女子高生に迫る坂上田村麻呂!
現世に戻って来た法子だったが、誰も法子を覚えていない。
唯一の頼みの綱の安倍晴明に会うために法子の前に坂上田村麻呂が妨害する。
私は法子よ!
な、何がどうなっているの?
久しぶりに総本山に来てみれば、突然昔の仲間に襲われて、私の事を誰も記憶していないの。
しかも見知った田村麻呂さんも私の事を知らないとか言って斬り掛かって来たのよ。
「俺は総本山を守護する四天王が一人。坂上田村麻呂!侵入者を切り捨てる」
「しぃ、知ってるわよ〜!きゃああ!」
振り下ろされた剣を私は紙一重で躱す。
最小限の動き、摺り足後方移動。
まさに完璧な避け方。
けれど田村麻呂さんは振り下ろし終えるまでに軌道を翻し、突き上げ、突き出す。
「クッ!わっ、とっ!」
私はその動きも躱して見せた。
その動きに田村麻呂さんは攻撃の手を止め、刀を鞘におさめる。
「ようやく分かってくれたのね?」
「あぁ、分かった」
「ホッ」
安堵したと思えば、
「どうやら只者ではないようだ。見た目の小娘姿に騙されていたら寝首をかかれるな」
「えっ?何を言っているのかしら?ん?」
「この世界を災いと争いの世に変えると言う厄災の女神。確かにお前からは異様な神力を感じる。間違いないようだ。この総本山に土足で踏み込んだ以上、この俺が引導を与えてやろう」
「ちょっと待ってよ〜」
私はたまらず、手にした数珠に気を込めて地面に叩きつけると、閃光が広がって目くらましになったの。
「くっ!逃がすな!俺達総本山の意地にかけて、災いの種は滅せよ!小娘、この俺から逃げられると思うなよ」
私は木の上を渡りながら遠ざかっていた。
けれど、後方から私を追って来るのが分かる。
この総本山には手練れが沢山いるの。
私は背後から何か飛んで来た事を察して木から飛び降りると、草陰に潜って隠れる。
「キョロキョロ」
どうやら大丈夫みたいね。
私はそのまま道を変えながら移動しつつ、そして目的の場所に向かっていたの。
仲間からの報告を受け取る田村麻呂さんは、見失った私に、
「この総本山の地理を知り尽くしていると言うのか?」
私は総本山中央に存在する五重塔間近に辿り着いていたの。
知り尽くした自分宅の庭みたいなもん。
けれど私には嫌な不安が残る。
私は今まで夢を見ていたのではないかって。
過去の世界で戦って、戻って来たなんて信じられる?
なら、何処から何処までが夢なの?
いやいやいや!何を考えているの?
私の中に感じる力。
間違いなく私は時間を行ったり来たりした。
間違いないわ。
私は過去の世界から持ち込んだ神具の籠手を見て確信する。
こんなお宝、この世界には売ってないし、手に入らないもん。
とにかく晴明師匠に話をして、田村麻呂さんの誤解を解いてもらい、私を皆がいる世界にもう一度行く手段を考えて貰う。
「他力本願よ!」
私は警戒しながら、右見て、左見て前方確認。
後方確認オッケーで、突撃よ〜
私が五重塔入口に向かって駆け出すと、
「上方が不注意だぜ!」
「えっ?」
見上げると坂上田村麻呂さんが剣を振り下ろし、私は前方に片手を付いて一回転してギリギリ避けたけれど、洋服が泥まみれになる。
「もう!衣装チェンジよ!」
私は念じると、衣装が閃光を放ち、陰陽師風セーラー服に変わる。
「おいおい、お前は魔法少女か?」
「私は正義の女子高生よ!」
「今度は逃がせねぇーぜ!覚悟するのだな?災いの女神よ!」
「頭きたわ!誰が災いの女神よ!」
斬り掛かる田村麻呂さんの剣と私の霊気を凝縮して構成させた錫杖が衝突する。
徐々に力負けする私に、田村麻呂さんの殺気は増して私にのしかかる。
「田村麻呂さん!私を晴明師匠に会わせて!会えば全て解決するんだから」
「そうか」
「分かってくれたのね?」
「貴様が直接現れた目的は総本山のブレーンの晴明を討つ事か。晴明には頭くる事はあるが、一応俺達の仲間だからな。討たせやしねぇよ!」
「ち〜が〜う〜の〜!」
「あんまり時間はかけたくねぇ。俺も忙しいのでな。直ぐに楽にしてやるよ」
すると田村麻呂さんは刀を押し込みながら向きを変えて私の顔面目掛けて突き出す。
「女子高生の顔に傷が付いたらどうするのよ〜!」
私は顔を背けて躱し、錫杖を消して田村麻呂さんの攻撃のバランスを崩したの。
「おっと、よく躱す奴だ。だが、そう何度も調子に乗っていられると思うな」
「私も頭に来たわ!」
私は手に数珠を取り、力を籠める。
「数珠連弾!」
弾かれた数珠は散弾銃のように田村麻呂さんに向かって行くと、田村麻呂さんは刀を二度三度振り、最後に一周振り回して全ての数珠を打ち落とした。
「どうした?手の内は尽きたか」
そして再び私に向けて斬り掛かる。
その一撃は今までの攻撃より速く鋭く、そして躱せない一振りだったの。
(ちょっとマジ??)
こんなんで死んだら、洒落にならないわ。
「!!」
振り下ろされた刀は私の眼前で止まっていた。
止めてくれたの?
違う。背後からの気配。
その誰かが私の背後から振り下ろされた田村麻呂さんの刀を受け止めてくれたの。
「よぉ?法子!危なかったな」
その声に私は驚いたって。
振り向く私の視界には、金色の髪を垂らし、緑色の瞳で私に斬り掛かった田村麻呂さんを睨んでいたの。
「そ、孫悟空!」
私を助けてくれたのは、孫悟空だったの。
嘘?どうやってここに?この世界に?
あんたがいるのよ??
そんなこんな
次回予告
まさか現世に孫悟空が現れた。
孤立していた法子の前に心強い味方だった。




