不死??三体の英雄鬼神!?
呪いを背負った少年は、代わりに呪いを受けた父親のために
戦う決意をした。
え~さてと、
俺は自分の夢に導かれ、総本山の相棒と一緒にやって来た場所は滋賀県の鈴鹿山だった。
そこで俺達の前に襲い掛かる鬼達に、謎のガキが目の前に現れたのだ。
誰だ?あのガキは?
するとガキは手にした刀で俺達に向かって斬りかかって来たのだ。
「おっと?」
俺は紙一重で刀を躱すと、その殺気から殺意が籠っていると気付き、
「危なっかしいガキだな?人に刀を向けたらダメだと学校で学ばなかったのかよ?」
「まぁ、イカれたガキは多いからな?俺が仕置きしてやろう」
この金髪の僧侶の名は蛇塚。こう見えても総本山では五重塔を守る守護者なのだ。任しても問題あるまい?蛇塚は拳を鳴らしながら金の錫杖を地面に突き刺すと素手で相手しようとする。
「ジジィ!素手とは余裕だな?死んでから後悔しやがれ!」
「口の悪いガキだな」
ガキは刀を連続で斬りかかってくると、蛇塚は感心そうに躱していた。
「このガキ…並みの腕じゃないな?まるで歴戦の猛者だ…戦い慣れしてやがる?これはガキだと思って嘗めてかかると不味いな?」
蛇塚は両手に霊気を集中させると、眼前に迫る刀を両手で挟むように止める。
「ん!?」
瞬間、刀ごと、ガキが一回転して地面に叩きつけられたのだ。予想だにしていなかった攻撃にガキは脳震盪を起こした。
「うっ…眠気が…ヤバい…眠ったら、また…」
意識が消える事に怯える少年だったが、瞼の重さに耐えられずに眠ってしまう。
「危ないガキだったな?だが、意識が消える前に気掛かりな事を?眠ったらどうなるって?」
「おぃ?何か嫌な感じしないか?突然、強力な気を近くから感じる!」
すると俺達のいる一帯が闇に包まれていく。何が始まろうとしているのだ?
「!!」
俺は気付いた。ガキの意識が消えたのが引き金となって、違う空間から別の何かを呼び寄せたのか?
つまり呪いが発動したのか?このガキを殺すための強力な呪いが!!
俺も蛇塚も迫る呪いの脅威に警戒する。
「とんだ巻き沿いだ!」
「俺を見るなよ?」
俺は蛇塚の冷たい視線に文句をたれる。そもそもガキの呪いだからガキのせいだろ?で、ガキを気絶させたのは蛇塚だぞ?で、この一件は俺が連れて来たのだからつまり…
とりあえず目の前の仕事を一つ一つ片付けようか?
てか、ん?何だ?この気は?ちょっと、うっ!
押し潰すような重圧の正体が俺達の前に現れた。
ソイツは鬼?いや?英雄級の鬼神か?
因みに英雄級の鬼神とは知名度の高い英雄が鬼神化し、その力は並みの鬼とは比較にならず、守護神級なのだと言う。それが、まさか俺達の目の前に出現したのだ!
『大獄丸』『悪路王』
『八面大王』
伝説級の鬼神の登場に俺達は気を引き締めた。
「これだけの伝説の鬼神がどうして、このガキを呪うんだ?」
「知らねぇ~よ!けど、眠らせちまったのは俺だから責任は取るよ!」
「いつもながら優しいな?蛇塚?」
「気持ち悪い目で見ているんじゃねぇよ!馬鹿野郎!」
蛇塚は三体の鬼神の前に出ると、指先を立てて威圧する。
「上等!かかって来やがれ!」
向かって来た大獄丸に対して蛇塚は慌てもせずに攻撃を躱す。紙一重で左右によけ、蛇塚が触れた瞬間、大獄丸が一回転して地面にぶっ倒れたのだ。
相変わらずにキレの良い合気だな?
さてと、俺も手伝うかな?
蛇塚に向けて弓を構えているのは悪路王だった。凄まじい勢いで矢が放たれると俺は数珠を手に霊気を籠めて放つ。
『数珠連弾』
俺の指から弾かれた数珠玉が飛んできた矢に衝突して弾けて消滅した。
「ん?」
突然、身体に重圧がかかる?蛇塚もまた身動きが出来ずに金縛りになっていた。
それは八面大王と呼ばれる鬼神の神通力だった。
「うぐぅううう!」
「ぬぅおおお!」
俺も蛇塚も指一つ動けない中で、大獄丸が蛇塚の前に立ち上がり、悪路王が俺に弓を構えていた。
ちょぃヤバいかな?
俺も蛇塚も絶体絶命の中で口ずさむ。俺達の真言を!
『オン・アミリティ・ウン・ハッタ!』
『ナウマク・サマンダ・バザラ・ダン・カン!』
俺と蛇塚の身体から凄まじい神気が爆発的に開放され、八面大王の金縛りを破り迫る大獄丸を吹き飛ばし、悪路王の矢を消し去った。
三体の鬼神の前に俺と蛇塚が神気を纏いながら…いや?神の…明王の姿となって仁王立ちしていた。
『軍茶利明王』
『不動明王』
軍茶利明王と化した蛇塚は己の指先に傷を付けると、血が異様な動きをしながら二匹の蛇の姿となった。
「英雄級の鬼神だろうと明王の前には無力!」
蛇塚の意思で二匹の蛇が鞭と化して大獄丸を飲み込み消滅させたのだ。
そして不動明王と化した俺から放たれた火炎が弓を構えている悪路王に放たれ消滅させた。
「残りは一体だな?」
八面大王に向かって俺は駆け出すと、
「燃え上がれ降魔の剣よ!そして目の前の敵を滅せよ!」
俺は振り払った燃え盛る降魔の剣が八面大王を一刀両断し滅したのだ!
「やったようだな?」
蛇塚に対して俺は答える。
「余裕だった……何?」
「馬鹿な!?」
俺と蛇塚の前に今倒したはずの大獄丸と悪路王、八面大王が再び現れたのだ。
「嘘だろ?今、倒しただろ?まさか再生?」
「違うぞ!確か空海師匠が昔言ってたような…確か?」
「お前、何かを知っているのか?」
「駄目だ!思い出せん!とにかくここは…」
「逃げるか?」
俺は不動明王の火炎で一帯を燃やし煙幕を作ると、蛇塚は倒れているガキを背負い、その場から逃げるように消えたのだ。
俺達は鈴鹿山山頂の一本道を登りきった所で、結界を張って隠れていた。
「さて、どうする?」
「どうしようか?」
俺達はあの後、二度三度と鬼神達を倒したはずなのだけど再び蘇って来たのだ。
「あの不死の鬼神は面倒だぞ?どうすれば良い?やはり結界に封印がセオリーか?」
「恐らく無駄だ!」
「どういう意味だ?」
「思い出したよ?あの不死の正体がな」
蛇塚は三体の英雄鬼神の不死の秘密を説明する。
「恐らく…それは呪いと契約の儀式にて魂が別の呪術者と繋がっているのだ」
「つまり?」
「呪術者を倒さない限り、あの英雄鬼神は消えないってわけよ?」
「よく知ってたな?」
「昔、空海師匠から聞いたんだよ?お前だって知っているだろ?」
「何の事だよ?」
「小角様の使役していた前鬼と後鬼も同じだって聞いたぞ?お前は直に見た事があるんだろ?」
「あっ…」
なるほどだった。
因みに小角とは俺の師匠で、前鬼と後鬼と呼ばれる鬼神を二体使役していたのだ。
だが、待てよ?
この鬼神契約にはメリットとデメリットがあるのだ。呪術者は英雄鬼神と呼ばれる鬼神を使役する事が出来る。この鬼神は呪術者が死なない限り消える事はない。それは呪術者の魂と鬼神の魂が繋がっているからなのだ。つまり同じ魂を共有しているからだとか?
これがメリットなのだがデメリットもある。呪術者の力が衰えると、その英雄鬼神は主従関係を覆そうと反旗を翻すのだ。つまり裏切り契約者の命を奪いに来るのである。
「つまりあの不死の鬼神を倒すには呪術者を倒さなきゃいけないわけか?」
「そうだな。つまり鈴鹿山にいる黒幕を倒さんとならんわけだな?楽勝じゃねぇか?」
「策は?」
「お前が鬼神達を相手にしている間に、俺が呪術者を倒して、はい!終了~」
「………」
「駄目?」
「仕方ねぇな。俺が鬼神達を引き付けていてやるから、お前が中に入って問題解決して来いや?」
「任せろ!」
作戦は蛇塚が鬼神達を相手にしている間に、俺が邪魔されないように結界を張って中に入る。こうなれば鬼神達は手が出せないわけだ?ナイスな作戦!
と、例のガキが薄目を開けて俺達の話を聞いていた。
(…つまり、このオッサン達に鬼神共を任せて、俺が侵入してしまえば…)
そして作戦を実行する。俺達が結界を解くと同時に気配に気付いた鬼神達が襲い掛かって来たのだ。
「上等ぉ!」
蛇塚が一人で鬼神達を相手に迎えうち、俺が結界を張って中に突入…
「おっ?」
俺が中に突入しようとした時、尻を蹴られて結界の外に出てしまったのだ?
「お前、何を?」
俺を蹴ったのは例のガキだった。
「後、頼むわ?」
なぁ?
なぁにぃ~??
コケた俺を見下ろして中へと入って行くガキを茫然と見送る俺は完全に状況に取り残されていた。
「うおっと!!」
そこに英雄鬼神が襲いかかり、俺は受け止める。
「あのガキ!ナメた真似を!!」
そして一人鈴鹿山山頂にあった屋敷の中に入って行った少年は、刀を手に屋敷の主の命を狙い探しながら闇雲に走っていた。
「俺がケジメをつけてやる!」
襖を幾つも蹴り破り中に奥へと入り込んだガキは、ついに黒幕のもとへ殴り込んで行く。
垂れ幕の奥に人影が見え、ガキは突っ込むと同時に相手の襟を掴み刀を突き付けたのだ!
「テメェが俺を苦しめていた黒幕かぁ?こらぁ!」
が、ガキは相手の顔を見て刀を止めていた。
「お前が…まじか?お前が黒幕なのか?」
と、俺をそっちのけで展開する物語は次話へ続く!
次回予告
少年が命を狙う相手とは?
それもまた邂逅であった。