?
恭介達は助かったのか?




