現世に孫悟空降臨??激突!坂上田村麻呂
かつての仲間である坂上田村麻呂に襲われる法子。
その窮地を救ったのは、過去の世界から法子と共にやって来ていた孫悟空だった。
俺様は孫悟空だぜ!
何故、俺様がこの場所にいるかって?
そんなもん知るか!
てか、此処は何処なんだ?
それは確か、西王母が法子に向けて何か変な術(空間移動術)で穴を開けた時だ。
穴に吸い込まれる法子を助けようと飛び出したのも覚えてる。
けど、俺様は寸前で足を引っ張られたのだ。
引っ張られたと言うのは、邪魔をされたとはちょっと違うのだが、う〜ん。
俺様の足に何かが引っかかり、目の前に浮いていた丸太に衝突しちまったのだ。
「そ、孫悟空兄貴?」
それは沙悟浄が丸太に縛り付けられていたのだ。
どうやら東華帝君の手下に負けて捕まっていたんだとよ。
「お、河童か?お前何捕まっているんだよ?」
「ずびませんです〜」
そこに鉄扇が割って入る。
「こらぁ!猿!それよりあんたは法子を助けなさいよ!河童ちゃんは私に任せて」
「鉄扇、そうだな。河童を任せるぜ」
そして俺様は足に引っかかっている物に気付く。
それはもう一つ浮いた丸太から垂れていた縄だった。
「何でこんなもんが?まぁ、使えそうだから使うまでよ!」
俺様は丸太に絡まった縄を強引に引っ張り振り回すと、穴に向けて投げつけたのだ。
飛んでいく丸太は法子の前に開いた穴に挟まり、その吸引力がおさまる。
「よっしゃ!俺様天才だぜ!」
で、そのまま飛び込み吸い込まれる法子の手を掴もうと手を伸ばしたのだ。
後、ちょい!
後、もう少しで〜
指先が届く寸前だった。
例の穴を塞いでいた丸太が耐えられずに真っ二つにへし折れると、再び吸引力が増す。
「へっ?させるか!法子ぉおお!」
俺様が叫んだ時、折れた丸太が俺様の後頭部に直撃し「ボゲェ〜」と、そのまま法子と共に、俺様も穴の中へと吸い込まれてしまったのだ。
「う、う~んん?」
それから目が覚めた俺様は、石の建物(何処かのビル)の屋上で眠っていた。
星が出ていて、真っ暗な空。
夜なのだろうか?でも異常に明るくないか?
そして見下ろす地上は、俺様が見たこともないテカテカ光る世界だった。
「何だぁ〜こりゃあ〜!」
此処は天界か?
どうして夜なのに火を灯していないのに地上界は星空のように光り輝いていた。
「此処は何処なんだ?の、法子は?一緒に吸い込まれたはずだから近くにいるはずだ」
そして瞼を綴じて法子の気を探る。
ん?んんん?
そので俺は地上から匂う食べ物に誘われ、そのままふらふらと出歩いてしまったのだ。
飯を食わねば人探しも出来ぬって言うしな。
俺様はふらっと店に入ると、椅子に座ったら飯が出てきて、食った。
「うむ。美味い!これはラーメンてやつか!それに炒飯に餃子!」
で、逃げた。
昔とった杵柄だな〜
食い逃げ。
「それにしても何だかなぁ〜?よく分からんが俺様の妖気が思うように高まらねぇ」
まるでカミシニの障気に阻まれているような感覚に近いが、近くにカミシニがいるようには思えない。強いて言うなら結界か?
俺様は空を見上げると、
「まるで世界中が結界に覆われてるような嫌な気分だぜ」
で、とりあえず気を探るのに手間がかかり仕方ないので、法子の匂いを探した。
この世界は異常に臭いがキツイ!
しかも人間達からも嗅いだ事のない異臭(香水)がした。
俺様はそれでも法子の気と嗅覚に意識を集中し来てみれば、結界の張られた密林の中から法子の気配を感じたのだ。それで結解に穴を開けて入ってみれば、法子いるし、しかも変な連中に追われて危機一髪って。
「俺様登場でもう何も心配ないぜ!」
「孫悟空、どうして?」
「話せば長くなるから、とりあえずそこの連中を黙らせてやるぜ」
「待って!この人達は悪者じゃないのよ!けど何か誤解とかでめんどくさい事になってるのよ。だから絶対に殺したら駄目よ!」
「めんどくせぇ〜な。まぁ、やれと言われたらやるしかねぇがな!」
俺様は如意棒を振り回して刀を弾き返すと、坂上田村麻呂も俺様から間合いを取りながら後退する。
「何だ、テメェ。その娘の仲間か?見るに獣魔か魔物で間違いないようだ。しかも知能が多少あるのか?やはりあの小娘は厄災の女神で間違いないようだな!」
坂上田村麻呂は呼気を吐くと刀を構えて力を溜める。
「化け物が総本山に侵入するなど決して許せやしねぇ。この俺、坂上田村麻呂がソッコー切り捨てる」
その踏み込みは一瞬で俺様の間合いに入り、胴を切り捨てる。
「ぬっ!?」
が、俺様の姿は消えて頭上から如意棒を振り回して叩きつけた。
「グッ!分身か!舐めた真似を」
「よく受け止めたな?人間のくせに手応えあるようだな!お前!」
「何を見下してんだ?てめぇは!」
坂上田村麻呂は刀を傾けて俺様の如意棒をいなすと、突きを繰り出して攻撃する。
「うぉっと!なっと!よっ!」
互いの交戦状態に周りの兵士は近付けずにいた。下手に手を出せば巻き沿いに合うと分かるほど、他の連中も馬鹿じゃなく、それほど激しい戦だった。
「うぉりゃあ!」
俺様の如意棒が刀を弾くと、坂上田村麻呂は一瞬よろめきながらも俺様の追撃に対して印を結んで覇気をぶつける。
「ぐはぁ!」
顔面直撃でよろめき、それでも直ぐに体勢を整えると、お互いに間合いを取り合った。
「なかなか面白い手応えある化け物だぜ!よぉ?お前の名前があるなら言えよ!殺す前にお前の名前を覚えておいてやる」
「なぬ?俺様の名前を知りたいか?良いぜ、教えてやる。俺様は泣く子も黙って笑う天下の大妖怪!聖天大聖・孫悟空様よ!」
「はっ?」
その名を聞いて、坂上田村麻呂は堪えるように笑いが込み上がっていた。
「馬鹿言ってんじゃねぇよ!あははは!猿の化け物だから孫悟空てか?創作物の妖怪の名を語るとは少しは洒落てるじゃねぇか!」
「馬鹿言うなはお前だ!俺様は正真正銘の孫悟空様だぞ!よし、この俺様の本気を見せて、その生意気な口を塞いでやるぜ」
「よく喋る魔物だ。良かろう。早死にさせてやろう。この俺の手によってな」
「!!」
何をやらかすつもりだ?
坂上田村麻呂は印を結び念を唱えると、その身体から三体の鬼神が出現した。
そして三体同時に俺様に襲いかかる。
「何てことはねぇな!鬼神を召喚して数で俺様に対抗すれば勝てるなんぞ、小物の策だぜ!良いか?俺様相手に雑魚がいくら集まろうが相手にならねぇぜ!」
今度は俺様が力を解放させたのだ。
抑え込んでいた全妖気がここぞとばかりに噴き出して、襲って来た三体の鬼神を吹き飛ばしてやった。さらにその迫力にあてられたその場にいた力のない兵士達は気を失い倒れていく。
「安心しろよ?殺しちゃいねぇからよ」
だが、例の野郎は怯んでなかった。
それどころか余裕の顔で俺様を睨み付けている。
「俺が数で対抗させるために鬼神を召喚させたと思っているのか?その三体の鬼神はこうやって使うんだよ!」
坂上田村麻呂は印を結ぶと、
「鬼神変化唯我独尊!」
すると三体の鬼神が坂上田村麻呂の体内へと吸収されていき、その力が融合していく。
「ウォおおおおおお!」
その身に鬼神の鎧を纏うと、今まで抜いていなかった二本目の異様な力が感じる禍々しい刀を抜いた。
「これはサヤハの剣と言ってな。この刀を俺が抜いて生き残った魔物はいねぇぜ」
「そうかよ!」
俺様は如意棒を振り回して回転させると、坂上田村麻呂に指を向けてから地面を指差し、
「俺様の前に跪け!」
この俺様の、久しぶりの見せ場をとくとご覧あれだぜ!
次回予告
孫悟空と坂上田村麻呂の激突。
そして法子は、師匠の安倍晴明を頼りに先を急ぐのだった。




