ノアの一族。法子との奇妙な縁!?
法子と孫悟空の前に現れた即身仏。
それは、過去での仲間のフォンの変わり果てた姿だった。
私は法子よ!
私は役小角さん(未来のフォン君)から、今日この日までに起きた事を聞かされたの。
私達と共に遺跡の中で百眼魔王率いる三魔王との激戦を終えた後、私達は別れた。
私達が立ち去った後、まだ遺跡に残って調査していたフォン君は遺跡に残る気配から、まだ何者かが遺跡の中にいる事に気付いたの。
そして単独遺跡に戻ると、そこには強力な妖怪を封じた装置があり、その門番のような妖怪達と一戦を繰り広げた。
その時、危機一髪のフォン君は突如出現した異次元の穴に飛び込んで窮地を逃れたと言うの。しかも、その時フォン君は封じ込められていた凶悪な魔物も引き込んでしまったとか。
そしてフォン君が目覚めた時、そこは自分が知る世界とは異なる世界にいたと言うの。
それは、未来の世界。
と、言っても私のいた時間軸からは過去の世界だった。
フォン君はその時、自分が置かれた状況を理解したと言うの。
フォン君は幼少時に自分とお姉さんを救ってくれた恩人に対して、同等の救いを返す事を生き甲斐にしていたの。
それは、その恩人が苦しむ未来で、今度は自分が救う事になる未来を視たのだと。
使命を与えられたと。
そう、その恩人ってのが私と同じく未来から来た人物で、私の本当のお父さん。
三蔵法師様だと知った。
ちなみにその話しの流れで、フォン君を救った三蔵一行には孫悟空や八戒、沙悟浄に鉄扇ちゃんまで既に会っていたのよ。
話しを戻すわね?
未来に来たフォン君は三蔵様を探した。
けれどいるはずない。
何せ、まだ私のお父さんはこの世界に産まれてもいない過去だったから。
フォン君はその事実を知った時、心が壊れるような感覚を覚えた。なんのために未来に来たのか?中途半端な未来に来たところで、目的は果たせはしない。
このまま野垂れ死にするしかないのか?
その時、フォン君の支えになったのが、遺跡で共に未来に来てしまった封じられし大妖怪、妲己だったの。
二人は見知らぬ土地で共に過ごした。
その間、苦しい事もあったけれど、二人は乗り切って生きてきた。
フォン君は役小角として私達が未来で世界を影で守護する組織、総本山を結成したの。それも全て、未来に現れる私のお父さんの居場所をつくるためだったの。
そんな時、共に生きてきた妲己さんが亡くなった。
そしてフォン君を未来に生かすため、長寿の呪いをかけて。
悲しみと別れを乗り越えたフォン君は未来に現れる私のお父さんを待った。
後は、恩を返す事が最期の役目だと信じて。
(はっ!?)
そこで、私は現実世界に引き戻されたの。
見回すと、孫悟空が無言で聞いていた。
きっと、私と同じモノを見ていたのね。
「それでフォン君はお父さんに恩を返したと言うのね?」
私の問いに、フォン君は無言だった。
そして返って来た答えは私が理解するには少しオツムが足りなかったの。
『確かに一つの世界では恩を返せたようですが、今の私は三蔵様に巡り合う事は叶いませんでした・・・』
「えっ?どういう事?なんで?」
そこで、私は改めてこの私がいる世界について知る事になる。
今いる世界は私のいない世界。
それどころかお父さんも存在しない世界。
そりゃそうよね?お父さんがいなかったら、私は産まれてこないのだから。
つまり?
この世界は私のお父さんが存在しないパラレルワールドってわけなのね?
その解釈に、フォン君は付け足す。
『この世界もまた在りし世界の時間軸の中にあります。そして一つの世界に救世主は一人しか存在出来ぬのです』
「ん〜?この世界の救世主がお父さんでも、私でもない世界??」
『そうです。この世界は救世主が存在しない世界。滅び去る運命の世界』
「滅びる運命の世界って何よ?」
フォン君は私に答えたのは、世界線についてだった。
それはパラレルワールドと呼ばれる無数の世界は、全て消失が決まった世界なのだと言うこと。そして、滅びた後に新たな世界が産まれ繰り返されるのだと言うこと。
しかし、繰り返される度に世界と呼ばれる意思は生存するための希望を残すの。
それが、救世主の存在。
救世主は世界に一人だけ現れ存在する。
繰り返される世界に落とされたイレギュラー的存在。
それが、今回は私のようなの。
しかしそれは私のいた背中での話。
この世界には、救世主は存在しない。
だから滅びる運命なのだと。
「救世主なんて、誰かが立候補すれば良くない?または選挙とか?」
それは不可能。
救世主は、世界の生存本能が唯一生み出した奇跡のようなもの。
世界を救う運命を与えられた唯一無二の存在なのだと。
それに・・・
「なら、この世界も私が救ってあげるわ!」
『それはなりません』
「どうして?」
『万が一、法子さんがこの世界の救世主として存在が定着してしまえば、この世界が正史となり、貴女のいた世界囮滅びてしまうのだから』
「そんな・・・」
私のいた世界と、今いる世界を天秤にかけるなんて私には出来ないわ。
残酷過ぎる!
『法子さん、貴女は貴女の世界を救う救世主として、元の世界へと戻るのです』
私は複雑な心境だった。
目の前の滅びを見てみぬふりなんて。
「でも、どうしてフォン君がそんな事を知っているの?まるで見てみたかのように?」
『見て来たのです』
「えっ?」
『滅び消える世界を渡り、私は見てきた。この記憶が、世界の行く末を知り、そして救世主へと伝える。これが私の一族の定め。ノアの一族の役目であるのです』
「そのノアの一族って、まだよく分からないのだけど〜」
『ノアの一族。それは救世主を導く運命を与えられし一族。姉も、母も、そして父も法子さんとは縁があるのです』
「えっ?縁って、何?」
そこで、私は驚く真実を聞かされたの。
「嘘?愛音さんがフォン君のお母さんって?えっ?それっておかしいわよ!だって、私は愛音さんのお子さんに会っているからよ」
でも、確かに愛音さんのお子さんの名はファンちゃんとフォン君。
確かに同姓同名の不思議なめぐり合わせ。
けれど、私が後に出会ったフォン君は同い年くらいだったはず。
それは、愛音さんの話と繋がった。
愛音さんは関東大震災の際に、不思議な穴を通って、父親共々あの過去の世界へ放り出されたと言ってた。
それが時を歩く能力?
ノアの能力?
そして蛇神族との戦いの最中、紅孩児君から聞いた話は、猛毒の激流に村ごと飲み込まれて愛音さんと、そのお子さん二人は消息を経った。
けれど実際はノアの能力で愛音さんは死に際に愛する我が子を過去へと飛ばしたと言うの。そして、ファンちゃんとフォン君は過去に渡り、成長し、そこで孫悟空達と出会って金角と銀角の脅威から救われた。
そこでファンちゃんは亡くなり、唯一生き残ったフォン君は私とも出会ったと言うの。
「何なの・・・それって」
さらに、私は愛音さんの父親で、フォン君とファンちゃんの祖父の名を知り、またまた驚かされたの。だって、果心居士ですって??
果心居士は、カミシニ化した織田信長を甦らせ、そして武将の軍をつくり、私や総本山の皆と戦った強敵。その力は、運命を選ぶチート能力だった。
あれがノアの能力だったの?
私も戦ったから分かる。
あんなの出鱈目よ〜
けれど果心居士は過去に置いてきてしまった娘さんと再び巡り合うための行為だと後から知ったけれど、なら、何?その娘さんが愛音さんだったと言うの?
もう、脳内パンク寸前よ〜
『そこまで話した後に、この私がこの世界でやり残し、作り出してしまった世界を滅亡させし存在について語らせて貰います』
「えっ?この世界を滅ぼすのは、ヒュプノス神達神々と、邪神エリスじゃなかったの?」
ファン君は、それは誤りだと告げる。
『その前に、先に救世主が失われたこの世界と、法子さんの世界との違いを説明せねばなりません。私の知る限りの話しを・・・』
語られるは、フォン君の生きた世界。
そしてもう一つの世界でのフォン君の生き様。
その末に起きる世界の災いについて。
そんなこんな。
次回予告
法子はフォンから聞かされるのは、世界の未来か?
それとも・・・




