動き出した封神台!二郎真君を取り戻せ!
阿修羅と東華帝君の戦い最中に現れたのは西王母だった。
西王母と東華帝君は敵対していて、三つ巴の戦いとのるのか?
私は法子よ。
嘘?嘘でしょ?アレって?
阿修羅と東華帝君の戦い最中に現れたのは西王母だった。
西王母と東華帝君は敵対していて、三つ巴の戦いになると思われたの。
しかし阿修羅は八仙の藍 采和に足止めされ、そこに新たに現れた倶利伽羅の王・申公豹が東華帝君を足止めしたの。
そこに突如オーロラが空を覆い、その頭上に現れたのは塔のようなバカでかい封神台だった。
立て続けの状況に置いてけぼりで付いていけないまま、それでも目を奪われたの。
東華帝君が破壊する封神台。
それは中身を覆う結界の塔。
そこに現れた透明な瓢箪状の中身こそ封神台本体だった。
そしてその中に見えた人影に、私は目を疑った。
中に見えたのは、消息不明で行方が分からなかった二郎真君さんの姿だったから。
全く動かずに、生きているか分からない。
まさか本当に死んでいるなんて?
私は全身に鳥肌立つ。
「そんなの嫌よぉおお!飛行の羽衣」
「法子!」
飛行の羽衣を纏い飛び出す私を呼び止める鉄扇ちゃんは、二郎真君さんを私に託し、
「法子、まだそんな力が残っていたの?本当に驚くわ。なら私は」
鉄扇ちゃんは視線を藍 采和に捕らわれ、丸太に拘束されている沙悟浄に向けると、そっち方向に飛び出していた。
そして驚愕して感情を露わにしていのは、もう一人いたの。
「母上、貴女の愚行は私が止めるわ!」
それは西王母の実子、竜吉公主だった。
飛び出そうとする竜吉公主さんに、
「姫様、これをプレゼントしますわ」
「えっ?」
九天玄女が宝貝を放ると、それを竜吉公主は片腕で受け取り神気を込める。
「コレは?」
宝貝から出現したのは義手だった。
神気を流す事で、実際の腕のように使え、指も自由に動く。
その義手を失った腕の代わりに取り付けると、竜吉公主は一礼して飛び上がる。
「良くて?西王母様への謀反になりますわよ?九天玄女」
「私は姫様の勇姿に感服したのですわ。そして倶利伽羅の王を仕留めるほどに成長していた。そのことに対して、尊敬される立派な愛される先生として、愛弟子に卒業祝いを遅ればせながらプレゼントしただけですわ」
「ありがとうございます」
竜吉公主が飛び去る姿を見届けた九天玄女は、瑤姫に語る。
「それに私もちょっと嫌な予感がするわ。あの封神台の中身・・・」
「私も武者震いが止まらなくて困ってます。西王母さん、何を考えているのかしら」
東華帝君は奪われた忌眼を取り返しに動こうとした。
が、背後からの攻撃に振り向き剣で受け止め、力を押し合う。
「キサマ、藍 采和と自爆したはず?」
「自爆する寸前、全身に防御壁を張って難を逃れたんだ。ぎりぎりだったけど」
「そうか、藍 采和を無駄死にさせてしまったか」
「次はお前の番だ」
「邪魔はさせん」
「!!」
すると二人に目掛けて血珠が撃たれる。
互いに押し合い離れて躱すと、二人に攻撃した申公豹が怪しい瞳で見下ろす。
「この僕を忘れないでくださいね」
倶利伽羅王二人と阿修羅の三つ巴の戦い。
その間を擦り抜けるように、私は封神台に向かって上昇していたの。
「二郎真君さん!お願いだから生きていて!絶対に死なせないわ!」
二郎真君さんの思い出が走馬灯のように廻り、涙が溢れ出す。
そして拭いながら、西王母に接近する。
「またしてもお前か。お前達の同行は全て視させて貰っていたわ。全て思い通りに動いてくれた。東華帝君の隙を付いてこの忌眼を手に入れられたのもお前のおかげね」
すると西王母は手に神気を凝縮させると、向かって来る私目掛けて放り投げる。
「!!」
視界を覆う程の巨大な神気の玉が落下してくる。
今の私に受け流せる?
でも、やらなきゃ!
「えっ?」
そこに私を抜いて飛び出した人影が、接近する巨大な神気の玉に槍を突きつけ、
「竜吉公主さん!」
弾けて消える神気弾の先に見える西王母を見つめていたの。
「竜吉公主。何故、貴女が何故私の邪魔をするのですか」
「母上!気でも狂ったのですか?私は見てきました。母上がカミシニを世に解き放ったことを!母上が世界を狂わせ、滅亡させる元凶ならば、娘である私が食い止めるわ」
「貴女は目先の事しか見ていないのですね。貴女は黙って私の行いを見届けなさい!そうすれば、きっと貴女も分かってくれます」
「ふざけないで!今、起きている全てが母上の仕業!世界を滅ぼすつもり!」
「それは違います。私の行いは全て世界を救うための行動。そのための些細な犠牲は多目に見るしかないのです」
「やはり相容れないわ!」
竜吉公主さんが飛び出して槍を突き出すと、西王母は剣でいなして、弾く。
「母上!この私を舐めるなぁー!」
「森羅万象変化唯我独尊」
竜吉公主さんの姿が再び始祖神の衣に覆われて、神々しい姿で凛と立つ。
「始祖神の末裔として、成長致しましたね。けれど私も引くに引けません」
「森羅万象変化唯我独尊」
西王母の姿が同じく始祖の鎧を纏い、人のすがたで豹の尾、下半身が虎体。
宝玉の頭飾を戴く半人半神の姿となった。
今、母子、始祖神の戦いが始まる。
二郎真君さんの身に何が起きたの?
最後に会った日、私達を屋敷に泊めてくれて、
そして天竺について天界で調べてくれていたはず?
それが、どうして?
いえ、それよりどうして封神台の中に?
二郎真君さんを何かの実験に使うつもり?
まさかカミシニ化させるの?
「そんな事は絶対に許せないわ!必ず止めて見せる!」
邪魔をする西王母に対して、私と共に戦うのは西王母の実子の竜吉公主さんだった。
互いに始祖神の力を解き放ち、交戦する中で私は封神台に近付こうとする。
「させるものか!」
西王母が手にした剣を向けると、強力な雷が私に落ちる。
「邪魔をしているのは、そっちよ!」
私は白鐸の杖で受け止めると、雷を拡散させて身を守ったの。
「白鐸、聞こえる?教えて欲しいの。あの瓢箪のような封神台から二郎真君さんを救う手段!」
〈聞こえています。我が主よ〉
それは以前の封神台を破壊した時に、とんでもない事態になったから。しかも今回のは前回のより何かもっとヤバい感じするから。
〈恐らく外からの攻撃は全て弾かれてしまうでしょう。強力過ぎる結界です〉
「そんな事だろうと分かっているわ。だから壊す手段を教えてちょうだい」
〈手段は結界を張っている者を倒すか、その力を弱らせるしかありません〉
「つまり西王母を倒せば良いのね?」
その問いに白鐸は黙って、そして私の意思とは関係なく杖の先が動いて前方に向けると、杖が私の周りに七つに分かれて雷を放つ。
「何?白鐸?どうしたの?」
〈我が主、封神台に結界を張っている者は別にいます〉
「えっ?一体、誰なの?」
放たれた雷が前方で空間の壁に歪みに消えていく。
すると空間の歪みから闇に覆われた黒マント姿の男が出現したの。
声の感じだと老人かしら?
まさか新たな黒幕とか言わないわよね。
《まさか儂の気配を感知するとは驚いた。噂に聞く救世の力か。どうやら本物であるようだな》
「褒めてくれて有難う。で、もしかしてだけど黒幕の登場ってわけね。なんとなく分かるわ。あんた・・・」
全身に鳥肌立つこの気配。
間違いないわ。
この敵は、始祖神ね!!
しかも西王母と同等、もしかしたらそれ以上?
一体、何者?
「黒幕とは過大評価であるな。この儂は西王母に手を貸してはおるのは間違いないがな」
「何者であろうと関係ないわ!私は二郎真君さんを救うのみよ!」
私が白鐸の杖を構えると、その敵意に反応して私の身体に重力がのしかかり、その場から押し潰されるかのように急降下する。
「きゃああああ!」
落下する私は白鐸の杖を下に向けて叫ぶ。
「止まりなさい!」
急降下が止まり、私は難を逃れた。
「一難去ってまた一難なの?」
すると私の周りに敵の武人達が囲んでいた。
それは申公豹直属の部下達だった。
「人間の女が降って来たが、殺っても良いよな?この場には不釣り合いだしな」
「俺達も傍観しているだけではつまらぬからな。何か褒美を貰えるかもしれぬ」
「それより生き血をすすろうぜ」
と、私に向かって襲いかかる。
「邪魔をしないで!このぉ!」
と、その時だった。
私の背中が誰かに抱きかかえられ、軽くなったかと思うと、襲って来た武人を蹴り飛ばしたの。
そして私を抱きかかえる相手を見たの。
「俺様が来たからには、もう安心だぜ!」
「そ、孫悟空!」
それは東華帝君の襲撃で傷を負っていた孫悟空だったの。
「遅いわよ!」
「そう言うなよ〜!俺様も大変だったんだぜ?少しは有り難く労えよ!」
「労ってあげるから働きなさい!」
「全く、猿使いの荒い女だ〜」
孫悟空の登場に申公豹の手下達は一瞬怯むけれど、直ぐに気を取り直す。
「たかが一人でのこのこ現れて何が出来る?二人まとめて始末してやろう!」
「別に俺様一人で来たわけじゃねぇぜ」
「えっ?」
孫悟空は安心の笑みを見せると、そこに新たに援軍が飛び込んで来たの。
「俺様を独りぼっちにするな〜!」
上空から炎を噴き出して飛び降りて来たのは、紅孩児君だった。
「紅孩児君も来てくれたのね」
「だけじゃねぇよ。怪我した俺様達を回復させてくれた奴もいるからな」
「えっ?」
そこに雷が降り注ぎ、武人達の行く手を塞いだ。
「孫悟空、礼の一つも覚えろ」
それは足元に火炎の車輪で飛行するナタクだったの。
「ナタク、どうして?」
「あいつ(二郎真君)の消息を辿っていて、この場所に行きついた」
「あの黒幕みたいな奴に心当たりあるの?」
「まだ証拠はないが、しかし今は時間がない」
「そうね」
「だが奴らには俺も借りがある。奴らは俺が討伐する」
「任せるわ!ナタク」
ナタクは鞘から剣を抜くと、全身から雷が覆われる。
どうやら紂王との戦いの傷は回復しているみたいね。
頼りになる味方が揃い踏みだわ〜
「何がなんだか現状は掴めてはいないが、あそこにいるのは二郎真君だよな?」
「そうよ、孫悟空」
「だったら食事させて貰った借りを返してやらないと寝付け悪くなるよな」
「そうね、二郎真君さんには助けて貰ってばかりだから、借りを返すのが友達よ!」
私は再び、頭上高くに浮かぶ封神台の隣に居座る謎の始祖神を見上げる。
「あいつを倒す必要があるわ」
孫悟空達も加勢して、総力戦ね。
この戦いは負けられない。
すると紅孩児君とナタクが申公豹の配下達を引き受けて貰い、私は孫悟空の筋斗雲に乗って一緒に急上昇して向かう。
「必ず守るから!」
しかし封神台に残る謎の始祖神が呟く。
《残念であったな。時は来た》
同時に西王母が竜吉公主さんを突き飛ばし、封神台の隣へと移動した。
「ついに念願が叶います。用意は?」
《全て儂の預言通りであったな》
「そして今より、成就致します」
二人の始祖神が封神台に手を翳すと封神台が閃光を放ち、オーロラのような光が広がりながらカーテンで世界を覆うかのように包まれていく。
その光に私と孫悟空は視界を奪われ、動きを止められたの。
動き出す封神台
そして中にいる二郎真君さんに異変が起きたの。
その人影が、光に包まれながら二つの人影に分かれていくように見える。
二郎真君さんの身に何が起きているの?
急がないと!!
その時、西王母ともう一人の始祖神が動きを見せたの。
「ついにこの日が来たのですね。本当に待ち遠しかったわ。全てはお主のおかげよ」
「西王母殿、ここからが本当の封神解放の儀が始まるのです。いざ」
二人の始祖の力が封神台を光り輝やかせ、二郎真君さんが入っている中で異変が起こる。
忌眼の一つが沈むように消えていき、二郎真君さんの胸に吸い込まれると、微かに指先が動き出したの。そしてもう一つの忌眼を西王母が握りながら念を込める。
「お目覚めください!」
「既に封神台は起動しておる。復活するぞ!待ち望む真王が!」
「おぉおお!真王よ!」
封神台が閃光を放ち、砕けて散ると、その中より二郎真君さんが立っていた。
そして、ゆっくりと瞼を開き答える。
「西王母よ。よくぞ再び余を現世に呼び起こしてくれた。そして我が甥、二郎真君。お前の身体はこれより真王たる私が頂く」
西王母は目覚めた二郎真君の隣に寄り添い抱きしめると、その真王は告げた。
「この世界は再び、余が支配する。そして全ての滅亡から未来永劫、救済してみせよう」
そこに、竜吉公主が震えながら近付き、そして二郎真君に向けて問う、
「二郎真君、違う。あ、貴方はま、まさか」
すると、真王は答えた。
「久しいな。我が娘。その通り、この私は天界を統べし最高神・玉皇大帝」
世界は今、変わりつつあったの。
そんなこんな。
次回予告
二郎真君の肉体を使い玉皇大帝が甦った。
玉皇大帝の目的は?




