新展開?そんな場合じゃないのに現世回帰??
神々が戦う過去の世界で幾つもの戦いを乗り越えていた三蔵法子
世界が神々とカミシニの戦いの真っ只中、法子は再び現世へと戻されていた。
私は法子。
私は学校の深夜の校庭前に倒れていたの。
けれど、本当にここは現代なのかしら?
何かしらの幻覚とか?
疑ってみるのは当然よね?
とりあえず、
「痛たっ」
頬を抓ると痛かった。
幻覚にしてはリアルな痛みだった。
それから念じてみたけど、白鐸の杖も、召喚出来る玉龍君も現れなかったの。
「戻る手段は見つからないわ。焦っても仕方ないし、とにかく少しでも情報がないと私の状況がつかめないわ」
私は起き上がると、高校の中に不法侵入して探索して見たけど、見る限り私の知る校舎で本物だったの。窓から見える外の風景も変わりなく同じ。
「外も見て見るべきね」
と、その前に。
私は今着てる僧侶衣に困惑する。
現代ではコスプレでしかない。
「まぁ〜いつもの事かな」
私は飛び上がると、暗闇に紛れて一件一件の屋根伝いに移動した。
たまに深夜に歩く通行人や、車が移動していた。
(普通の一般人ね・・・)
もしかしたら化け物が変化していたりって、それは考え過ぎみたい。
そして到着したのは、蛇塚と書かれた表札の一軒家だった。
「久しぶりの我が家ね!」
中に入ろうと思ったけど鍵が締まっていたので、鍵穴に気を注入させて固定化し、軽く捻って開けてみせた。
「いつでも怪盗になれるわ、私」
そして家の中を覗いた。
「お父さん、いる?勇斗!何処?」
二人ともいないようね。
現代で私は養子として今のお父さんと、勇斗って一つ下の弟と同居していたの。
「あれ?」
私は部屋の照明のスイッチを押したのに、照明が点かない。
まさか停電?
そう言えば、学校から家に戻る間も暗かった気がするわ。
「とりあえず・・・」
私は部屋に入ると、置かれていたベットに横たわり、そのまま眠りについたの。
考えてみたら、本当に極限の戦いを繰り広げた後なのよね。
思い出しただけで、許容オーバーだった。
(とりあえず明日になれば、お父さんさんや晴明師匠に相談して、み、よう・・・)
それにしても真っ暗で何も見えないわ。
私は壁伝いで自分の部屋に入って、飛び込むようにベットにダイブしたの。
久しぶりのマイベット〜
う〜ん。むにゃむにゃ〜
その時、誰かが私の部屋に入って来た事に、疲れ果てていた私は気付けないでいた。
久しぶりの安眠。
鳥のさえずり、カーテンからこもれる日差しに私はぼんやりしながら、瞼を開いたの。
「ん?あれ?」
私のベットに誰かいる??
瞼の先に男性が寝息を立てて寝ていた。
(顔近っ!!)
と、そこで私は飛び起きて悲鳴をあげた。
「きゃあああ!」
私の叫び声に目を覚ました男性は、何事かと私に気付いた時、
「うわぁあああ!!」
「きゃあああ!!」
一緒になって悲鳴をあげていた。
と、ちょっと待ってちょうだい?
あれ?よく見たら?
「勇斗?」
勇斗は私の弟。
それが姉のベットに入り込むなんて、そんな近親相姦な弟に育てた覚えはありません!
「こらぁ!勇斗!何、お姉ちゃんの布団に入り込んでるのよ!ノック無しに部屋に入って来るなんてデリカシーないわよ!いくら私が魅力的だからって、もうお年頃なのよ!」
「ばっ!馬鹿言うな!ここは俺の部屋で、俺のベットだ!それに誰だよ、お前は!」
「えっ?何をしらばっくれてるの・・・ん?はて?」
明るくなって見回すと、部屋の中は私の部屋じゃなく、当然、私のベットじゃなかった。
「あら?ごめんあそばせ〜勇斗。間違ったの私の方みたいね?そんなわけでおいとましま〜す!」
私はベットから飛び起きて、部屋から出て行こうとすると、
「待てよ!」
私の肩を掴んで離さない勇斗が、スマホを手に取り私に言う。
「お前さ、俺のファンか何か?勝手に家に入って来て不法侵入してるんだぞ?立派なストーカーだ!警察呼ぶか?それとも親呼ぶか」
「はぁ?そこまで無気に怒ることないじゃないよ!実のお姉ちゃんに。反抗期?それとも添い寝したから照れ隠しなの?」
「意味、分かんねぇ〜」
と、力強く私の肩を掴むもんだから、私は本能的にベットから床に合気で投げ飛ばしてしまい、勇斗は目を回して気を失ってしまったの。
「あちゃ〜」
仕方なく勇斗はそのままベットに寝かせ直し、私は改めて部屋を見る。
「あれ?」
そこには私の部屋がなかった。
正確には、今、私が寝ていた私の部屋が勇斗の部屋に変わっていたの。
そして他の部屋にも私の持ち物一切なく。
「もしかして私が過去に行っている間に私の荷物を何処かに移したの?それでちゃっかり勇斗が部屋を占領したのね!許せないわ」
仕方なく私は懐にある宝貝を手にすると、気を籠めて念じたの。
「念衣」
すると輝く宝貝から衣が飛び出してきて私の身体に巻き付くと、イメージした通りの普段着の衣装に変わったの。
「変装用のアイテムだったけど、衣装には事足りないわね〜」
そして私は身支度を始める。
トースターでパンを温め、冷蔵庫からベーコンと卵を取り出し、調理する。
簡単な料理なら余裕よ。
それから、私は臭う身体に眉をしかめる。
衣装の前にシャワー浴びよ。
とりあえず落ち着いたところで、私は外に出て向かったの。
落ち着いている場合じゃない。
あの世界で、皆が待っているから。
そして、この世界で私の力になってくれるのは、お父さんと晴明師匠の他にいないわ。
それに暫く留守にしていたから、かなり心配していると思うしね。
そして私は、懐かしい総本山に向かったの。
総本山には、お父さんと晴明師匠がいる。
二人なら、私に道を示してくれる。
この私が、あの世界にやり残して来た事を、やり遂げるための道標を!
そんなこんな。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
場所は変わる。
此処は、部外者は何者も立ち入る事は出来ぬ総本山。
この世界を影から救済する組織が存在する。
その最高峰に君臨する座主は、各地にて共に協力関係にある神族からも一目置かれるほどの先導者として認められていた。
この総本山こそ、世界の命運を握っていると言っても過言ではなかった。
「座主よ、全員揃いました」
「うむ。晴明、それに集まりしお前達に新たな世界の歪みが発生した事を告げる」
座主を中心に、その側近の安倍晴明の他に三人の守護者が揃い踏みしていた。
すると安倍晴明が説明する。
「今宵、集まって貰ったのは昨晩起きた不吉な歪みの発生の件だ」
その内容には、この場にいる全員が何かしらの気配を感じ取っていた。
坂上田村麻呂、仁王、龍神の巫女。
「で、晴明。正体は分かっているんだろうな?なんなら俺が直接出向いて片付けて来てやるぜ」
「その必要はない。田村麻呂」
「何だと?この俺では役不足てか?コラァ」
「そうではない。その者は既に総本山に近付いて来ているのだ」
「はぁ〜?何だと?この総本山に恐れも無しに正面から足を踏み込むとは、どんだけ舐めてんだ!そいつは!」
坂上田村麻呂が腰の鞘に手を置くと、出向こうとするのを座主が止める。
「待て!田村麻呂よ。相手の目的も分からぬうちに早まるでない。それよりもだ」
座主は晴明に相手の正体を尋ねる。
「その者は、太古の神話歴より、戦争と災を起こしては、この世界に不和と争いを与えし厄災の女神・・・」
すると安倍晴明は告げた。
「邪神エリスの復活だ」
今、総本山に新たな脅威が迫ろうとしていた。
次回予告
法子は過去の世界に戻るべく、座主と師匠の安倍晴明に助力を求めに総本山へと向かっていた。
しかし新たな災いである邪神エリスの復活とは?
※1話~100話の登場人物が再出演




